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  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:近畿大学対関西大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:近畿大学対関西大学

    まさに死闘!ポゼッションvsエリア、勝負を分けたセットプレーの執念

    関西大学ラグビーリーグ開幕から2試合を終え、近畿大学が1勝1敗、対する関西大学が痛い2連敗という状況で迎えたこの一戦は、両チームにとって秋の戦線を左右する「落とせないゲーム」となりました。上位に食い込むためには、もはやどちらも負けられない極限のプレッシャーの中、試合は最後まで予測不能な、まさに劇的な結末を迎えました。

    近年の対戦成績の因縁も相まって、試合は近畿大学の「ポゼッションアタック」と、関西大学の「テリトリーゲーム」という、極めて対照的なスタイルが激しくぶつかり合いました。ディフェンスにおいても、お互いの決定機を許さぬ堅固な攻防が続き、特に関西大学7番 三木翼選手に見られたような、試合の流れを変える「執念のスティール」も飛び出す白熱の展開となりました。

    ◆試合展開:サヨナラPGが導いた劇的勝利

    試合は、SO﨑田士人選手のロングキックを軸にテリトリーを支配しようとする関西大学に対し、近畿大学が自陣からでもボールを継続するポゼッションアタックを見せる構図で進行しました。

    まずリードを奪ったのは関西大学。敵陣でのターンオーバーという、彼らの得意な形からチャンスを作り、強固なモールを起点に先制します。対する近畿大学も、中盤でのラインブレイクを起点にペナルティーを誘い、ゴール前からの攻撃をスコアに繋げ、一進一退の攻防に。

    試合のハイライトは後半。近畿大学は、工夫されたシークエンスアタックから2本連続でトライを奪い、リードを奪うことに成功します。しかし、敗戦の危機に立たされた関西大学は、ゴール前のFWが10フェーズを超える猛烈な連続攻撃を仕掛け、ディフェンスをこじ開けて土壇場で同点に追いつく執念を見せました。

    そして、試合の結末を分けたのはまさしくラストワンプレー。プレッシャーがピークに達した瞬間、スクラムで執念のペナルティーを奪い、サヨナラペナルティーゴールを決めた関西大学が劇的な勝利を手繰り寄せました。


    ◆近畿大学:SH渡邊選手が牽引する高精度アタック

    近畿大学は、現代ラグビーでは比較的珍しくなった試合序盤のキックオフレシーブの局面からポゼッションを重ねるスタイルを徹底し、ボールを持ちながら防御をこじ開ける道筋を模索していました。

    巧妙に設計されたアタックシークエンス

    攻撃の中心にいたのは、SH渡邊晴斗選手です。彼を起点とした9シェイプがアタックの基本構造となり、スイベルパスを用いてバックドアへボールを動かし、外側へ展開する動きが近大のアタックの代名詞となりました。加えて、大外のスペースやキックカウンターの局面では、WTB太田啓嵩選手のダイナミックなランニングからブレイクを起こし、決定的なスコアチャンスへ繋げていました。

    特筆すべきは、FW陣の高いハンドリングスキルに裏打ちされたティップオンパスの多用です。FW同士の短いパスは、シェイプに帰属する全員がボールキャリアーとなり、相手ディフェンスの焦点を絞らせませんでした。バックスラインは広く浅いラインを形成し、FWとバックスの役割を明確に分離しながら、内側で良い形でボールが供給された際、走力のあるバックスがブレイクを起こし、決定的なスコアチャンスを生み出していました。

    その戦術的深さを見せたのが、後半の連続スコアです。

    1. 一つ目のトライは、SH渡邊選手がラックから意図的に離れた位置に立ち、ピックを仕掛けるFWをダミーとし、深めに位置するバックスラインへボールを供給していました。ラックサイドに集中していた関大ディフェンスの裏をかく効果覿面なプレーでした。
    2. 二つ目のトライは、ラックサイドのFWへのダミーパスを入れ、外側から13番 井上 晴嵐選手が縦に鋭く走り込み、その裏を9シェイプの機動力のあるFWが回り込みギャップを突く形。二列目から飛び出してきたバックスの縦方向のランニングに対し、FWが差し込むこの連動は、関西大学にとって非常に嫌なプレーとなりました。

    これらは、事前に入念に用意されたプレーであり、ハーフ団の采配が見事に的中し、相手の陣形に合わせて練り込まれたプレーを繰り出す、アタックの質の高さを示しています。

    課題となったアタックレンジとトランジション

    しかし、ポゼッションを追求するがゆえの課題も見られました。バックスラインがシングルに並ぶ構造は、相手のスライドディフェンスに上手く対応されてしまうと、苦しい体勢でのラックメイクを強いられる原因となりました。また、ミドルゾーンにおけるアタックレンジの狭さも、相手ディフェンスに見切られやすい要因となり、ティップオンパスがブレイクに繋がらないシーンを増やしていました。

