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  • 【日本代表コラム】Road to 2027:日本代表トレーニングスコッドに選ばれた大学生を簡単な数字で見てみた

    【日本代表コラム】Road to 2027:日本代表トレーニングスコッドに選ばれた大学生を簡単な数字で見てみた

    みなさんこんにちは
    大学ラグビーがひと段落ついたのにもかかわらず永遠に大学ラグビーの試合を見ている今本です

    さて、2024/1/30にエディージャパンの最初の招集となるトレーニングスコッドが発表されたわけですが、選ばれた選手の中に8人の大学生がいました
    今回は彼ら大学生ラガーマンの今シーズンの活躍を振り返り、「どのようなプレーをしてきたか」「どのようなプレーが求められてくるのか」を考えていこうと思います

    それでは1人ずつ見ていきましょう

    目次

    1. 佐藤健次:早稲田3年/HO/桐蔭学園
    2. 2023-24シーズンを振り返って
    3. Road to 2027:代表へのチャレンジに向けて
    4. 石橋チューカ:京都産業1年/LO/報徳学園
    5. 2023-24シーズンを振り返って
    6. Road to 2027:代表へのチャレンジに向けて
    7. 青木恵斗:帝京3年/FL/桐蔭学園
    8. 2023-24シーズンを振り返って
    9. Road to 2027:代表へのチャレンジに向けて
    10. 土永旭:京都産業2年/SH/光泉カトリック

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    佐藤健次:早稲田3年/HO/桐蔭学園

    2023-24シーズンを振り返って

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    高校時代から花園で活躍し、大学でも順調にキャリアを重ねている佐藤選手は直近のシーズンで主戦場をHOに移し、フロントローとしてプレーするようになっています
    HOとしての経験は短いながらも先発として長いプレータイムを得ていることからもポテンシャルの高さとチームへの貢献度が見て取れるかと思います

    佐藤選手の特徴を三つピックアップすると、

    • ラグビー理解度の高さ
    • 圧倒的なワークレート
    • ボールハンドリングの質の高さ

    といったものが挙げられるかと思います

    直近では関東対抗戦の明治戦、大学選手権の法政戦と京産戦に出場し、合計で230分のプレータイムとなっています
    HOの控えに入っている選手が交代で入ってきた後もバックローとして試合に出場し続ける機会も多く、信頼の証とも言えるでしょう

    プレースタイルとしてはキャリーの多い選手で、相手によっては多くのタックルブレイクを見せたりと体の強さが特徴となっています
    プレー参加数から推定するワークレートもバックローの選手並みとなっており、攻撃面でも守備面でも多くのプレーに関わっていることがわかります

    アタック面で言うとボールタッチの多くがキャリーとなっている一方でHOの選手としてはパスの比率も高く、ティップパスやスイベルパスといった「自身がキャリーするように見せかけて横・後ろの選手にパスをする」のようなスキルが大学レベルでもトップのスキル水準を誇っています
    相手ディフェンスにかなり接近したところからパスを放ることができるので相手としてもディフェンスの目を切ることができず、佐藤選手からのパスを受ける選手をかなりフリーにすることができているのが印象的ですね

    ディフェンス面ではラック周囲にポジショニングしていることが多く、少しミスも目立ちますが相手を奥に押し込んだりと高い質を見せています
    ワークレートの高さも相まってフォールディング=ラックを挟んで逆方向に移動して位置どりをすることも多く、相手が大きくボールを動かすようなアタックをした際には少し裏に変えるようなベクトルで位置を変えたりもしています

    Road to 2027:代表へのチャレンジに向けて

    佐藤選手は非常にワークレートが高く、大学レベルでの同ポジションでは他世代も含めてトップ水準の実力を持つ選手であると思っています
    一方でコロナの影響もあって直近ではインターナショナルレベルの試合を経験しておらず、大学レベルでも必ずしも圧倒しきることができてると言うことは難しいかと思います

    対象となった試合ではラインアウトスローの成功率は25/28回と比較的高い水準を示している一方で、京都産業大学のようなスクラムに特化したFWを相手どると上手い試合運びをすることができなかったりと向上の余地は残っている状態かと思います
    代表レベルでも同じくらいのセットピースの機会はあるかと思いますが、直近の日本代表の試合を見ても分かるとおりセットピースの安定というのは試合に勝利するにあたっての最低条件になってくることでしょう

    新生日本代表でHOがどのような立ち回りをすることになるかはわかりませんが、セットピースだけではなくジェネラルな運動量や精度の部分でも求める水準は高いことが想像できます
    早稲田ではゲームメイカーの多さと佐藤選手の戦術理解度の高さもあってゲームコントロールの中核にいましたが、代表レベルではより泥臭く、より愚直なプレーを求められることもあるかと思うので、今後の動向に注目していきたいですね

    石橋チューカ:京都産業1年/LO/報徳学園

    2023-24シーズンを振り返って

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    石橋選手はパワフルな京産のFWの選手を押し退けて試合に出続けるタレントを持っており、ド派手なプレーはなくともプレーの堅実さと安定感で京産のラグビーを支えている選手です

    石橋選手の良さは先述したものも含めて

    • プレーの堅実さと安定感
    • セットピースで十二分に戦うことのできる高い身長
    • 試合の動きに対する判断力

    といったところにあると感じています

    京産には強烈な個の力を誇るポルテレ選手・フナキ選手・タモエフォラウ選手などがいますが、その中で石橋選手は「試合にフル出場するタフネスとワークレート」でチームに貢献しているということもできるかと思います
    分析対象となった三試合はどれもフル出場しており、プレー参加から換算するワークレートも非常に高い物があります
    エラーも少なくプレーの質も高いのでおそらくチームへの貢献度も高いことでしょう

    LOというポジション柄ボールタッチは基本的にキャリーとなっており、スイベルパスなどの細かいパス機会もそう多くはないためにプレー比率的にも相手とのコンタクトが避けられない状況となっています
    ポルテレ選手などに比べると相手を弾き飛ばすようなキャリーに関しては後手に回るような感じですが、一発で相手に倒されずに味方の寄りを待つことができるくらいの体の強さは最低限持っていますね
    いざ倒れる際には少しイージーな倒れ方になってしまうこともあるのが少々の改善点でしょうか

    石橋選手の良さはディフェンス面でさらなる良さを発揮し、特にワークレートと前への上がりの部分でスキルと思い切りの良さを見せています
    関西ラグビーがそこまでFW周りで細かい戦略を使わないということもあってか石橋選手はキャリアーを絞ることができた時はグッと前に上がる様子を見せ、姿勢のコントロールと前に出るクイックネスも高いために相手が大きく前に進むことができていない状況でコンタクトシーンを生み出すことに成功しています

    またラック参加の判断やポジショニングにも優れ、京産側のディフェンスのギャップや相手の動きに合わせてフォールディングやスライドを使ってきちんと穴を埋めてくれる存在でもあります
    移動とポジショニングを決してサボらないため、タックル回数に極端な多さはなくとも「そこに人がいることで相手の選択肢を削る」という面で多大な貢献をしているようにも感じました
    DFラインの上がり下がりも非常に丁寧ですしね

    Road to 2027:代表へのチャレンジに向けて

    石橋選手はLOとして日本代表のキャンプには招集されていますが、U20でも同様に招集されているので直近の活動ではどちらに重きを置いて動いていくのかは正直見えないところではあります
    U20としても石橋選手のタレントは逃せない部分でしょう

    一方代表に限って考えると、FL選出のサウマキ選手がどのようなポジション選考になるか、また今後代表資格を得ることになるであろう外国出身選手の動きによるところもあるかとは思いますが、現段階としてはディアンズ選手やファカタヴァ選手などとポジション争いをすることになることが予想されます

    しかし、それらの選手に比べると現時点で石橋選手のネックになるのが身長と体重といった身体的な要素です
    大学レベルでは最長身レベル(東洋のウーストハイゼン選手などの特殊な例を除く)ではありますが、インターナショナルに一度目を向けるとLOの中では比較的小柄で、体重もかなり軽量の部類に入ってくることになるかと思います
    FL登録を考えたとしても、もう少し増量・肉体改造は必要になってくることかとも考えられますね

    プレー面で言うと、もう少しキャリーを含めたコンタクト場面でのインパクトが必要になってくるようにも感じています
    特にディフェンスでは日本代表が大躍進をした2019年のW杯では日本代表のLOの選手たちが揃って高いワークレートとタックル成功率を誇っていました
    石橋選手も大学レベルではトップパフォーマーですが、このプレー水準を世界を相手に見えせることができるかはかなり重要な要素になってくるかと思います

    また、今回の試合では見られなかったパス周りのプレイングに関しても代表では求められることになるかもしれません
    エディー・ジョーンズHCの掲げる「超速ラグビー」がどのようなプレースタイルを指しているのかはわからない部分が多いですが、単にポッドといったポジションの固定化が著しい戦略よりも、より自由に素早い移動とボール回しが求められるようになる可能性もあり、「味方の動きを見てポジショニングする」の一段階上、「味方の動きを読んでボールを大きく動かす」ようなスタイルも求められていくかもしれませんね

    青木恵斗:帝京3年/FL/桐蔭学園

    2023-24シーズンを振り返って

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    青木選手は桐蔭学園時代から遺憾無くその実力を見せつけてきた、世代最強格の選手といって差し支えないでしょう
    コロナで一定期間大学レベルでの代表活動がなかったために世界を相手取るような経験こそ少ないものの、コンタクトシーンでの強さは外国出身選手と比べても遜色ない水準にあると思います

    そんな青木選手の強さは

    • 留学生にも負けない圧倒的な体の強さ・推進力

    の一点特化型と言うことができるでしょう
    もちろん他の水準も高いものがありますが、この「体の強さ」と言う点において大学レベルでは他の追随を許していないと思います

    主要な立ち位置を9シェイプとしながらもエッジに立つこともあり、どのエリアでも強いコンタクトを見せています
    積極的にボールを受けにいくというような感じではないのでボールタッチは少なめですが、一度ボールを持つとパスに意識を割かずにコンタクトができる分推進力が強く、外国出身選手顔負けの相手を弾くようなコンタクトをするのが特徴です

    ダブルタックルを受けた時は抑え込まれるシーンもありますが、基本的に1対1では無類の強さを誇り、毎回のコンタクトで相手を必ず1人は弾き飛ばすほどの強さをどの試合でも発揮しています
    強さに合わせて走力もあるのでラインブレイクをした時はそこからグッと前に出ることもでき、キック処理にも回るために走行距離もかなり長い方では無いかと思います

    一方プレーにムラっ気があるようなイメージもあり、全体的に見るとワークレートに極端な良さが無い試合も散見されています
    個人的な印象としては「試合が競れば競るほどギアが上がる」ようなプレイヤーであるようにも見えていて、相手の強さに合わせてリミッターが外れるような印象も受けています

