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  • 【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園決勝:京都成章高校対桐蔭学園高校

    【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園決勝:京都成章高校対桐蔭学園高校

    「構造とデザインのぶつかり合う、戦略の最前線」

    みなさんこんにちは

    今年も高校生による熱戦が終わりました
    1/7に行われた高校ラグビーの最高峰、花園の決勝は、3連覇を狙った桐蔭学園高校が36対15という得点で京都成章高校を破り、3連覇を果たすという大会の終わりとなりました

    この接点の強度をシステムとして強みにすることで相手を打ち破ってきた、「構造化されたラグビー」得意とする桐蔭学園。緻密に練り上げられたサインプレーで強敵を破ってきた「デザイン化されたラグビー」を得意とする京都成章。

    今回は彼らのラグビーがどういった駆け引きのもとで行われ、そして何が勝敗を分けたのかについて見ていこうと思います。

    桐蔭学園のラグビー

    <ポッド戦略>

    桐蔭学園のアタックは1-3-3-1をベースにして、そこから大きくポッドの配置を切り替えることなく終始した戦略をとっていました。中央付近で3人ポッドを作ることでラックを安定化させ、アタック全体をリズムよく運ぼうとする狙いが感じられます。

    9シェイプに関しては、一般的な三角形のポッドとステアポッドを使い分けるような形で活用しており、9シェイプから裏にパスを通すようなシーンは少なく見受けられました。その代わりに、アタックを展開する時は10を起点に一気に動かすような形で、その時はポッドを経由することなく素早くボールを動かしていました。

    また、この3人ポッドの多くにはBKの選手が参加していることもありました。特定の選手が何度も参加しているというよりも、さまざまなBKの選手がバランスよく、近くにいる選手へのサポートという形でラックを形成していました。

    そのため極端な話で言えば、3-3-3-3のように、3人組のポッドが数多く並んでいるシーンも見られていました。グラウンドを縦方向にレーンに分けることで各ポッドの参加位置を大まかに固定し、ポッドでラックを作った選手がそのまままっすぐ下がることで、不要な移動をせずにアタックラインを構成している様子が見られました。

    3人ポッドは必ずしも熱心に順目方向に回り込むような動きは見せず、サポートに回るというよりは、次のポジショニングをする準備をしているような様子でした。

    9シェイプではこのような傾向がありましたが、10シェイプは少し流動的な形で、決められた3人組のポッドだけではなく、流れの中で近くの選手たちが、3人1組にまとまってポッドとしてラックを完結させるようなシーンも見られていました。

    <キーになった接点>

    桐蔭学園のアタックのキーになったのは、何よりもその「粘り」です。どの選手もタックルによって一発で倒されることがなく、数歩の間粘って立ち続けることで、サポートの選手が体を寄せてハンマーに入ることで、さらに前に出ることに成功していました。

    また、一人一人が粘ることによって、サポートの選手が少し遅れても相手にボールに絡まれたりすることなく、安定してラックを作ることができていました。キャリアーとなった選手の体の使い方も上手く、上手く体を捻って相手の圧力をいなすことで、タックルを受けた後でも相手をずらして前に出ることに成功していました。

    そのため、9シェイプの多くで前に出ることができ、無理にパスを重ねて展開をしなくても、(ミスがない限り)連続して前に出ることができるという状況を作っていました。アタック自体は非常にシンプルでしたが、接点の強さが担保されており、シンプルな構造ながら前に出ることに成功していました。

    接点の観点で効果的だったのは、ピックゴーでのキャリーも挙げられます。単純に接点が強いので、ボールを下げずにキャリーができるピックゴーとの相性が非常によく、ゴール前といったディフェンスが非常に堅くなるようなシーンでも、高い確率で前進を果たし、連続攻撃でトライを奪っていました。

    誰かがラインブレイクをして大きく前に出た後も、ピックゴーが効果を強力に発揮します。桐蔭学園の選手は判断が非常に良いため、ラインブレイクしたことでラックの近くに相手選手が薄いと見るや否や、素早くピックゴーの持ち込んで、モメンタムを殺すことなくキャリーをすることができていました。

    また、このピックゴーが一つの選択肢となって相手を惑わし、ビッグゲインの後に相手がラック際を固めてきた場合、素早くサポートに入った選手が持ち出すふりをしながら大きく展開をすることで、スペースを効果的に攻略することができていました。

    <キックとエリア戦略>

    桐蔭学園と京都成章の試合では、高いレベルでのキックの蹴り合いを見ることができました。後述するようにポゼッション回数が多くなるということは、キックポゼッション、つまりキックの蹴り合いで一時的に保持するポゼッションが多かったということが推測できます。

    桐蔭学園は、Bゾーンに入ればある程度こだわって連続したアタックを狙いますが、中盤では効果的にボックスキックを蹴るフェイズも見られています。再獲得を狙いながらプレッシャーをかけ、相手のミスを誘ったり、エリア自体を押し込むことに成功していました。

    ロングキックによるエリアの取り合いの観点から見ても、桐蔭学園のキックはしっかりと距離が出るため、エリア的に押し込まれずにタッチに蹴り出すことができます。相手のキックが自陣22m内に入っても、丁寧に蹴り出すことによって、エリア的にイーブンとなるハーフライン近くまで蹴り出すことができていました。

    キックの観点で言うと、見逃すことができないのが後半20分に生まれたドロップゴールです。リズム自体がよく、そのままアタックをしてもスコアをすることができそうな状況でしたが、桐蔭学園は、ここでドロップゴールを狙ってきました。

    このキックの狙いは確実には読めませんが、10対26という点差の状態における、スコアによる精神的プレッシャーをかけることを目的としていたことが予想できます。

    京都成章は、準決勝の東福岡戦でも、緻密に練られたサインプレーを用いて一発でトライを取ることを得意としていました。つまり、短いポゼッションで、スコアをすることができるチームであるということです。

    残り時間は10分+ロスタイムとなっていましたが、それくらいの時間があれば、京都成章は十分に得点差をひっくり返すだけの実力があったでしょう。しかし、ここでドロップゴールを決めて19点差にすることで、点数で圧力をかけるとともに、アウトオブプレーにすることで時間をさらに消費することもできていました。

    京都成章のラグビー

    <ポッド傾向>

    京都成章のポッドは少し特徴的で、特別なサインプレーをするときの特殊な人数比もありますが、基本的には4人ポッドを2つ並べることを好んでいます。

    4人ポッドを一度当てこみ、その次のフェイズで別の4人ポッドを当て、さらに次のフェイズでは最初の4人ポッドを当てるという、ピストンアタックと呼ばれるような動きを、グラウンドの中央で多く行っています。

    これは、4人ポッドという密度の高いポッドを中央で使うことでディフェンスを寄せ、外方向に数的優位を作ってから一気に展開するという形をゴールとしています。4人ポッドに対してディフェンスが薄いと、4人ポッドの面としての強さで前に出やすくなるため、ディフェンスとしてはある程度人数を割かざるを得ません。

    また、ある程度一定のリズムであると意識させた状態から、4人ポッドの3人目にパスをだし、そこからスイベルパスで裏に立つプレイメーカーにボールを供給する形も見られていました。残る1人はブロッカーとなって囮となったり、少し遅れて走り始めることで、プレイメーカーからのパスオプションになったりしていました。

    <特徴的なサインプレー>

    京都成章の強みは、練り上げられたサインプレーによる一発でトライまで持ち込むことのできる爆発力です。今回の試合でも、いくつかのサインプレーが見られました。

    特に強力なのが12-13のCTB陣から裏に回り込む10番の岡元聡志へのスイベルパスで、外方向に一気に振り切り、最後は走力のあるWTBが走り切るといった形です。

    12番の森岡悠良と13番髙萩誠人は個人としても突破力がある選手であり、桐蔭学園側としては、ディフェンスを切れない相手です。その2人がしっかりと相手を寄せることによって、外に膨らみながらボールを受ける岡元が、相手を振り切って外に移動できていました。

    また、特徴的な動きとしては、バックスライン全体がスイングする「ロングスイング」によって一気に数的優位を作り出し、安定化させたラックから大きく動かすことによって、最後は外で相手を振り切るという形を作っていました。

    <ディフェンス傾向>

    京都成章のディフェンスは、「ピラニアタックル」と呼ばれるほど精度が高く強力で、鋭く低くタックルに入ることで、相手の動きを封じ込めることに長けています。桐蔭学園が武器としていた9シェイプでのキャリーに対しても、ある程度の精度でタックルで止めることができており、苦戦はしていましたが、いいタックルの様相を見せていました。

    バックスラインのような選手間の距離が広いようなシーンにおいても、しっかりとダブルタックルで止めることができています。その後、ブレイクダウンへのプレッシャーでターンオーバーしたりと、堅いディフェンスから相手ボールを奪うまでの一連のフローがしっかりと整備されていました。

    しかし、苦戦した要因として、桐蔭学園のキャリアーの粘りがあります。相手が簡単に倒されずにサポートをつけながら徐々に前に出てくるため、ディフェンスは細かいポジショニングの調整をする必要が出てきます。ポジショニングの調整をしている間にも桐蔭学園がアタックを開始しているため、ディフェンスがで遅れるシーンが見られていました。

    また、全体が揃って上がるディフェンスがベースにある分、誰かがズレて突出してしまうとオフロードパスなどですれ違われるといったリスクも露呈していました。前に出る勢いがある分すれ違われるとカバーが遅れてしまうことも多く、一度それで大きなゲインを許していました。

    <勝負を決定づけたシーン>

    勝負を決定づけた要因としては、攻守ともにキックに関連した要素だったと言えるでしょう。

    まず、キックオフレシーブを安定して確保することができず、失ったポゼッションがあります。基本的にキックオフを蹴り込まれるときは最初のキックオフ、またはスコアをした後の相手のキックオフであり、本来であれば安定して獲得して、脱出することでエリア的にイーブンに持ち込みたいところです。しかし、キックオフでのミスが数度あり、ポゼッションを桐蔭学園に譲る結果となっていました。

    また蹴り込んだ、または蹴り込まれたパント系のキックに対して、安定して確保することができなかったことの影響も考えられます。京都成章から蹴り込むキックでは相手にプレッシャーをかけ切れず、タックルはできてもミスが誘えないような状態になっていました。

    最後に決定的だったのは、相手のトライにつながった2回のキックチャージです。こればかりは運の要素もあるかとは思いますが、安定した脱出をもたらすはずのキックが一転して相手のスコアにつながってしまい、スコアボード上でも精神的にも動きが大きかったように思います。その後のキックの蹴り合いでもボールデッドになってしまうなど、ミスキックが重なっていました。

    ゲームスタッツを確認する

    それでは、スタッツを確認していきたいと思います
    まずは京都成章のものからです

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    気になるのは圧倒的に相手に上回られたポゼッションです。45%程度であれば上回れていてもいい試合に繋げることができますが、今回の試合では京都成章のポゼッションは34.1%にとどまりました。ポゼッション回数自体はそこまで少なくはないですが、一つ一つのポゼッションの時間が短い、つまりキックがアウトカムになるポゼッションが多かったことが予想されます。

    ここまでポゼッションに差があると、いくら京都成章が短い時間で一気にトライを取ることができるチームといえど苦しい試合展開になることは簡単に想像できます。ポゼッションが少ないと敵陣でのプレー時間も減り、チャンスが少なくなるからです。

    キャリーとパスの比率を見ると、全体的に少しキャリー優位の試合展開であったことがわかります。パス回数が少なく、9シェイプをベースにアタックをしていたことが想像できます。東福岡戦ではもう少しパスの比率が大きかったので、苦戦したのか狙ってか、キャリーに重きが置かれたラグビーであったことがわかります。

    キャリーとキックの比率を見ても、東福岡戦からさらに小さい数となり、キックを多く用いていることがわかります。東福岡戦の時点でもかなり戦略的にキックを用いていましたが、今回の試合ではキックゲームによるエリアの取り合いの様相が強く、キックの割合が増えていました。

    また、ラインブレイクに比率は極めて低い数値となっています。東福岡戦での数値と比べると、倍以上のコスト、キャリーを必要としていることがわかります。特殊なサインも今回の試合ではそこまで目立っては見られず、シンプルな勝負の土俵に乗っていたかもしれません

    次に、桐蔭学園のものを見ていきましょう。

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    桐蔭学園の決勝、ひいては準決勝の試合展開からわかることは「圧倒的なボール保持率」です。これ以上は遡ることができませんが、少なくともこの2試合に関しては圧倒的なポゼッション保持率を見せています。

    しかし、大阪桐蔭にはサインプレーで一発で取られて苦戦したりと、相手にポゼッションを与えなくても敗れることになるリスクというのも認識していたかもしれません。その結果として、キーになったドロップゴールの選択肢など、スコアを重視していた様子が見受けられました。

    敵陣22m内への侵入効率も非常に良く、走力のあるBKによるラインブレイクや、FWの選手たちによる地道な前進によって侵入を果たしたりと、攻撃的に侵入を果たしていました。8回の侵入に対して5トライとトライ効率も高く、非常に「いいラグビー」ができていたと言えるでしょう。

