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  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:早稲田大学対慶應義塾大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:早稲田大学対慶應義塾大学

    伝統の早慶戦、早大の超速ブレイクダウンが勝利を呼んだ!慶應義塾との緻密な戦術戦

    2025年11月23日、ラグビー関東大学対抗戦のクライマックスを飾る伝統の一戦、第102回早慶戦が、熱気溢れる秩父宮ラグビー場にて開催されました。会場には1万5164人の観衆が集結し、両校の意地とプライドが激しくぶつかり合う舞台を見守りました。結果は、対抗戦首位を走る早稲田大学が慶應義塾大学を49-21というスコアで下し、勝ち点を「32」まで積み上げ、首位を確固たるものとする圧巻の勝利を収めました。

    しかし、このスコアの裏側には、両校が練り上げた戦術システムが高度に交錯する、戦術的な深みのある攻防が展開されていました。早稲田の「1421」ポッドに代表される流動的かつ多角的なアタックと、慶應の「1331」を起点とした継続アタックの応酬は、現代ラグビーのトレンドを象徴するものでした。本記事では、この激闘を詳細な戦況分析、アタック戦略、ディフェンス戦術、そしてデータ分析の各側面から解説します。

    試合展開:互いに譲らないポゼッションラグビーと早大の爆発力

    試合はキックオフ直後から、早稲田が準備してきた多様なアタックオプションを惜しみなく披露し、主導権を握る展開となりました。

    早稲田は、敵陣に入るとすぐにFWが縦に突き刺さる「3311」のポッドを起点に慶應ディフェンスを崩しにかかります。センターを中心とした縦への強いアタックと、それをサポートする9番を起点としたボールムーブメントが機能し、瞬く間に優位な状況を作りました。そして、早々にスクラムでのペナルティーを獲得すると、このチャンスを逃さずラインアウトモールを押し込み、HO清水健伸選手がこの日最初のトライを奪います。

    清水選手は、このモールアタックの猛威を体現するかのように、前半だけで立て続けにトライを重ね、最終的にこの日4トライという驚異的な決定力を発揮し、勝利の立役者となりました。

    早稲田は中盤左ラインアウトからの右オープン攻撃では、日本代表のFB矢崎由高選手が相手ディフェンスラインを切り裂くダイナミックなランで大幅ゲイン。この流れるようなアタックから、NO8粟飯原謙選手CTB福島秀法選手との巧みなパス交換を経て、粟飯原選手がトライを奪うなど、キープレーヤーが躍動し、早稲田の攻撃に勢いをつけました。

    対する慶應義塾も、ただ守るだけでなく、戦術的な深さを見せます。ターンオーバーから数フェーズ動かした後、10番小林祐貴選手からのハイパントキックで陣地を挽回し、再獲得する場面もありました。しかし、モールからアタックを仕掛けるも、サポートの遅れから早稲田のジャッカルを許すなど、再三トライチャンスを逃しました。このブレイクダウンの攻防こそが、試合の主導権を握る上で大きな差となりました。

    試合中盤、早稲田の13番福島選手は、大学トップクラスと評されるオフロードパスで慶應ディフェンスを切り裂きます。右サイドでの広いレンジでのギャップを突いたオフロード、そして直後のフェーズでの左サイドでのアシストは、福島選手の突出した突破力と視野の広さを証明しました。

    一方、慶應は9番橋本弾介選手のロングパスから、内側のディフェンスを切り崩す効果的なアタックを展開。橋本選手と12番今野椋平選手が接近して相手を引きつけ、ギャップを創出するサインプレーを繰り返し成功させ、同じ形からトライを奪うなど、サインプレーの精度と遂行力の高さを見せつけました。

    早稲田は前半終了間際にも、ラインアウトからのサインプレーで清水選手がこの日3本目となるトライを奪い、35-7で前半を折り返しました。後半も主導権の奪い合いは続きます。慶應も意地を見せ、ラインアウトモールからワンチャンスで追加点を挙げるなど奮闘しますが、早稲田の猛攻を最後まで止めることはできず。最終的に早稲田が2トライを追加し、49-21でノーサイドを迎えました。


    早稲田のアタック:多角的なポッドシステムと超速ブレイクダウン

    早稲田のアタックは、複数のポッドを効果的に使い分ける多層的なシェイプによって、慶應義塾ディフェンスを攻略しました。
    早稲田のアタック戦略の中核を担ったのが、流動的な「1421」のポッドシステムでした。

    • 司令塔の移動とアタックの流動化: 試合中盤、早稲田が中盤から展開した際には、FB矢崎選手がサイドライン際からミドルエリアへ移動してくるという戦術的な動きが見られました。この動きにより、アタックの起点が流動的になり、ディフェンスは早稲田の攻撃の「狙い」を掴むことが極めて困難になりました。
    • ミドル4人ポッドの優位性: 試合を通じて、このポッドを使い続け、特に4枚並ぶFWが効果的に機能していました。ラックから2番目あるいは3番目の選手が1stレシーバーになるオプションをもち、さらに両サイドにティップパスを繰り出すこと、あるいはスイベルパスでBKへ供給するなど、複数オプションを高精度で持ち続けました。その結果、慶應ディフェンスはキャリアを絞り切れない状態に陥りました。この構造的な優位性が、継続的なゲインを可能にしました。また、ショートサイドのシーケンスを巧みに使いながらゲインを重ねるなど、エリアに応じたポッドの運用が完璧でした。
    • 超速のブレイクダウン: このポッドアタックを成功させた最大の要因は、ブレイクダウンのリサイクルの速さです。超速でボールを捌くことで、慶應ディフェンスが整うわずかな時間すら与えず、常にアタック側の優位性を維持し続けました。

