カテゴリー: 関西大学リーグ

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:天理大学対京都産業大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:天理大学対京都産業大学

    いざ大学選手権へ!関西大学ラグビーAリーグ最終節、全勝対決を徹底分析

    2025年11月30日(日)、関西大学ラグビーAリーグの最終節は、ともに無敗で迎えた京都産業大学天理大学全勝対決となりました。勝った方がリーグ優勝という、まさに大一番。緊迫した戦いの末、王座を掴んだのは天理大学でした。

    最終スコア47-15。天理大が強靭なフィジカルと卓越したエリアマネジメントで勝利を収めたこの熱戦を、徹底的に分析します。

    試合展開:前半は天理大の決定力が光る、後半は京産大が意地を見せるも及ばず

    前半:天理大の「一発で取り切る」破壊力

    先手を取ったのは天理大。10番を軸としたワイドな攻撃シェイプに対し、前がかりになった京産大ディフェンスのギャップを突き、SH朝倉達弥選手が走って先制トライを奪います。対する京産大も、9シェイプからショートサイドを攻め、天理大のディフェンスミスを誘発しました。10シェイプから巧みに防御ラインをずらし、FWのラインブレイクからNO8シオネ・ポルテレ選手に繋いでトライを返します。

    前半の入りは、互いに敵陣22mラインに侵入すれば、「一発でトライを取り切る」決定力の高い展開となりました。天理大はペナルティーからのラインアウトモールで追加点を挙げ、さらに1-3-3-1ポッドを軸にエッジの選手が柔軟に入れ替わるスタイルでアタックを継続。主に10シェイプでFWがキャリーし、強烈なドライブと要所でのスイベルパスを使い外までボールを運んでいました。

    京産大ディフェンスは押し込まれながらも、ブレイクダウンへの絡みと、外側でのナブラギ・エロニ選手の粘り強いディフェンスでターンオーバーを奪う場面もありました。しかし、天理大の敵陣22m内での決定力とFWの強さが目立ち、前半は21-8で天理大リードで折り返します。

    後半:天理大の支配的な展開

    後半開始直後、天理大は相手のキックミスからエリアを取り、得意のラインアウトモールで押し込んですぐにリードを広げます。

    京産大は、ポルテレ選手やLOの石橋チューカ選手といったキーマンをショートサイドに配置して崩しにかかるも、天理大の外側のディフェンスの素早い上がりに阻まれ、なかなか崩しきれません。ラインアウトの獲得にはノージャンプを取り入れるなど修正を見せますが、ゴール前での天理大の強固なディフェンスにトライを阻まれ続けます。

    天理大は、大学屈指のSOである上ノ坊駿介選手のパスとキックを軸としたエリアマネジメントが冴え、50-22キックキックパスを成功させるなど、キックで前進を続けます。鋭いタックル精度と素早いディフェンスセットアップで支配的な展開を続け、京産大のミスを誘発しました。アタックではシンプルな9シェイプでもトライを取り切る強さを見せつけました。

    京産大は、後半の中でも終盤、バックドアを経由して外側へボールを供給する形に修正し、エッジからエッジへとボールを運ぶ見事なトライへ繋げました。修正力の高さを見せましたが、前半の失点とラインアウト獲得の苦戦が響き、リードを覆すには至りませんでした。


    京都産業大学

    【今シーズンの京都産業:伝統のFWと充実のバックス】

    京産大は今シーズンもここまで全勝で、リーグ最終戦に臨みました。チームの根幹を成すのは、伝統のラインアウトモールとスクラムを軸とした強固なFW陣です。平均体重100kgを超える重量級のパックは、セットプレーでの優位性を確保し、試合の流れを掴む最大の武器です。

    ディフェンスにおいては、ブレイクダウンの接点で激しくボールへと絡み、ターンオーバーやペナルティーを誘発し、ディフェンスからアタックへの流れに乗るスタイルを徹底しています。さらに、バックスには、春から好調のCTB奈須貴大選手や、しなやかなランニング能力に長けるWTBナブラギエロニ選手といったフィニッシャーが揃い、攻撃の選択肢は多岐にわたります。試合前のコメントからも、この一戦にかける並々ならぬ想いが強く伝わってきました。

    京産大のアタック:ショートサイドへのこだわりと後半の修正力

    京産大のアタックは、「ショートサイドを意図的に攻める」という狙いが明確でした。広いサイドへの仕掛けよりも、狭いサイドでの数的・質的優位を狙い、天理大ディフェンスのノミネートミスを誘おうと試みました。特にポルテレ選手や石橋選手といった強力なランナーをショートサイドに配置し、起点を作る意識が高かったです。

    後半、天理大の前に出るディフェンスに苦戦する中で見せた、バックドアへ直接経由し、外側へボールを運ぶスタイルは、高い修正力と判断力を示しました。必要以上にパスを増やさず、FWは縦のダミーランに留め、その裏のバックドアへ供給する形は、相手をうまく攻略できていたと言えます。このエッジからエッジへの展開からトライを獲得したシーンは、今後の大学選手権に向けた大きな収穫と言えます。

    一方で、ラインアウト獲得に苦戦した点は大きな課題となりました。具体的な数値としては59%(10/17)と、天理大学にスティールされる場面も含めて不安定な攻撃起点となっていました。特にゴール前でのラインアウトの不安定さが、決定機を逃す要因となりました。また、天理大の前に出るディフェンスに対して、ハンドリングエラーやパスコースの不足からミスをする場面も見受けられました。

    京産大のディフェンス:ブレイクダウンへの圧力とコリジョンの課題

    京産大のディフェンスは、個々の選手がテイクダウンを取るタックル精度は悪くありませんでした。押し込まれながらも、ブレイクダウンには絡み続ける圧力をかけ、外側ではエロニ選手のディフェンスでターンオーバーを奪うなど、粘りを見せました。

    しかし、天理大の強力なFWキャリーとブレイクダウンの強さに対し、ドミネートされる場面が続き、ディフェンスラインが後手に回ってしまう展開が目立ちました。特にコリジョンの部分で差し込まれるフェーズが多く、ゲインを許しがちになり、苦杯をなめる原因となりました。自陣側ではポゼッションではなく、テリトリー優先でロングキック中心の選択をし、ラインアウトのクイックスタートを多用するなど、工夫も見せていました。