    キャリーに対するパスの比率はほぼ1という数値をとっており、これは極めて異例な数値であるといえます。キャリーにかなり偏った数値であり、パスを介さないピックゴーを多発していたことがこのような数値になっていた理由になることでしょう。

    まとめ

    桐蔭学園は組織としての強さを備えながら、個の力で前に出る、というシンプルな構造でポゼッションを支配的に進めました。その過程の中ではミスも少なく、相手に常にプレッシャーをかけ続けながら試合をコントロールしていました。

    京都成章は準決勝をデザイされたプレーを駆使して勝ち上がり、決勝でも戦術的なバリエーションを豊富に見せていました。しかし、接点というラグビーの土台になる部分で相手に全身を許し、細かいプレーのミスで勝負の天秤は傾いたように見えました。

    今回の試合は、京都成章の緻密にデザイン化されたラグビーを桐蔭学園の組織・個の力が上回った試合であるといえます。今年の熱戦を経験した選手たちが、来シーズンはそれぞれの場所でどのように活躍するかが、現時点でも楽しみに思えます。

  • 【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園準決勝:東福岡高校対京都成章高校

    【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園準決勝:東福岡高校対京都成章高校

    「緻密な戦略性と、強烈な個々の力」

    みなさんこんにちは
    昨年12月から始まった高校ラグビーの全国大会、「花園」も準決勝まで終わり、残すは決勝を残すのみとなりました
    今回は、準決勝2試合のうち、東福岡高校対京都成章高校の試合について、振り返っていきたいと思います

    東福岡のラグビー

    東福岡のラグビーは、簡単にまとめてしまうと「シンプルな構造と個々のスキル」によって動くラグビーであるということができます。複雑な動きやサインは少なく、一つ一つの接点やシーンごとに相手との小さな勝負が起きるといったものです

    基本的なポッドの構造としては、エッジからポッドを1-4-2-1の比率で配置した基本的な構造に、中央の4人ポッドから浮いたFWの選手が次のポッドへ参加することで、一つ一つのポッドの人数を担保するような形をとっています

    この4人ポッドの形が特殊で、一般的な三角形のポッドに1人プラスされるような形のポッドになっています。形を表現するのであれば、まるで「へ」というひらがなの形をしています。

    この4人ポッドの活用の形としては、基本的に突出した中央の1人に対してSHからボールが供給されます。次いでその選手から外方向にティップオンを送っていくような形です。ティップオンのオプションは一回だけではなく、二回連続で行うことで相手ポッドディフェンスの端の選手までしっかりコミットしながら外方向にチャンスを生み出すような形をとっています

    一回のティップオンのみではずらしきれないシーンに対して、二回めのティップオンやキャリーした後のオフロードパスを使うことでゲインしやすい構造になっていました

    ただ、ポッドの活用の部分で気になった部分としては、9シェイプや10シェイプがラックに対してかなり深い位置関係を作っており、京都成章の鋭く出足のいいタックルに捕まってしまうことが多かったという点です。下げるパスが多い分京都成章のディフェンスラインのプレッシャーでかなり下げられてしまっていました。

    また、9シェイプから裏のラインに下げるようなパス、スイベルパスを使うような場面でもポッドの選手がどちらかというとスタンディングの状態でパスを放るような形をとっており、スライドディフェンスも丁寧に使ってくる京都成章のディフェンスに対して圧力を受けていました。

    これらのポッド動きから、後方から外方向にかけて存在するアタックラインは基本的にはシンプルで、ポッドの裏の層がそのままアタックラインになるような形です。オプションとしてはカットインやカットアウトといった個々のレベルでの対応にとどまっており、シングルラインを崩すような形のものはなかったように見えました。

    この過程の中で数的優位を動的に作るような形もそこまで多くはありません。9シェイプを繰り返し中盤で使うようなフローで相手を寄せようとしていましたが、なかなか相手が寄り切ったようなフェイズは少なく、苦戦しながらのアタックが続いていました。

    そんなアタックの中では個々のランニングスキルや接点の強さといった要素は東福岡の強みとなっており、個人的にいい動きを見せていたように感じた選手としては、14番の平尾龍太選手や、8番の須藤蒋一選手がアタックの中でキーになっていました。

    一方で、個人の勝負に依存しているような様相もあり、システムとして相手を崩すことができたようなシーンがそう多くはありませんでした。結果として、相手を崩す動きに再現性がなく、崩すことができても単発のものになってしまっていました。

    京都成章のラグビー

    京都成章のラグビーを言語化するのであれば、「高度な戦術によって相手を一発で崩すラグビー」ということができます。細かなものからビッグプレーまで、さまざまな戦術的要素を用いて相手を崩そうとしている様子が見られました。

    特に強さを発揮したのがセットプレーからの一発でトライまで持ち込むことができるサインプレーです。表と裏の動きを工夫したさまざまなバリエーションのあるアタックを作り上げており、東福岡の構造をしっかりと分析した上で、精度良くギャップを狙うことができていました。

    構造の中で有効活用されていたのがスイングという一連の動きです。スイングというのは、ラックを挟んで逆方向に振り子のように動きながらアタックラインに参加する動きで、京都成章は10番の岡元聡志が主体となって左右に移動しながらアタックラインを作っていました。

    スイングのメリットとしては、後出しでアタックラインの人数を切り替えることができるため、ディフェンスラインからするとノミネートがずれてしまったり、数的に不利な状態になってしまいます。京都成章はこのずれに対して一発でブレイクをできるような準備を整えてきており、何度も構造的にブレイクすることでトライを生み出していました。

    基本的な構造、というとうまくまとめられなくなってしまうほど、京都成章は多くのポッド構造を使っていました。簡単にあげるだけでも、「2-3-2」、「3-4-1」、「1-3-3-1」など、同一ポゼッションの中でも選手の配置を流動的に入れ替えることでポッド内の人数を調整していました。

    最も特徴的だったのは、簡単に言えば5人から6人の人数をかけたポッドで、SHの佐藤啓護選手の長いパス距離を活かしてラックから遠い位置に立つ選手にパスを出す形です。そのパスを受けた選手はそこからスイベルパスで裏に立つプレイメーカーの選手にパスを出すことで、外方向の数的優位を効果的に使っていました。

    その構造の中でいい働きを見せていたのが8番の南川祐樹選手です。いい体格をしていて走力があり、多くに人数をかけたポッドの次の構造として、エッジでのラインブレイカーとして作家していました。構造の過程の中で外では3対2くらいの数的優位が生まれており、少しでもスペースがあれば、南川選手がしっかりと前に出ることができていました。

    特徴的な戦略としては、早い段階からキックを主体にカオスな状況を作っていたことも挙げられます。Bゾーンのようなチャンスが生まれやすい場面であっても、そこまで無理することなく、SHの佐藤選手からボックスキックを蹴り上げて再獲得を狙っていました。

    再獲得の頻度としてはそこまで多くはなかったですが、京都成章がキックチェイスのディフェンスの精度が非常に高く、相手をセミストラクチャーの状況に追い込むことができていました。セミストラクチャーの状態であれば京都成章の質の高いディフェンスラインを作ることができるので、東福岡の個々の力を抑え込むことに成功していました。

    これまで述べてきたように京都成章のディフェンススキルは非常に高く、高校生らしい低いタックルと、質の高いディフェンスラインの整備によって東福岡のアタックを封じ込めていました。1対1の場面でしっかり低く入ることができているので、相手を素早くテイクダウンすることができ、接点に強いFWの選手に時わりと前に出られることも減らすことができていました。

    スタッツを振り返る

    それでは順番にスタッツを振り返っていきましょう。

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    東福岡のスタッツを確認していきます。

    ポゼッションを見ると、試合通じて19回という数値を示していますトップカテゴリーの40分よりも1試合の時間が短いということを差し引いても、このポゼッションの回数は少ないということができるかと思います。

    このような回数になった要因として、わかりやすい要素として「ポゼッション一回あたりの平均継続時間が長い」ということが挙げられます。京都成章の数値も大きかったですが、東福岡は1つのポゼッションあたり44.9秒と、大学やリーグワンの倍近い数値となっています。キックの回数が少ないことで一つ一つのポゼッションが長くなり、全体としてポゼッションの回数が減った、ということが考えられます。

    キャリーに対するパスの比率は1.88とかなりパス回数が多い比率を示しています。このことから、東福岡はポッドではなくアタックラインを多く使うようなアタック傾向を示していることがわかります。単に9シェイプや10シェイプを使うようなアタックをしていれば、この数値は1.3~1.5あたりの数値に収束するからです。

    ラインブレイクに対するキャリーの比率は22と、極めて効率が悪いということができます。単純計算で22フェイズに一度のみラインブレイクが起きているということなので、なかなか相手のディフェンスラインを崩すことができていなかったことがわかります。ただ、ゴール目前まで迫ることさえできればトライに繋げることができていたので、いかにゴール前まで入るか、というフローの重要性がわかります。

    また、ターンオーバーの回数が京都成章よりもはるかに多くなってしまったことの影響も大きかったかもしれません。京都成章が大きなリードを奪ったことで東福岡はリスクを抱えたままアタックを続けなければいけませんでした。その結果としてミスが増え、さらに京都成章にボールを保持されるという悪循環に陥っていました。

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    次に京都成章のデータについても振り返っていきましょう。

    京都成章のポゼッション回数は25回と、東福岡よりも多い回数となりました。しかし、一回のポゼッションあたりの継続時間が東福岡よりも10秒ほど短かったため、全体的なポゼッション比率に関してはほぼ同程度という結果になりました。

    何度ポゼッションを保持するごとに敵陣深くに入っているかという指標を見ると、東福岡と京都成章はほぼ同程度のスタッツを示しています。しかし、その侵入効率の中で京都成章は6トライ、東福岡は3トライという結果になりました。京都成章は敵陣不覚への侵入回数自体が7回であるにも関わらず、6回のトライという非常に高い効率でスコアをしていました。

    パスに対するキャリーの比率は1.43と、一般的な水準に落ち着いています。逆に言えば、高校生であるにも関わらず、大人のようなラグビーをしているということができます。まるでトップカテゴリーの選手のような、戦略的にラン・パス・キックを組み合わせたラグビーを見せました。

    また、キックに対するキャリーの比率は4.63とかなりキック優位のデータとなっています。リーグワンの平均よりも少ない数値となっており、こちらに関しても冷静にキックを用いた戦略を用いていたということができます。

    ラインアウトもスクラムも安定しており、セットピースからのサインプレーが大きな影響をもたらしたこの試合に関しては、セットピースの安定は最低条件でもありました。

    まとめ

    高校生とは思えない戦略的ラグビーを見せた京都成章と、個々の力をうまく使えるような工夫をしてきていた東福岡の試合は、緻密なサインプレーで何度もブレイクした京都成章が上回る結果となりました。

    残すは決勝のみ、京都成章と桐蔭学園の試合となります。しっかりと見届けていきましょう

    それではまた!

  • 【マッチレビュー】2025リーグワン:静岡ブルーレヴズ対浦安D-Rocks

    【マッチレビュー】2025リーグワン:静岡ブルーレヴズ対浦安D-Rocks

    みなさんこんにちは
    リーグワンも、第3節が終わりました

    今節の試合から、磐田で行われた静岡ブルーレヴズと浦安D-Rocksの試合について、振り返っていこうと思います

    静岡ブルーレヴズ

    <アタック傾向>

    ブルーレヴズは1−3−3−1をベースにした、FWを起点としたクラシックなスタイルに合わせて、接点に強みのあるBK陣を組み合わせることで外から中に向かって攻め込むようなアタックを見せています

    エッジにはヴェティ・トゥポウ選手やクワッガ・スミス選手のような機動力と強さを兼ね備えた選手を配置することが多く、全体を5レーンに分けて考えた時に中央と外の合わせて3レーンに強みのあるスタイルであるということができます

    特にトランジションのような相手のディフェンスラインの中のFWとBKの比率が乱れているようなシーンではエッジで接点を作ってから大きく外方向に展開することで、FWとBKのミスマッチを作ることでラインブレイクも果たしています

    基本的なアタックの要素となるのは9シェイプと呼ばれるFWの選手による集団の単位で、ラインアウトのようなセットピースからエッジ方向にどんどん9シェイプを当てる様子が見られています。

    その連続した9シェイプに対してFWの選手は順番に走り込むことでオプションとなり、ポッドをベースとした一塊になってアタックを作り上げていました

    特にゴールが近くなるエリア、敵陣22mラインを超えたようなエリアに入ると、9シェイプは激しさを増し、どんどんとフラット気味に走り込みながら相手との接点を作るようになっていきます。フラット気味に走ることで相手ディフェンスに詰める猶予を与えず、接点で押し込むことができれば最も効率的な前進の手段です

    また、この時に効果的に働いているのがピック&ゴーの動きで、ブルーレヴズには1人で前に出る選手が揃っていることもあり(スミス選手や12番のチャールズ・ピウタウ選手など)、相手に下がる猶予を与えずに素早くボールを持ち出すことで相手のディフェンスラインを下げることに成功していました