    チームの戦術的自由度と個の突出

    • 服部選手の戦術的自由度: SO服部亮太選手は、FWの裏側に位置したり、逆サイドから移動してくるためディフェンスとしては掴みづらい展開を作り出しました。ブラインドサイドでのシーケンスでは、WTB田中健想選手がファーストレシーバーに入り、FWの縦ランに対して裏のBKへパスするシーンや、ラックサイドをSHから受けて攻撃するシーンなどその戦術的な自由度を見せてくれました。
    • 後半の戦術調整: 後半、早稲田は明らかに意図して10シェイプを増やしましたが、序盤はエッジでスペースが狭くなりあまり有効なアタックではなかったという反省点もあげられます。しかし、すぐに折り返しの9シェイプのティップパスで大きくブレイクするなど、修正能力の高さも見せつけました。
    • 福島選手の突破力: 13番福島選手の個人能力は群を抜いており、広いレンジでのギャップを突いたオフロードパスや、「行き詰まったところでも前へ持っていける力」を発揮し、早稲田アタックの大きな推進力となりました。

    慶應義塾のアタック:継続重視のポッドとフルバックの役割

    慶應義塾は、早稲田の高速アタックに対して、フィジカルを前面に出した継続重視のポッドシステムと、粘り強いディフェンスで対抗しました。
    慶應のアタックは、一発のゲインよりも継続性ポゼッションを重視する設計となっていました。

    • 細かいポッドでの継続: 慶應の基本的なアタックは、「ポッドを細かく当てながら継続する」印象を受けました。これにより、ラックサイドのフィジカル勝負で優位に立ち、ディフェンスを徐々に消耗させることを狙いました。
    • 13211の形での展開: およそ4〜5フェーズを重ねた段階で、「13211の形から10シェイプ起点に外まで運ぶ形」が見られました。これは、FWで中央を固めた後、バックスとのバックドアオプションを組み合わせてワイドに展開し、フィニッシュを狙うという、緻密に練られたシェイプです。
    • FB田村選手の柔軟な役割: FB田村優太郎選手は、前半は比較的内側でコントロールするタイプとして機能しましたが、後半には「外側でゲインを切ったり、外側へ運ぶ役割も担っていました。状況に応じて役割を柔軟に変化させました。

    ただ、試合を通じてブレイクダウンが安定せず、出したい場面でボールに絡まれてしまい、ターンオーバーされてしまったことは今後の課題と言えるでしょう。

    慶應義塾のディフェンス:バックスの粘りとブレイクダウンの圧力

    慶應義塾のディフェンスは、個々のタックル精度粘り強さが際立っていました。

    • タックル精度: 慶應義塾のディフェンスは、タックル精度とテイクダウンを取り切る部分は申し分ないレベルであり、特にCTB安西良太郎選手(1年)がモストインプレッシブプレーヤー(MIP)に選出されるなど、タックルの強度と粘りは際立っていました。早稲田の猛攻に対しても、「完全なブレイクは許さず粘りでタックルからミスを誘う」我慢強さがありました。
    • ブレイクダウンの課題: 一方で、早稲田の高速ブレイクダウンに対しては、プレッシャーをうまくかけられず、テンポを遅らせることができなかった。という課題を残しました。このブレイクダウンでのプレッシャーが、早稲田に連続アタックを許し、失点に繋がる大きな要因となりました。

    データから見る:バックライン重視のアタックとセットピースの安定 

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    この早慶戦は、両チームが明確な戦術的特徴と高い実行力を示した一戦であり、スコア以外のデータからもその傾向が読み取れます。

    1. バックラインへの供給と外側キャリー

    両チームの最も大きな特徴は、現代ラグビーで主流となりつつあるバックラインへのパス供給の多さです。9シェイプが中心のチームも多い中で、10シェイプとバックラインへのパスが多く、外側でのキャリーが多いという点が際立っていました。これは、FWのポッドにボールを当てるだけでなく、より多くのバックスプレーヤーを絡ませ、ディフェンスのワイドな展開力を重視し、高度なポゼッションラグビーが実践されたことを示しています。早稲田が後半に意図して10シェイプを増やしたことも、この傾向を裏付けています。

    2. 安定したセットピースと決定力

    • セットピースの安定性: 両チームとも、安定したセットピースがこの試合のハイテンポな展開を支えました。特に早稲田は、ラインアウトは13/14という高い成功率で攻撃起点を確保。これは、HO清水選手の4トライに繋がったモールや、緻密なサインプレーの基盤となり、今後の大学選手権でこの安定性をキープできるかが鍵となります。
    • 早稲田の決定力とスコアバランス: 早稲田は22メートル決定率も58%と好調でした。ミスして取りきれない場面もありましたが、すぐさま侵入しスコアまで持っていける力は健在であり、モールの強さ、ポゼッションからの連続攻撃、そしてスクラムでの優位性と、様々なスコアバランスを持っていることは、大きな脅威をなっていました。
    • 慶應義塾のスコア力: 慶應義塾に関しても、モールやラインアウト起点でスコアへ繋げるシーンがあり、スコア力は十分上位校に劣らないことが分かりました。これは、慶應のFWの強さと、セットプレー周りのサインプレーの精度が高いことを示しています。