    何よりも、ポゼッションラグビーの宿命として、ターンオーバーされた後の1次ディフェンスの対応が大きなテーマとして残りました。ボールを拾われたり、ペナルティーを犯したりした後に一気にピンチを背負い、スコアに直結させられた場面は、この試合を苦しくした大きな要因でした。

    ディフェンス面では、タックル強度の高さは今年も健在で、差し込まれる場面よりもドミネイトする場面の方が多く見られましたが、ゴールを背負った際の近場の連続ピックやモールに対する課題は、今後の修正点となるでしょう。


    ◆関西大学:SO﨑田選手と強靭なFWによる勝利

    関西大学は、終始アタックとディフェンスの戦術的なバランスを保ちながら、スコアチャンスを確実にものにしていく効率的かつフィジカルなラグビーを展開しました。

    圧倒的なエリア支配力とキックチェイス

    関西大学の戦い方は、SH 宮内 幹大選手を起点としながら、中盤からは徹底したキック中心のテリトリーメインの戦略にシフトしました。その戦略を支えたのが、SO 﨑田 士人選手推定60mにも達する超ロングキックです。この一発のキックが、試合の局面を一瞬で敵陣深くに押し込み、エリア獲得に大きく貢献しました。

    このエリア獲得の意識は、キックチェイスのディフェンス精度として具現化されました。高精度のチェイスから相手にプレッシャーをかけ、ターンオーバーを誘発するシーンは、今季の関西大学の最も強力な武器であると断言できます。スコアの多く(合計4本のトライ)が敵陣でのターンオーバーを起点としている事実は、この戦術の有効性を証明しています。

    勝利を決定づけたFWの執念と三木選手の献身

    関西大学のもう一つの得点源は、FW戦における圧倒的な強さです。中盤でペナルティーを獲得し、敵陣でのラインアウトモールを起点に押し込む流れは、安定した攻撃パターンとなっていました。

    そして、この試合の最も重要な決め手となったのがスクラムです。前半には反則を取られるシーンがありましたが、後半の重要な局面、そして同点に追いついた後の最後の土壇場でペナルティーを獲得したことが、FW陣のフィジカルと精神的な勝負強さが勝利を手繰り寄せたことの要因と言えます。80分間フィールドプレーを続けた後、最後に力を振り絞りペナルティーを取り切った関西大学のFW陣は、まさしく「殊勲の働き」でした。

    ディフェンス面では、規律を保ちながら近畿大学のポゼッションに対し粘り強く対応しています。特に7番三木翼選手は、ディフェンスラインの中でも鋭いタックルを連発し、さらにスティール(ターンオーバー)を二度成功させるなど、近畿大学の連続攻撃の芽を摘む、極めて献身的な役割を担っていました。


    ◆データが語る勝敗の分岐点

    この試合の勝敗を分けたポイントは、詳細なデータからも明らかになりました。

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    両チームのアタックシェイプは9シェイプが中心でしたが、決定的な差が生まれたのはセットプレーとエリアの攻防でした。
    ラインアウトの獲得率は、近畿大学60%に対し、関西大学は76%と差がつきました。関西大学は13回のラインアウト機会から安定した獲得率を見せ、そこから攻撃を生み出しました。一方、近畿大学にとって、マイボールのラインアウトやスクラムで逆にペナルティーを奪われるシーンは、攻撃を寸断され、苦しめられた最大の要因と言えるでしょう。

    22mエントリー回数関西大学が近畿大学を上回りました。これは、関西大学が攻撃回数自体は同等か少ない中で記録した数字であり、ロングキックとキックチェイスによる敵陣でのターンオーバー戦略が、効率的なエリア侵入に繋がったことを示しています。近畿大学は侵入回数あたりにおいては的確にスコアまで繋げられていたものの、そもそも敵陣に入りきれない時間が長かったことが、最終的な敗因の一つとなりました。


    まとめと今後の展望

    スコアが拮抗する展開で、両チームともにディフェンスとアタックの持ち味が出尽くした、非常に質の高いゲームでした。
    ポゼッションを徹底し、ハーフ団の采配と工夫されたシークエンスでリードを奪った近畿大学。そのアタックの可能性は間違いなく本物ですが、セットプレーとトランジションディフェンスの修正が、今後の上位進出の鍵となります。