    ブルーレヴズが基本的に勝負の土俵に持ち込みたいのはこのエリアで、如何にこのエリアに入るか、というところに重要性を見出しています

    ただ、このエリアに入ることこそ多かったものの、アタック全体は不安定なまま試合は続いていくことになります。数値は後ほど見ていくこととしましょう

    また、ポッドの作り方としては、4人ポッドや5人ポッドを使っていたように見えました。隣のポッドと混ざったグラデーションの2つのポッドだったかもしれませんが、多くの選手が一塊になって並ぶシーンが散見されていました

    4人ポッドに関してはCTBの選手が絡むことも多く見られていました。12番のピウタウ選手や、13番のシルビアン・マフーザ選手のような選手が4人ポッドの柱となり、ラックなどからボールを受けてスイベルパスで裏の10番、家村健太選手や筒口允之選手にパスをしていました

    5人ポッドではSHからの投げ分けが発生することで相手に選択肢を作り出し、相手に選択肢を押し付けた状態で接点で前に出るという形をとっていました

    <アタックの課題>

    アタック全体での課題としては、何よりもハンドリングエラーが挙げられることでしょう。ゴールに近いエリアに何度も侵入していながら、奪ったトライは3つと効率的ではありませんでした。その多くの要因は、肝心な部分でのパスやキックのミス、接点でボールをこぼしてしまうといったハンドリングエラーによるものです。

    また、相手のディフェンスラインからプレッシャーを受けたことも影響しています。D-Rocksのディフェンスの精度は昨シーズンから改善が見られ、接点の強さとコントロールのバランスが良くなっています

    その結果として、パスの出し手と受け手の両方がプレッシャーを受けることでパスミスが起きたり、プレッシャーを避けるためにパスの出し手がスタンディングでパスを出すようになって前に出面くんあるという現象が見られていました

    最後に気になった点として、ブルーレヴズのアタックではティップオンのオプションが効果的に働いていなかった、という点が考えられます

    ティップオンとは、ポッドでボールを受けた選手がそばにいる選手に浮かすようにパスをすることですが、このティップオンが効果を発揮していませんでした

    ブルーレヴズもティップオンを活用しようとしていましたが、相手のプレッシャーもあってかパスの出し手が立った状態で少し浮かす程度の動きにとどまっており、ディフェンスとしては出し手のディフェンスから視線を切りやすい状況が生まれていました

    <キック戦略>

    キック全体の動きを見ると、ブルーレヴズはカウンターを多く用いていました。どのようなエリアであっても早い選択肢にカウンターが入ってくるような形です

    カウンターの質自体はそこまで悪くはなく、15番の奥村翔選手のような走力があって相手をずらすことのできる選手がいるので、自陣22mライン付近まで押し込まれても、イーブンな位置であるハーフライン付近までは戻すことができていました

    ただ、一部の選手には蹴り返して脱出を図るといったオプションが薄い時もあり、苦しいカウンターを仕掛けてターノーバーやペナルティを誘発されたりといった状況も見られていました。ここは修正・調整をしていきたいところではないかと思います

    <ディフェンス傾向>

    基本的に接点に強いディフェンスラインを整えているので、苦しい時間帯自体はそこまで多くなかったようには見えました。ラインブレイクをそこまで極端に引き起こされたわけでもなく、ある程度は守ることができていたと思います

    ただ、細かい部分ではディフェンスに揺らぎが見られており、今回の試合でブレイクされてしまっていたり、今後の試合に響いてきそうな様子が見られました

    特に注意していきたいのがエッジに近い位置でのディフェンスで、エッジ側がショートサイドになった時、選手が内側による傾向が見られています

    これは、エッジのエリアに参加しているD-Rocksの選手が影響していて、1人で場面を打開できるようなサム・ケレヴィ選手のような選手がエッジにいることで、意識がケレヴィ選手に向かいその外に張っているランナーから視線が切れていることでブレイクが起きていました

    また、ゴールに近くなると、選手間のディフェンス戦略に違いがみられていたことも気になるところです。一部の選手は相手のアタックラインに被せるような動きを見せて、また一部の選手は少し引き気味で受けるようなディフェンスを見せていました

    浦安D-Rocks

    <アタック傾向>

    D-Rocksのアタックは、悪い言い方をしてしまえば単純で、「接点で打ち勝つことでリズムを作り、崩れたところからブレイクを図る」といったものです。単純でありながら難しい課題を、D-Rocksは安定した前進戦略で実現していました

    キーになったのは、「前に出ることに長けた選手」にその役割を全うさせたことです。例えばNO8のヤスパー・ヴィーセ選手や、リザーブから出場したタマティ・イオアネ選手のような、接点に長けた選手に複雑なタスクを任せていないように見えました

    これは決して悪いことではなく、それ以外の選手に関してもタスクを単純化することによって、一つ一つの役割が明確になり、認知的負荷を抑えることができていたように感じました

    また、今回の試合では特徴を持つ選手がその特徴を遺憾なく発揮することができていたということも、調子の良さにつながっていることがわかります

    特に好調だったのがサム・ケレヴィ選手とイズラエル・フォラウ選手の元ワラビーズコンビでした。ケレヴィ選手は接点、フォラウ選手は空中戦で自身の能力を最大限に発揮していました

    ケレヴィ選手はオープンサイドとショートサイドの両方に顔を出し、中でもショートサイドでのアタックに強みを出していました。ショートサイドに器用で体の強いケレヴィ選手がいることで、相手選手はケレヴィ選手を抑えざるを得ない状況となり、結果的に外方向に数的・位置的なズレを作ることができていました

    フォラウ選手はとにかくハイボールでの競り合いが強く、ハイパント・ボックスキックだけではなく、キックオフからの競り合いでも強いプレッシャーを相手にかけていました。相手のスコアからのキックオフを再獲得することで、効率よく敵陣に入ることができていました。

    また、一般的なフェイズの中でもハイボール系を競り合い、再獲得することで、精度良く前進することができていました。ハイボールからの競り合いで確保ができれば、相手ディフェンスは崩れた状態になります

    エッジ方向へのクロスキックもフォラウ選手は十分に対応することができるので、エッジ方向に蹴り込むことでそちらに寄らざるを得なかった相手ディフェンスを崩すことができていました

    それ以外の選手の動きに関しても、テンポがよく、接点をベースにアタックをすることができていました

    あえて言葉にすればセミストラクチャーのような、完全に組み立てたストラクチャーと、崩れた状態から始まるアンストラクチャーの中間のような状態で、D-Rocksは強みを発揮します

    エンジンがかかっていくかのような、何度もFWの選手を中心に相手との接点を作ることで、細かく相手を揺さぶっています。その中でD-Rocksはパスを細かく繋ぐことで相手との位置関係を細かくずらし、強みである接点をさらに優位な状況で生かしていました

    <ディフェンス傾向>

    D-Rocksのディフェンスは、昨シーズン位比べると改善が見られていたように感じます。大きく崩されるシーンが減り、崩されても致命傷にならないといった最後の粘りが見られていました

    効果を発揮していたのが、日本人選手をはじめとしたロータックルの精度です。相手を素早くテイクダウンすることで上の空間をとることができており、相手のサポートを上回ってプレッシャーをかけることができていました

    また、そもそも接点の強さの強度が高く、相手の接点をある程度抑え込むことができていました。時々差し込まれることもありましたが、基本的にはいい体の当て方ができていました

    特にエッジでのディフェンスが堅く、フォラウ選手やケイレブ・カヴバティ選手のような選手のディフェンスの質が非常に高かったです。相手の外に流れるような動きに対してしっかりとついていき、相手を素早く倒すことができていました

    ただ、オプションのないポッドアタックには強さを発揮する一方で、オプションがある場合は少しずらされるようなシーンもあったため、修正の余地はあるようにも見えました

    ゲームスタッツを確認する

    画像

    それでは、次にゲームスタッツを見ていきましょう

    ポゼッション、テリトリーはブルーレヴズがそれぞれ上回っていました。特にテリトリーに関しては61%と高い水準で確保しており、敵陣に相手を押し込むことができていました。

    しかし、その割にブルーレヴズは敵陣22m内への侵入回数が13回と控えめな回数になっています。このことから、主なプレイングエリアが中盤であったことが想像できます

    D-Rocksは敵陣22mへの侵入回数が9回で4トライを奪っていたりと、比較的効率よくスコアをすることができていたと言えます。実際のトライシーンも、敵陣ゴール直前よりも前段階からブレイクをしてトライに至っていました

    キャリー・パス・キックの比率を見ていくと、ブルーレヴズがそれぞれ173回/236回/7回、D-Rocksは121回/156回/27回という数値になっていました

    ブルーレブズのスタッツで気になるとこととしては、キックの異常な数値の低さでしょうか。本来であれば20回程度は生じうるキックが7回というのは非常に少ない数値であると言えます

    ブルーレヴズは自陣で受けたキックに対してカウンターを狙う姿勢が強く、キックを蹴り返して脱出やエリアをコントロールするような回数自体は少なかったように思います

    D-Rocksはキャリーに対するパスの比率が一般的な水準よりも少し低いような水準となりました。9シェイプやワンパスで選手がキャリーする回数が多く、比率が減少していたことが考えられます

    また、目立った数値としては、ブルーレブズのターンオーバーロストの回数が気になるところでしょうか。20回というのは相当多い数値で、一般的には15回程度で多めという形になるかと思います

    ブルーレヴズはハンドリングエラーが多く目立ち、チャンスになったシーンでのパスミスが多く見られていました。エッジにキーになるランナーが揃っている中で、そのランナーにパスが回らないというのは非常に惜しい結果となりました

    まとめ

    今回の試合結果としては、意外、というコメントが多かったのでhないでしょうか。2節で埼玉ワイルドナイツにいい試合をしたD-Rocksでしたが、その勢いのままに、前年度のトップ6のチームに勝利を収めることになりました

    ブルーレヴズとしては、ハンドリングエラーを減らすことが修正のスタート地点になるかと思います。それ以外の要素に関してはそこまで悪い結果ではなかったと思っているので、まずはミスの母数を減らしていきたいところです

    D-Rocksとしては、こだわる部分を絞ってきたように見えました。いい意味で複雑なことを減らし、シンプルな勝負の土俵で細かい勝利を収める、といった形がうまくハマっていたように感じます

    今回は以上になります
    それではまた!

  • 【マッチレビュー】2025リーグワン:横浜イーグルス対静岡ブルーレブズ

    【マッチレビュー】2025リーグワン:横浜イーグルス対静岡ブルーレブズ

    みなさんこんにちは
    ついにリーグワンが開幕しましたね
    数多くの試合が予定されていますが、こちらでも一部試合をピックアップしていきたいと思います

    今回は、日産スタジアムで行われた横浜イーグルス対静岡ブルーレブズの試合を見ていこうと思います

    横浜イーグルスのラグビー

    イーグルスのアタック様相

    イーグルスは、司令塔となるSO田村優選手が柱となるアタックを見せていて、プレイメーカーによるコントロールを重視したアタックをしているというのが一般的なイメージになるかと思います
    田村選手を灯台に、その周囲でオプションになるように走り込むことがベースになります

    田村選手のコントロールは単に自分がボールを受けて展開のハブになるだけではなく、ラックの後ろから味方選手に声をかけて田村選手の指示のもとでポッドを動かしていることが試合映像からも見て取れます

    それに加えて、重要になるのがCTBの梶村祐介、ジェシー・クリエルの両選手の役割で、田村選手のボールタッチに合わせて、この2人の選手のボールタッチが多い傾向を示していました

    イーグルスのアタックのベースはCTBも組み込んだポッドワークを中心にしており、CTBの選手がポッドの中心となって積極的にキャリーに持ち込んでいました

    特に12番の梶村選手と13番のクリエル選手の役割としては、ポッドの先頭に入る、または梶村選手やクリエル選手がそれぞれボールを受けてキャリーをするというパターンが見られています
    2人で完結するポッドとしても組まれており、FWだけでポッドを構成するよりも数的に安定することが考えられます

    この2人の動きとしては、中盤に立つ2人ポッドの脇に立つ形から始まります
    ラックから直接パスを受けた梶村選手のクリエル選手へのショートパスでキャリーが発生し、そばにいた2人ポッドの片方の選手と梶村選手がサポートに入ってラックの最小単位である3人のラックを完結させる形をとっていました

    ポッド中心のアタックはゴールが近くなると特に顕著になり、CTBも積極的にボールを受けにいくことでラックから様々な距離感で接点を作ることに成功しています
    ポッドを安定して供給することで、テンポが遅れたりアタックが単調になることを避けることができます

    最も脅威度の高いオプションとしては、「ゲインを果たした」という条件下の元での9シェイプと10シェイプの組み合わせが挙げられます

    大きくゲインした後、スッと3人の9シェイプポッドがアタックラインの前に参加して、裏に立つプレイメーカーの田村選手へスイベルパスを下げる形を取ります
    スイベルパスを受けた田村選手はアングルをつけて走り込んでくる10シェイプに対してパスを出し、10シェイプポッドでキャリーをする、という形を取りました