    天理大学

    【今シーズンの天理大学:圧倒的なディフェンスとSO上ノ坊の統率力】

    今シーズンの天理大は、その圧倒的なディフェンス力が特筆すべきポイントです。関西リーグでここまで失点はわずか「55」、1試合あたり「11」失点という数字は全国トップクラスの堅守を物語っています。特に自陣22mに入られてからのモールディフェンスとFWによる近場のディフェンスは鉄壁で、1人1人のコンタクト強度がもう一段階ギアが上がる印象を受けます。

    その一方で、得点力も合計315得点と関西リーグで圧倒的なスコア力を誇り、攻守ともに盤石の状況が伺えます。これを支えるのは、キャプテンであるSO上ノ坊選手です。ランニング、キック、パスの全てを高いレベルで使いこなし、試合展開や時間帯によって自分の色の出し方を巧みに操る統率力でチームを牽引しています。加えて、FW陣の重量と機動力が今年も健在であり、穴のないチームを作り上げています。

    天理大のアタック:圧倒的な継続率とエリアマネジメント

    天理大のアタックは、「圧倒的なブレイクダウンの強さ」「高い継続率」が今年の最大の武器であることを証明しました。10シェイプを中心にFWがタックルを食いながらもドライブし、1人でもボールプロテクトできるブレイクダウンの強さによって、ターンオーバーされないポゼッション力を誇りました。

    1-3-3-1の配置を軸にエッジの選手が柔軟に変わるスタイルで広範囲を使い、アタックリサイクルも精度とスピードが早く、外側に次々とチャンスを創出しました。特にゴール前では、11人モールを披露するなど、FWの強さを最大限に生かした決定力は驚異的です。

    また、この日のSO上ノ坊選手はランニングよりもパスとキックを軸にゲームメイクしており効果的なエリアマネジメントでチームを前進させています。合わせて、50-22キックやキックパスといった高い足技のスキルで魅了しました。エッジのFLアリスター・サウララ選手効果的なオフロードパスも、アタック優勢に大きく貢献しました。

    加えて、敵陣22mに入ってからのアタックでは、ほとんどアタックオプションを封印し、戦術的な駆け引きは見られませんでした。あくまで個人的にですが、大学選手権へ見据えての布石ですらあるように感じました。 

    天理大のディフェンス:ダブルタックル意識と支配的なプレッシャー

    天理大のディフェンスは、非常に支配的でした。ダブルタックルの意識が高く、鋭く前に出ることで、京産大のモメンタムを寸断しました。特にミドルゾーンのプレッシャーに比重を置き、外側をある程度捨てることで、京産大にモメンタムを作らせない狙いが明確でした。

    一人一人のタックル精度とディフェンスのセットアップが早く、ほとんど後手に回ることがありませんでした。詰め切るディフェンスが有効に機能することで京産大のハンドリングエラーやミスを誘発。さらには、ハイパントからのラッシュとターンオーバーを引き起こすなど、守備から攻撃への切り替えも機能していました。

    ラインアウトディフェンスからもプレッシャーをかける狙いを持っており、自陣22m内ではハイパントではなく、ロングキックによるタッチキックを選択するなど、状況に応じた賢い判断も見られました。


    まとめ:天理大が示した王者の貫禄、京産大は修正力に期待

    全勝対決を制し、関西リーグ王座に輝いた天理大学は、アタックにおける圧倒的なブレイクダウンと継続率、SO上ノ坊選手を中心とした巧みなエリアマネジメント、そして決定力の高いバックスリー陣という、盤石の強さを見せつけました。後半終盤まで持続した鋭いディフェンスを武器に、大学選手権へ突き進みます。

    敗れた京都産業大学は、ラインアウト獲得の不安定さと、ディフェンスにおけるコリジョンで差し込まれるフェーズの多さが響きました。しかし、ラインアウトモールでの強さや、後半に見せたエッジからエッジの攻撃を含むアタックマネジメントの修正力は、今後の全国での戦いに大きな期待を抱かせます。

    両チームともに、この激戦を経て、関西の代表として「日本一」という目標に向かい、大学選手権へ挑みます。

    では。

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:京都産業大学対関西学院大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:京都産業大学対関西学院大学

    全勝の京産大が試練を突破! 関学のアタックの決定力と粘り!

    いよいよ大学ラグビーシーズンは佳境を迎え、各リーグで熱戦が繰り広げられています。今回は、関西大学Aリーグにおける注目の一戦、全勝を維持する京都産業大学と、4勝1敗で3位に付ける関西学院大学の対戦をレポートします。

    肌寒さが増す中、会場は熱気に包まれ、両チームのプライドがぶつかり合いました。試合の焦点は、やはり京産大の強力なフォワード(FW)陣に、関学大FWがどこまで対抗できるか。そして、関学大の誇る展開力と決定力のあるバックス(BK)陣が、京産大の堅守を破り切れるかに集まりました。

    試合展開:京都産業、リードを許すもセットプレーで逆転

    序盤は京産大がポゼッションとテリトリーを握る展開となりましたが、両チームともにミスやペナルティーが重なり、試合は断続的になりました。ペナルティーの数は両チーム合わせて「33」と規律面での課題はみられました。
    前半、京産大はBKで1本、得意のモールで1本のトライを奪いましたが、対する関学大もモールで2本のトライを奪い返し、12-12の同点で折り返す、手に汗握る展開となりました。

    後半に入ると、関学大が相手のミスから機を掴み、スコアを奪って一時リードします。しかし、京産大はここから真骨頂を発揮しました。10番吉本 大悟選手と9番髙木 城治選手の正確なキックを駆使してエリアを回復し、強力なスクラムからのペナルティー獲得、そしてモールでのトライで得点を重ね、逆転に成功しました。終盤まで関学大は粘りを見せましたが、京産大がリードを守り抜き、28-22で勝利を収め、全勝を堅持しました。


    京都産業大学のアタック:9シェイプを軸とした多角的なアプローチ

    京産大のアタックスタイルは、FWを効率よく配置する「3-3-1-1」「3-3-2」のポッドを基調としていました。特筆すべきは、逆目(ブラインドサイド)への10番選手のランを起点に、ディフェンスのエッジ(外側)を崩そうとする明確な狙いが見られた点です。