    Road to 2027:代表へのチャレンジに向けて

    こちらに関してもまだまだ明らかになってはいない要素が多いとは思いますが、青木選手の走力的なワークレートの高さはポジティブに働く要素であるように思っています
    ただ、ムラっ気のような「一貫して高水準のパフォーマンスをキープできない」と言う部分に関してはさらなる向上は見込めるとも感じました

    どのような選手と比較するのかといったところも難しいものがありますが、手元にあるスピアーズのピーター・ラピース・ラブスカフニ選手(2019・2023年日本代表)のデータを参照すると、今の水準よりもさらにディフェンス面でのワークレートを上げていくことが求められてくるように思います
    青木選手のタックル数が1試合平均で7回強なのに対してラブスカフニ選手は20回以上となっており、タックル数という点に関して言えばまだまだパフォーマンスを上げる余地はあるということができるかと思います

    また、他の選手に比べると試合の流れや動きに対する読みがうまく磨かれていない印象も感じました
    帝京の選手たちの一人当たりのワークレートが高いこともあって、その場の動きに対応することができれば致命傷にはならないような試合展開になることが多く、落ち着いたプレイングを見せていますが「勘が鋭い選手」に比べるとうまくギャップや穴を埋めきれていないようにも見えました
    むしろ、このあたりの読みとワークレートが上がると完璧に近い仕上がりになるような気もします

    土永旭:京都産業2年/SH/光泉カトリック

    2023-24シーズンを振り返って

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    土永選手に関していうと誠に申し訳ないのですが自分の認識が甘く、「U20に選出された」以上の印象を持っていなかった選手でした
    しっかりと試合を振り返ってみていく中でその良さをじわじわと実感することができたように思っています

    強みをリストアップすると、

    • 安定したボール捌き
    • 距離と高さの出るキックコントロール
    • 攻守のトランジションやその場の状況に応じた動きの切り替え

    といったことが挙げられるでしょう

    プレイングスタイルとしては落ち着いたゲーム・テンポメイクをしながら共産の強烈なFW陣をうまくコントロールしていたような印象で、特筆すべきはラックやモールからのボックスキックを含むキックインプレーでのタイミングと精度にあるかと思います
    ジェネラルプレーの中に入ってくるようなロングキックは少なかったものの50−22を狙うようなキックも競り合いからの再獲得を狙うようなキックも蹴ることができ、長短とタイミングの調整がピカイチだったように見えました

    味方の動きに対する反応もよく、ラインブレイクに素早く反応したり味方の動きに合わせてラックでボールを持ってから動きを切り替えてパスまでのタイミングを測ったりと、動きとしての柔軟性があるように感じます
    アタックのテンポを極端に早めることがないため一つ一つのラックが安定してパスもスムーズに動くため、結果的にアタック全体のフローが滑らかなアタックとなっていたようにも思います

    ディフェンス時はSHの基本となるFWの選手の移動の指示を出したりといったタスクをこなしながら、大まかにはラック裏→ラインの裏といった流れで移動しながらDFで構造的に生じるギャップを抑えるような動きをしていました
    一方でタックル精度の部分で改善の余地は見られ、他のSHの選手と比べても若干低めの成功率にはなっていました

    Road to 2027:代表へのチャレンジに向けて

    SHで日本代表というとサンゴリアスの流選手と齊藤選手が二大巨頭となっている印象もあり、それ以外のSHの選手が国際試合でゲームタイムを伸ばすことができていないのが現状としてあると思います
    流選手が代表からの引退を表明したこともあり椅子は空いている状況下とは思いますが、TOP4のチームがキャンプに呼ばれていないこともあって「エディー・ジョーンズがどのような選手を本当に求めているのか」といったところは不透明です

    数値的な要素で言うとパス回数は一般的回数となっていて、それ以外の要素に関しても外れ値のような「極端にこのプレーが多い」もしくは「ミスが多い」といった要素はそこまでないように感じています
    そのため、実際に日本代表として選ばれるために必要な要素としては「テンポ」と「位置取り」といったところになってくるのではないかと個人的には予想しています

    共産のラグビーはゲームメイカーがそこまで多くないこともあって全体的なペースがゆっくりめで、ガンガンBKがアタックラインを動かすようなラグビーではなかったと記憶しています
    土永選手の本来のアタックテンポをなかなか試合から見てとることはできていないのですが、エディー・ジョーンズHCが掲げているのは「超速ラグビー」であり、おそらくは土永選手が今アタックを動かしているテンポ以上のペースになるのではないかと勝手に予想しています

    位置取りに関してももう少しアジャストというか、求められている距離感・位置関係を身につけていく必要性も感じています
    土永選手は利き足が左ということもあってかキック処理に回る動きも多く、普通のSHに比べると少しDF時のポジショニングの重心は後ろになっているように感じました
    うまくフロントラインとバックフィールドの間の空間を埋めているとは思いますが、この辺りの距離感に関してはエディー・ジョーンズHCも違う感覚を持っているかもしれません

    伊藤耕太郎:明治4年/SO/國學院栃木

    2023-24シーズンを振り返って

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    惜しくも準優勝という結果になりましたが明治はここ数年の中でも一段階レベルの上がったラグビーを見せており、伊藤選手は確実にそのアタックスタイルの中で中核にいたように思います
    廣瀬選手が縦にアタックのバリエーションを増やしていたとすれば、伊藤選手は横にアタックの広がりをもたらしていたと思います

    強みとしては

    • ボールの動かし方のグラデーション
    • 自分でボールを持ち込んで前に出られる強さ
    • 攻撃的な姿勢

    といったものが見られました

    伊藤選手は明治のSOという役割に恥じないゲームコントロールを見せており、9シェイプでもらう時はポッドの近く、直接SHからもらうときは少し外に立っていたりとポジショニングの段階でアタックを規定するような動きを見せており、パスの深さや長短も自由にコントロールすることができるのでアタックに階層性と幅感でバリエーションが生まれていました

    昨シーズンまではしっかりと見ることができていなかったのですが体の強さも兼ね備えており、キャリーで相手を弾いたり振り切ったりと明治らしい「前に出る姿勢」を遺憾無く発揮していたように思います
    キャリーの脅威があるので相手ディフェンスとしても伊藤選手を選択肢から切ることができず、伊藤選手の相手に接近してパスを放るスキルも相まって相手が崩されるシーンも何度も見られていました

    DFでも攻撃的な姿勢を見せることが多い伊藤選手ですがそれが裏目に出ることもあり、少し外寄りのポジショニングをしている一方で安易に前につっかけてしまうこともあり、上手い相手にはタックルを含めたディフェンスの動きをすかされてしまうようなシーンも見られています
    外方向へ動く相手への対応もずれが生まれてしまうことが多く、比較的裏を取られるシーンが多いようにも感じました

    Road to 2027:代表へのチャレンジに向けて

    これまでの経歴的には抜擢にも近いセレクションと見ることもできるかと思いますが、今シーズンのパフォーマンスをきちんと見ている人からすると当然のセレクションであるようにも思います
    最近の日本ラグビー界に求められているであろう「スキルの高い和製SO」ですし、近年SOを担うことが多かったワイルドナイツの松田選手やスティーラーズの李選手とも違うようなプレースタイルの選手ではないでしょうか

    数値的に見るとすればアタック面ではいかに新生日本代表のゲームモデルに適応できるかといったところが鍵になってくるでしょう
    「超速ラグビー」が掲げられる新生日本代表としておそらくSH・SOのハーフバックスに求められているテンポの水準は高いことが予想されますが、明治も大学レベルでは比較的早いテンポでボールを動かす傾向にあり、店舗としての差異はそこまで感じないことがイメージできるかと思います

    一方ディフェンスの水準に関しては向上・改善が求められることも想定され、数値的に見えるタックル精度の部分もそうですし、何よりもディフェンス時のポジショニングの感覚は大学時代と変わってくるのではないかと思っています
    中央エリアにはCTBの選手が配置されることも多い近代ラグビーではSOの選手は裏かエッジ寄りにポジショニングすることが多いかと思いますが、伊藤選手はディフェンス時に前につっかける傾向もありますし、スピードとしても世界基準で見るともう少し伸ばしていきたいところでもあると思うので、ディフェンス勘の調整は必要になってくるかもしれません

    また、明治は10・12・15にゲームコントローラーがいて、どの選手もキックに長けているためにバックフィールドに立つ選手がそこまで固定化されていないという実態があります
    代表レベルで求められるポジショニングは想像しかできませんが、近年の傾向も考えるとハイボール処理というのはSOの選手にもある程度求められてくることが想像できます

    大学レベルではそもそもハイボールを戦術的優先度を高く蹴ってくるチームは限られてきますが、イングランドをはじめ世界基準では何度も蹴り込んでくることは想像に難くありません
    そのため、伊藤選手はこれまで経験したことがないレベル感でのキック処理が求められる可能性もあることでしょう

    秋濱悠太:明治3年/CTB/桐蔭学園

    2023-24シーズンを振り返って

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    秋濱選手は土永選手と同じく、「実力は知っていたけどそこまで注目していなかった選手」の1人となります
    廣瀬選手や平選手といった体の強い選手の傍で堅実・愚直に自分に求められている仕事を全うし続けることのできる選手であると思っています

    12番の廣瀬選手がゲームメイカーの役割を果たすことも多い明治のラグビーにおいてはキャリアーとしての役割というよりもダミーやラック参加といった「少し地味なプレー」に関わることが多く、分析した3試合通じて見てもボールタッチの回数はそこまで多くないことが見て取れるかと思います
    動き的にも大きく位置どりやポジションを変えるようなものが少なく、移動距離的なワークレートではもっと高水準の選手が他にいるかもしれないとは思っています

    一方でプレー一つ一つを注視するとその精度と安定感に気づくことができ、例えばディフェンスを挙げると、そのポジショニングゆえにエラーが起きにくいという状況はあったとしても3試合では一つのタックルミスも起こしていません
    タックル自体の質も高く相手の足をしっかりと殺すように腕を締め、じわじわと前に出られるようなことも少なかったように思います

    アタック面でもラック参加はきちんとしていますし、サポートコースを含めたランコースのチョイスもよく、上手い具合にトライを取るシーンも見られています
    エッジでも中央エリアでも周りとの連携でラインブレイクを起こすこともできるのでアタックにモーメンタムを生み出すことができ、ダミーとして走り込んだりラック参加したりと勤勉さは見せていると思います

    Road to 2027:代表へのチャレンジに向けて

    しかし、いくらまだ新生日本代表の形が見えてきていない状況とはいえ、世界を基準に考えるとワークレートや精度を研ぎ澄ませる必要は出てくるのではないかと思っています

    秋濱選手は明治の第一線を張るだけあってどのプレーも高水準ですが、ポジショニングの影響もあってプレーへ関与する回数が少なく、プレー精度の基準になるプレイングの母数が少ない形となっています
    大学レベルではFWへの依存度も高く明治のアタックスタイルもあってBKのプレー参加が減る傾向にはあると思いますが、もう少しアタックにもディフェンスにも関与していきたいところではないかと思っています