    エッジでゲインをすると、ブルーレブズのディフェンスはまず9シェイプポッドを押さえるようにディフェンスラインを構築します
    その過程の中で中盤の10シェイプを押さえる位置に立つ選手が9シェイプ寄りのカバーをすることによって、中盤にディフェンスの薄いエリアが生まれていました

    それ以外に好んで用いていたのが、「リードブロック」というプレーです
    これは、アタックラインに対して1人の選手が突出してボールを受けるように走り込み、その裏を通して本来のアタックラインやポッドにボールを供給する形です

    この形がなぜ効果的かというと、理由はシンプルで「相手を寄せることができるから」になります。
    リードブロックをする「リードブロッカー」はラックの周囲を守る「ピラー」や「ポスト」と呼ばれる位置の選手に対して走り込むことで、そこを守る選手は走り込んでくる選手に対して位置取りを寄せなければならず、結果的に裏のアタックオプションが有利な状態で前に出ることができていました

    一方で、こういった構造的なアタックで数的優位やすれ違いを作ることができたシーンはそこまで多くはありませんでした

    理由として考えられるのは、ボールを受ける選手の深さやコース取りなどが考えられるでしょうか
    基本的には作り出した構造の近くですれ違いなどを作りたいところですが、アタッカーの位置取りの関係でブルーレブズのカバーを受け、うまく抑えられていました。

    また、それ以外の要因として、FWの選手が位置的に散っていることで、アタックオプションを豊富に準備できていないということが考えられます
    両サイドにバランスよく配置されることによって片方のサイドに数的優位を作れていないことが推測されます

    チェックしていた限りでは、構造にこだわりすぎるよりも、シンプルなラインで個々人のスキルセットを活かした方がより前に出られるシーンが多かったように感じました
    接点の強さがある選手が多く揃っており、しっかり前に出ることができていました

    イーグルスのディフェンス様相

    ディフェンスを総合的に見ると、苦戦したシーンが多かったのではないかと予想されます
    特に、新入団選手だったセミ・ラドラドラ選手の接点の強さや器用さにやられたようなシーンが多かったのではないでしょうか

    ブレイクされたシーンを確認してみると、例えばトランジションディフェンスで大きくブレイクされたシーンが見られていました
    このシーンでは、アタックの人数に対してディフェンスで人数が十分にカバーできているのに、流す意識が強すぎて内側のカバーが遅れたスペースをオフロードでブレイクされていました

    このように、イーグルスのディフェンスは比較的流す傾向があるように感じます
    数的不利ができないようにかなり横ベクトルの強い流し方をしており、その中で内側の選手がバッキング、相手ランナーの前に大きく回り込むようなコースをとっていました

    その傾向によって内側からディフェンスを押し上げる圧力が弱く、内側へ切り返すことが得意なWTBの選手や、オフロードの得意なラドラドラ選手の内返しのパスといった、外から内へとボールが動くプレーによってディフェンスが切られるシーンが見られていました

    また、相手の浅いアタックラインに押し込まれているような様子も見られていました
    ブルーレブズのアタックの強みは走り込みながらポッドを当てるような接点のモメンタムであり、その強みを受けてしまっていたように感じます

    特徴的な「やられ方」としては、敵陣深くでのディフェンスが挙げられます
    ブルーレブズの自陣深くからの展開で何度も大きなゲインを生み出されており、崩されているシーンが目立ちました

    この要因としては、イーグルスのディフェンス戦略にあります
    イーグルスのディフェンスは敵陣深くでハードなプレッシャーをかける傾向にあります
    BKの選手も流さずに詰める傾向があり、この部分で左右の味方選手との連携が途絶えることで、大きくゲインされていました

    静岡ブルーレブズのラグビー

    ブルーレブズのアタック様相

    シーズンの序盤ということでまだ固まり切っていない部分もあると予想できますが、試合を見た感覚ではポッドベース、アタックブロックとも呼べるような戦略でアタックをしているように見えました

    アタックでは3人ポッドをベースにして、接点に強い選手をどんどん当てて、BK陣にも揃っている接点の強い選手を当てこんで、リズムを作ろうとしているように見えました

    好んで用いられた動きとしては「スイング」と呼ばれる動きです
    これは、ラックやセットピースなどの後ろや反対側から、振り子のように反対側に回り込むことで、動きの中で数的優位性を作り出す動きです

    ブルーレブズは、このスイングを複数の選手が同時多発的に使うことによって、基本的には後手に回らざるを得ないディフェンスに対して、先出しで数的優位性を作っていました
    複数人が幅広くスイングする「ロングスイング」と、少ない人数で細かくスイングする「ショートスイング」をうまく使っていたように思います

    ここでキーになるのがイーグルスの項目でも述べたラドラドラ選手で、ラドラドラ選手は強い体を持ちながらも、器用さを兼ね備えた選手でもあります

    ラドラドラ選手はこれらのスイング動作の中で表のラインに入ったり、裏のラインに入ったりすることで、起点となる位置関係を切り替えています
    オフロードパスの選択肢がある選手がこのように位置関係をフェイズごとに切り替えることによって、結果的に相手のディフェンスの対応が難しくなっていました

    ポッドの活かし方に関しては、ポッド間の距離がそこまで離れておらず、ほぼくっついたような状態になっているシーンも見られました
    一つのポッドと見る見方もありますが、私はこの状態のことを、「スティックポッド」と呼んでいます

    2つのポッドを組み合わせることで、アタックオプションのバリエーションが増加し、一つ・二つのパスだけで様々なアタックをすることができます
    サポートも安定するので、一つの接点としての安全性が担保されていました

    今回の試合で見られた特徴としては、自陣から積極的にアタックする姿勢を見せていたことです
    ポッドをスプリットしてCTBの選手を介した展開をすることによって、相手のディフェンスを中盤に寄せて展開することで、走力のあるWTB陣が効果的に前に出ることができていました

    イーグルスのディフェンスは、正直なところブルーレブズ側の陣地深くでのディフェンスが意思統一されているような形ではなく、個々の動きで詰めてしまうような様子が見受けられていました
    そういった相手のディフェンスの傾向を読んだのか、非常にうまく噛み合ったアタックをしていました

    反省材料としては、キックオフを安定して確保することができていなかったことでしょうか
    そこまでプレッシャーを強く受けたわけではなさそうでしたが、ハンドリングエラーや、相手に容易にボールを確保されることによって、スコア後のキックオフレシーブの機会を手放すことになっていました。

    また、アタックの脅威度として、ボールを受けながら同時に走り込む「ラン&キャッチ」であれば、相手にとって非常に強い脅威となっていましたが、テンポが遅くなった時にボールを受けてから走り出す「キャッチ&ラン」の時の脅威が下がっていました

    これに関してはブルーレブズに限った現象ではなく、どのチームでも同じ現象が起きるかと思います
    今回の試合では、ブルーレブズは必ずしもテンポが出しきれていたわけではなく、プレッシャーを受けることで全体的にテンポがゆったりとしていたようにも見えました

    ブルーレブズのディフェンス様相

    ブルーレブズも、イーグルスと同様に相手のアタックにある程度差し込まれているような様子が見られました
    状況としては、ディフェンス間のスペースに入られることによってダブルタックルの精度が少し下がり、1対1の繰り返しになっていました

    イーグルスはモメンタムを出しながらアングルをつけたキャリーを得意としているため、このアングルをつけたランニングに一定数やられていたように感じます

    また、苦手としていた状況として、ゲインされた後のディフェンスに乱れが出ていました
    それ以外のチームでも見られる傾向ではありますが、今回の試合では顕著な動きが見られています

    特徴としては、ブルーレブズのディフェンスの優先順位として、ゲインをされた後はまず9シェイプの位置を押さえようとします
    近くにいる選手に合わせて、少し外側の位置に入っている選手も、寄るような動きを見せます

    イーグルスは、ゲインした後のフェイズにスイベルパスを挟んだ打点をラックから話す動きを見せることが多く、このラックからボールが離れる動きでラックに近い選手が切られてしまい、薄くなった10シェイプの前方に立つエリアを攻略、または攻略されそうになる状態が生まれました

    ただ、一般的な階層構造、表と裏の関係については非常に丁寧にディフェンスをしており、詰めすぎず引きすぎずといった、バランスの良いディフェンスをしていました
    それが、大まかな領域で相手のアタックを止めることができたことにつながっています

    選手にもよりますが、フロントドアを切ってバックドアの選手に詰める「スイム」の動きもきっちりできていました
    イーグルスのアタックが、基本的には裏ベースのアタックをしていたことも影響しているかと思います

    まとめ

    初戦ということもあり、両チームともに反省材料がいくつか得ることができた試合ではないかと思います
    修正が効けばイーグルスにも勝利の可能性は十分にあり、またブルーレブズも修正で相手を圧倒することもできるでしょう

    今回は以上になります
    それではまた!

  • 【マッチレビュー】2025ジョージア代表マッチプレビュー

    【マッチレビュー】2025ジョージア代表マッチプレビュー

    日本代表との試合に向けて

    みなさんこんにちは
    日本代表の試合も、残すはジョージア戦のみとなりました

    今回は、そのジョージア戦に向けて、ジョージア代表がこの秋戦ったアメリカ戦とカナダ戦を振り返りながら、どのようなチームであるかを確認していきたいと思います

    ◆ジョージアのアタック構造

    ジョージアのアタックは、基本的には構造的に大きく崩そうという動きというよりかは、接点で相手を上回ることでリズムを作り出そうとするイメージです
    セットピースから始まるストライクプレーでも前に出る意識が強く、個々人の強さでの打開を図ってきます

    アタックのベースになるのは3人ポッドで、接点を安定化させながらも3人ポッドによる「アタックの硬さ」を生かしながら前に出てきます
    12番も積極的にポッドに入って接点を作ったりと、チーム全体としてポッドをベースにしていることがわかります

    基本的な比率としては1−3−3−1になっているかと思いますが、停滞したときは3人ポッドをエッジ方向に回り込ませて3−3−2を作ったり、セットピースからの連続フェイズで中央の6人を4−2でスプリットしたりと、多くの工夫が見られました

    基本的なトライ構造としては、後述するセットピースで圧倒し、敵陣深くにキックで入るところから始まります
    敵陣深くから始まったポゼッションでポッドをベースとして連続アタックを繰り広げ、相手のディフェンスをラック近くに誘導することで生まれる外方向の数的優位性を生かし、BKで取り切るという形がアタックの土台になっていました

    ポッドの使い方もうまく、できるだけ外側の相手にコミットするように、少し流れながら相手との接点を作ります
    そのことによって相手ディフェンスはより一層ラックを挟んで反対方向にフォールディングをする必要が生まれ、そこが滞ると外方向への数的優位が生まれる、という構造になっています

    また、アタックの脅威度という意味ではBKの攻撃力も無視できません
    14番のシャルバ・アプチアウリはカナダ戦でハットトリックを達成していたりと、バックスリーに走力のある選手が揃っており、ラインアウトモールといったセットピース起点のトライと同じくらい、バックス展開を使ったトライも見られています

    BKがリードするアタックの形としては、スイングと呼ばれる形が好んで用いられていました
    スイングとは、ラックやセットピースの裏、または反対側からアタックラインに対して回り込むように参加し、後出しで数的優位を作り出そうとする動きです

    ジョージアのBKはセットピースからのシークエンスなどで好んでこの動きを用いており、基本的なフォーマットとして定着していることが予想されます
    全体的にミスも少なくないのでチャンスを作りきれないシーンもありますが、日本代表はスイングで数的優位を創られることに後手に回る傾向もあるので、安易な楽観視はできません

    ◆ジョージアのキック戦略

    ジョージアのキックの基本戦略は「パント&ラッシュ」にあると考えられます
    つまり、高い軌道のボールを蹴り上げ、確保した相手選手に激しいプレッシャーをかける動きをベースにしています

    グラウンドのハーフラインから自陣22mまでの間のエリアでは、特に好んでこのパント&ラッシュを使っており、相手にプレッシャーをかけてターンオーバーを果たしているシーンが散見されました

    再獲得を狙っているシーンも見られてはいたのですが、平均的な飛距離は20〜25mあたりと再獲得を狙うボックスパントとしては少し長めの印象で、再獲得にそこまでこだわっていないのではないか、と予想しています
    ただ不安定なだけ、という可能性もあるので、ここはさまざまな意味でも注意が必要ではないかと考えました

    パント系のボールを再獲得ができた際は、かなり早いフェイズで相手の裏に蹴り込んでくることがあります
    エリアのコントロールはかなり意識している様子で、敵陣22mよりも自陣側のエリアからでも中盤でそこまでキャリーを繰り返さずに裏を狙う様子が普段のフェイズでも見られています

    ただ、相手のキックを踏まえた全体的なキック戦略という観点でいくと、不安定な様相も見られています
    想定した位置関係が甘いのか相手のロングキックで裏を取られるシーンが散見され、バックフィールドの選手が後退してボールを確保しにいくシーンが散見されていました