    • エッジへの工夫: 普段13番を担うことの多いナブラギ・エロニ選手をウイングに配置するなど、決定力を高める工夫が見られました。また、「3-3-1-1」のポッド配置を用い、エッジに6番石橋チューカ選手5番石川 東樹選手といった強力なFWを配置し、攻略を試みました。
    • シングルラインのブレイク: 最近主流のダブルラインではなく、FW-BK-FWのシングルラインでパスを繋ぎ、走り切れるバックローの能力を活かしたアタックが、最初のトライに繋がりました。
    • ミドルゾーンの苦戦: しかし、1本目のトライ以降はエッジの攻略に苦戦しました。これは、ミドルゾーンにおけるFWのキャリーが前にあまり出られず、有効な状態でエッジに運べなかったことで、関学大の対応を許し、外側へのパスが浮くなどのミスからターンオーバーを招く場面が散見されました。
    • セットプレーの決定力: スコアの多くは、苦戦したラインアウトに代わり、スクラムからのペナルティー獲得(PG)と、モールが占めました。敵陣深くへ侵入さえすれば、そのセットプレーの威力は圧倒的であり、勝利の大きな要因となりました。

    後半からの戦術転換として、キックの多用が成功しました。特にハイパントと、ディフェンスラインの背後を狙うチップキックやグラバーキックが効果的でした。キッカーである10番吉本選手の精度はもとより、バックスラインの洗練されたキックチェイスが功を奏し、狙いを持ってエリアを支配しました。自陣からハイパントを使い、ボールの再獲得に成功していたことは大きな影響力を持っていました。また、前半から後半にかけて軸を変えながら試合を進められる力は今年の大きな強みだと言えます。


    京都産業大学のディフェンス:速いラインスピードと重いブレイクダウン

    京産大のディフェンスは、全ての接点において圧力をかけることを重視し、ラインスピードの速さが光りました。

    • 個々のタックル精度: 個々のタックル精度が高く、タックル後のラックファイトでも押し返す意識が非常に強かったと言えます。
    • ミドルゾーンの封鎖: 外側へのボール展開を許すシーンが少なく、12番那須選手の的確なボールタックルなどでピンチを未然に防ぎ、ミドルゾーンを効果的に閉ざすことができました。

    ただ、課題点としてペナルティーの多さが目立ちました。タックルの高さやオフサイドなど、規律の面で反則が重なり、自ら勢いを止めてしまう時間帯があり、苦戦の要因となりました。


    関西学院大学のアタック:10シェイプとモールの決定力

    関学大のアタックスタイルは「1-3-3-1」を基本としながら、1年生SO新井 竜之介選手を起点とした「10シェイプ」を中心に組み立てられました。

    • 展開ラグビー: ポッドで細かく当てにいくより、深めのパスを介してバックドアを使ってエッジまでボールを動かすスタイルで、ボールを早く散らすことで前進を図りました。
    • ターンオーバー後の縦への意識: ボールポゼッションする時間は京産大に比べて少なかったものの、ターンオーバー後は横だけでなく縦へのキックを効果的に使用し、エリアとチャンスメイクを狙いました。
    • モールの脅威: この試合で最大の武器となったのがモールです。ゴール前では「オール面」「6面」など様々な形でボールを獲得し、強力な京産大FW相手にも押し込み、2本のトライに繋げました。アタック継続が難しい状況でも、ディフェンスでのペナルティー獲得から敵陣に入り、モールでトライを取り切る展開は、関学大の大きな収穫となりました。

    関西学院大学のディフェンス:ミドルゾーンでの健闘とエッジの課題

    関学大のディフェンスは、ミドルゾーンにおいて京産大のポッドアタックに対して十分に渡り合っていました。

    • ミッドフィールドの圧力: 京産大のポッドが狙いを絞りやすかったこともあり、個々のタックラーが前に出てしっかりと仕留めていました。特に4番池辺 康太郎選手5番梁瀬 将斗選手はミッドフィールドにタイトに立ち続け、3番大塚 壮二郎選手もハードなタックルを連発し、京産大の勢いを寸断しました。
    • エッジの課題: 一方で、エッジ(外側)のディフェンスには課題が残りました。ラックチェイスやボールウォッチのミスから間合いをずらされ、ブレイクや有効なゲインを許すシーンが見られました。頭越しのブリッジパスに対してはスライドで対応できていましたが、鋭いカットパスや、シングルラインで押し込んでくるアタックに対しては後手に回り、ミドルゾーンでのノミネートミスからギャップを生み出し、トライを献上する結果となりました。

    データで見る分岐点:決定率とキック戦略

    画像
    画像

    試合結果を左右したデータを分析すると、興味深い傾向が見て取れます。

    両チーム合計でペナルティーが33と多かったこともあり、ラインアウト機会が多発しましたが、京産大が22回で72%、関学大が16回で69%と、両チームとも獲得率が上がり切りませんでした。この「攻撃権の移り変わりやすさ」が試合をぶつ切りにした象徴と言えます。

    次に22mライン侵入回数を見ると、京産大が13回に対し、関学大は5回と大きな差が出ました。しかし、トライ数は互いに3本であり、トライ効率(22m決定率)は関学大が京産大を大きく上回る結果となりました。京産大はPGを選択する場面もあったため一概には言えませんが、アタックの決定率の低さが浮き彫りになりました。

    アタックシェイプの対比として、京産大の9シェイプ主体の近場と安定した攻撃に対し、関学大は10シェイプとバックスボールを軸とした外側へのチャンスメイク、そしてターンオーバーからの素早い動きを特徴としていました。

    キックタイプでは、関学大のロングキックに対して、京産大はハイパントを多用する構図が見えました。特に後半、京産大はハイパントとチップキックを駆使し、キックチェイスによるプレッシャーでディフェンスラインを押し上げ、試合を有利に進めることに成功しました。


    まとめ:セットプレーとエリア戦略が勝敗を分けた激戦

    総じて、ペナルティーが非常に多い試合となり、試合のテンポが失われがちな展開となりました。その中で、いかにペナルティーをスコアに繋げられたかが勝敗の大きな要因となりました。

    京産大は、アタック継続に課題を残しつつも、後半のキックによるエリアマネジメントの成功と、モール・スクラムというFWの絶対的な武器で着実にスコアを重ね、逆転勝利を収めました。関学大は、少ないチャンスを活かした高いトライ効率モールの強さで全勝チームをギリギリまで追い詰めたことは大きな収穫であり、大学選手権に向けて自信となるでしょう。

