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  • 【マッチレビュー】2025リーグワン:静岡ブルーレヴズ対浦安D-Rocks

    【マッチレビュー】2025リーグワン:静岡ブルーレヴズ対浦安D-Rocks

    みなさんこんにちは
    リーグワンも、第3節が終わりました

    今節の試合から、磐田で行われた静岡ブルーレヴズと浦安D-Rocksの試合について、振り返っていこうと思います

    静岡ブルーレヴズ

    <アタック傾向>

    ブルーレヴズは1−3−3−1をベースにした、FWを起点としたクラシックなスタイルに合わせて、接点に強みのあるBK陣を組み合わせることで外から中に向かって攻め込むようなアタックを見せています

    エッジにはヴェティ・トゥポウ選手やクワッガ・スミス選手のような機動力と強さを兼ね備えた選手を配置することが多く、全体を5レーンに分けて考えた時に中央と外の合わせて3レーンに強みのあるスタイルであるということができます

    特にトランジションのような相手のディフェンスラインの中のFWとBKの比率が乱れているようなシーンではエッジで接点を作ってから大きく外方向に展開することで、FWとBKのミスマッチを作ることでラインブレイクも果たしています

    基本的なアタックの要素となるのは9シェイプと呼ばれるFWの選手による集団の単位で、ラインアウトのようなセットピースからエッジ方向にどんどん9シェイプを当てる様子が見られています。

    その連続した9シェイプに対してFWの選手は順番に走り込むことでオプションとなり、ポッドをベースとした一塊になってアタックを作り上げていました

    特にゴールが近くなるエリア、敵陣22mラインを超えたようなエリアに入ると、9シェイプは激しさを増し、どんどんとフラット気味に走り込みながら相手との接点を作るようになっていきます。フラット気味に走ることで相手ディフェンスに詰める猶予を与えず、接点で押し込むことができれば最も効率的な前進の手段です

    また、この時に効果的に働いているのがピック&ゴーの動きで、ブルーレヴズには1人で前に出る選手が揃っていることもあり(スミス選手や12番のチャールズ・ピウタウ選手など)、相手に下がる猶予を与えずに素早くボールを持ち出すことで相手のディフェンスラインを下げることに成功していました

    ブルーレヴズが基本的に勝負の土俵に持ち込みたいのはこのエリアで、如何にこのエリアに入るか、というところに重要性を見出しています

    ただ、このエリアに入ることこそ多かったものの、アタック全体は不安定なまま試合は続いていくことになります。数値は後ほど見ていくこととしましょう

    また、ポッドの作り方としては、4人ポッドや5人ポッドを使っていたように見えました。隣のポッドと混ざったグラデーションの2つのポッドだったかもしれませんが、多くの選手が一塊になって並ぶシーンが散見されていました

    4人ポッドに関してはCTBの選手が絡むことも多く見られていました。12番のピウタウ選手や、13番のシルビアン・マフーザ選手のような選手が4人ポッドの柱となり、ラックなどからボールを受けてスイベルパスで裏の10番、家村健太選手や筒口允之選手にパスをしていました

    5人ポッドではSHからの投げ分けが発生することで相手に選択肢を作り出し、相手に選択肢を押し付けた状態で接点で前に出るという形をとっていました

    <アタックの課題>

    アタック全体での課題としては、何よりもハンドリングエラーが挙げられることでしょう。ゴールに近いエリアに何度も侵入していながら、奪ったトライは3つと効率的ではありませんでした。その多くの要因は、肝心な部分でのパスやキックのミス、接点でボールをこぼしてしまうといったハンドリングエラーによるものです。

    また、相手のディフェンスラインからプレッシャーを受けたことも影響しています。D-Rocksのディフェンスの精度は昨シーズンから改善が見られ、接点の強さとコントロールのバランスが良くなっています

    その結果として、パスの出し手と受け手の両方がプレッシャーを受けることでパスミスが起きたり、プレッシャーを避けるためにパスの出し手がスタンディングでパスを出すようになって前に出面くんあるという現象が見られていました

    最後に気になった点として、ブルーレヴズのアタックではティップオンのオプションが効果的に働いていなかった、という点が考えられます

    ティップオンとは、ポッドでボールを受けた選手がそばにいる選手に浮かすようにパスをすることですが、このティップオンが効果を発揮していませんでした

    ブルーレヴズもティップオンを活用しようとしていましたが、相手のプレッシャーもあってかパスの出し手が立った状態で少し浮かす程度の動きにとどまっており、ディフェンスとしては出し手のディフェンスから視線を切りやすい状況が生まれていました

    <キック戦略>

    キック全体の動きを見ると、ブルーレヴズはカウンターを多く用いていました。どのようなエリアであっても早い選択肢にカウンターが入ってくるような形です

    カウンターの質自体はそこまで悪くはなく、15番の奥村翔選手のような走力があって相手をずらすことのできる選手がいるので、自陣22mライン付近まで押し込まれても、イーブンな位置であるハーフライン付近までは戻すことができていました

    ただ、一部の選手には蹴り返して脱出を図るといったオプションが薄い時もあり、苦しいカウンターを仕掛けてターノーバーやペナルティを誘発されたりといった状況も見られていました。ここは修正・調整をしていきたいところではないかと思います

    <ディフェンス傾向>

    基本的に接点に強いディフェンスラインを整えているので、苦しい時間帯自体はそこまで多くなかったようには見えました。ラインブレイクをそこまで極端に引き起こされたわけでもなく、ある程度は守ることができていたと思います

    ただ、細かい部分ではディフェンスに揺らぎが見られており、今回の試合でブレイクされてしまっていたり、今後の試合に響いてきそうな様子が見られました

    特に注意していきたいのがエッジに近い位置でのディフェンスで、エッジ側がショートサイドになった時、選手が内側による傾向が見られています

    これは、エッジのエリアに参加しているD-Rocksの選手が影響していて、1人で場面を打開できるようなサム・ケレヴィ選手のような選手がエッジにいることで、意識がケレヴィ選手に向かいその外に張っているランナーから視線が切れていることでブレイクが起きていました

    また、ゴールに近くなると、選手間のディフェンス戦略に違いがみられていたことも気になるところです。一部の選手は相手のアタックラインに被せるような動きを見せて、また一部の選手は少し引き気味で受けるようなディフェンスを見せていました

    浦安D-Rocks

    <アタック傾向>

    D-Rocksのアタックは、悪い言い方をしてしまえば単純で、「接点で打ち勝つことでリズムを作り、崩れたところからブレイクを図る」といったものです。単純でありながら難しい課題を、D-Rocksは安定した前進戦略で実現していました

    キーになったのは、「前に出ることに長けた選手」にその役割を全うさせたことです。例えばNO8のヤスパー・ヴィーセ選手や、リザーブから出場したタマティ・イオアネ選手のような、接点に長けた選手に複雑なタスクを任せていないように見えました

    これは決して悪いことではなく、それ以外の選手に関してもタスクを単純化することによって、一つ一つの役割が明確になり、認知的負荷を抑えることができていたように感じました

    また、今回の試合では特徴を持つ選手がその特徴を遺憾なく発揮することができていたということも、調子の良さにつながっていることがわかります

    特に好調だったのがサム・ケレヴィ選手とイズラエル・フォラウ選手の元ワラビーズコンビでした。ケレヴィ選手は接点、フォラウ選手は空中戦で自身の能力を最大限に発揮していました

    ケレヴィ選手はオープンサイドとショートサイドの両方に顔を出し、中でもショートサイドでのアタックに強みを出していました。ショートサイドに器用で体の強いケレヴィ選手がいることで、相手選手はケレヴィ選手を抑えざるを得ない状況となり、結果的に外方向に数的・位置的なズレを作ることができていました

    フォラウ選手はとにかくハイボールでの競り合いが強く、ハイパント・ボックスキックだけではなく、キックオフからの競り合いでも強いプレッシャーを相手にかけていました。相手のスコアからのキックオフを再獲得することで、効率よく敵陣に入ることができていました。

    また、一般的なフェイズの中でもハイボール系を競り合い、再獲得することで、精度良く前進することができていました。ハイボールからの競り合いで確保ができれば、相手ディフェンスは崩れた状態になります

    エッジ方向へのクロスキックもフォラウ選手は十分に対応することができるので、エッジ方向に蹴り込むことでそちらに寄らざるを得なかった相手ディフェンスを崩すことができていました

    それ以外の選手の動きに関しても、テンポがよく、接点をベースにアタックをすることができていました

    あえて言葉にすればセミストラクチャーのような、完全に組み立てたストラクチャーと、崩れた状態から始まるアンストラクチャーの中間のような状態で、D-Rocksは強みを発揮します

    エンジンがかかっていくかのような、何度もFWの選手を中心に相手との接点を作ることで、細かく相手を揺さぶっています。その中でD-Rocksはパスを細かく繋ぐことで相手との位置関係を細かくずらし、強みである接点をさらに優位な状況で生かしていました

    <ディフェンス傾向>

    D-Rocksのディフェンスは、昨シーズン位比べると改善が見られていたように感じます。大きく崩されるシーンが減り、崩されても致命傷にならないといった最後の粘りが見られていました

    効果を発揮していたのが、日本人選手をはじめとしたロータックルの精度です。相手を素早くテイクダウンすることで上の空間をとることができており、相手のサポートを上回ってプレッシャーをかけることができていました

    また、そもそも接点の強さの強度が高く、相手の接点をある程度抑え込むことができていました。時々差し込まれることもありましたが、基本的にはいい体の当て方ができていました

    特にエッジでのディフェンスが堅く、フォラウ選手やケイレブ・カヴバティ選手のような選手のディフェンスの質が非常に高かったです。相手の外に流れるような動きに対してしっかりとついていき、相手を素早く倒すことができていました

    ただ、オプションのないポッドアタックには強さを発揮する一方で、オプションがある場合は少しずらされるようなシーンもあったため、修正の余地はあるようにも見えました

    ゲームスタッツを確認する

    画像

    それでは、次にゲームスタッツを見ていきましょう

    ポゼッション、テリトリーはブルーレヴズがそれぞれ上回っていました。特にテリトリーに関しては61%と高い水準で確保しており、敵陣に相手を押し込むことができていました。

    しかし、その割にブルーレヴズは敵陣22m内への侵入回数が13回と控えめな回数になっています。このことから、主なプレイングエリアが中盤であったことが想像できます

    D-Rocksは敵陣22mへの侵入回数が9回で4トライを奪っていたりと、比較的効率よくスコアをすることができていたと言えます。実際のトライシーンも、敵陣ゴール直前よりも前段階からブレイクをしてトライに至っていました

    キャリー・パス・キックの比率を見ていくと、ブルーレヴズがそれぞれ173回/236回/7回、D-Rocksは121回/156回/27回という数値になっていました

    ブルーレブズのスタッツで気になるとこととしては、キックの異常な数値の低さでしょうか。本来であれば20回程度は生じうるキックが7回というのは非常に少ない数値であると言えます

    ブルーレヴズは自陣で受けたキックに対してカウンターを狙う姿勢が強く、キックを蹴り返して脱出やエリアをコントロールするような回数自体は少なかったように思います

    D-Rocksはキャリーに対するパスの比率が一般的な水準よりも少し低いような水準となりました。9シェイプやワンパスで選手がキャリーする回数が多く、比率が減少していたことが考えられます

    また、目立った数値としては、ブルーレブズのターンオーバーロストの回数が気になるところでしょうか。20回というのは相当多い数値で、一般的には15回程度で多めという形になるかと思います

    ブルーレヴズはハンドリングエラーが多く目立ち、チャンスになったシーンでのパスミスが多く見られていました。エッジにキーになるランナーが揃っている中で、そのランナーにパスが回らないというのは非常に惜しい結果となりました

    まとめ

    今回の試合結果としては、意外、というコメントが多かったのでhないでしょうか。2節で埼玉ワイルドナイツにいい試合をしたD-Rocksでしたが、その勢いのままに、前年度のトップ6のチームに勝利を収めることになりました

    ブルーレヴズとしては、ハンドリングエラーを減らすことが修正のスタート地点になるかと思います。それ以外の要素に関してはそこまで悪い結果ではなかったと思っているので、まずはミスの母数を減らしていきたいところです

    D-Rocksとしては、こだわる部分を絞ってきたように見えました。いい意味で複雑なことを減らし、シンプルな勝負の土俵で細かい勝利を収める、といった形がうまくハマっていたように感じます

    今回は以上になります
    それではまた!