    相手のパント系のキックに対しても、クリーンキャッチの精度はそこまで高くないように見えます
    ディフェンスに参加していたフロントラインの戻りも遅く、ミスへの対応が後手に回ることもありました

    ◆ジョージアのセットピース

    ジョージアの強みは、周知の事実となりますが、何よりもFWによるセットピースです
    スクラムもラインアウトも強烈で、相手のペナルティを誘発したり、いい形でのポゼッションを作り出したりと、セットピースの強さからアタックの安定感を出しています

    特に、ランキング下位の国との試合ということもあってか、スクラムでは2試合とも相手を圧倒しており、どちらボールでもスクラムペナルティを獲得したり、反則にならずともクリーンに相手ボールをスクラム内で奪ったりしていました
    早い時間帯では反則を取られるシーンもありますが、勘を掴んでくると手がつけられなくなる印象です

    また、ラインアウトからのモールも強力で、2試合でも複数のモールトライを見せています
    ゴール前からは複雑なムーブを使わずにモールを組んで押し込もうとしてくるので、最低限ここからの失点を抑えることが試合のキーになってきます

    一方で、中盤でのマイボールでのラインアウトが安定しているかというと必ずしもそういうわけでもなく、競り合うことによって意外とミスが起きている印象です
    直近の試合であるカナダ戦では73%の獲得率に止まったりと、ここに関しては不安定な様相を見せていました

    ◆ジョージアのディフェンス

    ジョージアのディフェンスは「接点の強さ」「順目に回る意識」がキーになってくるのではないかと見ています
    これまでの項目でも触れてきた通り、接点という観点では安定感があるジョージア代表は、前に出るベクトルが強いディフェンスをしています

    特に9シェイプや10シェイプといったポッドが、キャッチ&ラン、つまり走り込みながらダイレクトにボールを受けるというよりも、ボールを受けてから前に出ようとする動きをする場合には無類の強さを誇っています
    ディフェンス間のスペーシングも狭めで、接点で圧力をかけようとしていることが予想されます

    反面ダイレクトな動きやフラット気味に受けてキャリーを見せる相手に対しては少し受け身になる様子もあり、接点をどちらが優位で作るかによってディフェンスの質が変わってきます

    順目に回る意識に関しては非常に強く、FWの選手も丁寧に順目方向に回ってきます
    オープンサイドにディフェンスの人数をかけることによって、ディフェンス自体の安定感を担保しようとしていることが考えられます

    順目へのフォールディングにこだわる理由としては、おそらくできる限り前に出続けたいという意識があるのではないかと思います
    試合の様子を見ている限り、あまりスライドする形のディフェンスを取らないようにしている様子が見受けられ、ラッシュアップとまではいかないまでも、エッジに立つ選手までしっかりと相手ラインに詰めようとする様子が見られました

    ただ、順目方向への意識と前に出る意識が重なった結果、ラックに近い位置に若干のウィークポイントが生まれている可能性があります

    順目に回る中でそこまでピラーに対する意識が高いわけでもなく、ピラーに入った選手も前に出ることを優先するので、結果的にラックから最も近いスペースが薄くなりやすく、SH役のパスダミーなどで前に出られていました
    もしかすると、日本代表の竹内選手が得意とするようなタックルを受けてからのリリース→再キャリーのフローがハマるかもしれません

    ◆まとめと試合の展望

    ジョージア代表と戦う上では、最低限「セットピース」「接点」で上回る必要があります
    この二つの要素をベースにスコアしたり、アタックのリズムを使ってくるので、ここを封鎖することで相手のアタックを抑え込むことができます

    現状多く注目を集めているのはFW陣ですが、個人的にはBKへの注意も払わなければいけないと思っています
    コントロールされたアタックとエッジでのブレイクを作り出しているのは間違いなくBKのスキルだと思っているので、ここに関してもディフェンスからプレッシャーをかけていきたいところです

    また、「ハイボール処理」「スイングによる数的優位」にも注意が必要です
    日本代表はオーストラリア戦から始まる強豪との連戦で、これらの要素に安定感は出てきたものの後手に回るシーンもありました
    今シーズンの終わりに向けて、これらの要素で相手を抑え込むことで試合を締めることが求められます

    今回は以上になります
    それでは!

  • 【マッチレビュー】2025ウェールズ代表対アルゼンチン代表レビュー

    【マッチレビュー】2025ウェールズ代表対アルゼンチン代表レビュー

    みなさんこんにちは
    秋が通り過ぎようとしている今日この頃、いかがお過ごしでしょうか

    今回は、今週末(日本時間11/16)に行われる日本代表対ウェールズ代表の試合に向けて、ウェールズ代表対アルゼンチンの試合を確認してショートプレビューを書くことにしました

    それでは見ていきましょう

    ウェールズのアタック様相

    <主なアタック構造>

    ウェールズのアタック構造は、おそらく1−3−3−1、中盤のFWによるポッドにそれぞれ三人のFWを配置する形です
    CTBがポッドロールをこなすことは基本的にはなく、純粋にFWのみのポッドが形成されていました

    1−3−3−1を基本とするアタック構造の方向性は、原則として外方向での数的優位を作ることを目的としています
    中盤で何度か9シェイプをベースとしたFW戦でラックを作り、グラウンドの半分ほどの幅を使って人数をかけてアタックをしていました

    ただ、その基本構造の中で、ポッドの人数は変化します
    1−3−3−1の構造から、2つ目の3人ポッドを2人のポッドと1人のランナーに変化させる1−3−2−1−1、または1−3−1−2−1という形をとっていました

    この構造変化のタイミングはエッジから1つ目のポッドで接点が生まれた後のフェイズで、残った2つ目の3人ポッドから1人の選手が離脱してリードランナー、プレイメーカーの前でダミーのランナーとして走り込み、残りの2人が主にCTBの前に立つブロッカーとして役割を持っていました

    そのため、基本的には外方向にチャンスメイクをする傾向にあり、2つ目の3人ポッドを分割して分けた1人-2人のFWは、原則としてボールを受けない形をとっています
    あくまでもブロッカーとして用いられ、その裏のラインはシンプルな単線構造をとっていました

    ただ、この構造がチャンスを完全に構築していたかというと、必ずしもそういうわけではありませんでした
    なぜかというと、数的に余っている人数が多くないこと、またアルゼンチン側の外側のカバーが比較的早く回り込んでいたことが理由として挙げられます

    <構造の注意点>

    近年のラグビー界では、スイングと呼ばれるアタックプレーが多く見られるようになってきました
    スイングとは、逆サイドやラックの裏、または各選手の裏側から順目方向に回り込むことで後出しで数的優位性を作り出す動きです
    後出しで人数を増やすことによってノミネートがブレたり、外側に大きな数的優位を作ることもできます

    ウェールズは、このスイング、またはそれに類する動きが少なく、あくまでもそのタイミングでそのサイドにいた選手でアタックラインを構築していました
    そのため、数的に多くの余裕を外側に作ることができず、軽いスライドディフェンスでも十分に対応可能な状態になっていました

    ブラインドサイド、ラックから見て狭い方のサイドではエッジでキャリーした選手たちがそのままストレートに下がってきており、形としてはピストンアタックなどの攻略方法もあったとは思います

    ただ、ウェールズはその選択は取らず、広いサイドで一定の数的優位に反応してアタックラインを構築していたので、なかなか相手ディフェンスを偏らせることはできていませんでした

    <キックオプション>

    キックオプションはなくはないのですが、中央に近いエリアからエッジ方向に蹴り込んだハイパントでは相手に獲得されてトライまで持ち込まれたりと、必ずしもいい方向に試合を動かすことはできていなかったように見えました

    9番のトモス・ウィリアムズなど、キックに優れた選手もいましたが、動的な状況の中で停滞を打開できるほどのキックはなく、うまくいかないか単なる脱出に留まるかの二択で揺れていました

    <キーマンとキープレー>

    9番トモス・ウィリアムズはアタックでも重要な役割を占めており、自身で少し持ち出して味方選手を呼び込んだり、そのまま自身で持ち込むことによるゲインを見せていました
    特にゴールに近くなってくるとウィリアムズを柱として接点勝負に持ち込んでおり、打点をパスや持ち出しで切り替えることで効果的なアタックを見せていました

    ゴール前でのピックゴー、または中盤からの選手の判断による持ち出しはウェールズのアタックの脅威の中核を占めるプレイングであり、ゴール前まで来ることができれば高い確率でスコアまで繋げることができていました

    ピックゴーや9シェイプなどで徐々に押し込み、押し広げたスペースに向かって素早くさらにピックゴーを重ねることで、小さいながらも着実にゲインを切ることができ、その動きは特にゴール前で本領を発揮していました

    ウェールズのディフェンス様相

    <主なディフェンス様相>

    ウェールズのディフェンスは、近年の各国のトレンドに比べると、そこまで前にラッシュを仕掛けてくるようなディフェンスではありませんでした
    おそらく数m前進してコントロールする傾向にあり、コンタクトのシーンでは前方向のベクトルはあまり感じられませんでした

    結果として、アルゼンチンの強力なFWによるキャリーに押し込まれることにつながります
    中盤をはじめとする多くのエリアで、サポートをつけながら接点を作るアルゼンチンのキャリーに対して、押し返すことができたシーンは少なく、なかなかゲインラインを下げられない状況が続いていました

    押し込まれがちになることの弊害として、より一層前に出ることができないという負のループも見られていました
    相手のキャリーに差し込まれることによって、ラックを挟んで逆方向に回り込んで人数を調整する動き、フォールディングなどの動きが大きく下がることとなり、相手のボールアウトに対して素早く反応することが難しくなっていました

    <数的劣位への対応>

    また、数的優位を簡単に作られていたことも確認できています
    特にエッジ、15mラインよりも外側のエリアにおいて最終的に2対1を作られてバックスリーに大きく前に出られ、キックやパスを使ってトライまで完結される、というシーンも多く見られました

    この要因としては、先ほど挙げた「接点で前に出られる」という要素のほかに、ブラインドサイドに人数が余っている、という要因が考えられます
    アルゼンチン側がブラインドサイドに残している人数よりもウェールズ側が残している人数が多く、数的優位を作られている形です

    ブラインドサイドに人数が残っている要因として、人数ベースではなく比率ベースでディフェンスラインを作っていることが想像できます

    人数ベースというのは、相手の人数に合わせてラックに対して両サイドの人数をコントロールする形で、比率ベースというのはグラウンドに対して等間隔に選手を並べることでエリアをカバーするという形です

    ウェールズのディフェンスは、見ていると比率ベースであるように見えることが多く、アルゼンチン側がオープンサイドに人数を割いているときであってもブラインドサイドに残っている形が多く見られていました

    接点で前に出られてしまうということもこの傾向に拍車をかけており、接点に人数をかけなければいけない状態が多くなりました
    その結果、順目方向の選手が接点に参加したりすることで順目方向の人数が減り、その減った人数に対して補充としてフォールディングする選手が不足することで、順目方向により一層の数的優位を作られていました

    <キックへの対応>

    キック処理の場面では、ハイボールへの対応に苦慮していた様子が見受けられました
    ボックスキックやハイパントを再獲得され、キック主体のゲインを獲得されることにつながっていました

    この現象の要因として、FBに入ったブレア・マレーの小柄な体格が影響していることが考えられます
    マレーは身体能力が高い選手ですが、身長は173cmと小柄で、ハイボールの競り合いの部分で相手に上を取られるシーンが目立っていました
    対面に入ったサンティアゴ・カレーラスも、極端には大きくないものと183cmと身長でマレーを上回り、ジャンプ力で制空権を押さえていました

    ウェールズのスタッツ

    テリトリーは46%、ポゼッションは47%と、アルゼンチンに一定水準上回れる結果になりました
    特に大きく差をつけられた状態で迎えたラスト10分間ではポゼッションは37%と、終盤は少し切れてしまったような数値を示しています

    敵陣22m内への侵入回数は6回と、14回のアルゼンチンに対して大きく差をつけられる結果となりました
    しかし、侵入回数あたりのスコアを見ると、ウェールズが4.6、アルゼンチンが3.7と順序が逆転する結果になっています

    ここまで述べた内容やこの後触れる内容につなげると、ウェールズはゴール前に行くことができれば高い水準でスコアを獲得することができると言えます
    しかし、戦術的に敵陣22mに入った回数が少ないからこそ、この結果になりました
    同じ比率で侵入回数がアルゼンチンと同水準であれば、単純計算で64点ほどスコアすることができていた計算になります

    ポゼッションの中でベーシックスタッツを見ると、キャリーは134回、パスは183回、キックは26回という数値を示しました
    キャリーに対するパスの比率は1.36と少しキャリー優位の数値でした
    つまり、パスを重ねることなくキャリーに持ち込むことが多いということであり、接点から試合を作ろうとした傾向を示しています

    また、キックに対するキャリーの比率は5.15と、約5回のキャリーが起きるごとにキックをしていると言えます
    ちなみに日本はアイルランド戦でちょうど5という数値をとっているため、日本と同水準でキックをしているということもできるでしょう