    2023年のメンバーからどれくらいメンバーが変わってくるかはわかりませんが、おそらく現段階で秋濱選手がメンバー入りを争うことになるのはワイルドナイツのライリー選手やヴェルブリッツのフィフィタ選手ではないかと思っています
    彼らと比べてしまうと秋濱選手のワークレートは現段階では若干低い水準にあると見ていて、一つ一つのプレーから生み出すことのできるモーメンタムのレベルも最低限彼らの水準まで上げていきたいところでしょう

    高本とむ:帝京4年/WTB/東福岡

    2023−24シーズンを振り返って

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    後出しにはなりますが、高本選手は「いつか日本代表に選ばれる(ことになってほしい)」と個人的に思っていた選手の1人で、他の追随を許さない決定力とプレーの安定感を特徴とする帝京の両翼の1人です
    逆サイドの小村選手と並んで帝京のアタックにスピード感をもたらしていました

    高本選手の強みを挙げるなら

    • トライを取り切ることができる決定力
    • チャンスを生かしチャンスを作ることができる走力

    といったものが考えられるでしょうか

    大学レベルのWTBの中では比較的長身に入る恵まれた体格から見せるストライドの長いランニングは、スピードもさることながら微妙なコースどりの変化で相手を一気に引き離すことができ、少しアングルを変えたところからも一気にスピードを上げることもできる加速力も強みかと思います

    スピードを落とさずランニングフォームからの一連の動きでキックできるのもいいですね
    ハイパントを見る機会はありませんでしたが、大外でグッと前に出て相手を前に引き出してから裏に蹴り込み、再獲得ないしはプレッシャーをかけるシーンは何度か見られていました
    キックが右利きということで他の選手と役割が被ることもあるかと思いますが、長い距離も蹴ることができるのは間違いなくいい方向に働くでしょう

    アタック時のポジショニングとしてはレーンを大きく外れることなくエッジに位置取っており、あまりオプションとしてのポジショニングはしていなかったように見えました
    常に外で勝負する姿勢を見せているというか、外勝負に絶対的な自信と信頼がある感じですね

    ディフェンス時も同じようなポジショニングですがWTBの位置どりとしては若干前に出ているような印象で、裏を完全に井上選手や山口選手といったキックを得意とする選手を後ろに置いてフロントラインをほぼ13人にするといった形が帝京の戦略的なチョイスだったように思います
    コンタクトも強くタックルの狙いもいいため、ディフェンスはかなり手堅く動いていたように見えました

    Road to 2027:代表へのチャレンジに向けて

    WTBの選手も2023年から大きく変わってきそうな雰囲気があり、TOP4を除いたチームからのセレクションでは代表経験の多い選手はいなくなっています
    近年はアイランダーを中心とした外国出身選手で固められることも多かったですが、世代交代の時期も来ているのかもしれません

    超速ラグビーを標榜するのであれば当然バックスリーの選手にも決定力と走力は求められてくるかと思います
    高本選手は大学レベルでその二つにおいて高い水準を見せてきましたが、世界を舞台にどれくらいその実力を発揮できるかは未知数ということもあり、成長と実力発揮が楽しみになりますね

    数値目標からは離れますが、世界的に見てもWTBの選手はエッジに立つことも多いことからハイボールをはじめとするキック処理のスタンダードも高めていく必要があるように思います
    帝京ではうまくキャリーしていれば相手を圧倒することもできていたためにキック処理からのボールの動かし方の判断は難しくなかったと思いますが、より高いレベルになればなるほど「エリア取り」と「ボールキャリー」、「味方へのパス」などを含めた様々な選択肢が湧いてくることになります
    その選択肢の中からより良い選択肢を選ぶこともバックスリーの選手には求められていくでしょう

    矢崎由高:早稲田1年/FB/桐蔭学園

    2023−24シーズンを振り返って

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    今年が早稲田に入学して1年目の選手ですが、試合で見せたパフォーマンスは下級生とは思えないほど高水準にあるプレーだったように思います
    桐蔭学園時代から世代でも最高水準、上のカテゴリーに入れても遜色ないレベルのパフォーマンスでしたが、早稲田入学後もメキメキと実力をつけてさらにレベルアップしたプレーを見せていました

    矢崎選手の特徴は

    • 国内でも最高レベルのランニングセンス

    といったところに特化しているように思います

    もちろん全体的なアタックセンスは高水準なのですが、特にその中でもランニングに関わるスキル・嗅覚といったところで大学レベルを飛び越えた水準のプレーを見せており、どんなチームを相手にしてもトライを取り切ることのできる決定力を持っています
    トライの取り方もゴール前の混戦から中盤での攻防までどのようなシチュエーションからでも可能性を見出すことができ、間合いの取り方のうまさとステップのキレから独走まで持っていくことができます

    ポジショニング一つをとっても様々なレーン上に立つことがあり、アタックの様々な段階で選択肢として有効な位置どりをしています
    京産との試合で見せた中央をうまく抜き切った最初のトライを見てもわかるように、外で相手を置き去りにできるスピードを中央エリアでも発揮できるようなポジショニングも見せていました

    そのためかボールタッチの回数も多く、ラインアウトからの1stフェイズでポッドのサポートやパサーに入ったりと、アタック面でのセンスや視野もあることがわかります
    ボールタッチのほとんどのアウトカムはキャリーとなっていますが、ボールをもらう前・もらう瞬間・もらった後の動きも上手いために一つのプレーでアタックの流れを変えることができるのも一つの強みですね

    一方ディフェンス面で見ると重心は少し後ろに残っており、決定的な必要性がなければ内側の選手の移動・タックルを引き出すような動きを見せています
    ディフェンス時も幅広い位置どりをしていますが、タックルの多くが中央エリアで起きていることから、外側のエリアでの積極的なディフェンスは現状では無いということもできるかもしれません

    Road to 2027:代表へのチャレンジに向けて

    矢崎選手がポジション争いをすることになるWTBやFBというポジションで現在キャンプに召集されている選手の範囲では、プレースタイルや実力に差異こそあれ「経験値」という点においてはどの選手も比較的イーブンな状態であると踏んでいます
    あえていうのであればWTB登録ですがヴェルブリッツの高橋選手などが現時点では経験値で一歩進んでいるといったところでしょうか

    そこで大学レベルとトップレベルでバックスリーの選手に求められる能力や動きとった部分で何が違うかを考えた時、真っ先に思いつく要素としては「キック・キック対応」といったところかと思います
    大学レベルではある程度のレベル以上の学校ではキック距離に大きな差はなく、ハイボールを積極的に使うチームも限定的ということもあってキックが戦略的に果たす役割はそう多くはないというのが現状かと思います

    早稲田もエリア獲得のキックは多く蹴り込んでいましたが戦略面での比率は小さめで、競り合うようなキック戦略はそこまでなかったように見ています
    さらに早稲田には久富選手や野中選手、伊藤選手といったSO役となる選手も多いために矢崎選手がバックフィールドで対応するシーンも少なく、特にハイボールの対応はそう多くなかったのではないでしょうか

    ランニングスキルに関しては今の段階でも十分に勝負できうる水準には達していると思いますが、海外の選手の動きやスピード感といった部分に関して見るとU20の大会でもかなり苦労していたように見えます
    攻守ともにポジショニング勘の調整は必要になってくると思うので、今後のコーチングと成長は注視していきたいところですね

    まとめ

    エディージャパンになって初めてのキャンプということもあって、セレクションに関しては正直挑戦的な要素があると見ています
    インターナショナルの経験値はかなり低く、日本代表の試合運びも見えていない現状では批評もかなり難しくなっています

    ただ、そんな中で大学生にある程度焦点が当てられたのは大きなことだと思っていて、今後の大学ラグビーの発展具合によってはより多くの大学生がセレクションの舞台に上がることも可能だと思います
    まだまだ未知数の部分もありますが、期待してみていきたいですね

    今回は以上になります
    それではまた!

  • 【リーグワンコラム】2023-24シーズン:スピアーズ船橋・東京ベイの新加入選手を数値的に比較してみた

    【リーグワンコラム】2023-24シーズン:スピアーズ船橋・東京ベイの新加入選手を数値的に比較してみた

    みなさんこんにちは
    大学ラグビーシーズンお疲れ様でした

    順調にリーグワンの各チームから新加入する大学生が発表されてきています

    UNIVERSISとしてはこの辺りの話題を外すわけにはいかないだろうと、気持ち新たに数値的な分析を始めた次第です

    第1回ということで、前シーズンの覇者でもあるスピアーズ船橋・東京ベイの新加入選手についてスタッツをつけてみたので、よかったらご覧ください

    分析に伴う諸々の定義は以下の通りです

    • 大学生の分析は直近の三試合を対象とし、リーグワン側の選手に関しては「比較をするポジションとして出場している直近の二試合」を対象とする
    • JSPORTSオンデマンドで配信されている映像を分析対象とし、当該試合が配信期限を過ぎている場合はそれに応じて対象試合を減ずるものとする
    • 大学生と比較するリーグワン側の選手はUNIVERSISの独断と偏見で決めるものとし、意見・要望等は必要に応じて受け入れるものとする

    正確にいうと「この選手はこの選手とポジション争いしてほしいなぁ」という個人の願望が反映されているので、「そんなわけないでしょ」という意見もごもっともな場合があります
    そういう場合はぜひコメント等残していってください

    ※Adj. Numbers:大学生の三試合のスタッツの平均値について、大学生側の出場時間とリーグワン側の選手の出場時間とを比べて数値を補正したもの

    それでは順番に見ていきましょう

    目次

    1. 為房慶次朗 – PR3 (明治)
    2. Player Analysis – 為房慶次朗
    3. Player Comparison – 松波昭哉
    4. Challenge to LeagueONE
    5. イジー・ソード – PR3 (拓殖)
    6. Player Analysis – イジー・ソード
    7. Player Comparison – オペティ・ヘル
    8. Challenge to LeagueONE
    9. 江良颯 – HO (帝京)
    10. Player Analysis – 江良颯

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    為房慶次朗 – PR3 (明治)

    Player Analysis – 為房慶次朗

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    為房選手は明治の右PRで、試合全体の9割近い時間をプレーする堅実な選手であるということができるかと思います
    明治の戦略上では9シェイプの特に外側に入ることが比較的多い選手で、キャリーをする回数自体はそこまで多くないですね
    9シェイプをダミーとして裏で動かすプレーも多かったので、セットはしても裏を通されることが多かったようにも見えました

    むしろ、ブレイクダウンへのサポート回数が多く、関連したプレーの中では最も多い数値を示していました
    バックローの選手の方が若干よりが早いので為房選手のよりで勝敗が分かれるようなブレイクダウンはそこまで多くなかったかと思いますが、堅実なプレーを見せていたように思います

    キャリー自体は大学レベルでは強さを誇っており、大きくあおられるようなシーンはほとんど見られませんでした
    ビッグゲインに至らないまでも相手を外して前に出るシーンはいくつも見られており、セットピース以外にも強さを見せていました
    一方ボールに関わらない部分では少し戻りが遅いような様子もあり、「明治だからこそのワークレートだった」という要素もあるかもしれません