    京産大は次戦、同じく全勝の天理大学との大一番を迎えます。この激闘を乗り越えた経験は、必ずや次戦に活かされるはずです。両チームの今後の活躍に期待が高まります。

    では。

    (文:山本陽平)

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:京都産業大学対立命館大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:京都産業大学対立命館大学

    「間合い」と「プラン」の攻防:全勝京産大が粘る立命館を振り切った勝負の分岐点

    この一戦は、全勝で首位を走る京都産業大学と、一勝目が待たれる立命館大学の対戦であり、単なる星の差以上のドラマを予感させるものでした。特に春季リーグ決勝で立命館が京産大を破っている事実は、立命館が「打倒京産」の策を持っていることを示唆しており、試合前から期待感を高めていました。

    試合展開:主導権とスコアの妙

    試合序盤、主導権を握ったのは立命館大学でした。立ち上がりの1stスクラムでペナルティーを獲得し、勢いに乗ると、SHからのボックスキックと、そこに対する「キックチェイス」によってターンオーバーを連発しました。ポゼッションとテリトリーで優位に立ち、試合を京産大サイドで進めることに成功します。立命館が意図した「キッキングゲーム」と「チェイスによるプレッシャー」が完全に機能した時間帯でした。

    しかし、スコア面で優位に立ったのは京都産業大学でした。少ないチャンス、特にターンオーバーからのカウンターアタックにおいて、走力とパワーを兼ね備える大学屈指のNO8シオネ・ポルテレ選手がトライを奪うなど、京産大は「チャンスを的確にスコアに繋げる」決定力の高さを見せつけます。

    その後の試合は、立命館がポゼッションとテリトリーで攻め込み、京産大が粘り強いディフェンスとカウンター、そしてセットプレーからスコアを重ねるという、一進一退の攻防が続きました。立命館はリードを許しても突き放されない粘りを見せ、緊迫した展開が終盤まで続きます。

    試合の行方を決定づけたのは、後半70分を超えたあたりの時間帯でした。京産大が「伝家の宝刀」であるモールでトライを奪い、立命館の抵抗を打ち破ります。このトライで流れを完全に引き寄せた京産大は、その後も連続攻撃とラインブレイクをスコアに繋げ、最終スコア47-19で勝利。スコア以上に立命館の善戦が光るものの、最終的に京産大が勝ち点5を獲得する盤石の試合運びを見せました。


    京都産業大学:劣勢でも勝ち切る「風格」と「間合い」

    ポゼッション、テリトリーで劣勢に立たされながらも勝ち切った京産大の強さは、その「間合い」と「決定力」に集約されます。

    アタック:「自分たちの間合い」の徹底

    京産大のアタックの最大の特長は、テンポの緩急を巧みに操る「自分たちの間合い」を大事にする点です。 スクラムハーフ髙木城治選手は、ブレイクが起こった際には圧倒的なテンポでボールを捌く能力を持ちながらも、中盤や敵陣22m手前では、あえてFWにボールを預け、個々のフィジカルと近場の圧力を活かす「間合い」でボールを運びます。 

    一方で、一度ブレイクが起きると、ギアを一段、二段と上げてボールのテンポを一気に加速させます。このブレイクの起点を担ったのがCTBの奈須 貴大選手です。絶妙な深さからギャップを見つけ、しなやかなランと力強さでディフェンスラインを切り裂くランニングは今シーズンも健在で、京産大アタックの脅威であり続けました。 試合中盤までは繋ぎの部分や連携にわずかなミスも見られましたが、チーム連携が深まることで、さらに加速する可能性を秘めています。

    FWの間合い:「スクラム」と「モール」

    もう一つの「間合い」は、FWのセットプレーにあります。スクラムは5度のペナルティー獲得でアタックの起点となり、その圧力は健在です。 モールは立命館のサックディフェンスに苦戦し、70分まで封じ込められていましたが、試合を決定づけたのはやはりゴール前でのモールでした。ゴール前まで持っていけば「取り切れる」という絶対的な信頼を持つモールと、近場でのFWの圧力は、京産大の強さの根幹であり、今後も注目です。

    ディフェンス:粘り強さと22m内での精度

    ディフェンスは、ラインスピードに重きを置くより、「ブレイクダウン」にこだわったプレーが多く見られました。特に折り返しの10シェイプや9シェイプでは、6番平野龍選手、7番で主将の伊藤森心選手を中心に飛び出し、素早い接点への圧力をかけました。 

    ブレイクダウンでの圧力はターンオーバーを引き起こす場面もありましたが、テンポよく出された際には次のフェーズで遅れを取り、エッジでゲインを許すケースも散見されました。エッジの人数不足はバックスの個人のディフェンスレンジでカバーしている印象を受けますが、課題として残ります。 

    しかし、特筆すべきは22m内でのフィールドディフェンスの精度です。最大16フェーズにも及ぶ粘り強さで耐え抜き、スティールからペナルティーを獲得したプレーは、この試合の京産大の「我慢強さ」を象徴するものでした。


    立命館大学:「プランアタック」と「キッキングゲーム」の巧みさ

    全敗ながら、立命館大学は試合全体を通して理想的なアタックとキッキングテリトリーを獲得し、京都産業大学を苦しめました。

    アタック:「プランアタックとキッキングゲーム」

    立命館のラグビーは、「プランアタック」と「キッキングゲーム」に集約されます。

    キッキングゲームは、SH香山創祐選手やSO初田 航汰選手からのハイパントキックと、それに続く3人のキックチェイス、ラックへの素早いプレッシャーからターンオーバーを狙うという、高精度な連動を見せ、京産大に大きなプレッシャーを与えました。今シーズンの関西リーグで最もキックを多用し、テリトリー獲得と空中戦を作り出すという両面で、その意識と精度、チェイスのレベルの高さが際立ちました。

    プランアタックでは、事前に用意されたシークエンス(連続攻撃の型)をここぞの場面で繰り出し、スコアに繋げました。特に特徴的だったのは、1322のポッド配置において、通常FWの後ろ(バックドア)に配置されるセンターを、外側に配置し、外側での優位性を生み出す工夫です。このシークエンスはブレイクを生み出し、一気にトライまで取り切る力を見せましたが、ミドルゾーンが手薄になり、ターンオーバーを誘発しやすいという表裏一体の課題も露呈しました。