    一方でラインブレイクはアルゼンチンの14回に対して6回と控えめな数値を取り、ブレイクを生み出すことはできていませんでした
    ポストコンタクトメーターも100m以上上回られており、構造的にも物理的にも相手により前に出られていたと言えます

    ターンオーバーを見ると、獲得は7回と悪くない数値で、失った回数も14回と相手より少ない数値を示していました
    ただ、それでも勝てないというのが実情であり、ターンオーバーをした後のムーブや、失った後のムーブに課題が残っている可能性もあります

    まとめ

    ウェールズは、スコア効率やターンオーバーというスタッツでアルゼンチンを上回る成果を見せたものの、アタックの停滞やディフェンスの精度で後手に回る結果になりました

    日本代表としては、勝利は十分に射程圏内であると考えられます
    ウェールズ代表を自陣深くに入れず、中盤で試合を動かすことができれば、ウェールズはブレイクスル手段が少ないために大きく前進される可能性も低減することができます

    ただ、逆に言えばペナルティが嵩んで自陣深くに入られたり、接点で前に出られてリズムを掴まれたりすると、効率のいいアタックでスコアに繋げられることも考えられます

    日本代表にとっては年末のバンド分けに向けて絶対に落とすことができない一線でもあるので、注目していきましょう

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:明治大学対筑波大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:明治大学対筑波大学

    一進一退の接戦の最後に、劇的な逆転劇

    みなさんこんにちは
    遂に大学ラグビーのシーズンが始まりました

    今回は関東大学対抗戦より、9/14に行われた明治大学対筑波大学の試合について、見ていきたいと思います

    明治大学のラグビー

    <今節の明治大学>

    明治大学は、リーグ屈指のFW陣と、決定力のあるBK陣でバランその取れた攻守を見せるチームです。接点に定評があり、前に出る力は日本全国を見てもトップレベルでしょう。

    チームのタクトを振るうのはSOの伊藤龍之介選手で、ラン・パス・キックのバランスがいい万能型の選手でありながら、中でもランニングスキルは高水準にあり、攻撃面で突出した能力を持つ選手です。

    そんな明治大学ですが、今回の試合では「らしくない」ポイントがいくつか見られました。一般的な戦略の範囲内では正道とも言える戦略性を見せていましたが、それは得てして明治らしくないとも言える状況でした。

    <苦戦したラインアウト>

    最も顕著に現れた例としては、ラインアウトの成功率の部分ではないでしょうか。19回の試行回数に対して11回の成功と、半数近いラインアウトをミスで失っていることになります。筑波大学側のラインアウトスティールを受けたりと、かなりプレッシャーを受けていた側面が見受けられ、不安定さにつながっています。

    明治は、そういった状況に対して、ラインアウトの一番前で取る、という戦略をとっていました。後半に生まれた西野帆平選手のトライはその最たる例で、ジャンプを解さずにダイレクトに確保することでミスを低減することができます。

    しかし、ここに明治大学としての難しさを感じました。戦略的な正道で言えばこの選択は間違いのないものであるように思います。しかし、明治としてこの選択が正しかったかというと、メンタリティの部分も合わせて不安定になる要因にもなったかもしれません。

    <アタックの傾向>

    アタック全体としては、非常にいい傾向を見せていました。接点で上回り、リズムを出して相手の反則を誘発する。明治らしさもありながら「こうすれば相手が崩れる」というパターンに試合を持ち込んでいました。

    アタックは接点の他にも階層構造を用いて展開を図るシーンもあり、表と裏の構造を使っています。特に相手陣に向かって前進し、モメンタムを獲得できている時に構造的なアタックを使い、深さを生み出しながらさらにモメンタムを出すことに成功しています。

    また、主体的にキックを使ってエリアコントロールやプレッシャーをかけていました。自陣寄りではロングキック、中盤ではハイパントを交えたりと、戦略的なキックゲームに持ち込んでいました。

    ただ、ここも試合展開として難しいところで、個人的な視点としては、中盤での明治の怖さは「展開してくる」ところにあると思っています。伊藤龍選手の展開力と走力、その他の選手の機動力と接点の強さが揃っていたりと、展開するには十二分の力を発揮します。

    しかし、明治はそこまで展開にこだわらず、戦略的な攻防を続けていました。結果として、戦略性の範囲内でのスコアに留まっていたという見方をしています。

    敵陣深くでFW戦に持ち込むことができれば明治の強さを発揮できるのですが、明治はラインアウトに不安定感があり、ゴール前では消極的な選択が中心となっていました。結果としてエッジでのトライになってゴールを狙いづらかったりと、さまざまな要素にラインアウトの不安定感が影響していました。

    <ディフェンスの傾向>

    ディフェンスも悪くはない部分が多かったとは思います。接点でも強く、規律正しいディフェンスを見せており、筑波大学のアタックの多くを下げることに成功していました。

    しかし、それも接点の土俵に立った場合の話で、接点以外の部分に関しては互角か押し込まれるような展開になっていたように思います。
    特にエッジの部分のディフェンスでは、崩された多くの場合でFWとBKのミスマッチを作られています。

    前半に奪われた2トライは、どちらもカメラから見て手前側のサイドを活用された形でした。1つ目のトライは展開の中でFWが偏って配置されてミスマッチを突かれ、2つ目のトライはチェイスラインで唯一のBKであった白井瑛人選手選手がタックルを外されたことによって、BK2人と走力のあるFLに対してFWが2人という状況に陥っていました。

    また、最後の筑波大学の逆転につながったトライのシーンでは、2フェイズ前に明治大学の選手が規律的に順目方向に4人回ってしまい、結果として逆目方向に通されたアタックをBKである海老澤琥珀選手が止めざるを得ない状況になっていました。海老澤選手がタックルをしたことでさらに外側のエリアのディフェンスが薄くなり、トライに繋げられています。

    筑波大学のラグビー

    <今節の筑波大学>

    筑波大学は、接点とブレイクダウンに強みを持つ、上位校食いをすることもあるチームです。泥臭くプレーをすることを得意としています。

    筑波大学は、9番の高橋佑太朗選手と10番の楢本幹志朗選手が、うまく試合展開をコントロールしていたように見えました。
    高橋選手は攻撃的で、楢本選手は安定型の思考をしており、キックを主体に試合を動かしていました。

    特に蹴り合いになった時の楢本選手のキックの精度は高く、単純なキック距離で負けてしまっている時も、前に仕掛けながら左足で放つキックによって、最低限稼いでおきたいラインは越えることができていたように思います。

    <効果的に働いたアタック>

    今回の試合では、特にエッジに展開するようなアタックが効果的に働いていたように感じました。必ずしも大きな展開ではなくとも、エッジでのショートパスで打開しています。

    ここ数年の明治のディフェンスを見ると、中盤での厚さがある反面、エッジでは比較的ゲインを許すなど、アンバランスな堅さのあるチームでした。
    夏合宿の帝京大学戦など、展開力のあるチームに対しては少し苦戦傾向にある印象です。

    筑波大学は、大まかにいうとエッジをうまく活用していました。エッジからエッジのような大きく展開するような形ではなく、ショートサイドのエッジを攻略しています。

    前述したように明治のディフェンスはラックから近いエリアが堅く、つまりラックの位置によってはFWが固まっているような状況が生まれています。そのシーンに対して、楢本選手は細かなサイドチェンジや状況判断で狭いサイドに優位性がある時はそこを狙い、走力のある中森真翔選手をエッジに配置することによって質的にも上回る状況を作り出していました。

    <アタックの傾向>

    筑波のアタックは比較的シンプルで、接点にこだわりの見える形です。9シェイプを多く用い、12番の今村颯汰選手や13番の東島和哉選手といった縦に出られる選手も交えながら、コリジョンで中盤のアタックを安定させています。

    また、今回の試合では前述したようにキックでエリアをコントロールしている傾向も見られました。中盤でのアタックでは苦戦していた様子もあり、早めに蹴り込むことで中盤でミスが起きたりする前にボールを前に運ぶことができていました。
    キックがタッチに出ればプレッシャーをかけ、タッチに出なくても相手の蹴り返しを待つことができるので安定感が見られています。

    基本的には1−3−3−1のような配置を取り、エッジに走力のある中森選手のような選手を配置しています。中盤はタイトファイブの選手とNO8の大町尚生選手を配置して安定したコンタクトを見せ、楢本選手がボールを動かしながら接点を作り出していました。

    ただ、全体的にブレイクダウンでは苦戦傾向にあったように思います。接点の強い明治に押され、人数をかけなければいけなかったり、スティールを狙われて反則を犯したりと、難しい展開でした。

    <ディフェンスの傾向>

    ディフェンスもどちらかといえば苦戦していたという見方をすることができます。相手の接点が強く、一部の選手には大きく前に出られていたりもしました。

    ただ、組織的なディフェンスの部分では多くのシーンで相手を止めることができていたように思います。タックルも低く入ることができており、アシストタックルの精度の高さも見せていました。

    一方で、ペナルティのうちの多くはディフェンス時に発生したものであり、相手がモメンタムを出し始めた時にペナルティを犯してしまったりと相手にポゼッションを献上するようなシーンも見られていました。

    まとめ

    結果としては、筑波大学の逆転勝利という形にはなったが、トライ数は共に4トライと、互角の結果を示している。また、試合全体のモメンタムを見ても、再戦して必ずしも同じ結果になるとは限らない。

    筑波としても、「トライをとって残り2分」ではなく「トライを取られて残り2分」というポゼッションになったのも影響しているかもしれない。トライをとった場合は残り2分で相手キックオフ、トライを取られた場合はこちら側のキックオフとなるため、時間の使い方が変わってくる。

    むしろ、ここからの明治には期待しかないだろう。どの強豪校にも言えることだが、一度負けたチームは必ず強くなる。ここで負けてよかった、と言えるようなシーズンになることを期待したい。

    (文:今本貴士)

  • 【日本代表コラム】日本代表のバックスをロールに注目して考察する – グラデーション化したロールを分類して考える

    【日本代表コラム】日本代表のバックスをロールに注目して考察する – グラデーション化したロールを分類して考える

    みなさん暑い中いかがお過ごしでしょうか

    日本代表のウェールズとの2連戦が終わりました(マオリ・オールブラックスとの試合を含めれば3試合)。
    少しずつ今シーズンの日本代表の戦い方といったところが見えてきたところではないでしょうか。

    そんな中、Xにて選手の果たしている役割を知りたい、というコメントをいただきました。
    実際、近年のラグビーでは、特にBKの選手の役割の多様化が進んでいます。兄弟アカウントでもあるUNIVERSISでも過去に触れてきました。

    https://note.com/embed/notes/n60a51bdff8b6

    そこで今回は、日本代表の試合メンバー、特にウェールズとの2連戦に出場したBKの選手に注目して役割ごとに分類できないか試してみることにしました。分類しながらパフォーマンスを考察していきます。

    ※SHの選手は役割が特にユニークなので、割愛しています。
    ※呼び方は独自のものです。業界共通ではないのでご注意ください

    目次

    1. フラットプレイメーカー
    2. SO:李承信
    3. FB:サム・グリーン
    4. ディーププレイメーカー
    5. FB:松永拓朗
    6. FB:中楠一期
    7. ナインスマン
    8. CTB12:中野将伍
    9. フラットラインメーカー
    10. CTB13:ディラン・ライリー

    すべて表示

    フラットプレイメーカー

    フラットプレイメーカーは、どちらかというと浅い位置でのゲームコントロールを役割とします。相手に接近してパスを放る傾向にあり、自分からのワンパスでゲームをコントロールしようとします。

    SO:李承信

    李選手は、リーグワンでは12番や15番を務めていたこともあり、展開力に優れたというよりも、自分のコントロールできる範囲内のプレイングで打開を図るような役割を果たしています。自分でのキャリー比率も一定量見られており、狭い範囲でのコントロールを得意とするタイプに見えます。

    ウェールズ戦の第1戦ではジェネラルフェイズでのボールタッチ回数が少なく、ボールをコントロールする機会自体が少なく、2戦では回数が増えたもののうまくコントロールをすることができていなかった印象です。
    全体的に少ないパス回数でのキャリーが増えていた様相も見られていました。

    個人的な印象としては、李選手のSOとしてのワークレートは、まだまだ発展途上ではないかと感じています。アタック時の展開力には伸び代が感じられ、まだ自分に近い位置でのコントロールに限られているようにも見えました。

    FB:サム・グリーン

    グリーン選手はリーグワンでは10番を背負っていた選手ですが、交代した際の背番号で言うと15番として試合には投入されていました。
    しかし、個人的にはグリーン選手の良さはフラットラインメーカーとしての強さがあると感じています。

    グリーン選手はスピードのあるタイプのプレイメーカーで、アタックライン自体にスピードを与えることができます。
    キックリターン時のカウンターアタックでも特徴を遺憾なく発揮することができ、素早く相手ラインに向けて体を差し込むことができています。