  • 【マッチレビュー】2025リーグワン:横浜イーグルス対静岡ブルーレブズ

    【マッチレビュー】2025リーグワン:横浜イーグルス対静岡ブルーレブズ

    みなさんこんにちは
    ついにリーグワンが開幕しましたね
    数多くの試合が予定されていますが、こちらでも一部試合をピックアップしていきたいと思います

    今回は、日産スタジアムで行われた横浜イーグルス対静岡ブルーレブズの試合を見ていこうと思います

    横浜イーグルスのラグビー

    イーグルスのアタック様相

    イーグルスは、司令塔となるSO田村優選手が柱となるアタックを見せていて、プレイメーカーによるコントロールを重視したアタックをしているというのが一般的なイメージになるかと思います
    田村選手を灯台に、その周囲でオプションになるように走り込むことがベースになります

    田村選手のコントロールは単に自分がボールを受けて展開のハブになるだけではなく、ラックの後ろから味方選手に声をかけて田村選手の指示のもとでポッドを動かしていることが試合映像からも見て取れます

    それに加えて、重要になるのがCTBの梶村祐介、ジェシー・クリエルの両選手の役割で、田村選手のボールタッチに合わせて、この2人の選手のボールタッチが多い傾向を示していました

    イーグルスのアタックのベースはCTBも組み込んだポッドワークを中心にしており、CTBの選手がポッドの中心となって積極的にキャリーに持ち込んでいました

    特に12番の梶村選手と13番のクリエル選手の役割としては、ポッドの先頭に入る、または梶村選手やクリエル選手がそれぞれボールを受けてキャリーをするというパターンが見られています
    2人で完結するポッドとしても組まれており、FWだけでポッドを構成するよりも数的に安定することが考えられます

    この2人の動きとしては、中盤に立つ2人ポッドの脇に立つ形から始まります
    ラックから直接パスを受けた梶村選手のクリエル選手へのショートパスでキャリーが発生し、そばにいた2人ポッドの片方の選手と梶村選手がサポートに入ってラックの最小単位である3人のラックを完結させる形をとっていました

    ポッド中心のアタックはゴールが近くなると特に顕著になり、CTBも積極的にボールを受けにいくことでラックから様々な距離感で接点を作ることに成功しています
    ポッドを安定して供給することで、テンポが遅れたりアタックが単調になることを避けることができます

    最も脅威度の高いオプションとしては、「ゲインを果たした」という条件下の元での9シェイプと10シェイプの組み合わせが挙げられます

    大きくゲインした後、スッと3人の9シェイプポッドがアタックラインの前に参加して、裏に立つプレイメーカーの田村選手へスイベルパスを下げる形を取ります
    スイベルパスを受けた田村選手はアングルをつけて走り込んでくる10シェイプに対してパスを出し、10シェイプポッドでキャリーをする、という形を取りました

    エッジでゲインをすると、ブルーレブズのディフェンスはまず9シェイプポッドを押さえるようにディフェンスラインを構築します
    その過程の中で中盤の10シェイプを押さえる位置に立つ選手が9シェイプ寄りのカバーをすることによって、中盤にディフェンスの薄いエリアが生まれていました

    それ以外に好んで用いていたのが、「リードブロック」というプレーです
    これは、アタックラインに対して1人の選手が突出してボールを受けるように走り込み、その裏を通して本来のアタックラインやポッドにボールを供給する形です

    この形がなぜ効果的かというと、理由はシンプルで「相手を寄せることができるから」になります。
    リードブロックをする「リードブロッカー」はラックの周囲を守る「ピラー」や「ポスト」と呼ばれる位置の選手に対して走り込むことで、そこを守る選手は走り込んでくる選手に対して位置取りを寄せなければならず、結果的に裏のアタックオプションが有利な状態で前に出ることができていました

    一方で、こういった構造的なアタックで数的優位やすれ違いを作ることができたシーンはそこまで多くはありませんでした

    理由として考えられるのは、ボールを受ける選手の深さやコース取りなどが考えられるでしょうか
    基本的には作り出した構造の近くですれ違いなどを作りたいところですが、アタッカーの位置取りの関係でブルーレブズのカバーを受け、うまく抑えられていました。

    また、それ以外の要因として、FWの選手が位置的に散っていることで、アタックオプションを豊富に準備できていないということが考えられます
    両サイドにバランスよく配置されることによって片方のサイドに数的優位を作れていないことが推測されます

    チェックしていた限りでは、構造にこだわりすぎるよりも、シンプルなラインで個々人のスキルセットを活かした方がより前に出られるシーンが多かったように感じました
    接点の強さがある選手が多く揃っており、しっかり前に出ることができていました

    イーグルスのディフェンス様相

    ディフェンスを総合的に見ると、苦戦したシーンが多かったのではないかと予想されます
    特に、新入団選手だったセミ・ラドラドラ選手の接点の強さや器用さにやられたようなシーンが多かったのではないでしょうか

    ブレイクされたシーンを確認してみると、例えばトランジションディフェンスで大きくブレイクされたシーンが見られていました
    このシーンでは、アタックの人数に対してディフェンスで人数が十分にカバーできているのに、流す意識が強すぎて内側のカバーが遅れたスペースをオフロードでブレイクされていました

    このように、イーグルスのディフェンスは比較的流す傾向があるように感じます
    数的不利ができないようにかなり横ベクトルの強い流し方をしており、その中で内側の選手がバッキング、相手ランナーの前に大きく回り込むようなコースをとっていました

    その傾向によって内側からディフェンスを押し上げる圧力が弱く、内側へ切り返すことが得意なWTBの選手や、オフロードの得意なラドラドラ選手の内返しのパスといった、外から内へとボールが動くプレーによってディフェンスが切られるシーンが見られていました

    また、相手の浅いアタックラインに押し込まれているような様子も見られていました
    ブルーレブズのアタックの強みは走り込みながらポッドを当てるような接点のモメンタムであり、その強みを受けてしまっていたように感じます

    特徴的な「やられ方」としては、敵陣深くでのディフェンスが挙げられます
    ブルーレブズの自陣深くからの展開で何度も大きなゲインを生み出されており、崩されているシーンが目立ちました

    この要因としては、イーグルスのディフェンス戦略にあります
    イーグルスのディフェンスは敵陣深くでハードなプレッシャーをかける傾向にあります
    BKの選手も流さずに詰める傾向があり、この部分で左右の味方選手との連携が途絶えることで、大きくゲインされていました

    静岡ブルーレブズのラグビー

    ブルーレブズのアタック様相

    シーズンの序盤ということでまだ固まり切っていない部分もあると予想できますが、試合を見た感覚ではポッドベース、アタックブロックとも呼べるような戦略でアタックをしているように見えました

    アタックでは3人ポッドをベースにして、接点に強い選手をどんどん当てて、BK陣にも揃っている接点の強い選手を当てこんで、リズムを作ろうとしているように見えました

    好んで用いられた動きとしては「スイング」と呼ばれる動きです
    これは、ラックやセットピースなどの後ろや反対側から、振り子のように反対側に回り込むことで、動きの中で数的優位性を作り出す動きです

    ブルーレブズは、このスイングを複数の選手が同時多発的に使うことによって、基本的には後手に回らざるを得ないディフェンスに対して、先出しで数的優位性を作っていました
    複数人が幅広くスイングする「ロングスイング」と、少ない人数で細かくスイングする「ショートスイング」をうまく使っていたように思います

    ここでキーになるのがイーグルスの項目でも述べたラドラドラ選手で、ラドラドラ選手は強い体を持ちながらも、器用さを兼ね備えた選手でもあります

    ラドラドラ選手はこれらのスイング動作の中で表のラインに入ったり、裏のラインに入ったりすることで、起点となる位置関係を切り替えています
    オフロードパスの選択肢がある選手がこのように位置関係をフェイズごとに切り替えることによって、結果的に相手のディフェンスの対応が難しくなっていました

    ポッドの活かし方に関しては、ポッド間の距離がそこまで離れておらず、ほぼくっついたような状態になっているシーンも見られました
    一つのポッドと見る見方もありますが、私はこの状態のことを、「スティックポッド」と呼んでいます

    2つのポッドを組み合わせることで、アタックオプションのバリエーションが増加し、一つ・二つのパスだけで様々なアタックをすることができます
    サポートも安定するので、一つの接点としての安全性が担保されていました

    今回の試合で見られた特徴としては、自陣から積極的にアタックする姿勢を見せていたことです
    ポッドをスプリットしてCTBの選手を介した展開をすることによって、相手のディフェンスを中盤に寄せて展開することで、走力のあるWTB陣が効果的に前に出ることができていました

    イーグルスのディフェンスは、正直なところブルーレブズ側の陣地深くでのディフェンスが意思統一されているような形ではなく、個々の動きで詰めてしまうような様子が見受けられていました
    そういった相手のディフェンスの傾向を読んだのか、非常にうまく噛み合ったアタックをしていました

    反省材料としては、キックオフを安定して確保することができていなかったことでしょうか
    そこまでプレッシャーを強く受けたわけではなさそうでしたが、ハンドリングエラーや、相手に容易にボールを確保されることによって、スコア後のキックオフレシーブの機会を手放すことになっていました。

    また、アタックの脅威度として、ボールを受けながら同時に走り込む「ラン&キャッチ」であれば、相手にとって非常に強い脅威となっていましたが、テンポが遅くなった時にボールを受けてから走り出す「キャッチ&ラン」の時の脅威が下がっていました

    これに関してはブルーレブズに限った現象ではなく、どのチームでも同じ現象が起きるかと思います
    今回の試合では、ブルーレブズは必ずしもテンポが出しきれていたわけではなく、プレッシャーを受けることで全体的にテンポがゆったりとしていたようにも見えました

    ブルーレブズのディフェンス様相

    ブルーレブズも、イーグルスと同様に相手のアタックにある程度差し込まれているような様子が見られました
    状況としては、ディフェンス間のスペースに入られることによってダブルタックルの精度が少し下がり、1対1の繰り返しになっていました

    イーグルスはモメンタムを出しながらアングルをつけたキャリーを得意としているため、このアングルをつけたランニングに一定数やられていたように感じます

    また、苦手としていた状況として、ゲインされた後のディフェンスに乱れが出ていました
    それ以外のチームでも見られる傾向ではありますが、今回の試合では顕著な動きが見られています

    特徴としては、ブルーレブズのディフェンスの優先順位として、ゲインをされた後はまず9シェイプの位置を押さえようとします
    近くにいる選手に合わせて、少し外側の位置に入っている選手も、寄るような動きを見せます

    イーグルスは、ゲインした後のフェイズにスイベルパスを挟んだ打点をラックから話す動きを見せることが多く、このラックからボールが離れる動きでラックに近い選手が切られてしまい、薄くなった10シェイプの前方に立つエリアを攻略、または攻略されそうになる状態が生まれました

    ただ、一般的な階層構造、表と裏の関係については非常に丁寧にディフェンスをしており、詰めすぎず引きすぎずといった、バランスの良いディフェンスをしていました
    それが、大まかな領域で相手のアタックを止めることができたことにつながっています

    選手にもよりますが、フロントドアを切ってバックドアの選手に詰める「スイム」の動きもきっちりできていました
    イーグルスのアタックが、基本的には裏ベースのアタックをしていたことも影響しているかと思います

    まとめ

    初戦ということもあり、両チームともに反省材料がいくつか得ることができた試合ではないかと思います
    修正が効けばイーグルスにも勝利の可能性は十分にあり、またブルーレブズも修正で相手を圧倒することもできるでしょう

    今回は以上になります
    それではまた!

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:天理大学対京都産業大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:天理大学対京都産業大学

    いざ大学選手権へ!関西大学ラグビーAリーグ最終節、全勝対決を徹底分析

    2025年11月30日(日)、関西大学ラグビーAリーグの最終節は、ともに無敗で迎えた京都産業大学天理大学全勝対決となりました。勝った方がリーグ優勝という、まさに大一番。緊迫した戦いの末、王座を掴んだのは天理大学でした。

    最終スコア47-15。天理大が強靭なフィジカルと卓越したエリアマネジメントで勝利を収めたこの熱戦を、徹底的に分析します。

    試合展開:前半は天理大の決定力が光る、後半は京産大が意地を見せるも及ばず

    前半:天理大の「一発で取り切る」破壊力

    先手を取ったのは天理大。10番を軸としたワイドな攻撃シェイプに対し、前がかりになった京産大ディフェンスのギャップを突き、SH朝倉達弥選手が走って先制トライを奪います。対する京産大も、9シェイプからショートサイドを攻め、天理大のディフェンスミスを誘発しました。10シェイプから巧みに防御ラインをずらし、FWのラインブレイクからNO8シオネ・ポルテレ選手に繋いでトライを返します。

    前半の入りは、互いに敵陣22mラインに侵入すれば、「一発でトライを取り切る」決定力の高い展開となりました。天理大はペナルティーからのラインアウトモールで追加点を挙げ、さらに1-3-3-1ポッドを軸にエッジの選手が柔軟に入れ替わるスタイルでアタックを継続。主に10シェイプでFWがキャリーし、強烈なドライブと要所でのスイベルパスを使い外までボールを運んでいました。

    京産大ディフェンスは押し込まれながらも、ブレイクダウンへの絡みと、外側でのナブラギ・エロニ選手の粘り強いディフェンスでターンオーバーを奪う場面もありました。しかし、天理大の敵陣22m内での決定力とFWの強さが目立ち、前半は21-8で天理大リードで折り返します。