    FW:ラインアウトの精密さとセットプレーの工夫

    ラインアウトの獲得精度は素晴らしく、17回中15回という高い成功率を記録。5メン、6メン、オールメンを巧みに使い分け、フロント、ミドル、バックへのボール供給に工夫を凝らす獲得の精度は、関西随一の強みと言えます。 また、ラインアウトからモールを意識させた後のピールオフで、イエローカードで人数が少ないディフェンスのスペースを突き、トライを獲得するなど、工夫されたセットプレーアタックは京産大を揺さぶりました。

    課題:ゴール前での仕留めの精度

    立命館の最大の課題は、スタッツにも現れている「ゴール前での仕留めの部分」です。今回のスコアは「22m外から」の攻撃スタートが多く繋がっており、ゴール前まで迫ると、ディフェンスラインが強固になり、プレッシャーを受けてターンオーバーを許すケースが多く見られました。22m内での決定率が勝敗を分けた大きな要因と言えます。

    ディフェンス:ダブルタックルとラックへのラッシュ

    立命館のディフェンスは、ダブルタックルの強度が高く、相手をドミネイトする場面が目立ちました。テイクダウン後の素早い起き上がりとラックへのラッシュがチームとして徹底されており、素晴らしいターンオーバーを引き出しました。前半は規律と共に前へ出るプレッシャーディフェンスが機能していましたが、足が止まる後半終盤にギャップや横の連携が乱れ、崩しきられる場面があり、ここは今後の課題となるでしょう。モールディフェンスについては、サックとファイトを使い分け、京産大の強みを70分まで封じ込めた対策は一定の評価ができます。


    データから見る勝負の分岐点

    画像
    画像

    互いにアタックの機会を多く得ていたことがスタッツから裏付けられます。
    最も勝負を分けたのは、互いに10回、11回とあった「敵陣22mエリア内の決定率」でした。立命館は敵陣深くでポゼッションを持ちながら、自分たちの少ないミスを京産大に取り切られるなど、ゴール前での精度の差が敗因となりました。 アタックスタイルにおいては、京産大がFW中心の9シェイプに重きを置くのに対し、立命館が3割近くをバックラインアタックに割いていることは、「外側にチャンスメイクを求める」立命館のプランアタックを象徴しています。

    まとめ

    最終スコアこそ開きましたが、この試合は後半の最後まで勝敗の行方が分からない、非常に質の高い一戦でした。立命館大学は、巧妙なゲームマネジメントと、工夫を凝らしたシークエンスアタック、そして高精度のキッキングゲームという「打倒京産」のプランを披露し、全勝チームを大いに苦しめました。

    京都産業大学は、ポゼッションとテリトリーの劣勢を、大学屈指の決定力、セットプレーの圧力、そして22m内での鉄壁のディフェンスという「風格」で乗り越えました。自慢のモールに加えて、今後のアタック連携がさらに深まれば、京産大はさらに手が付けられないチームとなるでしょう。
    負けられない一戦で見せた立命館のラグビー、そしてそれを乗り越えた京産大の盤石の強さ。関西大学ラグビーリーグ戦の面白さを凝縮した見応えのある試合でした。

    では。

    (文:山本陽平)

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:近畿大学対関西大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:近畿大学対関西大学

    まさに死闘!ポゼッションvsエリア、勝負を分けたセットプレーの執念

    関西大学ラグビーリーグ開幕から2試合を終え、近畿大学が1勝1敗、対する関西大学が痛い2連敗という状況で迎えたこの一戦は、両チームにとって秋の戦線を左右する「落とせないゲーム」となりました。上位に食い込むためには、もはやどちらも負けられない極限のプレッシャーの中、試合は最後まで予測不能な、まさに劇的な結末を迎えました。

    近年の対戦成績の因縁も相まって、試合は近畿大学の「ポゼッションアタック」と、関西大学の「テリトリーゲーム」という、極めて対照的なスタイルが激しくぶつかり合いました。ディフェンスにおいても、お互いの決定機を許さぬ堅固な攻防が続き、特に関西大学7番 三木翼選手に見られたような、試合の流れを変える「執念のスティール」も飛び出す白熱の展開となりました。

    ◆試合展開:サヨナラPGが導いた劇的勝利

    試合は、SO﨑田士人選手のロングキックを軸にテリトリーを支配しようとする関西大学に対し、近畿大学が自陣からでもボールを継続するポゼッションアタックを見せる構図で進行しました。

    まずリードを奪ったのは関西大学。敵陣でのターンオーバーという、彼らの得意な形からチャンスを作り、強固なモールを起点に先制します。対する近畿大学も、中盤でのラインブレイクを起点にペナルティーを誘い、ゴール前からの攻撃をスコアに繋げ、一進一退の攻防に。

    試合のハイライトは後半。近畿大学は、工夫されたシークエンスアタックから2本連続でトライを奪い、リードを奪うことに成功します。しかし、敗戦の危機に立たされた関西大学は、ゴール前のFWが10フェーズを超える猛烈な連続攻撃を仕掛け、ディフェンスをこじ開けて土壇場で同点に追いつく執念を見せました。

    そして、試合の結末を分けたのはまさしくラストワンプレー。プレッシャーがピークに達した瞬間、スクラムで執念のペナルティーを奪い、サヨナラペナルティーゴールを決めた関西大学が劇的な勝利を手繰り寄せました。


    ◆近畿大学:SH渡邊選手が牽引する高精度アタック

    近畿大学は、現代ラグビーでは比較的珍しくなった試合序盤のキックオフレシーブの局面からポゼッションを重ねるスタイルを徹底し、ボールを持ちながら防御をこじ開ける道筋を模索していました。

    巧妙に設計されたアタックシークエンス

    攻撃の中心にいたのは、SH渡邊晴斗選手です。彼を起点とした9シェイプがアタックの基本構造となり、スイベルパスを用いてバックドアへボールを動かし、外側へ展開する動きが近大のアタックの代名詞となりました。加えて、大外のスペースやキックカウンターの局面では、WTB太田啓嵩選手のダイナミックなランニングからブレイクを起こし、決定的なスコアチャンスへ繋げていました。