    3. キックゲームの展開

    この試合は、キックが少なかったため、ボールがよく動き互いのポゼッションラグビーがかいまみえた試合展開となりました。

    • 早稲田のポゼッション重視: 早稲田はハイパントを使わず最低限のロングキックに留め、中盤からポゼッションを重視する戦略を採用しました。
    • 慶應義塾の戦術的キック: 慶應は自陣深くはロングキックを使いながらも、中盤はアタックが詰まったところでオープンハイパント、ボックスハイパントを使い分けプレッシャーをかけていたことが分かります。これは、早稲田のポゼッションアタックに対する、「陣地回復」「プレッシャー」を狙った緻密な駆け引きであり、キックの意図が明確な質の高いゲームとなりました。

    まとめ:戦術の差異が結んだ大差と大学選手権への課題

    この日の早慶戦、最終スコア49-21という結果は、早稲田の「1421」ポッドに代表される多角的なアタックシェイプと、それを可能にした超速のブレイクダウンが、慶應義塾の「1331」を軸とした継続アタック粘り強いディフェンスを上回ったことを示しました。

    早稲田は、HO清水選手の4トライに象徴されるセットプレーからの決定力と、福島選手の突出した突破力、そして野中健吾主将のリーダーシップが融合し、対抗戦首位にふさわしい総合力を証明しました。データからも裏付けられたバックラインへの多様な供給安定したセットピースは、早稲田の強固な基盤を示しています。今後の戦いに注目です。

    慶應義塾も、戦術的な準備と個々のフィジカルの強さを見せつけましたが、ブレイクダウンのスピードという現代ラグビーの生命線で早稲田に一日の長がありました。しかし、モールやラインアウトからスコアに繋げる力は上位校に劣らず、大学選手権に向けた大きな自信となるはずです。

    伝統の一戦で得た経験と課題を糧に、両チームとも大学日本一を目指す最終調整へと進んでいくことになります。この激闘が、今後の大学ラグビー界の行方を占う重要な一戦であったことは間違いありません。

    では。

    (文:山本陽平)

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:明治大学対慶應義塾大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:明治大学対慶應義塾大学

    激闘、伝統の100回目「慶明戦」極限の攻防、明暗を分けた一瞬

    歴史と伝統が交錯する「慶明戦」は、この日、通算100回目の節目を迎えた。3勝1敗で並び、大学選手権を見据える両雄のプライドが激突した一戦は、極限の緊張感と責任感が渦巻く、まさに「勝負」のドラマとなった。最終スコア24-22で明治大学が勝利を収めたが、その幕切れはあまりにも劇的だった。

    試合展開:明治の戦略的支配、慶應の驚異的な「粘り」と、運命を分けた幕切れ

    試合は序盤から激しい攻防となった。開始10分過ぎ、明治はゴール前のラインアウトから、HO西野帆平選手の抜け出しで先制トライ。しかし、慶應もすぐさま反撃し、ラインアウトからのサインプレーでルーキーFL申驥世選手がトライを返し、同点に追いつく。

    前半、ポゼッションを握った明治は、CTB伊藤龍之介選手を中心にバックス陣が仕掛け、スコアを重ねてリードを奪う。対する慶應は、CTB小舘太進選手・WTB江頭駿選手による狙い澄ましたタックルで明治のアタックを寸断。いぶし銀の活躍で、猛攻を凌いだ。

    後半に入ると、流れは一気に慶應義塾へ傾く。後半頭から投入されたFB小野澤謙真選手(23番)が躍動。しなやかなボディバランスを駆使したランニングでブレイクを連発。その勢いを受け、SH橋本弾介選手、そしてキャプテンのCTB今野椋平選手が連続トライを決め、一気に同点に追いつく。さらに、逆転のペナルティーゴールを成功させ、慶應がリードを奪い明治を追い詰めた。

    対する明治も、ゴール前ではFWの猛攻から最後はバックス陣が走り込みスコア。一進一退の攻防は、残り数分まで続いた。

    試合のハイライトは、終盤72分からのおよそ3分間にわたる明治の連続攻撃だった。慶應はゴール前で25フェーズにも及ぶFWのピック攻撃を粘り強く凌ぎきり、ターンオーバーを達成。最後の逆転への望みをかけ、自陣からアタックを仕掛けた。

    しかし、その最終局面。慶應のキャプテン今野選手が、スコアを勘違いし、ボールを蹴り出してしまうという劇的な試合終了。ノーサイドの笛が鳴り響き、会場はざわめきと共に幕切れとなった。2点差という僅差で、明治大学が伝統の一戦を制した。

    明治大学のアタック:ワールドワイドなポッド戦術と課題

    明治大学のアタックは、ワールドトレンドを随所に反映させた高い戦術を誇示しながらも、決定的な局面での意思疎通という部分に課題を残しました。
    自陣からハーフラインにかけて展開されたのは、ミドルポッドでFWを4枚並べる1-4-2-1というポッドでした。このフォーメーションの意図は極めて戦略的です。4枚並ぶことで、ディフェンスのターゲットを分散させ、シェイプ全体への的を絞らせないことに主眼が置かれています。さらに、ポッド内の3番目のFWがパスを受け、その裏に隠れたスタンドオフへスイベルパスでボールを供給することで、SOがプレッシャーを受けにくくする狙いがありました。