    後半:天理大の支配的な展開

    後半開始直後、天理大は相手のキックミスからエリアを取り、得意のラインアウトモールで押し込んですぐにリードを広げます。

    京産大は、ポルテレ選手やLOの石橋チューカ選手といったキーマンをショートサイドに配置して崩しにかかるも、天理大の外側のディフェンスの素早い上がりに阻まれ、なかなか崩しきれません。ラインアウトの獲得にはノージャンプを取り入れるなど修正を見せますが、ゴール前での天理大の強固なディフェンスにトライを阻まれ続けます。

    天理大は、大学屈指のSOである上ノ坊駿介選手のパスとキックを軸としたエリアマネジメントが冴え、50-22キックキックパスを成功させるなど、キックで前進を続けます。鋭いタックル精度と素早いディフェンスセットアップで支配的な展開を続け、京産大のミスを誘発しました。アタックではシンプルな9シェイプでもトライを取り切る強さを見せつけました。

    京産大は、後半の中でも終盤、バックドアを経由して外側へボールを供給する形に修正し、エッジからエッジへとボールを運ぶ見事なトライへ繋げました。修正力の高さを見せましたが、前半の失点とラインアウト獲得の苦戦が響き、リードを覆すには至りませんでした。


    京都産業大学

    【今シーズンの京都産業:伝統のFWと充実のバックス】

    京産大は今シーズンもここまで全勝で、リーグ最終戦に臨みました。チームの根幹を成すのは、伝統のラインアウトモールとスクラムを軸とした強固なFW陣です。平均体重100kgを超える重量級のパックは、セットプレーでの優位性を確保し、試合の流れを掴む最大の武器です。

    ディフェンスにおいては、ブレイクダウンの接点で激しくボールへと絡み、ターンオーバーやペナルティーを誘発し、ディフェンスからアタックへの流れに乗るスタイルを徹底しています。さらに、バックスには、春から好調のCTB奈須貴大選手や、しなやかなランニング能力に長けるWTBナブラギエロニ選手といったフィニッシャーが揃い、攻撃の選択肢は多岐にわたります。試合前のコメントからも、この一戦にかける並々ならぬ想いが強く伝わってきました。

    京産大のアタック:ショートサイドへのこだわりと後半の修正力

    京産大のアタックは、「ショートサイドを意図的に攻める」という狙いが明確でした。広いサイドへの仕掛けよりも、狭いサイドでの数的・質的優位を狙い、天理大ディフェンスのノミネートミスを誘おうと試みました。特にポルテレ選手や石橋選手といった強力なランナーをショートサイドに配置し、起点を作る意識が高かったです。

    後半、天理大の前に出るディフェンスに苦戦する中で見せた、バックドアへ直接経由し、外側へボールを運ぶスタイルは、高い修正力と判断力を示しました。必要以上にパスを増やさず、FWは縦のダミーランに留め、その裏のバックドアへ供給する形は、相手をうまく攻略できていたと言えます。このエッジからエッジへの展開からトライを獲得したシーンは、今後の大学選手権に向けた大きな収穫と言えます。

    一方で、ラインアウト獲得に苦戦した点は大きな課題となりました。具体的な数値としては59%(10/17)と、天理大学にスティールされる場面も含めて不安定な攻撃起点となっていました。特にゴール前でのラインアウトの不安定さが、決定機を逃す要因となりました。また、天理大の前に出るディフェンスに対して、ハンドリングエラーやパスコースの不足からミスをする場面も見受けられました。

    京産大のディフェンス:ブレイクダウンへの圧力とコリジョンの課題

    京産大のディフェンスは、個々の選手がテイクダウンを取るタックル精度は悪くありませんでした。押し込まれながらも、ブレイクダウンには絡み続ける圧力をかけ、外側ではエロニ選手のディフェンスでターンオーバーを奪うなど、粘りを見せました。

    しかし、天理大の強力なFWキャリーとブレイクダウンの強さに対し、ドミネートされる場面が続き、ディフェンスラインが後手に回ってしまう展開が目立ちました。特にコリジョンの部分で差し込まれるフェーズが多く、ゲインを許しがちになり、苦杯をなめる原因となりました。自陣側ではポゼッションではなく、テリトリー優先でロングキック中心の選択をし、ラインアウトのクイックスタートを多用するなど、工夫も見せていました。


    天理大学

    【今シーズンの天理大学:圧倒的なディフェンスとSO上ノ坊の統率力】

    今シーズンの天理大は、その圧倒的なディフェンス力が特筆すべきポイントです。関西リーグでここまで失点はわずか「55」、1試合あたり「11」失点という数字は全国トップクラスの堅守を物語っています。特に自陣22mに入られてからのモールディフェンスとFWによる近場のディフェンスは鉄壁で、1人1人のコンタクト強度がもう一段階ギアが上がる印象を受けます。

    その一方で、得点力も合計315得点と関西リーグで圧倒的なスコア力を誇り、攻守ともに盤石の状況が伺えます。これを支えるのは、キャプテンであるSO上ノ坊選手です。ランニング、キック、パスの全てを高いレベルで使いこなし、試合展開や時間帯によって自分の色の出し方を巧みに操る統率力でチームを牽引しています。加えて、FW陣の重量と機動力が今年も健在であり、穴のないチームを作り上げています。

    天理大のアタック:圧倒的な継続率とエリアマネジメント

    天理大のアタックは、「圧倒的なブレイクダウンの強さ」「高い継続率」が今年の最大の武器であることを証明しました。10シェイプを中心にFWがタックルを食いながらもドライブし、1人でもボールプロテクトできるブレイクダウンの強さによって、ターンオーバーされないポゼッション力を誇りました。

    1-3-3-1の配置を軸にエッジの選手が柔軟に変わるスタイルで広範囲を使い、アタックリサイクルも精度とスピードが早く、外側に次々とチャンスを創出しました。特にゴール前では、11人モールを披露するなど、FWの強さを最大限に生かした決定力は驚異的です。

    また、この日のSO上ノ坊選手はランニングよりもパスとキックを軸にゲームメイクしており効果的なエリアマネジメントでチームを前進させています。合わせて、50-22キックやキックパスといった高い足技のスキルで魅了しました。エッジのFLアリスター・サウララ選手効果的なオフロードパスも、アタック優勢に大きく貢献しました。

    加えて、敵陣22mに入ってからのアタックでは、ほとんどアタックオプションを封印し、戦術的な駆け引きは見られませんでした。あくまで個人的にですが、大学選手権へ見据えての布石ですらあるように感じました。 

    天理大のディフェンス:ダブルタックル意識と支配的なプレッシャー

    天理大のディフェンスは、非常に支配的でした。ダブルタックルの意識が高く、鋭く前に出ることで、京産大のモメンタムを寸断しました。特にミドルゾーンのプレッシャーに比重を置き、外側をある程度捨てることで、京産大にモメンタムを作らせない狙いが明確でした。

    一人一人のタックル精度とディフェンスのセットアップが早く、ほとんど後手に回ることがありませんでした。詰め切るディフェンスが有効に機能することで京産大のハンドリングエラーやミスを誘発。さらには、ハイパントからのラッシュとターンオーバーを引き起こすなど、守備から攻撃への切り替えも機能していました。

    ラインアウトディフェンスからもプレッシャーをかける狙いを持っており、自陣22m内ではハイパントではなく、ロングキックによるタッチキックを選択するなど、状況に応じた賢い判断も見られました。


    まとめ:天理大が示した王者の貫禄、京産大は修正力に期待

    全勝対決を制し、関西リーグ王座に輝いた天理大学は、アタックにおける圧倒的なブレイクダウンと継続率、SO上ノ坊選手を中心とした巧みなエリアマネジメント、そして決定力の高いバックスリー陣という、盤石の強さを見せつけました。後半終盤まで持続した鋭いディフェンスを武器に、大学選手権へ突き進みます。

    敗れた京都産業大学は、ラインアウト獲得の不安定さと、ディフェンスにおけるコリジョンで差し込まれるフェーズの多さが響きました。しかし、ラインアウトモールでの強さや、後半に見せたエッジからエッジの攻撃を含むアタックマネジメントの修正力は、今後の全国での戦いに大きな期待を抱かせます。

    両チームともに、この激戦を経て、関西の代表として「日本一」という目標に向かい、大学選手権へ挑みます。

    では。

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:早稲田大学対慶應義塾大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:早稲田大学対慶應義塾大学

    伝統の早慶戦、早大の超速ブレイクダウンが勝利を呼んだ!慶應義塾との緻密な戦術戦

    2025年11月23日、ラグビー関東大学対抗戦のクライマックスを飾る伝統の一戦、第102回早慶戦が、熱気溢れる秩父宮ラグビー場にて開催されました。会場には1万5164人の観衆が集結し、両校の意地とプライドが激しくぶつかり合う舞台を見守りました。結果は、対抗戦首位を走る早稲田大学が慶應義塾大学を49-21というスコアで下し、勝ち点を「32」まで積み上げ、首位を確固たるものとする圧巻の勝利を収めました。

    しかし、このスコアの裏側には、両校が練り上げた戦術システムが高度に交錯する、戦術的な深みのある攻防が展開されていました。早稲田の「1421」ポッドに代表される流動的かつ多角的なアタックと、慶應の「1331」を起点とした継続アタックの応酬は、現代ラグビーのトレンドを象徴するものでした。本記事では、この激闘を詳細な戦況分析、アタック戦略、ディフェンス戦術、そしてデータ分析の各側面から解説します。

    試合展開:互いに譲らないポゼッションラグビーと早大の爆発力

    試合はキックオフ直後から、早稲田が準備してきた多様なアタックオプションを惜しみなく披露し、主導権を握る展開となりました。

    早稲田は、敵陣に入るとすぐにFWが縦に突き刺さる「3311」のポッドを起点に慶應ディフェンスを崩しにかかります。センターを中心とした縦への強いアタックと、それをサポートする9番を起点としたボールムーブメントが機能し、瞬く間に優位な状況を作りました。そして、早々にスクラムでのペナルティーを獲得すると、このチャンスを逃さずラインアウトモールを押し込み、HO清水健伸選手がこの日最初のトライを奪います。

    清水選手は、このモールアタックの猛威を体現するかのように、前半だけで立て続けにトライを重ね、最終的にこの日4トライという驚異的な決定力を発揮し、勝利の立役者となりました。

    早稲田は中盤左ラインアウトからの右オープン攻撃では、日本代表のFB矢崎由高選手が相手ディフェンスラインを切り裂くダイナミックなランで大幅ゲイン。この流れるようなアタックから、NO8粟飯原謙選手CTB福島秀法選手との巧みなパス交換を経て、粟飯原選手がトライを奪うなど、キープレーヤーが躍動し、早稲田の攻撃に勢いをつけました。

    対する慶應義塾も、ただ守るだけでなく、戦術的な深さを見せます。ターンオーバーから数フェーズ動かした後、10番小林祐貴選手からのハイパントキックで陣地を挽回し、再獲得する場面もありました。しかし、モールからアタックを仕掛けるも、サポートの遅れから早稲田のジャッカルを許すなど、再三トライチャンスを逃しました。このブレイクダウンの攻防こそが、試合の主導権を握る上で大きな差となりました。

    試合中盤、早稲田の13番福島選手は、大学トップクラスと評されるオフロードパスで慶應ディフェンスを切り裂きます。右サイドでの広いレンジでのギャップを突いたオフロード、そして直後のフェーズでの左サイドでのアシストは、福島選手の突出した突破力と視野の広さを証明しました。

    一方、慶應は9番橋本弾介選手のロングパスから、内側のディフェンスを切り崩す効果的なアタックを展開。橋本選手と12番今野椋平選手が接近して相手を引きつけ、ギャップを創出するサインプレーを繰り返し成功させ、同じ形からトライを奪うなど、サインプレーの精度と遂行力の高さを見せつけました。

    早稲田は前半終了間際にも、ラインアウトからのサインプレーで清水選手がこの日3本目となるトライを奪い、35-7で前半を折り返しました。後半も主導権の奪い合いは続きます。慶應も意地を見せ、ラインアウトモールからワンチャンスで追加点を挙げるなど奮闘しますが、早稲田の猛攻を最後まで止めることはできず。最終的に早稲田が2トライを追加し、49-21でノーサイドを迎えました。


    早稲田のアタック:多角的なポッドシステムと超速ブレイクダウン

    早稲田のアタックは、複数のポッドを効果的に使い分ける多層的なシェイプによって、慶應義塾ディフェンスを攻略しました。
    早稲田のアタック戦略の中核を担ったのが、流動的な「1421」のポッドシステムでした。