    特筆すべきは、FW陣の高いハンドリングスキルに裏打ちされたティップオンパスの多用です。FW同士の短いパスは、シェイプに帰属する全員がボールキャリアーとなり、相手ディフェンスの焦点を絞らせませんでした。バックスラインは広く浅いラインを形成し、FWとバックスの役割を明確に分離しながら、内側で良い形でボールが供給された際、走力のあるバックスがブレイクを起こし、決定的なスコアチャンスを生み出していました。

    その戦術的深さを見せたのが、後半の連続スコアです。

    1. 一つ目のトライは、SH渡邊選手がラックから意図的に離れた位置に立ち、ピックを仕掛けるFWをダミーとし、深めに位置するバックスラインへボールを供給していました。ラックサイドに集中していた関大ディフェンスの裏をかく効果覿面なプレーでした。
    2. 二つ目のトライは、ラックサイドのFWへのダミーパスを入れ、外側から13番 井上 晴嵐選手が縦に鋭く走り込み、その裏を9シェイプの機動力のあるFWが回り込みギャップを突く形。二列目から飛び出してきたバックスの縦方向のランニングに対し、FWが差し込むこの連動は、関西大学にとって非常に嫌なプレーとなりました。

    これらは、事前に入念に用意されたプレーであり、ハーフ団の采配が見事に的中し、相手の陣形に合わせて練り込まれたプレーを繰り出す、アタックの質の高さを示しています。

    課題となったアタックレンジとトランジション

    しかし、ポゼッションを追求するがゆえの課題も見られました。バックスラインがシングルに並ぶ構造は、相手のスライドディフェンスに上手く対応されてしまうと、苦しい体勢でのラックメイクを強いられる原因となりました。また、ミドルゾーンにおけるアタックレンジの狭さも、相手ディフェンスに見切られやすい要因となり、ティップオンパスがブレイクに繋がらないシーンを増やしていました。

    何よりも、ポゼッションラグビーの宿命として、ターンオーバーされた後の1次ディフェンスの対応が大きなテーマとして残りました。ボールを拾われたり、ペナルティーを犯したりした後に一気にピンチを背負い、スコアに直結させられた場面は、この試合を苦しくした大きな要因でした。

    ディフェンス面では、タックル強度の高さは今年も健在で、差し込まれる場面よりもドミネイトする場面の方が多く見られましたが、ゴールを背負った際の近場の連続ピックやモールに対する課題は、今後の修正点となるでしょう。


    ◆関西大学:SO﨑田選手と強靭なFWによる勝利

    関西大学は、終始アタックとディフェンスの戦術的なバランスを保ちながら、スコアチャンスを確実にものにしていく効率的かつフィジカルなラグビーを展開しました。

    圧倒的なエリア支配力とキックチェイス

    関西大学の戦い方は、SH 宮内 幹大選手を起点としながら、中盤からは徹底したキック中心のテリトリーメインの戦略にシフトしました。その戦略を支えたのが、SO 﨑田 士人選手推定60mにも達する超ロングキックです。この一発のキックが、試合の局面を一瞬で敵陣深くに押し込み、エリア獲得に大きく貢献しました。

    このエリア獲得の意識は、キックチェイスのディフェンス精度として具現化されました。高精度のチェイスから相手にプレッシャーをかけ、ターンオーバーを誘発するシーンは、今季の関西大学の最も強力な武器であると断言できます。スコアの多く(合計4本のトライ)が敵陣でのターンオーバーを起点としている事実は、この戦術の有効性を証明しています。

    勝利を決定づけたFWの執念と三木選手の献身

    関西大学のもう一つの得点源は、FW戦における圧倒的な強さです。中盤でペナルティーを獲得し、敵陣でのラインアウトモールを起点に押し込む流れは、安定した攻撃パターンとなっていました。

    そして、この試合の最も重要な決め手となったのがスクラムです。前半には反則を取られるシーンがありましたが、後半の重要な局面、そして同点に追いついた後の最後の土壇場でペナルティーを獲得したことが、FW陣のフィジカルと精神的な勝負強さが勝利を手繰り寄せたことの要因と言えます。80分間フィールドプレーを続けた後、最後に力を振り絞りペナルティーを取り切った関西大学のFW陣は、まさしく「殊勲の働き」でした。

    ディフェンス面では、規律を保ちながら近畿大学のポゼッションに対し粘り強く対応しています。特に7番三木翼選手は、ディフェンスラインの中でも鋭いタックルを連発し、さらにスティール(ターンオーバー)を二度成功させるなど、近畿大学の連続攻撃の芽を摘む、極めて献身的な役割を担っていました。


    ◆データが語る勝敗の分岐点

    この試合の勝敗を分けたポイントは、詳細なデータからも明らかになりました。

    画像
    画像

    両チームのアタックシェイプは9シェイプが中心でしたが、決定的な差が生まれたのはセットプレーとエリアの攻防でした。
    ラインアウトの獲得率は、近畿大学60%に対し、関西大学は76%と差がつきました。関西大学は13回のラインアウト機会から安定した獲得率を見せ、そこから攻撃を生み出しました。一方、近畿大学にとって、マイボールのラインアウトやスクラムで逆にペナルティーを奪われるシーンは、攻撃を寸断され、苦しめられた最大の要因と言えるでしょう。

    22mエントリー回数関西大学が近畿大学を上回りました。これは、関西大学が攻撃回数自体は同等か少ない中で記録した数字であり、ロングキックとキックチェイスによる敵陣でのターンオーバー戦略が、効率的なエリア侵入に繋がったことを示しています。近畿大学は侵入回数あたりにおいては的確にスコアまで繋げられていたものの、そもそも敵陣に入りきれない時間が長かったことが、最終的な敗因の一つとなりました。


    まとめと今後の展望

    スコアが拮抗する展開で、両チームともにディフェンスとアタックの持ち味が出尽くした、非常に質の高いゲームでした。
    ポゼッションを徹底し、ハーフ団の采配と工夫されたシークエンスでリードを奪った近畿大学。そのアタックの可能性は間違いなく本物ですが、セットプレーとトランジションディフェンスの修正が、今後の上位進出の鍵となります。