    これは、先日11月1日の「日本 vs 南アフリカ戦」で南アフリカが採用したのと同様の高度な戦術であり、ディフェンスを内側に意識させることで、SOに外側への展開における自由な判断広いアタックレンジをもたらすことを狙ったものです。FWのポジショニングやハンドリングスキル、外側のブレイクダウンスキルを高く要する戦術ですが、明確に狙いを持ってアタックしていました。

    ハーフラインから敵陣22mにかけては、ベーシックな1-3-3-1を並行して使用しました。その中でも、ハーフが持ち出し、ラック裏のFWが回り込んでスペースにキャリーする動きや、ポッド内で外側に位置するFWが鋭角に走り、その裏を別のFWがアウトサイドに走るシェイプを意図的に使っていました、ベーシックスタイルの中に工夫された多彩なオプションを駆使していました。
    キックアタックにおいては、前後半を通じて慶應のタイトなディフェンスラインとバックスペースの間の「ポケットエリア」へのアプローチが徹底されており、チップキックやグラバーキックを巧みに使い分け、エリア獲得だけでなく、アタッキングキックとして機能していました。

    しかし、後半終盤の72分から繰り出されたゴール前での連続攻撃は、明治のこだわりが良く感じられるアタックとなりました。約3分間、25フェーズに及ぶFWのピック攻撃は、慶應の強靭なディフェンスに阻まれ、結果的にターンオーバーを許してしまいました。モールを起点としたピールオフなど、得点に繋がった場面があった一方で、「FWとして取り切りたい」部分がこの試合で強く感じました。バックスラインでの勝負のタイミングやFWを交えたゴール前のアタックは大学選手権に向けてどう修正していくのか楽しみです。

    明治ディフェンス:インサイド集中とウィングの機動力

    明治大学のディフェンスは、全体としてミドルゾーンに重きを置いた前掛かりな布陣が特徴でした。特にタッチラインから15m外側のエッジと呼ばれるエリアの一部は、リスクを承知で捨て気味であり、中央突破やインサイドへの圧力に焦点を絞った配置だったと分析できます。そのため、慶應がバックドアへのパスから外側に展開しようとする際、一瞬ブリッジパスのような形でエッジの頭上を通される場面が見られました。

    一方で、両WTBの白井瑛人選手・東海隼選手のディフェンスレンジが非常に広いため、エッジの対応を卓越した機動力でカバーし、致命的なゲインを許さない場面が多かったです。キックチェイスの精度も高く、キック後すぐにディフェンスラインを形成し、慶應のカウンターに継続的にプレッシャーをかけることに成功していました。また、ラインアウトの要所でのスティールや相手のミスを誘うなど、セットピースでの守備も光りました。

    しかし、後半に崩された場面としては、慶應が採用したミドルポッドでの10シェイプへのプレッシャーが甘くなったことや、そこからのスイベルパスの部分で、ディフェンスラインの整いと外側とのコミュニケーションにわずかなギャップが生まれ、抜かれるシーンが見られました。前掛かりなディフェンスの特性上、ライン間の連携が一瞬でも乱れると、そのギャップを突かれるリスクが顕在化すると言えます。

    慶應アタック:SO小林祐貴選手の牽引と後半の修正力

    慶應義塾大学のアタックは、SO小林祐貴選手を中心としたバランスの良さと、後半の大胆かつ効果的な修正力が光りました。小林選手はランニング、パス、キックの全てを高いレベルで繰り出し、特にフィットネスが低下しがちな後半でも自ら仕掛けることで、チームのアタックを牽引し続けました。

    慶應は1-3-2-2のシェイプを多用しましたが、特に特徴的だったのは2つ目のミドルポッドの扱い方です。明治が比較的シンプルにFWを入れるのに対し、慶應はここを大きく深いラインで保ち、小林選手からバックスラインの選手へ深いパスを返してから外に展開する形を多用しました。これは、単にFWを当て続けるだけでなく、ボールを大きく動かすことで明治ディフェンスを広げ、エッジ側へ有利なボールを運びたいという明確な意図があったためです。

    前半はポゼッションが持てずアタック機会が少なかったものの、トライを取った場面ではラインアウトからのサインプレーが完璧に決まるなど、勝負どころでの得点力を証明しました。後半に入ると、明治ディフェンスが内側に寄る傾向を的確に突き、広めに立つFWの裏のバックスラインに早いパスを供給し、ギャップを突きました。この流れを決定づけたのが、後半から投入されたFB小野澤謙真選手です。彼の鋭いランニングとブレイクは、キックカウンターから特に威力を発揮し、明治のディフェンスラインを幾度となく混乱させました。このチャンスに乗じ、SH橋本選手やキャプテン今野選手がトライに結びつける決定力も見せつけました。

    慶應ディフェンス:組織的な粘りと「プライド」の体現

    慶應のディフェンスは、粘り強さ組織的なセットアップに優れていました。特に順目のセットアップが非常に良く、ポッド攻撃を多用する明治に対して、ディフェンスラインが常に揃っている印象を与え、継続的なプレッシャーをかけ続けました。

    バックフィールドでは、CTB小舘選手やWTB伊吹央選手が、裏へのキックやエッジへの詰めに対する判断力が素晴らしく、ここぞの場面で明治のアタックを寸断する素晴らしいディフェンスを披露しました。ディフェンスラインとバックフィールドの間のスペースに蹴り込まれるキックに対しても、SHやFBの選手がうまくカバーし、致命傷になる場面は少なかったです。