    対照的に、戦うエリアを意識し、セットプレーとFWのフィジカルで最後の最後まで粘り強く戦い抜いた関西大学。逆転されてもジリジリと迫り、最後に値千金のスクラムでの踏ん張りを見せた勝負強さは、2敗からの巻き返しに向け、大きな自信となるでしょう。

    両チーム共にこの死闘を糧に、どのように残りのリーグ戦を戦い抜くのか、今後の展開から目が離せません。では。

    (文:山本陽平)

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:同志社大学対関西学院大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:同志社大学対関西学院大学

    熱戦を制した関学の「計画性」と、同志社の「修正力」が光る伝統の一戦

    関西ラグビーリーグの注目カード、同志社大学と関西学院大学の対決は、シーズン序盤にして早くも白熱の攻防となりました。共に初戦を白星で飾り、勢いに乗る両雄のぶつかりは、昨シーズンの順位を巡る因縁も相まって、大きな山場となることは間違いありませんでした。

    同志社大学は、本来ゲームメーカーであるSO(スタンドオフ)やFB(フルバック)を務めることが多いキャプテンの大島泰真選手を、あえて14番ウイングに起用。これは、試合中に彼を本来のSOの位置に移動させ、そこを起点とした流動的な移動攻撃を仕掛けるという、相手の予測を裏切る明確な戦術的工夫でした。

    対する関西学院大学も、高校代表経験を持つ武藤航生選手、中俊一朗選手といった強力なアタッカーをバックスに要し、持ち味であるバックス陣の展開力に磨きをかけてきました。

    ◆試合展開:関学の「理想」と同志社の「苦闘」

    試合の主導権を握ったのは関西学院大学でした。彼らは持ち味であるバックス陣の展開力と、FWのモールを効果的に組み合わせ、敵陣に入れば確実にスコアを取り、理想的な試合展開を作り上げました。ディフェンス面でも、激しく前にラインを押し上げるハイプレッシャーをかけ続け、同志社の攻撃リズムを寸断しました。

    一方の同志社大学は、大島選手がプラン通りSOの位置に入りながら、移動攻撃で活路を見出そうと試みましたが、関学の激しいディフェンスの前に苦しみます。ボールを持つ機会は関学と遜色ありませんでしたが、ディフェンスの圧力からボールを前に運べない時間帯が続きました。自らのボールロストやペナルティーを犯す場面が重なり、リズムに乗れず、試合は終始関西学院のペースで進みました。

    試合は終盤まで関西学院がリードを保ち、スコア力の差が明確に表れる形となりました。しかし、同志社も粘りを見せます。後半ラスト10分にアタックを修正し、立て続けにトライを奪う修正力と地力を見せつけました。この猛追は今後に向けて大きな期待を抱かせるものでしたが、前半の失点が響き、結果は21-34で関西学院大学が勝利を収めました。このスコアは、両チームが持つポテンシャルの高さを感じさせると同時に、中盤の規律と決定力が勝敗を分ける鍵となったと感じます。

    この試合から見えてきた両チームの強みと課題を、詳細に分析します。

    ◆同志社大学:司令塔・大島の配置転換に見る「工夫」とアタックの「修正力」

    同志社大学はキャプテンの大島泰真選手を、通常SOやFBが多い中この試合では14番ウイングで起用するという意外性のある布陣で臨みました。これは、彼が本来の司令塔であるスタンドオフ(SO)の位置に移動しながら攻撃を組み立てる、柔軟な移動攻撃を軸とする狙いがあったと見られます。

    苦しんだ前半:関学のハイプレッシャーに沈黙したアタック

    しかし、前半は関西学院大学の激しいラッシュアップディフェンスの前に、同志社のアタックは大きな苦戦を強いられました。

    特に課題となったのは、セットプレーからのファーストアタックでした。ゲインラインを突破できず、厳しいディフェンスのプレッシャーからターンオーバーを招く場面が続出しました。目指していたショートサイドや逆目への移動攻撃、大島選手やFB上嶋友也選手が絡んで相手FWとのミスマッチを狙うプランは、その手前でボールを供給できずに頓挫してしまいました。

    グラウンドワークやサポートのつき方にも課題が見られ、ラックに人を割きすぎることで、次以降のアタックに厚みが欠け、さらにプレッシャーを受けやすい悪循環に陥ったと言えます。FW陣はスクラムでペナルティーを獲得するなど推進力を見せていましたが、細かな連携と立ち位置の修正が急務となりました。