    Player Comparison – 松波昭哉

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    スピアーズ所属の松波選手も為房選手と似たようなプレースタイルを求められるような選手であるように思います
    レベルが上がったことに伴うプレータイムの減少こそあるものの、相対的なワークレートは高い水準を求められていますね

    松波選手は9シェイプを主戦場としており、傾向としては中央よりも両サイドのサポートとして入ることが多かったように見えました
    スピアーズはLOやバックローに強いキャリアーが揃っており、「ボールを受ける選手」と「サポートに入る選手」の役割分担は比較的明確に決められているように思います
    より強い選手に前に出る役割を任せる感じですね

    ディフェンス面ではラック側に立っているように見えます
    エリアにもよりますがリーグワンではピック&ゴーを積極的に採用するチームはそこまで多くないと思うので、より動きの少ない状況でキャリアーが全身を狙ってくるエリアにPRの選手が配置されているイメージでしょうか

    Challenge to LeagueONE

    アタックフローに直接関わる部分となるキャリーやパスの部分では為房選手の方が単純計算では多いプレー回数を示しており、一方でディフェンスに関わる水準の部分では松波選手がプロとしての水準を見せているように思います

    明治のラグビーは「前へ」が押し出されるFWとBKの強さを活かしたコンタクトを厭わないアタックスタイル、体を張って相手を止め切るディフェンスを兼ね備えたまさに「ハイブリッド重戦車」と呼ぶに相応しいものであると思います

    一方スピアーズは体が強く前に出ることができるFWと大きくボールを動かすことのできるBK陣が揃っており、どちらかというとFWのボールタッチが多くなるようなアタックをしています
    ディフェンスに関しては相手にもよりますが、どの選手も堅実に体を張る印象です

    そのため求められる役割は大きくは変わらないものの、スピアーズでプレーするにあたって為房選手はより一層サポートに徹したプレーが求められるようになってくるのではないかと踏んでいます
    明治に比べると外にボールを動かす回数も増えてくると思うので、グラウンドを大きく動いて主体的にアタックシェイプの構築をする必要性も出てきますし、運動量全体も増えてくることでしょう

    イジー・ソード – PR3 (拓殖)

    Player Analysis – イジー・ソード

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    ソード選手は恵まれた体格とチームのアタック傾向からボールキャリーを多く求められる動きをしていました
    キャリーを求められるためそもそものボールタッチが多く、最大で一試合20回近くのボールレシーブをすることもありました
    アタックに関連したプレーの中ではキャリーが比率的に最も多くなっており、パスやラック参加は二の次といったような印象です

    プレータイムもPRとしてはかなり多い部類に入っており、分析対象とした三試合ではフル出場を求められていました
    悪い言い方になってしまいますがそれだけチームの中では依存されていたということでもあり、リーグワンに行けば用いられ方は少し変わってくるような気もしています

    アタックの立ち位置は9シェイプの中央が最も多く、ポッドのサイドにつくようなシーンはほとんど見られなかったように思っています
    基本的にはキャリアーとしてボールを受けることが求められているような感じですね

    一応はボールを受けてからスイベルパスで裏に下げるようなプレーをすることもありますが、場を動かすほどのうまさはなかったようにも見えました
    ソード選手自身が優れたキャリアーなので、上手く使えれば相手を釘付けにすることもできたかとは思いますが、正直拓殖はその辺りをうまく活用できていなかったようにも思います

    ワークレートや運動量とも言われるような部分に関しては、個人的には「悪くはないがチーム事情もあって効果的な働きはできていなかった」ということができるかと感じています
    数値的に見ると比較的動いているように見えますが、試合を総じてみると全体的に動いているエリアは狭めで、若干セットまでが遅かったようにも見えました

    Player Comparison – オペティ・ヘル

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    ヘル選手はスピアーズの選手の中でも前に出る力が随一の選手であり、ソード選手とも近い体格をしていたので選出しました
    ヘル選手自身もまだ若手なのでそう易々とポジションを明け渡すことも少ないかとは思いますが、プレースタイル的にコンタクトが避けられないために怪我で長期離脱する危険性もあり(2024年1月現在離脱中)、同じようなプレイングができる選手は求められていると思います

    ヘル選手の売りは何よりもキャリーをした時のインパクトにあると思います
    ボールタッチの回数こそそこまで多くはないものの、キャリー回数に対するタックルブレイクの回数が比類のない多さとなっています
    毎回のキャリーで相手を弾き飛ばしているくらいの勢いですね
    弾いた後の走力もあるので弾いただけで終わることが少なく、コンタクト時点から大きく前に出ることができるのも特徴です

    基本的には9シェイプに入ることが多い選手ではありますが、優れたSOがいるスピアーズでは10シェイプに入ることもあり、コンタクトで勝負するエリアを動かしている印象です
    大まかな位置としてはエッジで起きたラックからは2ポッド目に立つことが多く、より中央に近いエリアでのコンタクトが求められているイメージです
    人数の少ないラインアウトではリフターではなくアタックラインに参加していることから見ても、ヘル選手がどれほどキャリアーとして重要視されているかがわかります

    ディフェンス面では守るエリアの影響もあるとは思いますがタックル成功率も高く、体の強さを活かして相手を大きく押し戻すことができています
    走力もあるのでキックチェイスではフロントラインに立っていますし、総合的なワークレートも高そうな印象です

    Challenge to LeagueONE

    ボールレシーブの回数単体で見るとソード選手の方が多く、チームのアタックに対する寄与率は高いということができるかと思います
    チーム事情からか出場時間も長いですし、一試合通じてプレーに参加し続けることができる能力はすでに有しているということができるかもしれません

    むしろソード選手に求められるようになるものとしては単純なワークレートだけではなく、参加したプレーに対するより優れた効果量はないかと思っています
    つまり、「同じワークレートで得られる貢献度を上げる」といったところになるでしょうか
    現時点ではソード選手はワークレートは高くてもチームへの好影響という面ではインパクトを与え切ることができていないような印象があるので、この辺りを向上させていく必要がありありそうです

    もちろん今後のスピアーズがどのような組み立てをしていくかといったところによって変わってくるかと思いますが、セットピースでの貢献はもとより、アタック・ディフェンス面での貢献度を上げることでチームのセレクションに引っかかってくるかと思うので、その辺りを期待していきたいですね

    江良颯 – HO (帝京)

    Player Analysis – 江良颯

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    江良選手は機動力とパンチを兼ね備えた、帝京を優勝へと導いたキャプテンでもあります
    体の強さやブレイクダウンでの強さもありますし、走力やパススキルといった攻守両方にわたる器用さも持っている、大学有数のHOであると考えています

    ボールタッチの回数としては中程度、パスよりはキャリーの方が多いといった使われ方をしていましたね
    アタック参加には柔軟性があって9シェイプにも10シェイプに入ることがありますし、9シェイプに入る時にはスイベルパスを挟んだりとうまさを垣間見ることができます
    セットピースの位置によってはエッジに立っていることもあって、さまざまなアタックシェイプに対応することのできる懐の深さがあると思います

    ディフェンス面でも体の強さを活かしたタックルをするシーンもありますが、少しタックルミスが目立ったシーンもあり、特に細かいステップに対応するのには苦労していたような印象です
    全体的に姿勢が前がかりになっているような様子もあって飛び込みがちになっており、それによってタックルを外してしまう場面も散見されました

    Player Comparison – デイン・コールズ

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    コールズ選手はオールブラックスで長年戦ってきた選手であり、ベテランではありますが走力を生かしてトライも量産してきた選手ですね
    エッジエリアに立つことも多く、ボールを受けてから独走することもできるセットピースでの活躍にとどまらない万能型な選手であると感じています

    本来たスピアーズの(おそらく)正HOは南アフリカ代表のマルコム・マークス選手なのではないかと思っているのですが、マークス選手が怪我に伴う手術をするために代わりに登録されたのがコールズ選手という形ですね
    プレースタイルとしては少し異なっており、セットピースを安定させることは当然のこと、マークス選手はブレイクダウンの攻防に、コールズ選手はジェネラルプレーの安定感に強みがあると思っています

    プレー参加数的にはそこまで多くはないのですが、ボールに関わらない部分でのワークレートが高く、グラウンドを大きく動くことを厭わない動きを見せていました
    いわゆる「オフザボール」の動きでもあり、数値には表れにくい良さであると思っています

    また、試合を見ていて特に気になったのはコールズ選手の「広い視野」です
    ディフェンス時により一層発揮されていた良さだと思うのですが、普通のHOの選手に比べると明らかに「首を振る回数」が多かったように見えました
    それに合わせて積極的に声や身振り手振りでコミュニケーションをとりながら動いており、「ここは固めたい」と思うような場所をしっかりと埋めてくれる選手でしたね

    タックル精度が高いのも高評価ポイントですね
    ディフェンス時に主に立っているポジションが中央寄りであるということもあってミスも起きにくいとは思いますが、相手を仰向けに倒すようなシーンこそ少ないものの堅実なディフェンスを見せており、相手が嫌なところをきっちりと守ってくれていたように思います

    Challenge to LeagueONE

    同ポジションということもあってコールズ選手をチョイスしましたが、身長的にはコールズ選手が14cmほど高いということもあり、一概に同じものが求められるというわけではないと思っています
    特にセットピースの部分では江良選手の170cmという小柄な体格はどのように転ぶかわかりませんしね

    数値的にはボールを動かすという点においては十分なパフォーマンスを発揮することができているとは思いますが、ボールに触れない位置での動き方の精度というものは求められてくるのではないかと思っています
    コールズ選手に限られた話ではありませんが、特にコールズ選手と同じ水準を求めるのであればFW的なイメージ以上の広い視野は必要になってくるかと思います

    ディフェンス面で言うと、もう一段階タックルの質は上げていきたいところではないかと思います
    相手チームにもよりますが、リーグワンではHOが守ることの多いエリアでもWTBの選手がムーブで仕掛けてくるようなシーンもあり、質的に優位性を取られた状態でいかに相手を確実に倒すかといったスキルも必要になってきそうですね

    梁川賢吉 – FL (筑波)

    Player Analysis – 梁川賢吉

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    梁川選手は堅実に体を張る筑波のFWを体現しているような選手で、走行距離も長く移動量的には高いワークレートを示している選手であると思っています
    プレーへの参加回数はそこまで高くはないですが、アタック・ディフェンスの両面で穴を埋めるような動きをしていました

    ボールタッチは平均5回ほどとあまりボールに触れる機会の多い選手ではありませんが、倍以上のラック参加数を示しており、アタックへの貢献度は比較的高いものがあるかと思います
    攻撃的なムーブはしませんがラックをきちんと安定させることができ、全体的にチームを落ち着けるような働きをしていたように見えました