    このディフェンスのハイライトは、何と言っても終盤72分からのゴール前ディフェンスです。25フェーズにも及ぶ明治のFWピック攻撃に対し、一人ひとりが決して飛び込むことなく、正確な1対1のタックルを精度高く遂行。最後はターンオーバーに持ち込むという、まさに「慶應のプライド」が凝縮された、理想的な守りを見せつけました。一方で、バックフィールドの15m外側のエリアに蹴り込まれるケースが散見され、FB陣のポジショニングには、わずかながら課題を残したと言えるでしょう。

    データから見る:エリア優位と決定力

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    データ面では、両チームの戦術的アプローチと結果が明確に現れました。まず、22mエントリー回数で明治が10回に対し、慶應が6回と、明治がエリア獲得で優位に立ったことが示されています。これは、明治が多様なポッドシェイプとキックアタックで優位なエリアにボールを運ぶことに成功したことを意味します。

    しかし、明治は22mエントリー決定率が約40%(4トライ)に留まっており、優位なエリアへの侵入を確実にスコアに結びつけるという点に課題を残しました。後半終盤のゴール前でのターンオーバーも、この決定力の課題を象徴しています。一方、慶應はエントリー回数は少ないものの、得点に繋がるサインプレーや後半の爆発力を発揮しました。

    セットピースに関しては、明治がラインアウト成功率100%(13/13)という精度を見せ、安定したボール供給源を確保していました。両チームともにキックを多用した点は、エリア獲得や戦術遂行においてキックを重要視する、現代ラグビーの傾向を反映したものと言えます。

    まとめ:成長への糧となる伝統の激闘

    通算100回目という歴史の重みを持ったこの「慶明戦」は、両チームが持てる戦術とプライドをぶつけ合った、まさに一進一退の「素晴らしい試合」となりました。

    明治大学は、先進的なアタックシェイプ安定したセットピースという強みを見せた一方、ゴール前での意思統一決定力向上という明確な課題を得ました。慶應義塾大学は、下級生主体の布陣ながらも粘り強い組織的ディフェンスと、後半の修正力という「粘り」の伝統を体現しました。

    しかし、試合のドラマチックな幕切れは、スポーツにおける一瞬の判断の重さを突きつけられました。この経験は、敗れた慶應にとっては精神的な成長への大きな糧となり、勝った明治にとっても、慢心することなく課題に向き合うための貴重な教訓となったはずです。

    対抗戦はいよいよ後半戦に突入します。この激闘を経た両雄が、大学選手権に向けてどれだけの成長曲線を描くのか、その動向から目が離せません。

    では。

    (文:山本陽平)

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:早稲田大学対青山学院大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:早稲田大学対青山学院大学

    「多芸多才」早稲田、盤石の全勝ロード:青学の堅守を上回った「個の力と組織のテンポ」

    今季ここまで全勝と勢いに乗る早稲田大学と、大学選手権出場へ向け負けられない戦いが続く青山学院大学との一戦は、大きな注目を集めました。早稲田はエース矢崎由高選手を欠く布陣でしたが、10番服部亮太選手を司令塔に、FWではHO清水健伸選手を軸とした組織的な戦いが予想されました。対する青山学院は、粘り強いディフェンスを最大の強みとし、SHの利守晴選手を中心とした堅守速攻を企図し、格上撃破への勝機をうかがっていました。

    試合展開:早稲田、驚異の決定力で青学を圧倒。

    試合は、立ち上がりから早稲田が主導権を握り、鋭い出足と接点の圧力で試合の流れを決定づけました。開始早々、早稲田はゲインラインを押し上げるディフェンスから、ラインアウトのターンオーバーを起点にボールを動かし、14番田中健想選手のトライで先制。

    早稲田の圧倒的な圧力に対し、青山学院も敵陣ディフェンスからのターンオーバーを機にモールで一本返す意地を見せましたが、今シーズンの早稲田は個々の能力が非常に高く、自陣側でボールを持っていてもお構いなしにトライへ持っていける「トライレンジの広さ」を誇示しました。

    ポゼッションやテリトリーといった数値では極端な差はなかったものの、早稲田のアタックにおけるトライへの決定率の高さが際立ち、結果として59-12で早稲田が快勝を収める形となりました。

    早稲田のアタック:多芸多才、超速テンポの攻撃

    早稲田のアタックは「多芸多才」という熟語が最も適しており、充実の一言に尽きました。今季の強みである幅の広さが遺憾なく発揮され、特定の戦術に偏重することなくスコアを重ねました。司令塔のSO服部選手に加え、12番CTBの野中健吾選手(キャプテン)が一定のカバーを担うことで、服部選手に自由な選択と意思決定を許容している点が多角的な攻撃の要因だと考えられます。

    トライの起点は、キックカウンターやターンオーバーといったアンストラクチャーな状況から4本、セットプレーや連続攻撃などのストラクチャーな状況から6本(うちモール3本)と、組織的・非組織的の両面で抜け目のない得点力を示しました。特に、外側のチャネル(タッチラインから15メートル内)へのフォーカスが明確でした。さらに、ポッドを飛ばすのではなく、正確にポッドを当てて着実にゲインし、大きく前に出たところでラインを広く取り、外側まで繋ぐ一貫したボール展開が光り、田中選手の決定力も光りました。