    対照的に、戦うエリアを意識し、セットプレーとFWのフィジカルで最後の最後まで粘り強く戦い抜いた関西大学。逆転されてもジリジリと迫り、最後に値千金のスクラムでの踏ん張りを見せた勝負強さは、2敗からの巻き返しに向け、大きな自信となるでしょう。

    両チーム共にこの死闘を糧に、どのように残りのリーグ戦を戦い抜くのか、今後の展開から目が離せません。では。

    (文:山本陽平)

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:同志社大学対関西学院大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:同志社大学対関西学院大学

    熱戦を制した関学の「計画性」と、同志社の「修正力」が光る伝統の一戦

    関西ラグビーリーグの注目カード、同志社大学と関西学院大学の対決は、シーズン序盤にして早くも白熱の攻防となりました。共に初戦を白星で飾り、勢いに乗る両雄のぶつかりは、昨シーズンの順位を巡る因縁も相まって、大きな山場となることは間違いありませんでした。

    同志社大学は、本来ゲームメーカーであるSO(スタンドオフ)やFB(フルバック)を務めることが多いキャプテンの大島泰真選手を、あえて14番ウイングに起用。これは、試合中に彼を本来のSOの位置に移動させ、そこを起点とした流動的な移動攻撃を仕掛けるという、相手の予測を裏切る明確な戦術的工夫でした。

    対する関西学院大学も、高校代表経験を持つ武藤航生選手、中俊一朗選手といった強力なアタッカーをバックスに要し、持ち味であるバックス陣の展開力に磨きをかけてきました。

    ◆試合展開:関学の「理想」と同志社の「苦闘」

    試合の主導権を握ったのは関西学院大学でした。彼らは持ち味であるバックス陣の展開力と、FWのモールを効果的に組み合わせ、敵陣に入れば確実にスコアを取り、理想的な試合展開を作り上げました。ディフェンス面でも、激しく前にラインを押し上げるハイプレッシャーをかけ続け、同志社の攻撃リズムを寸断しました。

    一方の同志社大学は、大島選手がプラン通りSOの位置に入りながら、移動攻撃で活路を見出そうと試みましたが、関学の激しいディフェンスの前に苦しみます。ボールを持つ機会は関学と遜色ありませんでしたが、ディフェンスの圧力からボールを前に運べない時間帯が続きました。自らのボールロストやペナルティーを犯す場面が重なり、リズムに乗れず、試合は終始関西学院のペースで進みました。

    試合は終盤まで関西学院がリードを保ち、スコア力の差が明確に表れる形となりました。しかし、同志社も粘りを見せます。後半ラスト10分にアタックを修正し、立て続けにトライを奪う修正力と地力を見せつけました。この猛追は今後に向けて大きな期待を抱かせるものでしたが、前半の失点が響き、結果は21-34で関西学院大学が勝利を収めました。このスコアは、両チームが持つポテンシャルの高さを感じさせると同時に、中盤の規律と決定力が勝敗を分ける鍵となったと感じます。

    この試合から見えてきた両チームの強みと課題を、詳細に分析します。

    ◆同志社大学:司令塔・大島の配置転換に見る「工夫」とアタックの「修正力」

    同志社大学はキャプテンの大島泰真選手を、通常SOやFBが多い中この試合では14番ウイングで起用するという意外性のある布陣で臨みました。これは、彼が本来の司令塔であるスタンドオフ(SO)の位置に移動しながら攻撃を組み立てる、柔軟な移動攻撃を軸とする狙いがあったと見られます。

    苦しんだ前半:関学のハイプレッシャーに沈黙したアタック

    しかし、前半は関西学院大学の激しいラッシュアップディフェンスの前に、同志社のアタックは大きな苦戦を強いられました。

    特に課題となったのは、セットプレーからのファーストアタックでした。ゲインラインを突破できず、厳しいディフェンスのプレッシャーからターンオーバーを招く場面が続出しました。目指していたショートサイドや逆目への移動攻撃、大島選手やFB上嶋友也選手が絡んで相手FWとのミスマッチを狙うプランは、その手前でボールを供給できずに頓挫してしまいました。

    グラウンドワークやサポートのつき方にも課題が見られ、ラックに人を割きすぎることで、次以降のアタックに厚みが欠け、さらにプレッシャーを受けやすい悪循環に陥ったと言えます。FW陣はスクラムでペナルティーを獲得するなど推進力を見せていましたが、細かな連携と立ち位置の修正が急務となりました。

    驚異の後半ラスト10分:スタイル激変が生んだブレイク

    それでも、同志社大学の真骨頂は後半ラスト10分に発揮されます。関西学院のディフェンススタイルに対し、それまでの広く深いアタックラインから大きく戦術を転換しました。

    1. 立ち位置の変更: ディフェンスに詰め切られる前にボールを繋ぐため、狭く深いアタックラインを構え直しました。
    2. 仕掛けの焦点化: ゲインラインへ接近し、トイメン(真正面の相手)へのコミットを誘いながら、ギリギリで裏のキャリアーに繋ぎ、ディフェンスとディフェンスのギャップを突くことに成功。
    3. 攻撃の柔軟性: 10シェイプ(SO周辺)中心にボールを散らしつつ、FWがキャリー後にすぐ起き上がって再度前進する「ピック&ゴー」などを織り交ぜ、相手ディフェンスラインを効果的に下げました。

    この修正力と工夫された仕掛けは見事の一言で、立て続けにトライを奪う地力を見せつけました。最終スコアでは及びませんでしたが、この猛攻は次戦以降への大きな希望となるでしょう。

    ディフェンス:高い個の能力と規律の乱れ

    ディフェンス面では、個々のタックル精度と強度は高いレベルにありました。HO荒川駿選手のジャッカル、LO林慶音選手のカウンターラックなど、要所でのターンオーバーも光りました。しかし、ディフェンス時のペナルティーが重なり、自陣深くでの厳しい展開を招きました。特にモール起点やキックカウンター後のアンストラクチャーな状況で後手に回ることが多く、ディフェンスラインを整える前に攻め込まれる展開が続きました。

    ポイントとして、アンストラクチャー後のエッジ(フィールドのサイドラインに近い部分)で、相手のラックに対してもう一歩踏み込んだプレッシャーをかけ、相手の攻撃テンポをわずかにでもずらすことができていれば、試合の流れは変わっていたかもしれません。これにより、ディフェンスラインがリロード(再配置)する時間を確保し、次のフェーズでのプレッシャーを強めることが可能になります。