    そのような傾向もあってか全体的にサポート寄りのプレー・性能をしてるので、味方としっかりコミュニケーションを取ったりとプレーの中心選手になっていましたね
    ディフェンス時もしっかり動いて穴を埋め、できたラックに応じてしっかりとフォールディング=ラックを挟んで逆サイドへ移動したりもしていました

    一方で攻撃面に関してはチームに勢いを与えるようなプレーはそこまで見られず、キャリーをしてもグッと前に出るというよりかはラックを安定させる方に注力しているような印象を受けました
    近年のバックローに求められているインパクトという点では他校の同ポジションの選手の後手に回っている感じですね

    ただ、ラインアウトに関しては高いスキルがあり、リフトやジャンプの良さもさることながら相手ボールに対する読みからスティールも見せていたりと、挑戦的な姿勢もしっかりと見せていました

    Player Comparison – ピーター・ラピース・ラブスカフニ

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    ラブスカフニ選手は日本代表のキャップを有する経験豊かなFLで、派手なプレーではなく堅実なプレーで体を張るタイプの選手ですね
    プレー一つとってもスキルと体の強さの水準が高く、チームのアタック・ディフェンスに安定感をもたらすことができます
    (個人的には2019W杯ロシア戦でのリップから独走トライした時のラブスカフニ選手が大好きです)

    梁川選手と似たような体格であるラブスカフニ選手ですが、チームにより高身長の選手が揃っていることもあってかラインアウトではメインジャンパーではなさそうな印象があり、人数が少ないライナウトではアタックラインに参加することが多いイメージです

    アタック面では動きが大きくなることの多い10シェイプに入ることが多く、ボールを積極的にもらいにいくというよりはサポートプレーに徹しているような感じですね
    ラックへの参加回数がその堅実さを示しています

    特筆すべきはディンフェンス面での動きで、タックル成功率もさることながら凄さは「総タックル数」にあります
    調査した二試合ではミスタックルがなく結果的に100%となったタックル成功率の一方で、驚くべきは一試合平均22回以上のタックル数です
    ディフェンスでのポジショニングする位置に相手が多く仕掛けてくるという背景を鑑みても驚きの数字です
    しっかりと穴を押さえてくれているというところが見て取れますね

    Challenge to LeagueONE

    走行距離や絡んだプレーの数から見ても梁川選手の運動量も悪くはないのですが「ここを伸ばした方がいい」という点を挙げるとするならば、おそらくは「ディフェンス面での貢献」といったところになってくるかと思います

    ポジショニングの影響があるとはいえラブスカフニ選手は20回以上のタックルを毎試合見せており、一方の梁川選手は10回程度という数値に収まっています
    リーグワンではより高い強度でより多くのコンタクトシチュエーションが起きるということを鑑みると、より体を張ったプレイングが必要になってくることになりそうですね

    また、アタック面で前に出る意識というのも伸ばしていくと面白いかもしれません
    梁川選手のプレーは安定感がある一方でチームのモーメンタムへの貢献度は若干低く、少しテンポが変わってしまうシーンが見られています
    スピアーズのラグビーはバックファイブの選手の前に出る勢いによってモーメンタムを変えている印象もあるので、この辺りはより攻撃的になっても面白いかと思います

    溝渕元気 – SH (関西)

    Player Analysis – 溝渕元気

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    溝渕選手は良いアタック感を持ったSHで、パスをメインにチームに勢いをもたらし、ゲームを動かす選手です
    プレータイムも長くチームに大きな貢献をしていることでしょう
    どちらかというとパス特化型といった感じですかね

    関西大学のアタック傾向の影響もあって少しテンポは遅めなアタックを繰り広げてはいましたがパスの精度は高く、次のラックの読みもいいのでセットまではかなり早いペースでできていたと思います
    惜しむらくは関西のアタックテンポで、全体的に遅いのでそのセットの速さを活かしきれていなかったようにも見えました

    近年のSHとしては珍しくそこまでボックスキックを蹴らないタイプのSHで、パスでボールを捌くことが多かったですね
    ボックスキックの質自体は改善の余地もありそうな雰囲気で、15mほどの距離で蹴ってはいますが対空時間が短く、結果的に効果的なキックにはなりきれていないような感じでした

    ディフェンスに関しては一般的な水準といったところでしょうか
    相手によってはミスが嵩むところが気になりますね
    基本的にはラックの後方に立っているので最前線に立つことはそこまで多くはありませんが、バッキングアップをすることが多いポジションなので1対1になるシーンも多くなっていたように思います

    Player Comparison – 藤原忍

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    スピアーズの攻撃を支える攻撃的なSHで、ボールタッチの多さとボールをテンポよく動かす良さを兼ね備えています
    怪我で薄くなっているスピアーズのSH層を支えているという点では重要度もかなり高そうですね

    パス回数は一試合で約50回程度となっており、プレータイムも長いのゲームへの貢献度は高いかと思います
    SOにゲームをコントロールできる選手が揃ってはいますが、藤原選手本人のいい持ち出しなどでSHからゲームをコントロールすることもできるのではないかと思っています

    特徴的なのは良いサポートコースから生まれる効果的なキャリーで、回数こそ少ないものの1回のキャリーから盤面の流れを変えることができているように見ています
    キックの判断や距離感もいいので相手を大きく動かすこともできますし、自分から前に出ることもできる攻撃性が良さとしてあげられるかと思います

    Challenge to LeagueONE

    アタックに関連する要素の範囲では溝渕選手と藤原選手の間に大きな差異はないように感じています
    もしあるとしたらスピアーズのアタックに求められるレベル感でのテンポを溝渕選手が生み出すことができるかといった点でしょうか
    関西大学は若干アタックの動きが遅かったので、そのテンポに慣れるのには少し時間がかかるかもしれません

    目指すべき水準の部分で大きく変わりそうなところとしては「ディフェンス時の動き」といったところになってくるのではないかと思っています
    藤原選手は他選手への声掛けもさることながら、自分が適宜生まれたギャップに入って隙間を埋めるような動きをしており、タックルをするまでは至らなかったとしても「ギャップを作らないようにする動き」という点では大学レベルではあまり求められない動きをしていたように思います

    溝渕選手は関西大学時には基本的にラックの後方に立って味方を動かすことをメインの動きとしており、自分から積極的にエリアを埋めるというような動きはしていなかったように見えました
    そのためにフロントラインを押さえきれていないようなシーンもあったので、この辺りの発想の転換も求められてくるかもしれません

    廣瀬雄也 – CTB12 (明治)

    Player Analysis – 廣瀬雄也

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    廣瀬選手は明治のゲームコントロールを担う3人の選手達の1人で、CTBというポジションからゲームを動かしていくことのできる選手であると思います
    ラックからのパスの1stレシーバーになることもあり、大きくボールを動かすこともできる選手ですね

    キックが伸びること、FBに入っていた池戸選手がどちらかというとコンタクトに強みを持っていたこともあって少し後ろがかりのポジショニングをしており、アタックでは前、ディフェンスではバックフィールドを守るような形でポジショニングをしていました
    相手がキックをしてくるとわかった場合には早めに後ろに下がっていましたしね

    アタックでは少し外寄りの位置どりをしており、比較的2ndレシーバーに入ることが多そうな様子となっていました
    相手を振り切ることができるほどの走力は見る機会はありませんでしたが、キャリーそのものは安定していたのでどのエリアでのキャリーとなってもミスにはつながっていなかったように思います

    ディフェンス時は基本的に後ろを守っているのですが、追いかける動きを少し苦手にしているのかタックル成功率が下がっていましたね
    自分よりも前で相手を追いかけている味方選手と動きが被ってしまうことがあり、結果的にワンステップで2人とも振り切られてしまうような状況が何度か見られていました

    Player Comparison – 立川理道

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    日本代表経験もあるCTBとして体を張ることができる名選手ですね
    天理大学時代はSOを務めていたこともありゲームを俯瞰的に見ることができる稀有な12番だと思います
    近年の12番は少しフィジカルが求められる選手が増えてきていますしね

    バーナード・フォーリー選手の負傷に伴い現在はSOを務めていますが、廣瀬選手に求められるであろう選手像に照らし合わせて立川選手をピックアップしました

    アタック面では似たような要素を持つ両選手ですがディフェンス面では少し毛色が異なっていて、キックを主体に後方を守る廣瀬選手と体を張ってフロントラインを守る立川選手といった感じですね
    ディフェンスラインではFWとBKの境目のあたりという重要な位置どりをしていて、10シェイプで仕掛けてくるFWの選手に対してもタックルを仕掛けにいくような立ち位置をしています

    アタック面ではパスの多彩さが目立っていて、表裏の使い方も長短の投げ分けも素晴らしいものがありますね
    スピアーズの選手はタレントが揃っているのでどのエリアでも勝負することができるため、投げ分けをすることで相手の狙いを外すことができます
    そのため、視野の広さも合わせてどちらかというと「体を張れるSO」といった要素が強い選手ではないかと踏んでいます

    Challenge to LeagueONE

    数値的に見ると、ディフェンス面でのタックル数の差が目立っていますが、これは主にディフェンス時の立ち位置によるものではないかと思います
    廣瀬選手に比べると立川選手の方がより前線に立っているという要素があり、エリア的には中央であることから相手とのコンタクトを避けられない状況という形になっています

    一方廣瀬選手は後方を守っているため逆サイドでのラインブレイクなどへの対応が難しく、キック対応もあるので安易にコンタクトに参加できないという状況もあります
    スピアーズでどのようなポジションにチャレンジするかは分かりませんが、この辺りの転換はもしかするとあるかもしれませんね

    また、ゲームコントロールを担う選手の増減に伴って求められるボールタッチの回数やパス回数も変わってくるかもしれません
    現時点ではBK3の選手はアタック時はエッジに張ってボールを待っていることが多く、明治の池戸選手のように積極的にラックからボールをもらいにいくような雰囲気ではないので、廣瀬選手の相対的なボールタッチは増えていくのではないかと思っています

    山田響 – UTB (慶應義塾)

    Player Analysis – 山田響

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    山田選手は今シーズンの慶應義塾のラグビーの中心となった選手で、自分のプレーで大きく勢いをもたらすことのできる選手です
    コンタクト単体では後手に回ることが多いですが、走り込むコースやキックを交えたキャリーで場をいい意味で荒らすことができる存在であると見ています

    重要さを表すかのようにプレータイムも長く、4年間通じて様々なポジションにチャレンジしているのもポイントですね
    今シーズンはSOに注力していたものの、アタックセンスとしてはBK3に近いものがあったような気がします

    SOということもあってゲームを動かす役割を担っていたかと思うのですが、ボールを動かすことに関して言えば他チームの専門のSOの選手の方に一日の長があったように見ています
    キックもできますしパスも下手なわけではないですが、「ゲームのコントロール」に関しては苦労していた印象です

    その代わりランニングセンスやそれに伴うキックスキルに関しては優れたものがあり、特にシーズンの早稲田戦で見せてチップキックから再獲得してビッグゲイン・トライとなったシーンは素晴らしいの一言ですね
    ステップも上手いですし、走り切るスピードもあるのが強みですね