    このアタックを支えたのは、今季の大学ラグビーでトップクラスのテンポです。具体的な測定値ではないものの、平均ラックアウトスピードはおよそ2.5秒程度と推測され、リーグワン平均の3.1秒を大きく上回るハイレベルさを誇ります。これは、キャリアのグラウンドワーク、サポートのスイープ力、ハーフのさばく力、次フェーズへのセットスピードが絡み合った結果です。一方で、後半60分以降、ミドルゾーンのFWがスムーズにボールアウトできない、あるいはプレッシャーを受けた際にはミスが生じ、苦しむ場面もあり、今後のハイレベルな試合におけるプレッシャーへの対処が課題として残りました。

    早稲田のディフェンス:先手必勝、接点圧力で圧倒

    早稲田のディフェンスは、キャリアへのファーストコンタクトとインパクトをとにかく意識している点が特徴でした。鋭い出足から強く踏み込み、相手に体を当てることで、ボールへの働きかけやラックへの働きかけといったセカンドアクションを優位に進める形が多く見られました。ダブルタックルは数多くなく、個々が倒しきる理想的な展開が多く、ディフェンスラインを揃え、全体でプレッシャーをかけていました。

    特にミドルゾーンでの接点の凄みは際立っており、青学にボールを持たせることで「アタックさせている」ような状況を作り出し、9シェイプや10シェイプの対面となるFWへの狙い澄ましたタックルが散見されました。ターンオーバーの多くは、少ないフェーズでの絡みやラインアウトからのスティールといったように、狙いを絞ったものでした。

    しかし、後半になると青山学院が狭いサイドを攻撃してくるパターンにゲインを許す場面があり、数的優位を作られていました。加えて、バックラインと大外のスペースが空く場面があり、キックパスで繋げられる場面もあり、連携には若干の課題も見受けられました。

    青山学院のアタック:ショートサイド重視、健闘も及ばず

     戦前から厳しい戦いが予想される中、青山学院のアタックは機会創出と組み立ての点で一定の及第点を与えることができると感じました。攻撃の起点はSH利守選手と後半から出場した小林純岳選手であり、両選手ともに、その積極性とパス捌きが持ち味でした。

    軸としては、広いオープンスペースではなく、ショートサイドに狙いを定めていました。特に13番CTBの内藤基選手はFWも担う選手であり、狭い外側で相手バックスに対して接点を起こし、少しでも前にボールを運びたいという明確な意図が見えました。中盤ではボールポゼッションし、崩したい意図が見られ、プレッシャーを受けながらも、ラストパスが繋がればブレイクを起こすシチュエーションなど、確かにチャンスは作り出していました。

    キックも有効活用しており、ファーストレシーバーを務めるFB井上晴生選手やSO袖山遼平選手からのキックパスといった意図的な戦術も見られました。大学屈指のロングキッカー服部選手にテリトリーで押される場面がありましたが、反対に50-22キックによって大きく挽回するスキルも見せ、空いているスペースへボールを落とす能力を披露しました。ゴール前では、継続できずにミスが発生することもありましたが、トライを奪った場面ではモールが鍵となり、セットプレーを起点とした得点パターンを確立できたことは大きな収穫でした。

    青学のディフェンス:前へ詰める意識、連携に課題

    アタックの個々能力が豊かな早稲田に対して、青学は「前へ間合いを寄せてスペースを奪う」という強い狙いを持ち、強い個に対しては早く刺さるという鉄則を実践しました。しかし、その積極性が裏目に出る形で、横との連携や少しの綻びが、早稲田のハイスピードなアタックによって直接スコアへと繋がれてしまいました。

    特に外側がより前がかりなディフェンスシステムになることで、その内側が追いつけずチェーンが切れてしまう場面がありました。その結果、早稲田大学のランナー達にブレイクを与え、アウトサイドの決定力を許す要因となりました。

    ただし、ディフェンスの全てが綻んでいたわけではありません。No.8角谷銀次朗選手やFLの松崎天晴選手の孤立した一瞬の隙を突く渾身のスティールは、ディフェンスを何度も救いました。また、60分を過ぎたあたりでは、中盤からポゼッションをキープする早稲田のアタックに対して、ミドルポッドへのダブルタックルが有効となり、プレッシャーをかけることができていました。しかし、今回トライを10本許した要因として、自陣から一気に持っていかれるフェーズが多く、バックラインとのコミュニケーションやビッグゲインされた後のセットスピードに課題が残りました。

    データから見る勝負の分岐点

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    まず、最も注目すべきは、両チームの22m決定率です。青山学院大学が10回の敵陣22mエントリーを記録し、早稲田大学の12回と大差ない得点機会を創出できていたにもかかわらず、最終的なスコアは54-12となりました。早稲田は12回の侵入に対して実に10トライを奪っており、その決定率は驚異の約83%に達しましたこれに対し、青学は10回の侵入から1トライしか奪えず、決定率は20%と低迷しました。この「決定力の差」こそが、最終的な大差に直結した最大の要因であり、早稲田の攻撃の効率の良さと、青学のゴール前での精度を示唆しています。

    次に、早稲田のトライの起点を分析すると、キックカウンターやターンオーバーといったアンストラクチャーな状況から4本、セットプレーや連続攻撃によるストラクチャーから6本(うちモール3本)と、組織的なアタックの強さが優勢であり、多角的な攻撃手段を持っていることが裏付けられました。さらに、早稲田は自陣サイドからでもトライを取れるトライレンジの広さを持っており、アタックシェイプもFWへのキャリーが多くなる中でもバックスラインへの供給が多いバランス型であったことも、攻撃の幅の広さを示しています。