    • 司令塔の移動とアタックの流動化: 試合中盤、早稲田が中盤から展開した際には、FB矢崎選手がサイドライン際からミドルエリアへ移動してくるという戦術的な動きが見られました。この動きにより、アタックの起点が流動的になり、ディフェンスは早稲田の攻撃の「狙い」を掴むことが極めて困難になりました。
    • ミドル4人ポッドの優位性: 試合を通じて、このポッドを使い続け、特に4枚並ぶFWが効果的に機能していました。ラックから2番目あるいは3番目の選手が1stレシーバーになるオプションをもち、さらに両サイドにティップパスを繰り出すこと、あるいはスイベルパスでBKへ供給するなど、複数オプションを高精度で持ち続けました。その結果、慶應ディフェンスはキャリアを絞り切れない状態に陥りました。この構造的な優位性が、継続的なゲインを可能にしました。また、ショートサイドのシーケンスを巧みに使いながらゲインを重ねるなど、エリアに応じたポッドの運用が完璧でした。
    • 超速のブレイクダウン: このポッドアタックを成功させた最大の要因は、ブレイクダウンのリサイクルの速さです。超速でボールを捌くことで、慶應ディフェンスが整うわずかな時間すら与えず、常にアタック側の優位性を維持し続けました。

    チームの戦術的自由度と個の突出

    • 服部選手の戦術的自由度: SO服部亮太選手は、FWの裏側に位置したり、逆サイドから移動してくるためディフェンスとしては掴みづらい展開を作り出しました。ブラインドサイドでのシーケンスでは、WTB田中健想選手がファーストレシーバーに入り、FWの縦ランに対して裏のBKへパスするシーンや、ラックサイドをSHから受けて攻撃するシーンなどその戦術的な自由度を見せてくれました。
    • 後半の戦術調整: 後半、早稲田は明らかに意図して10シェイプを増やしましたが、序盤はエッジでスペースが狭くなりあまり有効なアタックではなかったという反省点もあげられます。しかし、すぐに折り返しの9シェイプのティップパスで大きくブレイクするなど、修正能力の高さも見せつけました。
    • 福島選手の突破力: 13番福島選手の個人能力は群を抜いており、広いレンジでのギャップを突いたオフロードパスや、「行き詰まったところでも前へ持っていける力」を発揮し、早稲田アタックの大きな推進力となりました。

    慶應義塾のアタック:継続重視のポッドとフルバックの役割

    慶應義塾は、早稲田の高速アタックに対して、フィジカルを前面に出した継続重視のポッドシステムと、粘り強いディフェンスで対抗しました。
    慶應のアタックは、一発のゲインよりも継続性ポゼッションを重視する設計となっていました。

    • 細かいポッドでの継続: 慶應の基本的なアタックは、「ポッドを細かく当てながら継続する」印象を受けました。これにより、ラックサイドのフィジカル勝負で優位に立ち、ディフェンスを徐々に消耗させることを狙いました。
    • 13211の形での展開: およそ4〜5フェーズを重ねた段階で、「13211の形から10シェイプ起点に外まで運ぶ形」が見られました。これは、FWで中央を固めた後、バックスとのバックドアオプションを組み合わせてワイドに展開し、フィニッシュを狙うという、緻密に練られたシェイプです。
    • FB田村選手の柔軟な役割: FB田村優太郎選手は、前半は比較的内側でコントロールするタイプとして機能しましたが、後半には「外側でゲインを切ったり、外側へ運ぶ役割も担っていました。状況に応じて役割を柔軟に変化させました。

    ただ、試合を通じてブレイクダウンが安定せず、出したい場面でボールに絡まれてしまい、ターンオーバーされてしまったことは今後の課題と言えるでしょう。

    慶應義塾のディフェンス:バックスの粘りとブレイクダウンの圧力

    慶應義塾のディフェンスは、個々のタックル精度粘り強さが際立っていました。

    • タックル精度: 慶應義塾のディフェンスは、タックル精度とテイクダウンを取り切る部分は申し分ないレベルであり、特にCTB安西良太郎選手(1年)がモストインプレッシブプレーヤー(MIP)に選出されるなど、タックルの強度と粘りは際立っていました。早稲田の猛攻に対しても、「完全なブレイクは許さず粘りでタックルからミスを誘う」我慢強さがありました。
    • ブレイクダウンの課題: 一方で、早稲田の高速ブレイクダウンに対しては、プレッシャーをうまくかけられず、テンポを遅らせることができなかった。という課題を残しました。このブレイクダウンでのプレッシャーが、早稲田に連続アタックを許し、失点に繋がる大きな要因となりました。

    データから見る:バックライン重視のアタックとセットピースの安定 

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    この早慶戦は、両チームが明確な戦術的特徴と高い実行力を示した一戦であり、スコア以外のデータからもその傾向が読み取れます。

    1. バックラインへの供給と外側キャリー

    両チームの最も大きな特徴は、現代ラグビーで主流となりつつあるバックラインへのパス供給の多さです。9シェイプが中心のチームも多い中で、10シェイプとバックラインへのパスが多く、外側でのキャリーが多いという点が際立っていました。これは、FWのポッドにボールを当てるだけでなく、より多くのバックスプレーヤーを絡ませ、ディフェンスのワイドな展開力を重視し、高度なポゼッションラグビーが実践されたことを示しています。早稲田が後半に意図して10シェイプを増やしたことも、この傾向を裏付けています。

    2. 安定したセットピースと決定力

    • セットピースの安定性: 両チームとも、安定したセットピースがこの試合のハイテンポな展開を支えました。特に早稲田は、ラインアウトは13/14という高い成功率で攻撃起点を確保。これは、HO清水選手の4トライに繋がったモールや、緻密なサインプレーの基盤となり、今後の大学選手権でこの安定性をキープできるかが鍵となります。
    • 早稲田の決定力とスコアバランス: 早稲田は22メートル決定率も58%と好調でした。ミスして取りきれない場面もありましたが、すぐさま侵入しスコアまで持っていける力は健在であり、モールの強さ、ポゼッションからの連続攻撃、そしてスクラムでの優位性と、様々なスコアバランスを持っていることは、大きな脅威をなっていました。
    • 慶應義塾のスコア力: 慶應義塾に関しても、モールやラインアウト起点でスコアへ繋げるシーンがあり、スコア力は十分上位校に劣らないことが分かりました。これは、慶應のFWの強さと、セットプレー周りのサインプレーの精度が高いことを示しています。

    3. キックゲームの展開

    この試合は、キックが少なかったため、ボールがよく動き互いのポゼッションラグビーがかいまみえた試合展開となりました。

    • 早稲田のポゼッション重視: 早稲田はハイパントを使わず最低限のロングキックに留め、中盤からポゼッションを重視する戦略を採用しました。
    • 慶應義塾の戦術的キック: 慶應は自陣深くはロングキックを使いながらも、中盤はアタックが詰まったところでオープンハイパント、ボックスハイパントを使い分けプレッシャーをかけていたことが分かります。これは、早稲田のポゼッションアタックに対する、「陣地回復」「プレッシャー」を狙った緻密な駆け引きであり、キックの意図が明確な質の高いゲームとなりました。

    まとめ:戦術の差異が結んだ大差と大学選手権への課題

    この日の早慶戦、最終スコア49-21という結果は、早稲田の「1421」ポッドに代表される多角的なアタックシェイプと、それを可能にした超速のブレイクダウンが、慶應義塾の「1331」を軸とした継続アタック粘り強いディフェンスを上回ったことを示しました。

    早稲田は、HO清水選手の4トライに象徴されるセットプレーからの決定力と、福島選手の突出した突破力、そして野中健吾主将のリーダーシップが融合し、対抗戦首位にふさわしい総合力を証明しました。データからも裏付けられたバックラインへの多様な供給安定したセットピースは、早稲田の強固な基盤を示しています。今後の戦いに注目です。

    慶應義塾も、戦術的な準備と個々のフィジカルの強さを見せつけましたが、ブレイクダウンのスピードという現代ラグビーの生命線で早稲田に一日の長がありました。しかし、モールやラインアウトからスコアに繋げる力は上位校に劣らず、大学選手権に向けた大きな自信となるはずです。

    伝統の一戦で得た経験と課題を糧に、両チームとも大学日本一を目指す最終調整へと進んでいくことになります。この激闘が、今後の大学ラグビー界の行方を占う重要な一戦であったことは間違いありません。

    では。

    (文:山本陽平)

  • 【マッチレビュー】2025ジョージア代表マッチプレビュー

    【マッチレビュー】2025ジョージア代表マッチプレビュー

    日本代表との試合に向けて

    みなさんこんにちは
    日本代表の試合も、残すはジョージア戦のみとなりました

    今回は、そのジョージア戦に向けて、ジョージア代表がこの秋戦ったアメリカ戦とカナダ戦を振り返りながら、どのようなチームであるかを確認していきたいと思います

    ◆ジョージアのアタック構造

    ジョージアのアタックは、基本的には構造的に大きく崩そうという動きというよりかは、接点で相手を上回ることでリズムを作り出そうとするイメージです
    セットピースから始まるストライクプレーでも前に出る意識が強く、個々人の強さでの打開を図ってきます

    アタックのベースになるのは3人ポッドで、接点を安定化させながらも3人ポッドによる「アタックの硬さ」を生かしながら前に出てきます
    12番も積極的にポッドに入って接点を作ったりと、チーム全体としてポッドをベースにしていることがわかります

    基本的な比率としては1−3−3−1になっているかと思いますが、停滞したときは3人ポッドをエッジ方向に回り込ませて3−3−2を作ったり、セットピースからの連続フェイズで中央の6人を4−2でスプリットしたりと、多くの工夫が見られました

    基本的なトライ構造としては、後述するセットピースで圧倒し、敵陣深くにキックで入るところから始まります
    敵陣深くから始まったポゼッションでポッドをベースとして連続アタックを繰り広げ、相手のディフェンスをラック近くに誘導することで生まれる外方向の数的優位性を生かし、BKで取り切るという形がアタックの土台になっていました

    ポッドの使い方もうまく、できるだけ外側の相手にコミットするように、少し流れながら相手との接点を作ります
    そのことによって相手ディフェンスはより一層ラックを挟んで反対方向にフォールディングをする必要が生まれ、そこが滞ると外方向への数的優位が生まれる、という構造になっています

    また、アタックの脅威度という意味ではBKの攻撃力も無視できません
    14番のシャルバ・アプチアウリはカナダ戦でハットトリックを達成していたりと、バックスリーに走力のある選手が揃っており、ラインアウトモールといったセットピース起点のトライと同じくらい、バックス展開を使ったトライも見られています

    BKがリードするアタックの形としては、スイングと呼ばれる形が好んで用いられていました
    スイングとは、ラックやセットピースの裏、または反対側からアタックラインに対して回り込むように参加し、後出しで数的優位を作り出そうとする動きです

    ジョージアのBKはセットピースからのシークエンスなどで好んでこの動きを用いており、基本的なフォーマットとして定着していることが予想されます
    全体的にミスも少なくないのでチャンスを作りきれないシーンもありますが、日本代表はスイングで数的優位を創られることに後手に回る傾向もあるので、安易な楽観視はできません

    ◆ジョージアのキック戦略

    ジョージアのキックの基本戦略は「パント&ラッシュ」にあると考えられます
    つまり、高い軌道のボールを蹴り上げ、確保した相手選手に激しいプレッシャーをかける動きをベースにしています

    グラウンドのハーフラインから自陣22mまでの間のエリアでは、特に好んでこのパント&ラッシュを使っており、相手にプレッシャーをかけてターンオーバーを果たしているシーンが散見されました

    再獲得を狙っているシーンも見られてはいたのですが、平均的な飛距離は20〜25mあたりと再獲得を狙うボックスパントとしては少し長めの印象で、再獲得にそこまでこだわっていないのではないか、と予想しています
    ただ不安定なだけ、という可能性もあるので、ここはさまざまな意味でも注意が必要ではないかと考えました

    パント系のボールを再獲得ができた際は、かなり早いフェイズで相手の裏に蹴り込んでくることがあります
    エリアのコントロールはかなり意識している様子で、敵陣22mよりも自陣側のエリアからでも中盤でそこまでキャリーを繰り返さずに裏を狙う様子が普段のフェイズでも見られています

    ただ、相手のキックを踏まえた全体的なキック戦略という観点でいくと、不安定な様相も見られています
    想定した位置関係が甘いのか相手のロングキックで裏を取られるシーンが散見され、バックフィールドの選手が後退してボールを確保しにいくシーンが散見されていました

    相手のパント系のキックに対しても、クリーンキャッチの精度はそこまで高くないように見えます
    ディフェンスに参加していたフロントラインの戻りも遅く、ミスへの対応が後手に回ることもありました

    ◆ジョージアのセットピース

    ジョージアの強みは、周知の事実となりますが、何よりもFWによるセットピースです
    スクラムもラインアウトも強烈で、相手のペナルティを誘発したり、いい形でのポゼッションを作り出したりと、セットピースの強さからアタックの安定感を出しています

    特に、ランキング下位の国との試合ということもあってか、スクラムでは2試合とも相手を圧倒しており、どちらボールでもスクラムペナルティを獲得したり、反則にならずともクリーンに相手ボールをスクラム内で奪ったりしていました
    早い時間帯では反則を取られるシーンもありますが、勘を掴んでくると手がつけられなくなる印象です

    また、ラインアウトからのモールも強力で、2試合でも複数のモールトライを見せています
    ゴール前からは複雑なムーブを使わずにモールを組んで押し込もうとしてくるので、最低限ここからの失点を抑えることが試合のキーになってきます