    一方でディフェンスは総じて見ると改善の余地はありそうです
    エリアによっては前に出てくる山田選手ですが、少し視線を切ってしまったり内側に立ちすぎたりして外を切られるシーンが多かったように思います

    Player Comparison – 木田晴斗

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    現時点で山田選手がになっている立ち位置とは違うポジションですが、「利き足が左」という観点で木田選手がポジション争いの土俵に出てくるかと思い、ピックアップしました

    木田選手は力強いランニングと鋭角なステップが強みのWTBで、日本代表候補にも絡んでくる世代を代表するランナーです
    スピードもありますし、自分が勝負するエリアがはっきりしているという点で相手を自分の土俵に持ち込むことができる強さがあると思います

    基本的には自分のポジションを大きく変えることがないのでアタックへ絡む回数は少なめですが、キックチェイスやラインのセットといった労力を要するシーンでは堅実に動いており、「外で勝負できる」という相手へのプレッシャーを与えているように見えました

    ディフェンス面ではミスも少なく体を張ったタックルをすることができており、BK3の構成によって求められる動きが違っても安定したフィールディングを見せています
    ライン参加の重要度が高いのかブレイクダウンへの絡みはないですが、しっかりと穴を埋めてくれる感じですね

    Challenge to LeagueONE

    この一年で担当してきたポジションが違うこともあってかスタッツできには大きな違いが出ていますね
    特にSOといったボールタッチの多いポジションを担っていた山田選手の方がアタックに関連したスタッツに関わる数値が多くなっています

    山田選手がどのポジションを主に担うようになるかは分かりませんが、もしWTBを担当するようになれば決定力といった部分はかなり重要視されると思うので、この辺りは安定感と工夫が求められるかもしれません

    また、ディフェンス面では似たような動きをしているかと思いますが、より戦略的にキックを交えたアタックをしてくるリーグワンの方が、求められるフィールディングの質が高くなってくると思うので、より一層広い範囲での動きを研ぎ澄ませる必要がありそうです

    まとめ

    徐々に明らかになってくる各チームの新加入選手情報が楽しみになってきますね
    この記事がうまい具合に伸びてくれれば他のチームも記事を書こうと思うので、よかったら楽しみにしててください

    今回は以上になります
    それではまた!

  • 【マッチレビュー】2023大学選手権決勝:帝京対明治を簡単な数字で見てみた

    【マッチレビュー】2023大学選手権決勝:帝京対明治を簡単な数字で見てみた

    みなさんこんにちは
    現地観戦した皆様、お疲れ様でした

    今回は1/13に行われた大学選手権決勝、帝京大学対明治大学の試合についてレビューをしていこうと思います

    まずはメンバー表から

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    次にスタッツです

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    それでは順番に見ていきましょう

    目次

    1. 帝京のアタック・ディフェンス
    2. 帝京のアタックシステム
    3. 帝京のキャリー
    4. 帝京のパス
    5. 帝京のディフェンス
    6. 明治のアタック・ディフェンス
    7. 明治のアタックシステム
    8. 明治のキャリー
    9. 明治のパス
    10. 明治のディフェンス

    すべて表示

    帝京のアタック・ディフェンス

    帝京のアタックシステム

    大きくイメージが異なるような動きはしていなかったとは思っていますが、アタックの柔軟性、完遂度をみると今回の試合では帝京に分があったのではないかと見ています
    少しでも選手間の戦術の理解度にブレがあると動きが崩れてしまう部分だと思うので、感嘆の一言です

    基本的には9横と10横にFWのポッドをおいて、どちらかというとポッドを使って中央エリアでのフィジカルバトルに勝とうとしているような印象でした
    帝京のコンタクトは揃って強烈なので、コンタクトで前に出ながら安定したペースでボールを動かしてアタックを継続する感じでしょうか
    うまく前に出ることができない時は10番の井上選手や15番の山口選手を中心にLongを蹴ったり、9番の李選手からBoxを蹴ったりして対応していましたね

    今回の試合で特徴的な要素であるように見えたのは「ポッドの可変性」の部分でしょうか
    一般的に1−3−3−1だったり1−3−2−2といった4つのポッドを置くのが一般的なイメージを持っているのですが、帝京は中央エリアをより堅くして中央に4人のポッドを1〜2つ準備しているように見えました

    実際に見られた動きとしては、最初は横一列に並んでいた4人のポッドから2番の江良選手が少し位置を変えてボールレシーバー兼繋ぎの選手となり、そこから残った3人のポッドに向けてパスをするといった形のものです
    江良選手自身キャリアーとして優れていますし、BKと似たような動きをできるような器用さもあります
    その中でキャリーする選手の選択肢が多くあるので、明治の選手も少し絞りにくそうにしていましたね

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    もう一つあった形としては、3人のFWが配置された10シェイプのポッドがフェイズの途中で分裂するような動きを見せ、3人のポッドが2−1に分かれてパスワークの中継点やダミープレイヤーとしての働きを有するような形でした
    そう何度も起きたパターンではなかったですが、表裏に位置する選手が流動的に変わっていくので新しい形を見ることができたと思っています

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    これ以外の形も含めて全体的に帝京のアタックはFWの選手の高い理解度と柔軟性が求められるようなラグビーをしていて、それに対してFWの選手は十分に高い水準の完遂度を示していた形になるかと思います
    2人のポッドの裏に3人のポッドを直で配置するなどFWがキャリーするパターンが無数に準備されており、大きなミスもなくFWのキャリーが遂行されていたのは単純に言っても凄かったですね
    むしろ天候条件も相まって大きく動かす方がミスが出ていたように思います

    BKの絡んだアタックとしてはかなりシンプルで、BK内でもほとんどボールを動かさずにFWのポッドを繋ぐような役割に徹していたようにも見えました
    特に12番の大町選手や13番の戒田選手は半分ポッドに組み込まれているような動きもしていて、BKの器用さを兼ね備えた9番目・10番目のFWのような役割を果たしていたように思います

    大枠の戦略的な部分で言うと、キャリー一つ一つで着実に前に出ることができたのも大きな勝因ではないかと思います
    明治側も天候が荒れたからか全体的にディフェンスラインをタイトに引いていましたが、キャリアーがステップでずらすだけではなくコンタクトでも十分に勝負することができるためにコンタクトシチュエーションで比較的優位に立っており、大きくラインを返されるようなシチュエーションは帝京のアタックに限ってはなかったように感じます

    キックの蹴り合いの部分でも大きく負け越すことはなく、エリアを確実に取っていたのも印象的ですね
    大きく蹴り分けてるわけではないと思いますが、井上選手が一連のアタックの中でのキック、山口選手がエリアを回復するようなキックをしていたように見えました
    李選手のボックスキックも高いレベルにあり、距離や高さのコントロールが絶妙なために再獲得のみならず攻撃的なディフェンスに繋げることもできていました

    帝京のキャリー

    足元が悪い条件の中でしたがどの選手も足腰が強いのでそこまでキャリーに苦労した印象はなかったですね
    少しプレッシャーを強く受けるようなシーンもありましたがアドバンテージを得た中でのワンシーンだったので致命傷にはならず、それ以外のキャリーに関してはコンタクト局面からグッと前に出ているようなキャリーが多かっったように思います

    いつも言及していますが6番の青木選手と7番の奥井選手に関しては帝京のキャリーを語る上で絶対外すことのできない存在になっていますね
    高校時代から優れたキャリーを見せていた両選手ですが、今年一年の中でさらなる高みに至ったように見ています

    青木選手はどのキャリーでも前に出ることでができる選手で、文字通りゲームの流れの天秤を力づくで帝京側にひっくり返すことができる存在であると見ています
    中央エリアというよりはエッジよりに位置することが多く、特に優れたキャリーを見せるシーンは大外でもらった時が多いように感じています
    相手を弾くようなコンタクトを見せる選手が多い中で青木選手は走る姿勢から大きく体の形を変えることなく前に出ることができるので、無駄な減速がなく足腰の力を生かしたまま勢いを前に押し出すことができていましたね

    奥井選手は青木選手と似たような要素はありながらもハンドリングや繋ぎの部分で違う特色を見せており、おそらく帝京サイドの中で最も「オフロードを意識した体の使い方をしている」選手ではないでしょうか
    当然ながら体の強さは大学レベルでもトップレベルにあり、相手を弾きながら前に出る部分では青木選手に負けず劣らずの実力を遺憾なく発揮しているように思います
    一方で奥井選手は視野の広さと球捌きのうまさからボールを繋ぐことに欠けるウェイトが重く、コンタクトする際も上半身を相手に委ねずにオフロードができる状態に体をコントロールするのがものすごく上手いです
    ハンドリングが上手いのでそこから安定したラックにも繋げられますし、お自分にディフェンスを寄せられるという点ではそこでオフロードがうまくつながればチャンスをもたらすことができます
    江良選手を含めてキャリー前後のボールの扱いが上手い選手が多いことも帝京の強さではないでしょうか

    キャリー回数を細かく見ていくと、前半が36回、後半が38回のキャリー回数となっています
    回数的に見ると天候やコンディションの割に安定してゲームの流れを掴むことができているようにも見えますね
    明治は後半にかけて失速していったので、前後半でボールの動きが多く変わらないというところでは帝京の強みが発揮された部分であるように感じます

    回数的には9シェイプでのキャリーが23回で10シェイプでのキャリーが5回と、だいたい全体の30%がポッドを用いたキャリーといったところでしょうか
    定義的には他のキャリーに含まれているものであっても、例えば12番の大町選手がポッドのような動きをしているものもあり、もしかすると厳密に言えばもう少しポッド関連のキャリーは増えてくるかもしれませんね

    ポッド外のキャリーは18回となっており、内訳としては前半8回・後半10回、中央エリアで9回・エッジエリアで9回となっています
    あくまでも実測値でしかないですが、傾向的にはかなりバランスよくキャリーが生まれているということができるかもしれません
    一方で前後半・中央/エッジエリアで分類をすると回数的には後半のエッジ>前半の中央>後半の中央>前半のエッジといった様相も見せており、主戦場の様子は前後半で変わっていた可能性もあるかと思います

    帝京のパス

    明治のアタックとは異なり一方向性の強いアタックラインを引いており、表裏を使った動きと持ち場へ走り込む動き、ボールをもらった後の動きを活かしてアタックを組み立てていくような形だったように思います
    内返しのパスはほとんど見られず、細かくサイドチェンジをするような様子もそこまでなかったように見えました

    特徴的なのが9シェイプや10シェイプといったポッドの選手から後ろのアタックラインへと下げるスイベルパスの質で、他のチームでは際立って上手い選手が1人いるくらいが関の山な状況の中で、2人以上スイベルパスが上手い選手が揃っているのが帝京のアタックに文字通り深みをもたらしていると思います