    対照的に青山学院は、アタックシェイプで9シェイプを重視し、SHを起点としたショートパス中心のバックスラインでの攻撃意図がうかがえました。また、キック戦術においては、両チームともにハイパントやコンテストキックの使用を控え、ロングキックによるテリトリー取りを軸としていました。敵陣22mエントリー回数の多さを活かせなかった事実は、モールやショートサイドといった得意のパターン以外での得点能力、特にゴール前でのプレッシャー下での取り切る能力に、今後の伸びしろがあると感じます。

    まとめ

    この一戦は、「早稲田の決定力の高さ」と「圧倒的なアタックテンポ」が、青山学院大学の戦術的努力を凌駕した試合でした。

    データが示す最大の着目点は、早稲田の22m決定率83%という驚異的な効率です。青学が敵陣22mエントリー10回という多くの機会を創出しながらも、トライを2本しか奪えなかったこと(決定率20%)と対照的であり、ゴール前でのプレッシャー耐性や精度、判断力が勝敗を分けました。

    早稲田は、日本トップレベルのラックアウトスピードで連続攻撃を仕掛け、ディフェンスラインの連携を断ち切ることに成功。ストラクチャーからのトライ、アンストラクチャーからのトライ共に重ね、完成度の高さを証明しました。また、自陣サイドからでもトライを取れるトライレンジの広さも特筆すべき点です。

    一方、青山学院は、ショートサイドへの明確なアタックプランと、モールや50-22キックといった武器を活かし、一定の成果と多くのチャンスを創出しました。しかし、ディフェンスで個々の力に頼らざるを得ない場面が多く、その綻びを早稲田の「多芸多才」なアタックに見逃されずに突かれた形です。次戦以降、青学はチャンスをトライに結びつけるゴール前での精度向上と、ビッグゲイン後のディフェンスの立て直しが鍵となるでしょう。

    では。

    (文:山本陽平)

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:明治大学対筑波大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:明治大学対筑波大学

    一進一退の接戦の最後に、劇的な逆転劇

    みなさんこんにちは
    遂に大学ラグビーのシーズンが始まりました

    今回は関東大学対抗戦より、9/14に行われた明治大学対筑波大学の試合について、見ていきたいと思います

    明治大学のラグビー

    <今節の明治大学>

    明治大学は、リーグ屈指のFW陣と、決定力のあるBK陣でバランその取れた攻守を見せるチームです。接点に定評があり、前に出る力は日本全国を見てもトップレベルでしょう。

    チームのタクトを振るうのはSOの伊藤龍之介選手で、ラン・パス・キックのバランスがいい万能型の選手でありながら、中でもランニングスキルは高水準にあり、攻撃面で突出した能力を持つ選手です。

    そんな明治大学ですが、今回の試合では「らしくない」ポイントがいくつか見られました。一般的な戦略の範囲内では正道とも言える戦略性を見せていましたが、それは得てして明治らしくないとも言える状況でした。

    <苦戦したラインアウト>

    最も顕著に現れた例としては、ラインアウトの成功率の部分ではないでしょうか。19回の試行回数に対して11回の成功と、半数近いラインアウトをミスで失っていることになります。筑波大学側のラインアウトスティールを受けたりと、かなりプレッシャーを受けていた側面が見受けられ、不安定さにつながっています。

    明治は、そういった状況に対して、ラインアウトの一番前で取る、という戦略をとっていました。後半に生まれた西野帆平選手のトライはその最たる例で、ジャンプを解さずにダイレクトに確保することでミスを低減することができます。

    しかし、ここに明治大学としての難しさを感じました。戦略的な正道で言えばこの選択は間違いのないものであるように思います。しかし、明治としてこの選択が正しかったかというと、メンタリティの部分も合わせて不安定になる要因にもなったかもしれません。

    <アタックの傾向>

    アタック全体としては、非常にいい傾向を見せていました。接点で上回り、リズムを出して相手の反則を誘発する。明治らしさもありながら「こうすれば相手が崩れる」というパターンに試合を持ち込んでいました。

    アタックは接点の他にも階層構造を用いて展開を図るシーンもあり、表と裏の構造を使っています。特に相手陣に向かって前進し、モメンタムを獲得できている時に構造的なアタックを使い、深さを生み出しながらさらにモメンタムを出すことに成功しています。

    また、主体的にキックを使ってエリアコントロールやプレッシャーをかけていました。自陣寄りではロングキック、中盤ではハイパントを交えたりと、戦略的なキックゲームに持ち込んでいました。

    ただ、ここも試合展開として難しいところで、個人的な視点としては、中盤での明治の怖さは「展開してくる」ところにあると思っています。伊藤龍選手の展開力と走力、その他の選手の機動力と接点の強さが揃っていたりと、展開するには十二分の力を発揮します。

    しかし、明治はそこまで展開にこだわらず、戦略的な攻防を続けていました。結果として、戦略性の範囲内でのスコアに留まっていたという見方をしています。

    敵陣深くでFW戦に持ち込むことができれば明治の強さを発揮できるのですが、明治はラインアウトに不安定感があり、ゴール前では消極的な選択が中心となっていました。結果としてエッジでのトライになってゴールを狙いづらかったりと、さまざまな要素にラインアウトの不安定感が影響していました。