    しかし、ウェールズとの第2戦で出場した際には、少し役割が李選手とかぶってしまっていたようにも感じました。
    李選手とグリーン選手では少しタイプが違うため、共存も可能かとは思いますが、フラットプレイメーカータイプであるグリーン選手が深い位置に立っていることも多く、グリーン選手らしさを発揮する機会は多くなかったようにも見えます。

    ディーププレイメーカー

    ディーププレイメーカーは、アタックラインの深い位置でゲームコントロールを司る選手です。最初のレシーバーとしてゲームを動かすと言うよりは、ラックから見て二人目の選手、二つ目の階層でボールを受けるような立ち位置をとっていることが多く見られます。

    FB:松永拓朗

    松永選手は、残念ながら第1戦の途中で負傷後退となってしまいましたが、リーグワンの戦いの中で15番として優れたプレイングを見せてきた選手です。松永選手はバックラインの比較的深い位置に位置したり、時に浅い位置どりをしてフラットプレイメーカーのような役割を果たすこともあります。
    ただ、個人的には松永選手はディーププレイメーカーに分類できるプレースタイルをしています。

    中央を自力で突き崩す能力よりも、外に生まれたギャップをつくことに長けており、深く遠い位置からスピードを持ってギャップに仕掛けるシーンが多く見られていました。
    パス能力や視野にも長けているため、大きく前に出た後の選択を外すシーンも少なく、安定したプレイングを見せています。

    代表戦では負傷の影響で長いプレー時間がありませんでしたが、第1戦で生まれたトライに関わっていたりと、ポジショニングの能力は見ることができたかと思います。

    FB:中楠一期

    中楠選手は、ディーププレイメーカーの中でも表と裏の両方に選択肢を作ることができる選手です。今回のウェールズとの2連戦、リーグワンで務めていた10番とは違うポジションでの出場となりましたが、深い位置でのゲームコントロールを主軸に、浅い位置での選択肢としてのプレイングも光っていました。

    特徴的だったのが第2戦の前半に見せたビッグゲインで、通常時であれば2枚目の裏に入ることが多かった中楠選手が、このシーンでは表のラインでディラン・ライリー選手からボールを受けていました。
    スピードとアングルも的確で、1回のパスの動きだけで大きなゲインを手に入れていました。

    ただ、今回の2試合では15番、ディーププレイメーカーとしての役割をこなすことが多かった中楠選手ですが、個人的には浅い位置でのプレイング、フラットプレイメーカーとしてのロールも見てみたい気持ちです。
    突破力では他の選手に軍配が上がるかもしれませんが、ファーストレシーバーとしての能力は高いため、可能性が見られるかもしれません

    ナインスマン

    ナインスマンとは、主に12番の選手がこなすことの多いロールで、FWとともにポッドを作ることが多いのが特徴です。パスの頻度は一般的な12番よりも控えめで、接点に強みのある選手が該当する場合が多く見られます。

    CTB12:中野将伍

    中野選手は、サンゴリアスでは器用で接点に強いタイプのキャラクターですが、代表では接点の部分のワークレートが特に重要視されているように感じます。
    9シェイプ・10シェイプ問わずポッドに参加してFWと同じようなロールをこなすことが多く、中盤での展開を担っているシーンはあまり見られなかったのではないかと思います。

    中野選手の持ち味は恵まれた体格による接点の強さです。安定したコンタクトを見せており、シーンによってはオフロードを繋ぐといった器用さも見せることがあります。
    実際に試合を見る限りでも、接点の部分では十二分に戦えていたことが印象に残っています。

    しかし、実際のところ2試合目ではミスが目立つ結果になっていました。
    私は、これの要因として「役割の過多」があると考えています。
    本来であれば器用さから展開にも強みがある中野選手ですが、今回のシリーズでは接点に偏った運用をされていたように感じました。

    基本的にボールを持てばキャリーに繋げ、展開時もFWとしての動きが目立っています。
    その結果としてプレーの精度が下がり、後半のワークレートの低下につながったのではないかと思います

    フラットラインメーカー

    フラットラインメーカーは、アタックラインを構成する選手のうち比較的浅い位置でプレーする選手です。展開と接近戦のバランスもとりながら、キャリーでも強みを発揮する選手が当てはまります。

    CTB13:ディラン・ライリー

    ライリー選手は、ブレイクした後のスピードも含め、全体的にバランスの整ったランナーの一人です。ハンドリングの器用さもあり、キャリーから繋ぐことにも長けています。

    ライリー選手のウェールズ戦での運用としては、どちらかというとキャリー寄りの働き方であったように感じます。展開を司るといったパターンよりも、早い段階でボールを受け、そのままキャリーに持ち込むパターンが多く見られました。

    運用の是非については難しいところですが、ライリー選手の鋭い突破力とハンドリングを生かそうとする流れの中では比較的妥当な運用であったと感じます。
    一方で、ライリー選手が少しラックから近い位置での運用となっていたため、ライリー選手のスピードを生かしきれていないようなシーンもあったように思います。もう少しプレイングエリアを外側にするなどの工夫ができるかもしれません。

    スプリンター(仮名称)

    スプリンターはBKの全タイプの選手の中で特に走力に優れたタイプであると定義しています。スプリンターはエッジで運用され、外で生まれた数的優位を突いて相手を振り切るようにプレーするのが特徴です。

    WTB11:マロ・ツイタマ

    ツイタマ選手はブルーレブズでも外側のエリアを主戦場としています。外側で生まれた空間を生かし、スピードを使ってトライまで取り切ることを得意としています。

    ウェールズとの2連戦では1戦目に出場し、環境などに苦戦しながらの途中交代となりました。アタックラインの深い場所に位置し、展開する役割も任されていたように感じます。
    ただ、キックレシーブなどで特に苦戦していたようにも見えました。

    キックレシーブに関しては環境要因も影響しているかもしれませんが、改善すべき因子ではないかと感じられます。
    また、バックラインの中間地点としてライン参加した時の不安定さも気になる部分ではないかと思います。
    求められるロールとしてはマルチタスクの様相もあるので、この辺りの調整が待たれるかもしれません。

    WTB14:石田吉平

    石田選手はスプリンターであり、ステッパーでもあります。役割としては大外で距離感をキープしながら数的優位性を活用するようにランニングを見せることです。石田選手はツイタマ選手とは異なり明確にインサイドに仕掛けるシーンは少なめで、セットプレーからのフェイズで仕掛け役になるくらいではないかと思っています。

    ウェールズ戦の第1戦ではセットプレーからの一連のフローに絡み、スピードとアングルを生かしながら効果的なアタックに繋げていました。それ以外のシーンでも、スピードと足腰の強さを生かしてエッジでの前進に貢献していました。

    ハイボールでも、ある程度の強さは見せていたように思います。高さ自体はより大柄な選手に劣る部分はあるかと思いますが、再獲得のチャンスを掴むことはできていました。
    それ以外の部分でも安定感のあるプレイングを見せており、主たるロールの部分はこなすことができていたように感じます。

    ペネトレーター(仮名称)

    BKの選手のうち、突破力に優れた選手として定義しています。パワー系のランナーが該当することが多く、走力と接点の強さが特徴になっています。

    WTB11:ハラトア・ヴァイレア

    ヴァイレア選手はエッジに配置されることが多く、エッジで突破力を生かしながらトライを取ることを得意としている選手です。
    数的な優位性が作れていないシーンでも相手を巻き込んで前に出ることがでできるため、外側のエリアでパワープレイに繋げることができます。

    ウェールズとの2連戦では、1戦目の途中交代、2戦目の先発として出場しています。試合ではエッジに近い位置での突破役として活躍し、複数人を巻き込みながら前に出るシーンを見せていました。
    その他のパワープレイも安定しており、エッジでの切り札の一つとしていいプレーを見せていたように感じます。

    一方で、少し課題となったのはハイボールの確保の部分です。回数自体はあまり見られなかったのですが、ハイボールを競り合う段階での「高さ」の部分での不安定性がありました。
    ペネトレーター系の選手は苦手とすることも多いのですが、インターナショナルではキックの重要性が高まる都合上、この部分には安定感が必要かもしれません。

    まとめ

    これらのように、チームから任されているであろうロールと、得意とするロールが重なっていないような選手も見受けられているように思います。
    どちらに合わせるかはHCの匙加減になってくるかと思いますが、現状としては、一定の調整は必要かもしれません。

    ロールはアタックの狙いに沿った組み合わせで効果を発揮するので、うまい組み合わせを模索していきたいものですね。

    それではまた。

  • 【マッチレビュー】2025ニュージーランド代表対フランス代表第1戦

    【マッチレビュー】2025ニュージーランド代表対フランス代表第1戦

    不運な状況でも掴んだ勝利

    みなさんこんにちは
    暑い中いかがお過ごしでしょうか

    さて、今回は日本時間7/5に行われたテストマッチから、ニュージーランド代表対フランス代表の試合について、レビューをしていきたいと思います

    それでは順番に見ていきましょう

    ニュージーランド代表のラグビー

    テンポを上げる様相を見せていた

    ニュージーランドは、コーチの試合前の発言通り、テンポを重視したラグビーをしていました
    SHからの球出しも早く、素早くセットしてアタックのテンポを上げようとする様子が見られています。

    テンポを上げるメリットとして、相手のセットよりも先に攻撃を繰り広げることができるという点があります。
    相手よりも先にセットをしてアタックをすることができれば、位置的な優位性や数的優位性を活かしてアタックをすることができます。

    ニュージーランド代表がテンポを意識していた傾向の証左として、球出しの速さの他にも「ピックゴーを多く用いていた」という様相があります
    ピックゴーはパスを介さずにダイレクトにラックからボールを持ち出す動きで、タイミングと状況が整えば後ろに下げるリスクを負うことなく前に出ることができる手段でもあります

    SHに入ったキャム・ロイガード選手とコルテツ・ラティマ選手はともにテンポを上げることのできるSHで、自分でボールを持ち出したりと攻撃的な様相も見せています
    ラックの周辺にポジショニングしているFWの選手に対して、SHという特性を活かしたアタックをすることで、ミスマッチをつくことができるという特徴もありました

    ポッドを中心としたアタック構造

    アタックの起点となるのは、ラックからボールを受ける3人の選手によって構成される9シェイプで、基本的に中盤には3人の選手によるポッドが二つ配置されます
    多くのフェイズではこれらの基本的な構造を用いてアタックをしていました

    ただし、注意したいのは必ずしも3人のポッドだけでアタックを作り上げているわけではないという点です
    10シェイプにおいては、特にテンポをあげてバックラインを使おうとする時などに、2人の選手でポッドを完結させるようなシーンも見られていました

    また、ジェネラルなシーンでもポッドの人数は可変的で、FWの配置の人数が変わるというよりも、BKの選手が参加することで人数が変わっているシーンが見受けられました

    12番のジョーディ・バレット選手や13番のビリー・プロクター選手は、ポッドに対して第3・第4の構成員として参加しています
    ポッドに参加する位置はフェイズによってまばらで、中央に位置することが多い一方で、端に位置するシーンも見られていました

    CTB陣がポッドに参加するメリットとして、(基本的に)ハンドリングに長けたBKの選手をポッドに組み込むことによってアタックを安定化させることができます
    また、ポッドの一員としてCTBの選手を組み込むことによって、さらに外側でポッドを作ることもできるので、ポッドの数を増やしてバリエーションを作ることができるという側面もあります

    そういったBKの選手を組み込みながら、ポッドは4人や5人で構成されているシーンもありました
    後述するフランス代表のポッドでも似たようなシーンが見られていましたが、ニュージーランド代表の方はBKが中央にポッドをスプリットするように参加する形で、ポッドにボールが渡ってからのオプションを増やしていました

    プレイメーカーによるゲームコントロール

    ゲームのコントロールをしていたのは10番のボーデン・バレット選手と(不運なことに前半すぐに交代出場した)23番のダミアン・マッケンジー選手でした
    両者はスーパーラグビーで共に10番をつけている選手で、プレイメーカーとして早い段階でボールを受けてコントロールしていました

    両選手ともに判断に優れた選手ですが、特にボーデン・バレット選手は自分の判断の優先順位が上がった際にはポッドを破るように前に出ながらアタックラインに参加するようなシーンもあります
    マッケンジー選手はどちらかというと少し後ろ重心のアタック参加で、少し空間があるような状況でボールを受けているように見受けられました

    また、2選手を含むバックスラインが安易に順目に回らないようにしているシーンも見られていました
    特にゴール前でのアタックシーンにおいて、BKの選手は比較的ラックに近い位置どりをしながら滞留し、状況判断でチャンスと見た場合には展開してアタックラインを形成していました

    どちらのサイドにも動的にアタックラインを作ることができる状況を準備することによって、相手のディフェンスに対して後出しでセットをすることができます
    特にサイドを切り替えながら動的にアタックラインを作る「スイング」という動きにコンパクトに繋げることもできるため、より意思決定と状況判断に応じた動きであると言えます

    フランス代表のラグビー

    特徴的なポッドによるコントロール

    基本的にはこの特徴に尽きるようなラグビー構造に見えました
    各選手のロールは似通ったものも多く、明確な位置関係・役割の分担があるというよりは、瞬間瞬間の最適解になる選手が定められたポジションに移動するというような形をとっていたように感じます