    個人的に見た大学レベルでスイベルパスが一番上手い選手は早稲田のHOの佐藤健次選手なのですが、次点・もしくは同格でスイベルパスが上手い選手として私は帝京のLO、本橋選手を挙げたいと思います
    投げ分けを含めた総合力では佐藤選手に分があるかと思いますが、「キャリーの脅威」と「後ろに放るときの正確性」のバランスでは本橋選手が一歩前に出ていると感じるシーンもあり、帝京のアタックに勢いをもたらしているように感じています
    スイベルパスのうまさに加えてキャリアーとしての安定感もあるので、明治サイドのディフェンスとしては直前まで選択肢から切ることができないのではないでしょうか

    回数を度外視したパスワーク全体を見ると、長短の投げ分けに関しては各選手の視野の広さを感じることができるかと思います
    BKの選手はもとより江良選手やバックローの選手などは自分の手で投げ分けができますし、特にゲームをコントロールする場面の多い井上選手の判断による投げ分けは非常に精度が高いものがあると感じています

    順番に回数を見ていきましょう
    回数としては前半50回で後半54回の合計104回のパスが生まれています
    キャリー・パス比としては7:10と若干キャリー比率が多い様相がありますが、天候の影響もあるので納得の範疇に収まるレベルではないかと思います
    前後半でキャリーとパスの様相が大きく変わるような様子もなかったので、一貫性という意味では「自分たちの意図したラグビー」を貫いていたようにも見えました

    細かく見ていくと、ラックからのボールは28回が9シェイプへ、15回がバックスラインへと供給されています
    こだわっているというか、一般的な荒天での傾向に似たものがあると思うので、ラグビーの基礎に立ち返っているような数字ですね
    ハンドリングエラーも結果的には少し多めの回数となっていましたが、ミスを減らそうとする意図は見えていたかと思います

    バックスラインへ供給されたボールは7回が10シェイプへ、8回がバックスライン上でのパスワークとなっています
    あくまでの数値からの予想ですが、バックスライン上で何度もパスをするといった形ではなさそうですね
    ボールを動かさずにミスを避けるというような感じでしょうか

    帝京のディフェンス

    今回の試合を見る限り、普段に比べると若干タイトなディフェンスラインになっていたかと思います
    どちらかというとエッジエリアでブレイクを受ける回数が多く、特に前半は大きく前に出られているシーンが多かったのは外めだったように感じました

    おそらくは中央エリアを堅くして、おそらくはミスを減らすことを意図した狭めの攻撃をしてくるであろう明治のアタックを警戒していたように見えました
    実際に明治も普段に比べて少しパス回数も少なく、ポッドの配置もラックに近づいていたように見えたので、方針としてそこまで間違っていたものではないと思います

    一方で外に大きく動かされたシーンや細かいパスワークで前に出られるシーンも多く、DFラインの幅感のコントロールは前半は特にうまくいっていなかったかもしれません
    前に大きく出ることはなくても明治は深みのあるアタックを仕掛けてきていたので、細かいノミネートのずれや前後のギャップを疲れていたように感じました

    タックル成功率に関しても若干後手に回っていて、割合的には80%
    を切る程度とかなりミスが嵩んでいたかと思います
    ただ、ラインブレイクを受けるシーンはかなり少なく、帝京のディフェンスの集散の速さやサポートの質の高さを見て取ることが出来たように感じています
    抜けた後にサポートプレイヤーがタックルに入るまでが比較的早いですし、その後極端にラックによることも少ないのでディフェンスで致命傷を受けることが少ないのもいいですね

    明治のアタック・ディフェンス

    明治のアタックシステム

    明治のアタックに関しても、キックの使い分けや表裏を使った深みのあるアタックなど普段目にすることの多い「強い明治」のラグビーを要所要所で感じることが出来たと思います
    主将の廣瀬選手もゲーム復帰以来素晴らしい動きをしていましたし、伊藤選手や池戸選手といったゲームを動かせる選手も良さを遺憾無く発揮することが出来ていました

    ただ、今回の敗因としては、天候の影響もあるとは思いますが「強い明治のラグビー」を一貫性を持って徹することが出来なかったことが要因ではないかと想像しています

    個人的に感じている明治の強さはFWの強さも当然ありますが、何よりもゲームを動かしている軍師タイプの選手がBKに多く揃っていることにあると思っています
    パスでボールを動かし時に自分で前に出ることのできる伊藤選手、CTBとしてボールをキャリーする一方でボールをうまく散らすことのできる廣瀬選手、キックを主体にグラウンドを幅広く活用することのできる池戸選手と三者三様のゲームメイカーが揃っており、これらの選手が各アタックフェイズで相互作用をもたらしながらゲームを動かしていくところに明治の強みが隠れていると思っています

    しかし、今回の試合では天候が荒れて寒さや湿った環境下でボールを動かさねばならず、キックを有効的に使ってプレーエリアを前にですことはできたものの帝京の前に出る力でエリアが大きく動き、外にチャンスがあっても全体的にラインが縮こまってしまったりと、意図・実行した動き・アウトカムの部分で一貫性がなかったようにも見えました

    詳細は後述しますがパスの大まかな傾向としては普段通りの様相を見せていた一方でそもそものアタック時間を稼ぐことができず、多くのフェイズを重ねるほどに帝京の圧力を受けてミスにつながったりと継続性はなかったように感じました
    トライが生まれたシーンもそこまでフェイズを重ねていない状況でしたしね

    キック戦略として長短の工夫やエリアどりの工夫があり、池戸選手の判断の良さから大きくエリアを挽回するシーンが見られていました
    海老澤選手も50−22キックを蹴ったりと貢献していましたね
    しかし、帝京側も判断力やキック力の部分で拮抗しており、全体的に見るとキックで動かされた距離はもしかすると明治の方が多かったかもしれません
    完全に裏を取られるシーンもありましたしね

    そして何よりも敗因に直結していそうな要素としてセットピースの不安定感があったように思います
    本来セットピース、特にスクラムにおいては明治の独壇場にもなり得るほど強みを全面に押し出したラグビーをしているのが常ですが、今回の試合ではスクラムで大きくプレッシャーを受けてしまっており、ペナルティを多く取られてしまうという結果になっていました
    アタックシーンでこそペナルティを取られずに確保していましたが、ペナルティを取られる前にボールを出しているといった印象が拭えず、かなり押し込まれていたのも事実かと思います

    明治のキャリー

    明治のキャリーとしては今回の試合では両翼に入った海老澤選手と安田選手が躍動していたように思います
    FWの選手もいいキャリーを見せていましたが、帝京のディフェンスがタイトになっていたこともあって大きく崩すことはできておらず、中央エリアでは相撲の取り組みのような攻防を見せていました

    海老澤選手は1年生ながらアタックに関して思い切りがよく、細かいステップを駆使しながらボールを持つたびにしっかり前に出ることが出来ていました
    グラウンドのどのエリアでも顔を出すことができるくらい縦横無尽に動くので質的・位置的優位性を取りやすく、チャンスと見た時の加速もいいのでトライをはじめとしてビッグゲインに貢献していました

    安田選手は前に出るスピード感が素晴らしく、大きく角度を変えることはなくても揺らすような重心移動でスピードを殺さず相手を動かしていたように見えました
    自分が前に出るという意識も高いので変に置きにいくようなキャリーも少なく、毎回のキャリーが超攻撃だったように思います
    ここ数試合はそこまで前に出るシーンも多くなく不本意なゲームだったと思うので、今回の試合では良さを遺憾無く発揮していました

    一方FW戦の部分では若干の前に出るシーンがあったものの大きくゲームを動かすレベルには至っておらず、特に中央エリアにおいて苦戦していたような印象を受けました
    本来の良さが出ていれば中央エリアで相手のディフェンス網を突破してアタックラインにモーメンタムを生み出し、そこから始めてボールを大きく動かしてさらなるゲイン・スコアを狙うといった形になっていたかと思いますが、今回の試合では前に出るという初期段階の部分でプレッシャーが強く、崩し方も理論的というよりかは個人のスキルに依存した力づくといった様相が強かったように思います

    キャリーの回数を見ていきましょう
    前半が36回で後半が19回と、普段の試合と比較して圧倒的に相手に支配されている試合展開になっていたと思います
    本来の明治の強みは段階を踏んで徐々にギアを上げながらペースを掴んでいくようなアタックスタイルなので、ギアが上がる前にフェイズが切れてしまっている感じですね

    詳細を見ていくと、ポッドを用いたアタックでは9シェイプが19回、10シェイプが3回となっており、大まかな値で言うとキャリー全体の4割前後がポッドを用いたアタックとなっています
    イメージ的には普段より若干多めとも取れるような値となっており、荒天でミスが生まれやすいといった精神的負荷によるものと予想することもできますね

    シェイプ外では中央エリアで3回、エッジエリアで9回のキャリーが生まれており、前半から外にエリアが生まれていることは見えていたのではないかと予想しています
    しかし後半にかけてそもそもの総キャリー数が減少し、キャリー傾向もうちがかりになっていったのでスペースのあるエリアまでボールを動かせなかったのかもしれません

    明治のパス

    今回の試合での明治のパスは普段と比べると若干狭いラインの中を動かしていたように見えました
    エリアに対する人数が多かったと言うわけではないのですが、ミスを恐れてか全体的にポッドの位置がコンパクトで、中央寄りに人数が固まっていたように思います

    深いパスワークを生かしたりゲームコントローラーの周りに選手を配置して選択肢を増やしたりといった明治らしい配置は普段通りだったと思うのですが、いかんせんボールの動きが小さめだったと言うのは言うことができるかもしれません
    キャリーの項目でも述べたように外に動かしたシーンではチャンスが生まれていましたが中央エリアでは前に出ることに苦労しており、アタックラインが少し広がり切れていないために大外まで回し切らない限りがディフェンスの網に捕まっていたりとゲームを動かし切ることが出来ていなかった印象です

    全体的なパスの動きも「その後の流れも意図してそこに放った」というよりかは「スペースになるであろう場所にいたから放った」という風に見えるようなパスワークが多く、一個一個のプレーシーンで上回ることができても最終的なアウトカムにつながっておらず、キック主体の組み立てを意図していった結果長いアタックにならないといった様相を呈していました

    パス回数を見ていくと、総パス数は95回と帝京に対して少し後手に回っている感じです
    トライを取ったシーンではパス回数も重ねることなく取り切ることができていましたが全体的には「フェイズを重ねてもスコアできない」というような雰囲気でゲームが進んでおり、アタック効率には不安定感が残っていました

    ラックからのパスは19回が9シェイプへ、12回がバックスラインへと渡っています
    9シェイプへのパスが多いですが、この辺りに関しては普段通りといった形でしょうか
    パス回数全体を見てもこれらのパス回数は多くなく、ラックが形成された回数も少ないのでそもそもボールを持つことができていなかったと言うことはできるかと思います

    バックスラインへと渡ったボールは10シェイプへ4回送られ、バックスライン上でのパスワークが15回となっています
    パス総数の減少に合わせてバックスライン上でのボールの動きも減少しており、後半にかけてアタックエリアが狭くなっていることが予想できるかと思います
    10シェイプを用いた回数もそこまで多くはなさそうなので、なおさらアタックが中央寄りになっているイメージですね