    <ディフェンスの傾向>

    ディフェンスも悪くはない部分が多かったとは思います。接点でも強く、規律正しいディフェンスを見せており、筑波大学のアタックの多くを下げることに成功していました。

    しかし、それも接点の土俵に立った場合の話で、接点以外の部分に関しては互角か押し込まれるような展開になっていたように思います。
    特にエッジの部分のディフェンスでは、崩された多くの場合でFWとBKのミスマッチを作られています。

    前半に奪われた2トライは、どちらもカメラから見て手前側のサイドを活用された形でした。1つ目のトライは展開の中でFWが偏って配置されてミスマッチを突かれ、2つ目のトライはチェイスラインで唯一のBKであった白井瑛人選手選手がタックルを外されたことによって、BK2人と走力のあるFLに対してFWが2人という状況に陥っていました。

    また、最後の筑波大学の逆転につながったトライのシーンでは、2フェイズ前に明治大学の選手が規律的に順目方向に4人回ってしまい、結果として逆目方向に通されたアタックをBKである海老澤琥珀選手が止めざるを得ない状況になっていました。海老澤選手がタックルをしたことでさらに外側のエリアのディフェンスが薄くなり、トライに繋げられています。

    筑波大学のラグビー

    <今節の筑波大学>

    筑波大学は、接点とブレイクダウンに強みを持つ、上位校食いをすることもあるチームです。泥臭くプレーをすることを得意としています。

    筑波大学は、9番の高橋佑太朗選手と10番の楢本幹志朗選手が、うまく試合展開をコントロールしていたように見えました。
    高橋選手は攻撃的で、楢本選手は安定型の思考をしており、キックを主体に試合を動かしていました。

    特に蹴り合いになった時の楢本選手のキックの精度は高く、単純なキック距離で負けてしまっている時も、前に仕掛けながら左足で放つキックによって、最低限稼いでおきたいラインは越えることができていたように思います。

    <効果的に働いたアタック>

    今回の試合では、特にエッジに展開するようなアタックが効果的に働いていたように感じました。必ずしも大きな展開ではなくとも、エッジでのショートパスで打開しています。

    ここ数年の明治のディフェンスを見ると、中盤での厚さがある反面、エッジでは比較的ゲインを許すなど、アンバランスな堅さのあるチームでした。
    夏合宿の帝京大学戦など、展開力のあるチームに対しては少し苦戦傾向にある印象です。

    筑波大学は、大まかにいうとエッジをうまく活用していました。エッジからエッジのような大きく展開するような形ではなく、ショートサイドのエッジを攻略しています。

    前述したように明治のディフェンスはラックから近いエリアが堅く、つまりラックの位置によってはFWが固まっているような状況が生まれています。そのシーンに対して、楢本選手は細かなサイドチェンジや状況判断で狭いサイドに優位性がある時はそこを狙い、走力のある中森真翔選手をエッジに配置することによって質的にも上回る状況を作り出していました。

    <アタックの傾向>

    筑波のアタックは比較的シンプルで、接点にこだわりの見える形です。9シェイプを多く用い、12番の今村颯汰選手や13番の東島和哉選手といった縦に出られる選手も交えながら、コリジョンで中盤のアタックを安定させています。

    また、今回の試合では前述したようにキックでエリアをコントロールしている傾向も見られました。中盤でのアタックでは苦戦していた様子もあり、早めに蹴り込むことで中盤でミスが起きたりする前にボールを前に運ぶことができていました。
    キックがタッチに出ればプレッシャーをかけ、タッチに出なくても相手の蹴り返しを待つことができるので安定感が見られています。

    基本的には1−3−3−1のような配置を取り、エッジに走力のある中森選手のような選手を配置しています。中盤はタイトファイブの選手とNO8の大町尚生選手を配置して安定したコンタクトを見せ、楢本選手がボールを動かしながら接点を作り出していました。

    ただ、全体的にブレイクダウンでは苦戦傾向にあったように思います。接点の強い明治に押され、人数をかけなければいけなかったり、スティールを狙われて反則を犯したりと、難しい展開でした。

    <ディフェンスの傾向>

    ディフェンスもどちらかといえば苦戦していたという見方をすることができます。相手の接点が強く、一部の選手には大きく前に出られていたりもしました。

    ただ、組織的なディフェンスの部分では多くのシーンで相手を止めることができていたように思います。タックルも低く入ることができており、アシストタックルの精度の高さも見せていました。

    一方で、ペナルティのうちの多くはディフェンス時に発生したものであり、相手がモメンタムを出し始めた時にペナルティを犯してしまったりと相手にポゼッションを献上するようなシーンも見られていました。

    まとめ

    結果としては、筑波大学の逆転勝利という形にはなったが、トライ数は共に4トライと、互角の結果を示している。また、試合全体のモメンタムを見ても、再戦して必ずしも同じ結果になるとは限らない。

    筑波としても、「トライをとって残り2分」ではなく「トライを取られて残り2分」というポゼッションになったのも影響しているかもしれない。トライをとった場合は残り2分で相手キックオフ、トライを取られた場合はこちら側のキックオフとなるため、時間の使い方が変わってくる。

    むしろ、ここからの明治には期待しかないだろう。どの強豪校にも言えることだが、一度負けたチームは必ず強くなる。ここで負けてよかった、と言えるようなシーズンになることを期待したい。

    (文:今本貴士)