    フランスのポッドの特徴は、極めて流動的で余白のある構造をしていることです
    基本的な構造としては3人構成を中心としながらも、多くのシーンで4人から5人、多い時は6人ほどの集団一直線上に並んだような構造をしています

    果たしてポッドと呼ぶのが正しいのかわからないような構造をしていますが、ここではポッドと呼ぶことにします
    フランスのポッドはフェイズによって人数が変わり、わかりやすく尖った形というよりは、線形の構造をしています
    イメージとしては、バックスラインに対してFWのフロントラインが傘のように被さっている状態です

    おそらくアタックの中心になっているのはポッドを使った個々のスキルや優位性を使ったキャリーで、ポッドを使ったキャリーでいかに前に出るかといった点の重要度が高いラグビーをしています
    あえて言及するのであれば、「FWで縦を突き、BKで横に広げる」といった極めてクラシカルな構造かもしれません

    このポッド構造には、BKの選手が参加することもあります
    12番のガエル・フィクーや13番のエミリアン・ゲイルトンは、テンポの加速に合わせてフロントラインに立つようになり、フロントラインとバックラインの境界が曖昧になるようになっていました

    シーンによっては11番のギャビン・ビリエールが参加するようなシーンも見られています
    しかし、ポッドに参加する際にBK特有のロールがあるようには感じられず、あくまでもポッドを構成する一選手としてのプレーに徹していたようにも感じます
    そのような点で、選手たちのロールは似通っていました

    ポッド内のプレースタイル

    また、ポッド内のパスワークが多様だった点についても注目しています
    基本的にポッドの中のプレースタイルとしては、そのまま自身でキャリーに持ち込むか、一つ横の選手にパスをする、またはバックラインに対してスイベルパスをする、といった形が考えられます

    フランス代表は、このパターンの中で「パス」に特化したプレイングを見せていました
    スイベルパス自体はそう多くはなかったように感じていますが、ポッドの中でパスを使って打点を切り替えるという点において、他の国にはあまり見られないようなバリエーションを見せていたように思います

    まずは基本となるティップオンパスですが、こちらもある程度「好んで用いている」くらいの頻度で見られていたように感じます
    こちらのパスは打点を切り替えることに活用されており、相手とコンタクトする直前でパスを出すことで1対1を安定して作ることができていました

    また、特徴的だったのはポッド内のミスパス、いわゆる「飛ばしパス」と呼ばれるパスを見せていたことです
    基本構造である3人ポッドであればなかなか活用が難しいミスパスですが、フランス代表は4人以上のポッドも多く用いており、多くの選択肢を同時多発的に準備することでパスのバリエーションも増やしていました

    特にポッドの外を見ているニュージーランド代表のディフェンスにとっては、裏に立つバックラインへのフォーカスも切らすわけにはいかず、フロントラインの中で大きくボールが動くことによって完全に崩されるようなシーンも見られていました

    まとめ

    ニュージーランドとしては、少し物足りない結果といったところでしょうか
    近年苦戦していた相手ということもあり、「マストウィン」が求められる試合だったと思います

    今回の試合では勝利を収めることができましたが、フランス代表のメンバーがノンキャップの選手が多かったこともあり、もう少し圧倒したかったかもしれません
    まだ今後も試合があるので、注目していきたいところです

    それではまた

  • 【マッチレビュー】JAPAN XV対マオリ・オールブラックスを分析する

    【マッチレビュー】JAPAN XV対マオリ・オールブラックスを分析する

    課題となった一貫性

    みなさんこんにちは

    日本代表、またそれに準ずる代表の試合がついに始まりました。
    セレクションも、試合も楽しみにされていた方が多かったかと思います。

    今回は6/28に行われた、JAPAN XV対マオリ・オールブラックスの試合について、分析的に見ていこうと思います。

    目次

    1. JAPAN XVのラグビーを質的に振り返る
    2. アタック面での様相
    3. ディフェンス面での様相
    4. JAPAN XVのラグビーをスタッツから振り返る
    5. 前半のスタッツ
    6. 後半のスタッツ
    7. 総合スタッツ
    8. まとめ

    JAPAN XVのラグビーを質的に振り返る

    アタック面での様相

    JAPAN XVは、アタック面での様子を見ると超速ラグビーのスローガンに応じた、早い展開をしていたように見えました。
    SHの福田健太選手の捌きもスムーズで、リズムよくボールを動かしていた様子が見て取れるかと思います。

    アタックのイメージではパスが多く、全体的にボールを動かそうとする意図は見えました。SOに入ったサム・グリーン選手はパス比率の高い選手で、ボールを受けてからは早いリズムでボールを動かしていたように見えます。
    後述しますが、パスに対するキャリーの比率も少し小さめで、パス優位のアタックをしていたということができます。

    ポッドの基準は3人で構成され、近年リーグワンでも見られていたような4人でのポッドはあまり見られなかったように感じました。
    その一方で、2人ポッドに遅れてサポートの選手が入るといった形は一定数見られており、どちらかというとアタックラインの広さに対してポッド構成はコンパクトだったようにも見えます。

    ポッド構成が2人だったシーンを振り返ってみると、きっちりセッティングした結果2人になったというよりは、テンポをあげてアタックを繰り広げた結果として2人でスタートするようになったという方が近いように感じます。
    ラック自体はキャリアー+2人のサポートで完結させようとする様相が見られていたため、2人ポッドに対しては、内側から一つ前のラックなどに参加していた選手選手が後出しで参加していたようなシーンが見られていました。

    こういった形を成立させるためには内側の選手のワークレートが必須になってきますが、これに関しては全体的にできたりできなかったりといった部分があったように見ています。
    必ずしも安定しているわけではありませんでしたが、内側からのサポートをしようとする意図はしっかりと見られており、今後につながるような様相が見られていました。

    ポッドを構成する3人の選手に関しては、必ずしも中央の選手が突出するような形ではなく、時折線形にフラットに並ぶシーンも見られていたように感じます。
    そのようなシーンでは必ずしも中央の選手が受ける形ではなく、SHの判断で1人目・3人目の選手にもパスを放るというような形もありました。
    3人に対するパスの選択肢があるという点で、少し相手のコミットをずらすことができていたようにも見えます。

    また、9シェイプや10シェイプに対してBKの選手が参加したパターンというのも見られていました。
    参加していたのはチャーリー・ローレンス選手やシアサイア・フィフィタ選手、途中交代したハラトア・ヴァイレア選手といった、アタックにパンチのある選手が揃っていました。

    そのため、3人で構成されたポッドを多く用いる傾向にあり、ラック自体は安定していたようにも見えます。
    ただ、いわゆるボールプレイスメント、ラックの中でボールを適切に後ろに送る動きの部分では少し不安定な部分があり、ボールがこぼれてしまったり、相手に絡まれたりといった部分は見られていたように思います。

    また、特に9シェイプで激しくプレッシャーを受けることで、前進を図ることができていなかったことも試合に影響していたように見えました。
    ポッドを使ったアタックで前進することによって相手のディフェンスを動かし、優位性を作るフローを成立させることができます。
    その部分で優位に戦うことができなかったことで、相手にとっては簡単な移動だけでディフェンスを成立させることができていました。

    ディフェンス面での様相

    ディフェンスは、かなり苦戦したように見えました。
    相手に許したラインブレイクも多く、タックルを外されたり完全に崩されたりと、試合全体で一貫した水準のディフェンスはできていませんでした。

    何点か注目したポイントがあります。
    まずは相手のスイングの動きに対するディフェンスの部分で後手に回るシーンが多く見られていたという点です。

    スイングとは、逆サイドやラックの後ろのエリアから順目方向に動きながらアタックラインを後出しで構築する動きのことで、近年様々なチームで見られている動きになります。
    マオリ・オールブラックスはこの動きを多く用いてアタックを繰り広げており、JAPAN XVはこの動きにかなりやられていたように思います。

    JAPAN XVのラック周辺の動きとして、人数を見ながら両サイドに適切な人数比で広がるという動きが遅いという傾向にあります。
    特にフォールディングと呼ばれるラックに対して反対方向に移動する動きについては、不足していたり過剰だったりと、相手のモメンタムに影響を受けてコントロールしきれていない様相が見られていました。

    また、広めに立った相手の9シェイプに対して、比較的外側の選手がコミットしてしまうことによって、フォールディングが遅れているようなシーンもありました。9シェイプで強いプレッシャーを受けることで一つのコリジョンに対して人数を割く必要性があり、選手たちがラック周辺にフォーカスを向けることで外方向に数的優位性を作られてしまうようなシーンも見られていたように思います。

    また、もう一つ見られた現象として、突出するような動きを見せている選手が複数人見られていたことが挙げられます。
    ディフェンス自体は相手のラインに対して早いスピードで自分たちのディフェンスラインも上げ、プレッシャーをかけるスタイルが見られていました。
    これは多くのチームで見られている傾向で、前半は比較的有効に働いていたように見えます。

    しかし、前半の一部、後半の複数のシーンで飛び出すように前に出る選手が見られていました。
    その動き自体は必ずしも悪いものではなく、適切な位置関係やスピードであればプレッシャーをかけられる動きでもあります。

    ただ、その動きを外された後に大きな前進をされており、内側からディフェンスラインを押し上げる動きがあまり見られていなかったことがわかります。一人だけ前に出てしまうことでその内側に生まれたギャップを突かれるといった形が多く見られていました。
    飛び出す選手に対して特に内側の選手が合流できておらず、ディフェンスラインに断絶が起きていました。

    JAPAN XVのラグビーをスタッツから振り返る

    今回は、JAPAN XVのアタックに関連したスタッツをつけたので、チェックしていきたいと思います。

    前半のスタッツ

    画像

    このスタッツからは、JAPAN XVが大きくボールを動かそうとしていたことが見て取れます。
    キャリー55回に対して100回のパスが生まれており、1回のキャリーに対して2回近くパスをしていたことがわかります。
    9シェイプを多く用いていれば1回のキャリーに対して1回のパスといった比率に収束していくため、その分ボールを動かしていた、と言えます。

    また、6回の敵陣22mエリアへの侵入に対して3回の得点機会が生まれています。17回のポゼッションのうち6回が敵陣22mエリア内に入っていることを考えると、エリア的にも有効なアタックができていたと考えられます。
    2回のラインブレイクの全てがスコアに直結していたわけではありませんが、侵入回数に対してそう悪くはないアウトカムを見せていたと言えるかもしれません。

    セットピースは大まかには安定、限定して言えばラインアウトが少し不安定だったという言い方になるかと思います。
    スクラムに関してはかなり安定した様子を見せていたので、アタックの起点としては十二分の効果を見せていたということができます。

    後半のスタッツ

    画像

    後半は、ボールの動かし方は比較的一般的な水準に落ち着いています。43回のキャリーに対して66回のパスと、1回のキャリーに対して1.5回のパスが見られているといった比率になっています。
    この比率は一般的な水準であり、9シェイプとそれ以外のアタック様相をバランスよく用いていることの証左でもあります。

    しかし、ポゼッション回数やキャリーの回数に対して、ラインブレイクや敵陣侵入回数を増やすことはできていませんでした。
    キック回数の増加やポゼッションに対するキャリーの回数を見ると、ポゼッションを少し手放す傾向にあったことも感じられますが、結果的にスコアチャンスはあまり作ることができていなかったことがわかります。

    また、ターンオーバー回数も増えています。
    単純に回数から計算すると21回のポゼッションのうち9回は自分たちの望む形ではないボールの手放し方をしているということでもあり、水準を改善していくことが求められます。

    総合スタッツ

    画像

    このスタッツを見ると、一般的な水準に比べると少しパスが多い、ということができます。
    1回のキャリーに対して1.7回のパスが見られていたりと、後半にかけて若干の減少傾向が見られてものの、少しパスの比率が高いということができます。
    1回のポゼッションに対するキャリー回数は2.6回となっており、ポゼッション優位ではありましたが、振り切った形ではないと言えます。

    気になる部分としては16回のターンオーバーロストでしょうか。
    自分たちの望む形ではないボールの移譲が生まれることによって対応が遅れたり、チャンスを不意にしたりといった状況が生まれる可能性を高めてしまいます。
    実際に、ターンオーバーからトライを奪ったシーンも、奪われたシーンも見られていました。

    一方で、セットピース自体は悪くない数値を見せているように思います。
    細かい部分は専門家の解説に一任しますが、数値としては悪くないかと思います。
    あとは、この安定した数値をスコアに繋げられるかが勝負になってくるかと思います。

    まとめ

    個人的には、この試合結果を悲観的には捉えていません。
    ただ、楽観的に捉えられるものではないようにも思います。

    現実問題として53点を奪われており、ディフェンスには課題が残っています。アタック面では敵陣侵入回数に対するスコアアウトカムやそもそも侵入できないといった課題が見られています。

    ウェールズ戦に向けて、時間はそう多くはありませんが、改善が必要であるのは必至ではないかと感じました。