    明治のディフェンス

    タックル成功率自体は帝京を相手取ったにしては高く、後半にかけて精度も上がっていいゲーム運びをすることができていたと思います
    一方でタックル自体にいけないようなエリアでスコアされたり、セットピースでの劣勢由来のトライを取られたりとディフェンスのプレッシャーの質云々にとらわれない形でスコアをされた回数が多かったようにも見えました

    タックルの質、特に前半はペナルティを取られない範囲での相手上半身へのアプローチがうまくハマっており、相手ボールを奪ったりゲインを妨げたりと全体的にうまくディフェンスからゲームを動かすことができていたと思います
    そもそもタックルの質も高いので状況によっては相手を青天させられたりとかなりプレッシャーをかけることができていたように見えました

    一方でセットピース周りのディフェンスや対応に関してはかなり苦労していて、特にラインアウトモールへの対応はうまくいっていなかった印象です
    細かいスキルの部分は言及しませんが、個人的な印象としては帝京のモールに対するプレッシャーの部分で立った姿勢で押し返している選手が少し多めに見えましたね
    基本的に姿勢が高いと押し返す勢いというのは生まれにくいと思うので、方針のブレか戦術的様相かはわかりませんが、帝京にグッと前に出られていました

    まとめ

    2023-24シーズンの最後を飾る試合は荒天となりましたが非常に素晴らしい試合となったように見えました
    お互いの良さがうまくぶつかり合い、ミスも少なくアタック・ディフェンスを遂行することができていたように思います

    帝京は対抗戦の早稲田との試合で苦戦したり準決勝の天理戦で迫られたりと、実力や前評判からくるプレッシャーもあったかと思います
    そんな中強敵である明治を下して優勝を飾ったことで一つ上の次元へ登ったように見えました

    明治は良くも悪くも「競り合いになる試合」の経験値の部分で後手に回ってしまったというか、「明治の誇り」と「勝つ試合運び」の間で迷っていたようにも見えました
    中心選手は卒業していきますが、この悔しさを忘れない選手たちが来年以降のチームを作っていくと思うので、非常に楽しみですね

    今回は以上になります
    それではまた!

  • 【国際コラム】サマーネーションズシリーズのイングランド代表の試合展開からW杯を見据えてみた

    【国際コラム】サマーネーションズシリーズのイングランド代表の試合展開からW杯を見据えてみた

    みなさんこんにちは
    まだ夏ですね

    今週末から大学ラグビーのシーズンが始まりますが、同時にW杯が開幕するということもあり、番外編としてイングランドのプレビューをしてみようかと思います

    対象とした試合はサマーネーションズシリーズのウェールズとの2連戦、アイルランド戦、フィジー戦になります
    日本代表がイングランド代表と戦うのは2戦目なので、ちょうどいいですね

    目次

    1. 過去のメンバー
    2. 4試合のスタッツ
    3. イングランド代表のアタック
    4. イングランド代表のディフェンス
    5. ピックアッププレイヤー
    6. LO Maro Itoje
    7. SO Owen Farrell
    8. まとめ

    過去のメンバー

    それでは、過去4試合のメンバーがこちら

    画像

    ウェールズとの第1戦目はおそらく最終セレクションといった様相でもあったため、W杯のメンバーではない選手も含まれていますね

    また、W杯スコッドの全体はこのような感じになります

    画像

    並んでいるメンバーを見ると誰も彼もが強烈ですね

    4試合のスタッツ

    対象試合のスタッツはこのようになっています

    画像

    詳細はこの後の項目で述べていきます

    イングランド代表のアタック

    イングランドのアタックの起点の多くは9シェイプとなっています
    上記のスタッツでは表記していませんが、どの試合でも1/3から1/2ほどの割合が9シェイプを用いたアタックという結果になりました
    また、アタックに際して2ndフェイズ以降ではFWの選手が順目に回って繰り返し9シェイプとしてボールをもらっている様子が散見されました
    基本的には1−3−3−1感のあるアタック方針のように見えますが、9シェイプにはこだわりがありそうに見えます

    とはいえそれはあくまでも傾向であり、キャリー・パス比に関してみると2:3の近似値になることから、一般的にはバランスの良いアタックをしているという事ができるかと思います

    アタックの方向性を見ると、ポッド的要素もありながらも若干シェイプ的なイメージもあるかと思います
    9シェイプに関しては固定したポジションにセットするばかりではなく、先述したように順目にまわってSHからどんどんボールをリサイクルしてもらう様相が見られています

    その際にはポッドの三角形が毎回綺麗に構築されているわけではなく、ラックの真後ろからFWの選手が走り込むことでモーメンタムを生み出すとともに相手のフォールディングによって生まれる優位性を確保しようとしているようにも見えました
    SHに入る選手もラックからそのままパスアウトすることもあれば、少し持ち出して走り込んでくるFWを呼び込むこともあるのがミソですね

    また、10シェイプに関して見ると少し特徴的な場面も見られ、SOに立つ選手の外側に2人、内側に1人の選手が立っていることもありました
    10シェイプのポッドの中にSOが立っているイメージですね
    そのため、SHからボールを受けたSOの選手には一方向ではなく複数方向にいくつもの選択肢を持っているということになります
    これに関してはどの選手がSOに入っているかということにも左右されるため、一概には言いませんが、選択肢を多く持っているのは一貫して言うことができるのではないでしょうか

    一方で、一応スイベルパスのようにバックドアを使うアタックシステムも何度か見られてはいますが主流のアタックムーブではなく、ぱっと見の印象ではポッドを用いたアタックか外に回すかはわかりやすいようにも見えました

    その他の特徴として挙げられるのはキック戦略になります
    エリア獲得のためのLongが基本的には多いのですが、特徴的なのはBoxの多さになります
    自陣深くからの脱出でもBoxを使っていますし、ハーフライン周辺の中盤エリアでもBoxによるハイボールでの競り合いを戦場にしているような印象を受けました

    キック戦略に関連する選手を挙げるとすれば、4試合とも先発出場したFreddie Steward選手は全選手の中でも特にハイボールが強く、相手からのハイパントを高い精度で獲得していて、中盤では無類の強さを誇っています

    全体的にはバランスのいいアタックを示しているイングランドですが、良くも悪くもSOに入る選手によってアタックのハマる・ハマらないが決まってくるような印象は受けますね

    Marcus Smith選手はどちらかというとファンタジスタタイプで、自身がボールを保持している時間が長く、Smith選手からの1パスで崩すと言った印象で個人的には見ています
    一方George Ford選手について見ると周りの選手を生かすタイプのように見え、チーム全体のパスワークで相手を崩そうとしているような印象です

    そのため、アタックの要所要所での一貫性のなさはちょっとネックになるような気もしています
    特に試合を見ていて思ったのは、FWの選手との連携がうまくいっていないシーンが何度か見られていることで、イングランドの特徴でもあるSOの選手が急激なポジションチェンジをすることでアタック方向を変える特徴的な動きにFWの選手がついてこられていないようにも見えました

    イングランド代表のディフェンス

    ディフェンスは基本的に強いプレッシャーとダブルタックルが重要な要素になってくるかと思います
    ライン全体のスピードも早く、特にラックサイドの選手が前に出るスピードは他の国代表のディフェンスと比べても早い印象を受けました
    Ellis Genge選手に至っては相手がパスをすることを計算に入れてないんじゃないかって言うくらいのスピードで前に出てますしね

    タックルの質そのものはかなり高いと言う事ができるかと思います
    アイルランド戦でこそ85%を下回ると言う結果にはなったものの、そのほかは90%を超えているため、基本的な「倒す」というアウトカムはしっかり出す事が出来ているように見えました
    ダブルタックルに関して見ても二人がかりで相手を捉え、差し込まれることもなく相手を押し込む事が出来ていたように思います

    ディフェンスラインの上がりに関してはCTBの選手までは揃って一つのラインとなって上がるような印象で、南アフリカのように外側の選手が顕著に前に出ると言うこともなく、オーソドックスなディフェンスをしていたように見えます
    若干一部のFWの選手で突出することもありますけどね

    目立った弱点・必ず崩されるシチュエーションというのは強豪らしくそこまで見てとる事ができませんでしたが、少しだけポッド内の細かいパス、特に10シェイプでのパスワークに翻弄されてビッグゲインを許すシーンも見られたことから、表裏を使ったアタックに細かいパスワークを組み合わせた場合は苦手にしているかもしれません

    ピックアッププレイヤー

    LO Maro Itoje

     Maro Itoje選手はイングランド代表の中でもLOらしいLOというか、かなり勤勉なタイプであると推測しています
    タックルも強いですし、アタックでもボールキャリーからサポートと様々な役割を高いレベルでこなしていますね
    ビッグゲインを切ることこそ少ないものの、安定したアタックには必要不可欠かと思います

    特にラインアウトに関してはアタックでもディフェンスでも重要な役割を果たしているように見えました
    そもそもの高さもありますが、リフターとのコンビネーションでより高い位置でのボールキャッチを実現していて、デフェンス面でも相手にかなりのプレッシャーをかけています

    SO Owen Farrell

    良くも悪くも注目を浴びる選手というか、タックルに関しては正直諸々の改善点がある選手であると思っています
    タックルがそもそも高いですし、ノーバインド気味で肩を当てに行くので、それは当然反則になるでしょうと言わんばかりのプレーが若干多めです

    一方でSOとしてのゲームコントロールに関してはMarcus Smith選手、George Ford選手にはないセンスを有していると思っていて、視野も広くパスワークにも優れていることからアタックのタクトを振る能力に関しては極めて優れているという事ができるでしょう

    キックを用いたゲームコントロールもうまく戦略的にアタックを組み立てるタイプなので、どこで崩すか・どのようにアタックするかという意思決定者としても優れているように見えました

    まとめ

    イングランド代表は現時点では世界ランキングこそ全盛期から少し下がったものの、選手層の厚さや一人一人の強さという点で見ると他国と比べても遜色ないレベルのチームであり、アルゼンチン代表と同様に日本が乗り越えるべき壁として存在しています

    日本代表との試合時点ではFarrell選手の出場停止期間が明けていないので、SOにどちらの選手が入るかなど楽しみな点がいくつもありますね

    今回は以上になります
    それではまた!

  • UNIVERSIS、動き出します

    UNIVERSIS、動き出します

    初めまして。
    UNIVERSISを動かしている今本と申します。

    この度、大学ラグビーの分析を主とした投稿をしていくために、UNIVERSISという活動を始めました!
    読み方は「ユニヴェルシス」です!

    モットーは「大学ラグビーから『データを楽しむ文化』を作る」
    まずはそこからラグビーのデータに関する活動を進めていこうと考えています

    このような活動は初めてになるので、手探りで進めていくことになりますが、見てくれた方々が「ラグビーを数字で見ると面白い!」「もっとラグビーを知りたい!」と思ってもらえるような活動をしていきたいです!

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