    ◆関西学院大学:柔軟なポッドシステムとハイレベルな「計画性」

    勝利を収めた関西学院大学は、「柔軟性と計画性に富んだ」非常にバランスの取れたアタックを展開しました。彼らの攻撃は、個人の能力に依存するのではなく、チームとしての完成度の高さを感じさせるものでした。

    アタック:多彩なシェイプとアンストラクチャーの脅威

    関西学院のFWは、No.8小林典大選手を中心に接点での圧力を意識的に高めており、モールやシンプルな9シェイプから確実にゲインを重ねました。
    特筆すべきは、ポッドシステム(FWの集団配置)の柔軟性です。基本の1-3-3-1を軸にしながらも、状況に応じて3-3-2や1-4-2-1へと変化させ、相手ディフェンスの的を絞らせませんでした。

    最大の強みは、ターンオーバー後のアンストラクチャーアタックです。ブレイクダウンに強いFWをエッジ(外側)に配置することが多い中、関学はエッジにボールを運んだ際にバックスのみでクイックにボールをリサイクルできる点で優位性を発揮しました。これにより、テンポを落とさずに攻撃を継続し、相手がディフェンスラインを整える前に仕留めることが可能となっていました。

    SO阪井優昇選手を中心とした10シェイプから、CTB下元大誠選手へ繋ぎ、バックスラインへ展開する形も確立されており、計画性の高さが伺えました。
    ゴール前では、FWが9シェイプを中心にゴールラインへ垂直に仕掛けつつ、そのFWを飛ばして中選手や下元選手が仕掛け、裏の阪井選手へ繋ぐスイベルパスのシークエンスは、ハイレベルなボール捌きとプレッシャー下でのパスワークの賜物でした。さらに、後半には下元選手がSOに入り縦に仕掛けるなど、複数人がファーストレシーバーになれる強みも披露しました。

    ディフェンス:激しいラッシュと組織力

    ディフェンスは、代名詞とも言える激しいラッシュアップディフェンスが終始機能しました。ボールキャリアーに対して鋭く、膝下に刺さるような低いタックルを徹底し、同志社の勢いを寸断しています。アタックラインの裏に控えるSOに対しても外側から詰めてプレッシャーをかけ、組織的ディフェンスのレベルの高さを見せつけました。

    PR大塚壮二郎選手のタックル後のリアクションからそのままラックを超えてターンオーバーを起こすなど、接点での高い意識も光りました。終盤は同志社の猛攻でブレイクを許す場面もありましたが、裏のバックス陣が高いタックル精度でフォローし、一気にトライを許さない粘り強さも持ち合わせていました。


    ◆データで見る勝敗の分岐点:鍵は「22m決定率」と「規律」

    この試合の勝敗を分けたポイントは、詳細なデータからも明らかになりました。

    画像
    画像

    最大のポイントは、同志社と関西学院が同水準の11回、12回の敵陣22m侵入回数がありながら、トライまで取り切る決定率に大きな差が出た点です。
    また、敵陣22m侵入のきっかけとして、関西学院がペナルティー獲得による侵入が多かったことは、中盤での規律の差がそのままスコアに直結したことを示しています。関西学院の激しいディフェンスによって同志社がペナルティーを誘発され、効果的に敵陣に侵入されてしまいました。

    関西学院は、中盤でのキック戦術としてハイパントを積極的に用いていました。これは単にエリアを稼ぐためだけでなく、キック後のチェイスと空中戦の優位性を活かして、ラックでのプレッシャーからターンオーバーを引き起こすという明確な狙いがありました。実際、この積極的なハイパントはいくつかの場面で機能し、同志社のストラクチャー攻撃を出させないという意味でも、有効な戦術であったと言えます。

    また、意図的にロングキックでタッチラインの外に蹴り出さず、インフィールドに残すことも狙っていました。これは、同志社をフィールド内で受け身のディフェンスに追い込み、関西学院が得意とするアンストラクチャーな状況、つまりディフェンスラインが整っていない状況を作り出す勝機を見ていたためだと推察されます。

    アタックシェイプ(攻撃の形)の面では、関西学院は比較的ワイドな展開を中心としており、10シェイプ(スタンドオフを軸とした攻撃)とバックスラインでの展開が攻撃の主軸となっていました。これは、彼らの誇るバックス陣の展開力とランニングスキルを最大限に活かすための設計図でした。

    対してセットプレー、特にスクラムやラインアウトの安定性は、この試合では同志社大学が大きく上回っており、同志社にとって数少ない有効な攻撃の起点となっていました。データ上、同志社はラインアウトからのサインプレーやスクラムでのペナルティー獲得などで優位に立っていたと言えます。

    この安定したセットプレーを活かすため、同志社大学としては、ゴール前付近でラインアウトをより多く発生させることができていれば、FW主導の強力なアタックやモールからのスコアチャンスがさらに増え、得点差を詰めることが可能だったと見えます。セットプレーで得た優位性を、いかに敵陣深くでの攻撃に繋げられるかが、今後の同志社の課題となるでしょう。

    さらに、アタックの終わり方を見ると、同志社が10回のターンオーバーで攻撃を終えたのに対し、関西学院はわずか3回。これは関学のディフェンス精度の高さだけでなく、ボールロストを避けてキックで攻撃を終えるといったマネジメント能力の差も大きく影響したと言えます。

    ◆まとめ:両雄が示した「進化」と今後の期待

    同志社大学は、キャプテン大島選手を中心とした新しいアタックの形を模索しており、後半に見せた驚異的な修正力は彼らの高いポテンシャルを証明しました。今後は、前半のアタックの精度と、ディフェンス時の規律を整えることが鍵となるでしょう。

    一方、関西学院大学は、柔軟で計画的なアタックと、高い組織力を持つディフェンスを披露し、総合力の高さで勝利を掴み取りました。特にアンストラクチャーアタックにおける完成度の高さは、今シーズンの大きな武器となりそうです。今後は、ミドルゾーンでテンポが遅れた際の攻撃のバリエーションがどう進化していくのかに注目が集まります。

    この伝統の一戦は、両チームが更なる進化を遂げていることを示しました。関西ラグビーリーグの行方を占う上で、非常に重要な一戦であったことは間違いありません。

    では。