    一方で、中盤でのマイボールでのラインアウトが安定しているかというと必ずしもそういうわけでもなく、競り合うことによって意外とミスが起きている印象です
    直近の試合であるカナダ戦では73%の獲得率に止まったりと、ここに関しては不安定な様相を見せていました

    ◆ジョージアのディフェンス

    ジョージアのディフェンスは「接点の強さ」「順目に回る意識」がキーになってくるのではないかと見ています
    これまでの項目でも触れてきた通り、接点という観点では安定感があるジョージア代表は、前に出るベクトルが強いディフェンスをしています

    特に9シェイプや10シェイプといったポッドが、キャッチ&ラン、つまり走り込みながらダイレクトにボールを受けるというよりも、ボールを受けてから前に出ようとする動きをする場合には無類の強さを誇っています
    ディフェンス間のスペーシングも狭めで、接点で圧力をかけようとしていることが予想されます

    反面ダイレクトな動きやフラット気味に受けてキャリーを見せる相手に対しては少し受け身になる様子もあり、接点をどちらが優位で作るかによってディフェンスの質が変わってきます

    順目に回る意識に関しては非常に強く、FWの選手も丁寧に順目方向に回ってきます
    オープンサイドにディフェンスの人数をかけることによって、ディフェンス自体の安定感を担保しようとしていることが考えられます

    順目へのフォールディングにこだわる理由としては、おそらくできる限り前に出続けたいという意識があるのではないかと思います
    試合の様子を見ている限り、あまりスライドする形のディフェンスを取らないようにしている様子が見受けられ、ラッシュアップとまではいかないまでも、エッジに立つ選手までしっかりと相手ラインに詰めようとする様子が見られました

    ただ、順目方向への意識と前に出る意識が重なった結果、ラックに近い位置に若干のウィークポイントが生まれている可能性があります

    順目に回る中でそこまでピラーに対する意識が高いわけでもなく、ピラーに入った選手も前に出ることを優先するので、結果的にラックから最も近いスペースが薄くなりやすく、SH役のパスダミーなどで前に出られていました
    もしかすると、日本代表の竹内選手が得意とするようなタックルを受けてからのリリース→再キャリーのフローがハマるかもしれません

    ◆まとめと試合の展望

    ジョージア代表と戦う上では、最低限「セットピース」「接点」で上回る必要があります
    この二つの要素をベースにスコアしたり、アタックのリズムを使ってくるので、ここを封鎖することで相手のアタックを抑え込むことができます

    現状多く注目を集めているのはFW陣ですが、個人的にはBKへの注意も払わなければいけないと思っています
    コントロールされたアタックとエッジでのブレイクを作り出しているのは間違いなくBKのスキルだと思っているので、ここに関してもディフェンスからプレッシャーをかけていきたいところです

    また、「ハイボール処理」「スイングによる数的優位」にも注意が必要です
    日本代表はオーストラリア戦から始まる強豪との連戦で、これらの要素に安定感は出てきたものの後手に回るシーンもありました
    今シーズンの終わりに向けて、これらの要素で相手を抑え込むことで試合を締めることが求められます

    今回は以上になります
    それでは!

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:京都産業大学対関西学院大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:京都産業大学対関西学院大学

    全勝の京産大が試練を突破! 関学のアタックの決定力と粘り!

    いよいよ大学ラグビーシーズンは佳境を迎え、各リーグで熱戦が繰り広げられています。今回は、関西大学Aリーグにおける注目の一戦、全勝を維持する京都産業大学と、4勝1敗で3位に付ける関西学院大学の対戦をレポートします。

    肌寒さが増す中、会場は熱気に包まれ、両チームのプライドがぶつかり合いました。試合の焦点は、やはり京産大の強力なフォワード(FW)陣に、関学大FWがどこまで対抗できるか。そして、関学大の誇る展開力と決定力のあるバックス(BK)陣が、京産大の堅守を破り切れるかに集まりました。

    試合展開:京都産業、リードを許すもセットプレーで逆転

    序盤は京産大がポゼッションとテリトリーを握る展開となりましたが、両チームともにミスやペナルティーが重なり、試合は断続的になりました。ペナルティーの数は両チーム合わせて「33」と規律面での課題はみられました。
    前半、京産大はBKで1本、得意のモールで1本のトライを奪いましたが、対する関学大もモールで2本のトライを奪い返し、12-12の同点で折り返す、手に汗握る展開となりました。

    後半に入ると、関学大が相手のミスから機を掴み、スコアを奪って一時リードします。しかし、京産大はここから真骨頂を発揮しました。10番吉本 大悟選手と9番髙木 城治選手の正確なキックを駆使してエリアを回復し、強力なスクラムからのペナルティー獲得、そしてモールでのトライで得点を重ね、逆転に成功しました。終盤まで関学大は粘りを見せましたが、京産大がリードを守り抜き、28-22で勝利を収め、全勝を堅持しました。


    京都産業大学のアタック:9シェイプを軸とした多角的なアプローチ

    京産大のアタックスタイルは、FWを効率よく配置する「3-3-1-1」「3-3-2」のポッドを基調としていました。特筆すべきは、逆目(ブラインドサイド)への10番選手のランを起点に、ディフェンスのエッジ(外側)を崩そうとする明確な狙いが見られた点です。

    • エッジへの工夫: 普段13番を担うことの多いナブラギ・エロニ選手をウイングに配置するなど、決定力を高める工夫が見られました。また、「3-3-1-1」のポッド配置を用い、エッジに6番石橋チューカ選手5番石川 東樹選手といった強力なFWを配置し、攻略を試みました。
    • シングルラインのブレイク: 最近主流のダブルラインではなく、FW-BK-FWのシングルラインでパスを繋ぎ、走り切れるバックローの能力を活かしたアタックが、最初のトライに繋がりました。
    • ミドルゾーンの苦戦: しかし、1本目のトライ以降はエッジの攻略に苦戦しました。これは、ミドルゾーンにおけるFWのキャリーが前にあまり出られず、有効な状態でエッジに運べなかったことで、関学大の対応を許し、外側へのパスが浮くなどのミスからターンオーバーを招く場面が散見されました。
    • セットプレーの決定力: スコアの多くは、苦戦したラインアウトに代わり、スクラムからのペナルティー獲得(PG)と、モールが占めました。敵陣深くへ侵入さえすれば、そのセットプレーの威力は圧倒的であり、勝利の大きな要因となりました。

    後半からの戦術転換として、キックの多用が成功しました。特にハイパントと、ディフェンスラインの背後を狙うチップキックやグラバーキックが効果的でした。キッカーである10番吉本選手の精度はもとより、バックスラインの洗練されたキックチェイスが功を奏し、狙いを持ってエリアを支配しました。自陣からハイパントを使い、ボールの再獲得に成功していたことは大きな影響力を持っていました。また、前半から後半にかけて軸を変えながら試合を進められる力は今年の大きな強みだと言えます。


    京都産業大学のディフェンス:速いラインスピードと重いブレイクダウン

    京産大のディフェンスは、全ての接点において圧力をかけることを重視し、ラインスピードの速さが光りました。

    • 個々のタックル精度: 個々のタックル精度が高く、タックル後のラックファイトでも押し返す意識が非常に強かったと言えます。
    • ミドルゾーンの封鎖: 外側へのボール展開を許すシーンが少なく、12番那須選手の的確なボールタックルなどでピンチを未然に防ぎ、ミドルゾーンを効果的に閉ざすことができました。

    ただ、課題点としてペナルティーの多さが目立ちました。タックルの高さやオフサイドなど、規律の面で反則が重なり、自ら勢いを止めてしまう時間帯があり、苦戦の要因となりました。


    関西学院大学のアタック:10シェイプとモールの決定力

    関学大のアタックスタイルは「1-3-3-1」を基本としながら、1年生SO新井 竜之介選手を起点とした「10シェイプ」を中心に組み立てられました。

    • 展開ラグビー: ポッドで細かく当てにいくより、深めのパスを介してバックドアを使ってエッジまでボールを動かすスタイルで、ボールを早く散らすことで前進を図りました。
    • ターンオーバー後の縦への意識: ボールポゼッションする時間は京産大に比べて少なかったものの、ターンオーバー後は横だけでなく縦へのキックを効果的に使用し、エリアとチャンスメイクを狙いました。
    • モールの脅威: この試合で最大の武器となったのがモールです。ゴール前では「オール面」「6面」など様々な形でボールを獲得し、強力な京産大FW相手にも押し込み、2本のトライに繋げました。アタック継続が難しい状況でも、ディフェンスでのペナルティー獲得から敵陣に入り、モールでトライを取り切る展開は、関学大の大きな収穫となりました。

    関西学院大学のディフェンス:ミドルゾーンでの健闘とエッジの課題

    関学大のディフェンスは、ミドルゾーンにおいて京産大のポッドアタックに対して十分に渡り合っていました。

    • ミッドフィールドの圧力: 京産大のポッドが狙いを絞りやすかったこともあり、個々のタックラーが前に出てしっかりと仕留めていました。特に4番池辺 康太郎選手5番梁瀬 将斗選手はミッドフィールドにタイトに立ち続け、3番大塚 壮二郎選手もハードなタックルを連発し、京産大の勢いを寸断しました。
    • エッジの課題: 一方で、エッジ(外側)のディフェンスには課題が残りました。ラックチェイスやボールウォッチのミスから間合いをずらされ、ブレイクや有効なゲインを許すシーンが見られました。頭越しのブリッジパスに対してはスライドで対応できていましたが、鋭いカットパスや、シングルラインで押し込んでくるアタックに対しては後手に回り、ミドルゾーンでのノミネートミスからギャップを生み出し、トライを献上する結果となりました。

    データで見る分岐点:決定率とキック戦略

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    試合結果を左右したデータを分析すると、興味深い傾向が見て取れます。

    両チーム合計でペナルティーが33と多かったこともあり、ラインアウト機会が多発しましたが、京産大が22回で72%、関学大が16回で69%と、両チームとも獲得率が上がり切りませんでした。この「攻撃権の移り変わりやすさ」が試合をぶつ切りにした象徴と言えます。

    次に22mライン侵入回数を見ると、京産大が13回に対し、関学大は5回と大きな差が出ました。しかし、トライ数は互いに3本であり、トライ効率(22m決定率)は関学大が京産大を大きく上回る結果となりました。京産大はPGを選択する場面もあったため一概には言えませんが、アタックの決定率の低さが浮き彫りになりました。

    アタックシェイプの対比として、京産大の9シェイプ主体の近場と安定した攻撃に対し、関学大は10シェイプとバックスボールを軸とした外側へのチャンスメイク、そしてターンオーバーからの素早い動きを特徴としていました。

    キックタイプでは、関学大のロングキックに対して、京産大はハイパントを多用する構図が見えました。特に後半、京産大はハイパントとチップキックを駆使し、キックチェイスによるプレッシャーでディフェンスラインを押し上げ、試合を有利に進めることに成功しました。


    まとめ:セットプレーとエリア戦略が勝敗を分けた激戦

    総じて、ペナルティーが非常に多い試合となり、試合のテンポが失われがちな展開となりました。その中で、いかにペナルティーをスコアに繋げられたかが勝敗の大きな要因となりました。

    京産大は、アタック継続に課題を残しつつも、後半のキックによるエリアマネジメントの成功と、モール・スクラムというFWの絶対的な武器で着実にスコアを重ね、逆転勝利を収めました。関学大は、少ないチャンスを活かした高いトライ効率モールの強さで全勝チームをギリギリまで追い詰めたことは大きな収穫であり、大学選手権に向けて自信となるでしょう。

    京産大は次戦、同じく全勝の天理大学との大一番を迎えます。この激闘を乗り越えた経験は、必ずや次戦に活かされるはずです。両チームの今後の活躍に期待が高まります。

    では。

    (文:山本陽平)

  • 【マッチレビュー】2025ウェールズ代表対アルゼンチン代表レビュー

    【マッチレビュー】2025ウェールズ代表対アルゼンチン代表レビュー

    みなさんこんにちは
    秋が通り過ぎようとしている今日この頃、いかがお過ごしでしょうか

    今回は、今週末(日本時間11/16)に行われる日本代表対ウェールズ代表の試合に向けて、ウェールズ代表対アルゼンチンの試合を確認してショートプレビューを書くことにしました

    それでは見ていきましょう

    ウェールズのアタック様相

    <主なアタック構造>

    ウェールズのアタック構造は、おそらく1−3−3−1、中盤のFWによるポッドにそれぞれ三人のFWを配置する形です
    CTBがポッドロールをこなすことは基本的にはなく、純粋にFWのみのポッドが形成されていました

    1−3−3−1を基本とするアタック構造の方向性は、原則として外方向での数的優位を作ることを目的としています
    中盤で何度か9シェイプをベースとしたFW戦でラックを作り、グラウンドの半分ほどの幅を使って人数をかけてアタックをしていました

    ただ、その基本構造の中で、ポッドの人数は変化します
    1−3−3−1の構造から、2つ目の3人ポッドを2人のポッドと1人のランナーに変化させる1−3−2−1−1、または1−3−1−2−1という形をとっていました

    この構造変化のタイミングはエッジから1つ目のポッドで接点が生まれた後のフェイズで、残った2つ目の3人ポッドから1人の選手が離脱してリードランナー、プレイメーカーの前でダミーのランナーとして走り込み、残りの2人が主にCTBの前に立つブロッカーとして役割を持っていました

    そのため、基本的には外方向にチャンスメイクをする傾向にあり、2つ目の3人ポッドを分割して分けた1人-2人のFWは、原則としてボールを受けない形をとっています
    あくまでもブロッカーとして用いられ、その裏のラインはシンプルな単線構造をとっていました

    ただ、この構造がチャンスを完全に構築していたかというと、必ずしもそういうわけではありませんでした
    なぜかというと、数的に余っている人数が多くないこと、またアルゼンチン側の外側のカバーが比較的早く回り込んでいたことが理由として挙げられます

    <構造の注意点>

    近年のラグビー界では、スイングと呼ばれるアタックプレーが多く見られるようになってきました
    スイングとは、逆サイドやラックの裏、または各選手の裏側から順目方向に回り込むことで後出しで数的優位性を作り出す動きです
    後出しで人数を増やすことによってノミネートがブレたり、外側に大きな数的優位を作ることもできます

    ウェールズは、このスイング、またはそれに類する動きが少なく、あくまでもそのタイミングでそのサイドにいた選手でアタックラインを構築していました
    そのため、数的に多くの余裕を外側に作ることができず、軽いスライドディフェンスでも十分に対応可能な状態になっていました

    ブラインドサイド、ラックから見て狭い方のサイドではエッジでキャリーした選手たちがそのままストレートに下がってきており、形としてはピストンアタックなどの攻略方法もあったとは思います

    ただ、ウェールズはその選択は取らず、広いサイドで一定の数的優位に反応してアタックラインを構築していたので、なかなか相手ディフェンスを偏らせることはできていませんでした

    <キックオプション>

    キックオプションはなくはないのですが、中央に近いエリアからエッジ方向に蹴り込んだハイパントでは相手に獲得されてトライまで持ち込まれたりと、必ずしもいい方向に試合を動かすことはできていなかったように見えました

    9番のトモス・ウィリアムズなど、キックに優れた選手もいましたが、動的な状況の中で停滞を打開できるほどのキックはなく、うまくいかないか単なる脱出に留まるかの二択で揺れていました

    <キーマンとキープレー>

    9番トモス・ウィリアムズはアタックでも重要な役割を占めており、自身で少し持ち出して味方選手を呼び込んだり、そのまま自身で持ち込むことによるゲインを見せていました
    特にゴールに近くなってくるとウィリアムズを柱として接点勝負に持ち込んでおり、打点をパスや持ち出しで切り替えることで効果的なアタックを見せていました

    ゴール前でのピックゴー、または中盤からの選手の判断による持ち出しはウェールズのアタックの脅威の中核を占めるプレイングであり、ゴール前まで来ることができれば高い確率でスコアまで繋げることができていました

    ピックゴーや9シェイプなどで徐々に押し込み、押し広げたスペースに向かって素早くさらにピックゴーを重ねることで、小さいながらも着実にゲインを切ることができ、その動きは特にゴール前で本領を発揮していました

    ウェールズのディフェンス様相

    <主なディフェンス様相>

    ウェールズのディフェンスは、近年の各国のトレンドに比べると、そこまで前にラッシュを仕掛けてくるようなディフェンスではありませんでした
    おそらく数m前進してコントロールする傾向にあり、コンタクトのシーンでは前方向のベクトルはあまり感じられませんでした

    結果として、アルゼンチンの強力なFWによるキャリーに押し込まれることにつながります
    中盤をはじめとする多くのエリアで、サポートをつけながら接点を作るアルゼンチンのキャリーに対して、押し返すことができたシーンは少なく、なかなかゲインラインを下げられない状況が続いていました

    押し込まれがちになることの弊害として、より一層前に出ることができないという負のループも見られていました
    相手のキャリーに差し込まれることによって、ラックを挟んで逆方向に回り込んで人数を調整する動き、フォールディングなどの動きが大きく下がることとなり、相手のボールアウトに対して素早く反応することが難しくなっていました

    <数的劣位への対応>

    また、数的優位を簡単に作られていたことも確認できています
    特にエッジ、15mラインよりも外側のエリアにおいて最終的に2対1を作られてバックスリーに大きく前に出られ、キックやパスを使ってトライまで完結される、というシーンも多く見られました

    この要因としては、先ほど挙げた「接点で前に出られる」という要素のほかに、ブラインドサイドに人数が余っている、という要因が考えられます
    アルゼンチン側がブラインドサイドに残している人数よりもウェールズ側が残している人数が多く、数的優位を作られている形です

    ブラインドサイドに人数が残っている要因として、人数ベースではなく比率ベースでディフェンスラインを作っていることが想像できます

    人数ベースというのは、相手の人数に合わせてラックに対して両サイドの人数をコントロールする形で、比率ベースというのはグラウンドに対して等間隔に選手を並べることでエリアをカバーするという形です

    ウェールズのディフェンスは、見ていると比率ベースであるように見えることが多く、アルゼンチン側がオープンサイドに人数を割いているときであってもブラインドサイドに残っている形が多く見られていました

    接点で前に出られてしまうということもこの傾向に拍車をかけており、接点に人数をかけなければいけない状態が多くなりました
    その結果、順目方向の選手が接点に参加したりすることで順目方向の人数が減り、その減った人数に対して補充としてフォールディングする選手が不足することで、順目方向により一層の数的優位を作られていました

    <キックへの対応>

    キック処理の場面では、ハイボールへの対応に苦慮していた様子が見受けられました
    ボックスキックやハイパントを再獲得され、キック主体のゲインを獲得されることにつながっていました

    この現象の要因として、FBに入ったブレア・マレーの小柄な体格が影響していることが考えられます
    マレーは身体能力が高い選手ですが、身長は173cmと小柄で、ハイボールの競り合いの部分で相手に上を取られるシーンが目立っていました
    対面に入ったサンティアゴ・カレーラスも、極端には大きくないものと183cmと身長でマレーを上回り、ジャンプ力で制空権を押さえていました

    ウェールズのスタッツ

    テリトリーは46%、ポゼッションは47%と、アルゼンチンに一定水準上回れる結果になりました
    特に大きく差をつけられた状態で迎えたラスト10分間ではポゼッションは37%と、終盤は少し切れてしまったような数値を示しています

    敵陣22m内への侵入回数は6回と、14回のアルゼンチンに対して大きく差をつけられる結果となりました
    しかし、侵入回数あたりのスコアを見ると、ウェールズが4.6、アルゼンチンが3.7と順序が逆転する結果になっています

    ここまで述べた内容やこの後触れる内容につなげると、ウェールズはゴール前に行くことができれば高い水準でスコアを獲得することができると言えます
    しかし、戦術的に敵陣22mに入った回数が少ないからこそ、この結果になりました
    同じ比率で侵入回数がアルゼンチンと同水準であれば、単純計算で64点ほどスコアすることができていた計算になります

    ポゼッションの中でベーシックスタッツを見ると、キャリーは134回、パスは183回、キックは26回という数値を示しました
    キャリーに対するパスの比率は1.36と少しキャリー優位の数値でした
    つまり、パスを重ねることなくキャリーに持ち込むことが多いということであり、接点から試合を作ろうとした傾向を示しています

    また、キックに対するキャリーの比率は5.15と、約5回のキャリーが起きるごとにキックをしていると言えます
    ちなみに日本はアイルランド戦でちょうど5という数値をとっているため、日本と同水準でキックをしているということもできるでしょう

    一方でラインブレイクはアルゼンチンの14回に対して6回と控えめな数値を取り、ブレイクを生み出すことはできていませんでした
    ポストコンタクトメーターも100m以上上回られており、構造的にも物理的にも相手により前に出られていたと言えます

    ターンオーバーを見ると、獲得は7回と悪くない数値で、失った回数も14回と相手より少ない数値を示していました
    ただ、それでも勝てないというのが実情であり、ターンオーバーをした後のムーブや、失った後のムーブに課題が残っている可能性もあります

    まとめ

    ウェールズは、スコア効率やターンオーバーというスタッツでアルゼンチンを上回る成果を見せたものの、アタックの停滞やディフェンスの精度で後手に回る結果になりました

    日本代表としては、勝利は十分に射程圏内であると考えられます
    ウェールズ代表を自陣深くに入れず、中盤で試合を動かすことができれば、ウェールズはブレイクスル手段が少ないために大きく前進される可能性も低減することができます

    ただ、逆に言えばペナルティが嵩んで自陣深くに入られたり、接点で前に出られてリズムを掴まれたりすると、効率のいいアタックでスコアに繋げられることも考えられます

    日本代表にとっては年末のバンド分けに向けて絶対に落とすことができない一線でもあるので、注目していきましょう

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:明治大学対慶應義塾大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:明治大学対慶應義塾大学

    激闘、伝統の100回目「慶明戦」極限の攻防、明暗を分けた一瞬

    歴史と伝統が交錯する「慶明戦」は、この日、通算100回目の節目を迎えた。3勝1敗で並び、大学選手権を見据える両雄のプライドが激突した一戦は、極限の緊張感と責任感が渦巻く、まさに「勝負」のドラマとなった。最終スコア24-22で明治大学が勝利を収めたが、その幕切れはあまりにも劇的だった。

    試合展開:明治の戦略的支配、慶應の驚異的な「粘り」と、運命を分けた幕切れ

    試合は序盤から激しい攻防となった。開始10分過ぎ、明治はゴール前のラインアウトから、HO西野帆平選手の抜け出しで先制トライ。しかし、慶應もすぐさま反撃し、ラインアウトからのサインプレーでルーキーFL申驥世選手がトライを返し、同点に追いつく。

    前半、ポゼッションを握った明治は、CTB伊藤龍之介選手を中心にバックス陣が仕掛け、スコアを重ねてリードを奪う。対する慶應は、CTB小舘太進選手・WTB江頭駿選手による狙い澄ましたタックルで明治のアタックを寸断。いぶし銀の活躍で、猛攻を凌いだ。

    後半に入ると、流れは一気に慶應義塾へ傾く。後半頭から投入されたFB小野澤謙真選手(23番)が躍動。しなやかなボディバランスを駆使したランニングでブレイクを連発。その勢いを受け、SH橋本弾介選手、そしてキャプテンのCTB今野椋平選手が連続トライを決め、一気に同点に追いつく。さらに、逆転のペナルティーゴールを成功させ、慶應がリードを奪い明治を追い詰めた。

    対する明治も、ゴール前ではFWの猛攻から最後はバックス陣が走り込みスコア。一進一退の攻防は、残り数分まで続いた。

    試合のハイライトは、終盤72分からのおよそ3分間にわたる明治の連続攻撃だった。慶應はゴール前で25フェーズにも及ぶFWのピック攻撃を粘り強く凌ぎきり、ターンオーバーを達成。最後の逆転への望みをかけ、自陣からアタックを仕掛けた。

    しかし、その最終局面。慶應のキャプテン今野選手が、スコアを勘違いし、ボールを蹴り出してしまうという劇的な試合終了。ノーサイドの笛が鳴り響き、会場はざわめきと共に幕切れとなった。2点差という僅差で、明治大学が伝統の一戦を制した。

    明治大学のアタック:ワールドワイドなポッド戦術と課題

    明治大学のアタックは、ワールドトレンドを随所に反映させた高い戦術を誇示しながらも、決定的な局面での意思疎通という部分に課題を残しました。
    自陣からハーフラインにかけて展開されたのは、ミドルポッドでFWを4枚並べる1-4-2-1というポッドでした。このフォーメーションの意図は極めて戦略的です。4枚並ぶことで、ディフェンスのターゲットを分散させ、シェイプ全体への的を絞らせないことに主眼が置かれています。さらに、ポッド内の3番目のFWがパスを受け、その裏に隠れたスタンドオフへスイベルパスでボールを供給することで、SOがプレッシャーを受けにくくする狙いがありました。

    これは、先日11月1日の「日本 vs 南アフリカ戦」で南アフリカが採用したのと同様の高度な戦術であり、ディフェンスを内側に意識させることで、SOに外側への展開における自由な判断広いアタックレンジをもたらすことを狙ったものです。FWのポジショニングやハンドリングスキル、外側のブレイクダウンスキルを高く要する戦術ですが、明確に狙いを持ってアタックしていました。

    ハーフラインから敵陣22mにかけては、ベーシックな1-3-3-1を並行して使用しました。その中でも、ハーフが持ち出し、ラック裏のFWが回り込んでスペースにキャリーする動きや、ポッド内で外側に位置するFWが鋭角に走り、その裏を別のFWがアウトサイドに走るシェイプを意図的に使っていました、ベーシックスタイルの中に工夫された多彩なオプションを駆使していました。
    キックアタックにおいては、前後半を通じて慶應のタイトなディフェンスラインとバックスペースの間の「ポケットエリア」へのアプローチが徹底されており、チップキックやグラバーキックを巧みに使い分け、エリア獲得だけでなく、アタッキングキックとして機能していました。

    しかし、後半終盤の72分から繰り出されたゴール前での連続攻撃は、明治のこだわりが良く感じられるアタックとなりました。約3分間、25フェーズに及ぶFWのピック攻撃は、慶應の強靭なディフェンスに阻まれ、結果的にターンオーバーを許してしまいました。モールを起点としたピールオフなど、得点に繋がった場面があった一方で、「FWとして取り切りたい」部分がこの試合で強く感じました。バックスラインでの勝負のタイミングやFWを交えたゴール前のアタックは大学選手権に向けてどう修正していくのか楽しみです。

    明治ディフェンス:インサイド集中とウィングの機動力

    明治大学のディフェンスは、全体としてミドルゾーンに重きを置いた前掛かりな布陣が特徴でした。特にタッチラインから15m外側のエッジと呼ばれるエリアの一部は、リスクを承知で捨て気味であり、中央突破やインサイドへの圧力に焦点を絞った配置だったと分析できます。そのため、慶應がバックドアへのパスから外側に展開しようとする際、一瞬ブリッジパスのような形でエッジの頭上を通される場面が見られました。

    一方で、両WTBの白井瑛人選手・東海隼選手のディフェンスレンジが非常に広いため、エッジの対応を卓越した機動力でカバーし、致命的なゲインを許さない場面が多かったです。キックチェイスの精度も高く、キック後すぐにディフェンスラインを形成し、慶應のカウンターに継続的にプレッシャーをかけることに成功していました。また、ラインアウトの要所でのスティールや相手のミスを誘うなど、セットピースでの守備も光りました。

    しかし、後半に崩された場面としては、慶應が採用したミドルポッドでの10シェイプへのプレッシャーが甘くなったことや、そこからのスイベルパスの部分で、ディフェンスラインの整いと外側とのコミュニケーションにわずかなギャップが生まれ、抜かれるシーンが見られました。前掛かりなディフェンスの特性上、ライン間の連携が一瞬でも乱れると、そのギャップを突かれるリスクが顕在化すると言えます。

    慶應アタック:SO小林祐貴選手の牽引と後半の修正力

    慶應義塾大学のアタックは、SO小林祐貴選手を中心としたバランスの良さと、後半の大胆かつ効果的な修正力が光りました。小林選手はランニング、パス、キックの全てを高いレベルで繰り出し、特にフィットネスが低下しがちな後半でも自ら仕掛けることで、チームのアタックを牽引し続けました。

    慶應は1-3-2-2のシェイプを多用しましたが、特に特徴的だったのは2つ目のミドルポッドの扱い方です。明治が比較的シンプルにFWを入れるのに対し、慶應はここを大きく深いラインで保ち、小林選手からバックスラインの選手へ深いパスを返してから外に展開する形を多用しました。これは、単にFWを当て続けるだけでなく、ボールを大きく動かすことで明治ディフェンスを広げ、エッジ側へ有利なボールを運びたいという明確な意図があったためです。

    前半はポゼッションが持てずアタック機会が少なかったものの、トライを取った場面ではラインアウトからのサインプレーが完璧に決まるなど、勝負どころでの得点力を証明しました。後半に入ると、明治ディフェンスが内側に寄る傾向を的確に突き、広めに立つFWの裏のバックスラインに早いパスを供給し、ギャップを突きました。この流れを決定づけたのが、後半から投入されたFB小野澤謙真選手です。彼の鋭いランニングとブレイクは、キックカウンターから特に威力を発揮し、明治のディフェンスラインを幾度となく混乱させました。このチャンスに乗じ、SH橋本選手やキャプテン今野選手がトライに結びつける決定力も見せつけました。

    慶應ディフェンス:組織的な粘りと「プライド」の体現

    慶應のディフェンスは、粘り強さ組織的なセットアップに優れていました。特に順目のセットアップが非常に良く、ポッド攻撃を多用する明治に対して、ディフェンスラインが常に揃っている印象を与え、継続的なプレッシャーをかけ続けました。

    バックフィールドでは、CTB小舘選手やWTB伊吹央選手が、裏へのキックやエッジへの詰めに対する判断力が素晴らしく、ここぞの場面で明治のアタックを寸断する素晴らしいディフェンスを披露しました。ディフェンスラインとバックフィールドの間のスペースに蹴り込まれるキックに対しても、SHやFBの選手がうまくカバーし、致命傷になる場面は少なかったです。

    このディフェンスのハイライトは、何と言っても終盤72分からのゴール前ディフェンスです。25フェーズにも及ぶ明治のFWピック攻撃に対し、一人ひとりが決して飛び込むことなく、正確な1対1のタックルを精度高く遂行。最後はターンオーバーに持ち込むという、まさに「慶應のプライド」が凝縮された、理想的な守りを見せつけました。一方で、バックフィールドの15m外側のエリアに蹴り込まれるケースが散見され、FB陣のポジショニングには、わずかながら課題を残したと言えるでしょう。

    データから見る:エリア優位と決定力

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    データ面では、両チームの戦術的アプローチと結果が明確に現れました。まず、22mエントリー回数で明治が10回に対し、慶應が6回と、明治がエリア獲得で優位に立ったことが示されています。これは、明治が多様なポッドシェイプとキックアタックで優位なエリアにボールを運ぶことに成功したことを意味します。

    しかし、明治は22mエントリー決定率が約40%(4トライ)に留まっており、優位なエリアへの侵入を確実にスコアに結びつけるという点に課題を残しました。後半終盤のゴール前でのターンオーバーも、この決定力の課題を象徴しています。一方、慶應はエントリー回数は少ないものの、得点に繋がるサインプレーや後半の爆発力を発揮しました。

    セットピースに関しては、明治がラインアウト成功率100%(13/13)という精度を見せ、安定したボール供給源を確保していました。両チームともにキックを多用した点は、エリア獲得や戦術遂行においてキックを重要視する、現代ラグビーの傾向を反映したものと言えます。

    まとめ:成長への糧となる伝統の激闘

    通算100回目という歴史の重みを持ったこの「慶明戦」は、両チームが持てる戦術とプライドをぶつけ合った、まさに一進一退の「素晴らしい試合」となりました。

    明治大学は、先進的なアタックシェイプ安定したセットピースという強みを見せた一方、ゴール前での意思統一決定力向上という明確な課題を得ました。慶應義塾大学は、下級生主体の布陣ながらも粘り強い組織的ディフェンスと、後半の修正力という「粘り」の伝統を体現しました。

    しかし、試合のドラマチックな幕切れは、スポーツにおける一瞬の判断の重さを突きつけられました。この経験は、敗れた慶應にとっては精神的な成長への大きな糧となり、勝った明治にとっても、慢心することなく課題に向き合うための貴重な教訓となったはずです。

    対抗戦はいよいよ後半戦に突入します。この激闘を経た両雄が、大学選手権に向けてどれだけの成長曲線を描くのか、その動向から目が離せません。

    では。

    (文:山本陽平)

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:早稲田大学対青山学院大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:早稲田大学対青山学院大学

    「多芸多才」早稲田、盤石の全勝ロード:青学の堅守を上回った「個の力と組織のテンポ」

    今季ここまで全勝と勢いに乗る早稲田大学と、大学選手権出場へ向け負けられない戦いが続く青山学院大学との一戦は、大きな注目を集めました。早稲田はエース矢崎由高選手を欠く布陣でしたが、10番服部亮太選手を司令塔に、FWではHO清水健伸選手を軸とした組織的な戦いが予想されました。対する青山学院は、粘り強いディフェンスを最大の強みとし、SHの利守晴選手を中心とした堅守速攻を企図し、格上撃破への勝機をうかがっていました。

    試合展開:早稲田、驚異の決定力で青学を圧倒。

    試合は、立ち上がりから早稲田が主導権を握り、鋭い出足と接点の圧力で試合の流れを決定づけました。開始早々、早稲田はゲインラインを押し上げるディフェンスから、ラインアウトのターンオーバーを起点にボールを動かし、14番田中健想選手のトライで先制。

    早稲田の圧倒的な圧力に対し、青山学院も敵陣ディフェンスからのターンオーバーを機にモールで一本返す意地を見せましたが、今シーズンの早稲田は個々の能力が非常に高く、自陣側でボールを持っていてもお構いなしにトライへ持っていける「トライレンジの広さ」を誇示しました。

    ポゼッションやテリトリーといった数値では極端な差はなかったものの、早稲田のアタックにおけるトライへの決定率の高さが際立ち、結果として59-12で早稲田が快勝を収める形となりました。

    早稲田のアタック:多芸多才、超速テンポの攻撃

    早稲田のアタックは「多芸多才」という熟語が最も適しており、充実の一言に尽きました。今季の強みである幅の広さが遺憾なく発揮され、特定の戦術に偏重することなくスコアを重ねました。司令塔のSO服部選手に加え、12番CTBの野中健吾選手(キャプテン)が一定のカバーを担うことで、服部選手に自由な選択と意思決定を許容している点が多角的な攻撃の要因だと考えられます。

    トライの起点は、キックカウンターやターンオーバーといったアンストラクチャーな状況から4本、セットプレーや連続攻撃などのストラクチャーな状況から6本(うちモール3本)と、組織的・非組織的の両面で抜け目のない得点力を示しました。特に、外側のチャネル(タッチラインから15メートル内)へのフォーカスが明確でした。さらに、ポッドを飛ばすのではなく、正確にポッドを当てて着実にゲインし、大きく前に出たところでラインを広く取り、外側まで繋ぐ一貫したボール展開が光り、田中選手の決定力も光りました。

    このアタックを支えたのは、今季の大学ラグビーでトップクラスのテンポです。具体的な測定値ではないものの、平均ラックアウトスピードはおよそ2.5秒程度と推測され、リーグワン平均の3.1秒を大きく上回るハイレベルさを誇ります。これは、キャリアのグラウンドワーク、サポートのスイープ力、ハーフのさばく力、次フェーズへのセットスピードが絡み合った結果です。一方で、後半60分以降、ミドルゾーンのFWがスムーズにボールアウトできない、あるいはプレッシャーを受けた際にはミスが生じ、苦しむ場面もあり、今後のハイレベルな試合におけるプレッシャーへの対処が課題として残りました。

    早稲田のディフェンス:先手必勝、接点圧力で圧倒

    早稲田のディフェンスは、キャリアへのファーストコンタクトとインパクトをとにかく意識している点が特徴でした。鋭い出足から強く踏み込み、相手に体を当てることで、ボールへの働きかけやラックへの働きかけといったセカンドアクションを優位に進める形が多く見られました。ダブルタックルは数多くなく、個々が倒しきる理想的な展開が多く、ディフェンスラインを揃え、全体でプレッシャーをかけていました。

    特にミドルゾーンでの接点の凄みは際立っており、青学にボールを持たせることで「アタックさせている」ような状況を作り出し、9シェイプや10シェイプの対面となるFWへの狙い澄ましたタックルが散見されました。ターンオーバーの多くは、少ないフェーズでの絡みやラインアウトからのスティールといったように、狙いを絞ったものでした。

    しかし、後半になると青山学院が狭いサイドを攻撃してくるパターンにゲインを許す場面があり、数的優位を作られていました。加えて、バックラインと大外のスペースが空く場面があり、キックパスで繋げられる場面もあり、連携には若干の課題も見受けられました。

    青山学院のアタック:ショートサイド重視、健闘も及ばず

     戦前から厳しい戦いが予想される中、青山学院のアタックは機会創出と組み立ての点で一定の及第点を与えることができると感じました。攻撃の起点はSH利守選手と後半から出場した小林純岳選手であり、両選手ともに、その積極性とパス捌きが持ち味でした。

    軸としては、広いオープンスペースではなく、ショートサイドに狙いを定めていました。特に13番CTBの内藤基選手はFWも担う選手であり、狭い外側で相手バックスに対して接点を起こし、少しでも前にボールを運びたいという明確な意図が見えました。中盤ではボールポゼッションし、崩したい意図が見られ、プレッシャーを受けながらも、ラストパスが繋がればブレイクを起こすシチュエーションなど、確かにチャンスは作り出していました。

    キックも有効活用しており、ファーストレシーバーを務めるFB井上晴生選手やSO袖山遼平選手からのキックパスといった意図的な戦術も見られました。大学屈指のロングキッカー服部選手にテリトリーで押される場面がありましたが、反対に50-22キックによって大きく挽回するスキルも見せ、空いているスペースへボールを落とす能力を披露しました。ゴール前では、継続できずにミスが発生することもありましたが、トライを奪った場面ではモールが鍵となり、セットプレーを起点とした得点パターンを確立できたことは大きな収穫でした。

    青学のディフェンス:前へ詰める意識、連携に課題

    アタックの個々能力が豊かな早稲田に対して、青学は「前へ間合いを寄せてスペースを奪う」という強い狙いを持ち、強い個に対しては早く刺さるという鉄則を実践しました。しかし、その積極性が裏目に出る形で、横との連携や少しの綻びが、早稲田のハイスピードなアタックによって直接スコアへと繋がれてしまいました。

    特に外側がより前がかりなディフェンスシステムになることで、その内側が追いつけずチェーンが切れてしまう場面がありました。その結果、早稲田大学のランナー達にブレイクを与え、アウトサイドの決定力を許す要因となりました。

    ただし、ディフェンスの全てが綻んでいたわけではありません。No.8角谷銀次朗選手やFLの松崎天晴選手の孤立した一瞬の隙を突く渾身のスティールは、ディフェンスを何度も救いました。また、60分を過ぎたあたりでは、中盤からポゼッションをキープする早稲田のアタックに対して、ミドルポッドへのダブルタックルが有効となり、プレッシャーをかけることができていました。しかし、今回トライを10本許した要因として、自陣から一気に持っていかれるフェーズが多く、バックラインとのコミュニケーションやビッグゲインされた後のセットスピードに課題が残りました。

    データから見る勝負の分岐点

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    まず、最も注目すべきは、両チームの22m決定率です。青山学院大学が10回の敵陣22mエントリーを記録し、早稲田大学の12回と大差ない得点機会を創出できていたにもかかわらず、最終的なスコアは54-12となりました。早稲田は12回の侵入に対して実に10トライを奪っており、その決定率は驚異の約83%に達しましたこれに対し、青学は10回の侵入から1トライしか奪えず、決定率は20%と低迷しました。この「決定力の差」こそが、最終的な大差に直結した最大の要因であり、早稲田の攻撃の効率の良さと、青学のゴール前での精度を示唆しています。

    次に、早稲田のトライの起点を分析すると、キックカウンターやターンオーバーといったアンストラクチャーな状況から4本、セットプレーや連続攻撃によるストラクチャーから6本(うちモール3本)と、組織的なアタックの強さが優勢であり、多角的な攻撃手段を持っていることが裏付けられました。さらに、早稲田は自陣サイドからでもトライを取れるトライレンジの広さを持っており、アタックシェイプもFWへのキャリーが多くなる中でもバックスラインへの供給が多いバランス型であったことも、攻撃の幅の広さを示しています。

    対照的に青山学院は、アタックシェイプで9シェイプを重視し、SHを起点としたショートパス中心のバックスラインでの攻撃意図がうかがえました。また、キック戦術においては、両チームともにハイパントやコンテストキックの使用を控え、ロングキックによるテリトリー取りを軸としていました。敵陣22mエントリー回数の多さを活かせなかった事実は、モールやショートサイドといった得意のパターン以外での得点能力、特にゴール前でのプレッシャー下での取り切る能力に、今後の伸びしろがあると感じます。

    まとめ

    この一戦は、「早稲田の決定力の高さ」と「圧倒的なアタックテンポ」が、青山学院大学の戦術的努力を凌駕した試合でした。

    データが示す最大の着目点は、早稲田の22m決定率83%という驚異的な効率です。青学が敵陣22mエントリー10回という多くの機会を創出しながらも、トライを2本しか奪えなかったこと(決定率20%)と対照的であり、ゴール前でのプレッシャー耐性や精度、判断力が勝敗を分けました。

    早稲田は、日本トップレベルのラックアウトスピードで連続攻撃を仕掛け、ディフェンスラインの連携を断ち切ることに成功。ストラクチャーからのトライ、アンストラクチャーからのトライ共に重ね、完成度の高さを証明しました。また、自陣サイドからでもトライを取れるトライレンジの広さも特筆すべき点です。

    一方、青山学院は、ショートサイドへの明確なアタックプランと、モールや50-22キックといった武器を活かし、一定の成果と多くのチャンスを創出しました。しかし、ディフェンスで個々の力に頼らざるを得ない場面が多く、その綻びを早稲田の「多芸多才」なアタックに見逃されずに突かれた形です。次戦以降、青学はチャンスをトライに結びつけるゴール前での精度向上と、ビッグゲイン後のディフェンスの立て直しが鍵となるでしょう。

    では。

    (文:山本陽平)

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:京都産業大学対立命館大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:京都産業大学対立命館大学

    「間合い」と「プラン」の攻防:全勝京産大が粘る立命館を振り切った勝負の分岐点

    この一戦は、全勝で首位を走る京都産業大学と、一勝目が待たれる立命館大学の対戦であり、単なる星の差以上のドラマを予感させるものでした。特に春季リーグ決勝で立命館が京産大を破っている事実は、立命館が「打倒京産」の策を持っていることを示唆しており、試合前から期待感を高めていました。

    試合展開:主導権とスコアの妙

    試合序盤、主導権を握ったのは立命館大学でした。立ち上がりの1stスクラムでペナルティーを獲得し、勢いに乗ると、SHからのボックスキックと、そこに対する「キックチェイス」によってターンオーバーを連発しました。ポゼッションとテリトリーで優位に立ち、試合を京産大サイドで進めることに成功します。立命館が意図した「キッキングゲーム」と「チェイスによるプレッシャー」が完全に機能した時間帯でした。

    しかし、スコア面で優位に立ったのは京都産業大学でした。少ないチャンス、特にターンオーバーからのカウンターアタックにおいて、走力とパワーを兼ね備える大学屈指のNO8シオネ・ポルテレ選手がトライを奪うなど、京産大は「チャンスを的確にスコアに繋げる」決定力の高さを見せつけます。

    その後の試合は、立命館がポゼッションとテリトリーで攻め込み、京産大が粘り強いディフェンスとカウンター、そしてセットプレーからスコアを重ねるという、一進一退の攻防が続きました。立命館はリードを許しても突き放されない粘りを見せ、緊迫した展開が終盤まで続きます。

    試合の行方を決定づけたのは、後半70分を超えたあたりの時間帯でした。京産大が「伝家の宝刀」であるモールでトライを奪い、立命館の抵抗を打ち破ります。このトライで流れを完全に引き寄せた京産大は、その後も連続攻撃とラインブレイクをスコアに繋げ、最終スコア47-19で勝利。スコア以上に立命館の善戦が光るものの、最終的に京産大が勝ち点5を獲得する盤石の試合運びを見せました。


    京都産業大学:劣勢でも勝ち切る「風格」と「間合い」

    ポゼッション、テリトリーで劣勢に立たされながらも勝ち切った京産大の強さは、その「間合い」と「決定力」に集約されます。

    アタック:「自分たちの間合い」の徹底

    京産大のアタックの最大の特長は、テンポの緩急を巧みに操る「自分たちの間合い」を大事にする点です。 スクラムハーフ髙木城治選手は、ブレイクが起こった際には圧倒的なテンポでボールを捌く能力を持ちながらも、中盤や敵陣22m手前では、あえてFWにボールを預け、個々のフィジカルと近場の圧力を活かす「間合い」でボールを運びます。 

    一方で、一度ブレイクが起きると、ギアを一段、二段と上げてボールのテンポを一気に加速させます。このブレイクの起点を担ったのがCTBの奈須 貴大選手です。絶妙な深さからギャップを見つけ、しなやかなランと力強さでディフェンスラインを切り裂くランニングは今シーズンも健在で、京産大アタックの脅威であり続けました。 試合中盤までは繋ぎの部分や連携にわずかなミスも見られましたが、チーム連携が深まることで、さらに加速する可能性を秘めています。

    FWの間合い:「スクラム」と「モール」

    もう一つの「間合い」は、FWのセットプレーにあります。スクラムは5度のペナルティー獲得でアタックの起点となり、その圧力は健在です。 モールは立命館のサックディフェンスに苦戦し、70分まで封じ込められていましたが、試合を決定づけたのはやはりゴール前でのモールでした。ゴール前まで持っていけば「取り切れる」という絶対的な信頼を持つモールと、近場でのFWの圧力は、京産大の強さの根幹であり、今後も注目です。

    ディフェンス:粘り強さと22m内での精度

    ディフェンスは、ラインスピードに重きを置くより、「ブレイクダウン」にこだわったプレーが多く見られました。特に折り返しの10シェイプや9シェイプでは、6番平野龍選手、7番で主将の伊藤森心選手を中心に飛び出し、素早い接点への圧力をかけました。 

    ブレイクダウンでの圧力はターンオーバーを引き起こす場面もありましたが、テンポよく出された際には次のフェーズで遅れを取り、エッジでゲインを許すケースも散見されました。エッジの人数不足はバックスの個人のディフェンスレンジでカバーしている印象を受けますが、課題として残ります。 

    しかし、特筆すべきは22m内でのフィールドディフェンスの精度です。最大16フェーズにも及ぶ粘り強さで耐え抜き、スティールからペナルティーを獲得したプレーは、この試合の京産大の「我慢強さ」を象徴するものでした。


    立命館大学:「プランアタック」と「キッキングゲーム」の巧みさ

    全敗ながら、立命館大学は試合全体を通して理想的なアタックとキッキングテリトリーを獲得し、京都産業大学を苦しめました。

    アタック:「プランアタックとキッキングゲーム」

    立命館のラグビーは、「プランアタック」と「キッキングゲーム」に集約されます。

    キッキングゲームは、SH香山創祐選手やSO初田 航汰選手からのハイパントキックと、それに続く3人のキックチェイス、ラックへの素早いプレッシャーからターンオーバーを狙うという、高精度な連動を見せ、京産大に大きなプレッシャーを与えました。今シーズンの関西リーグで最もキックを多用し、テリトリー獲得と空中戦を作り出すという両面で、その意識と精度、チェイスのレベルの高さが際立ちました。

    プランアタックでは、事前に用意されたシークエンス(連続攻撃の型)をここぞの場面で繰り出し、スコアに繋げました。特に特徴的だったのは、1322のポッド配置において、通常FWの後ろ(バックドア)に配置されるセンターを、外側に配置し、外側での優位性を生み出す工夫です。このシークエンスはブレイクを生み出し、一気にトライまで取り切る力を見せましたが、ミドルゾーンが手薄になり、ターンオーバーを誘発しやすいという表裏一体の課題も露呈しました。

    FW:ラインアウトの精密さとセットプレーの工夫

    ラインアウトの獲得精度は素晴らしく、17回中15回という高い成功率を記録。5メン、6メン、オールメンを巧みに使い分け、フロント、ミドル、バックへのボール供給に工夫を凝らす獲得の精度は、関西随一の強みと言えます。 また、ラインアウトからモールを意識させた後のピールオフで、イエローカードで人数が少ないディフェンスのスペースを突き、トライを獲得するなど、工夫されたセットプレーアタックは京産大を揺さぶりました。

    課題:ゴール前での仕留めの精度

    立命館の最大の課題は、スタッツにも現れている「ゴール前での仕留めの部分」です。今回のスコアは「22m外から」の攻撃スタートが多く繋がっており、ゴール前まで迫ると、ディフェンスラインが強固になり、プレッシャーを受けてターンオーバーを許すケースが多く見られました。22m内での決定率が勝敗を分けた大きな要因と言えます。

    ディフェンス:ダブルタックルとラックへのラッシュ

    立命館のディフェンスは、ダブルタックルの強度が高く、相手をドミネイトする場面が目立ちました。テイクダウン後の素早い起き上がりとラックへのラッシュがチームとして徹底されており、素晴らしいターンオーバーを引き出しました。前半は規律と共に前へ出るプレッシャーディフェンスが機能していましたが、足が止まる後半終盤にギャップや横の連携が乱れ、崩しきられる場面があり、ここは今後の課題となるでしょう。モールディフェンスについては、サックとファイトを使い分け、京産大の強みを70分まで封じ込めた対策は一定の評価ができます。


    データから見る勝負の分岐点

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    互いにアタックの機会を多く得ていたことがスタッツから裏付けられます。
    最も勝負を分けたのは、互いに10回、11回とあった「敵陣22mエリア内の決定率」でした。立命館は敵陣深くでポゼッションを持ちながら、自分たちの少ないミスを京産大に取り切られるなど、ゴール前での精度の差が敗因となりました。 アタックスタイルにおいては、京産大がFW中心の9シェイプに重きを置くのに対し、立命館が3割近くをバックラインアタックに割いていることは、「外側にチャンスメイクを求める」立命館のプランアタックを象徴しています。

    まとめ

    最終スコアこそ開きましたが、この試合は後半の最後まで勝敗の行方が分からない、非常に質の高い一戦でした。立命館大学は、巧妙なゲームマネジメントと、工夫を凝らしたシークエンスアタック、そして高精度のキッキングゲームという「打倒京産」のプランを披露し、全勝チームを大いに苦しめました。

    京都産業大学は、ポゼッションとテリトリーの劣勢を、大学屈指の決定力、セットプレーの圧力、そして22m内での鉄壁のディフェンスという「風格」で乗り越えました。自慢のモールに加えて、今後のアタック連携がさらに深まれば、京産大はさらに手が付けられないチームとなるでしょう。
    負けられない一戦で見せた立命館のラグビー、そしてそれを乗り越えた京産大の盤石の強さ。関西大学ラグビーリーグ戦の面白さを凝縮した見応えのある試合でした。

    では。

    (文:山本陽平)