    驚異の後半ラスト10分:スタイル激変が生んだブレイク

    それでも、同志社大学の真骨頂は後半ラスト10分に発揮されます。関西学院のディフェンススタイルに対し、それまでの広く深いアタックラインから大きく戦術を転換しました。

    1. 立ち位置の変更: ディフェンスに詰め切られる前にボールを繋ぐため、狭く深いアタックラインを構え直しました。
    2. 仕掛けの焦点化: ゲインラインへ接近し、トイメン(真正面の相手)へのコミットを誘いながら、ギリギリで裏のキャリアーに繋ぎ、ディフェンスとディフェンスのギャップを突くことに成功。
    3. 攻撃の柔軟性: 10シェイプ(SO周辺)中心にボールを散らしつつ、FWがキャリー後にすぐ起き上がって再度前進する「ピック&ゴー」などを織り交ぜ、相手ディフェンスラインを効果的に下げました。

    この修正力と工夫された仕掛けは見事の一言で、立て続けにトライを奪う地力を見せつけました。最終スコアでは及びませんでしたが、この猛攻は次戦以降への大きな希望となるでしょう。

    ディフェンス:高い個の能力と規律の乱れ

    ディフェンス面では、個々のタックル精度と強度は高いレベルにありました。HO荒川駿選手のジャッカル、LO林慶音選手のカウンターラックなど、要所でのターンオーバーも光りました。しかし、ディフェンス時のペナルティーが重なり、自陣深くでの厳しい展開を招きました。特にモール起点やキックカウンター後のアンストラクチャーな状況で後手に回ることが多く、ディフェンスラインを整える前に攻め込まれる展開が続きました。

    ポイントとして、アンストラクチャー後のエッジ(フィールドのサイドラインに近い部分)で、相手のラックに対してもう一歩踏み込んだプレッシャーをかけ、相手の攻撃テンポをわずかにでもずらすことができていれば、試合の流れは変わっていたかもしれません。これにより、ディフェンスラインがリロード(再配置)する時間を確保し、次のフェーズでのプレッシャーを強めることが可能になります。


    ◆関西学院大学:柔軟なポッドシステムとハイレベルな「計画性」

    勝利を収めた関西学院大学は、「柔軟性と計画性に富んだ」非常にバランスの取れたアタックを展開しました。彼らの攻撃は、個人の能力に依存するのではなく、チームとしての完成度の高さを感じさせるものでした。

    アタック:多彩なシェイプとアンストラクチャーの脅威

    関西学院のFWは、No.8小林典大選手を中心に接点での圧力を意識的に高めており、モールやシンプルな9シェイプから確実にゲインを重ねました。
    特筆すべきは、ポッドシステム(FWの集団配置)の柔軟性です。基本の1-3-3-1を軸にしながらも、状況に応じて3-3-2や1-4-2-1へと変化させ、相手ディフェンスの的を絞らせませんでした。

    最大の強みは、ターンオーバー後のアンストラクチャーアタックです。ブレイクダウンに強いFWをエッジ(外側)に配置することが多い中、関学はエッジにボールを運んだ際にバックスのみでクイックにボールをリサイクルできる点で優位性を発揮しました。これにより、テンポを落とさずに攻撃を継続し、相手がディフェンスラインを整える前に仕留めることが可能となっていました。

    SO阪井優昇選手を中心とした10シェイプから、CTB下元大誠選手へ繋ぎ、バックスラインへ展開する形も確立されており、計画性の高さが伺えました。
    ゴール前では、FWが9シェイプを中心にゴールラインへ垂直に仕掛けつつ、そのFWを飛ばして中選手や下元選手が仕掛け、裏の阪井選手へ繋ぐスイベルパスのシークエンスは、ハイレベルなボール捌きとプレッシャー下でのパスワークの賜物でした。さらに、後半には下元選手がSOに入り縦に仕掛けるなど、複数人がファーストレシーバーになれる強みも披露しました。

    ディフェンス:激しいラッシュと組織力

    ディフェンスは、代名詞とも言える激しいラッシュアップディフェンスが終始機能しました。ボールキャリアーに対して鋭く、膝下に刺さるような低いタックルを徹底し、同志社の勢いを寸断しています。アタックラインの裏に控えるSOに対しても外側から詰めてプレッシャーをかけ、組織的ディフェンスのレベルの高さを見せつけました。

    PR大塚壮二郎選手のタックル後のリアクションからそのままラックを超えてターンオーバーを起こすなど、接点での高い意識も光りました。終盤は同志社の猛攻でブレイクを許す場面もありましたが、裏のバックス陣が高いタックル精度でフォローし、一気にトライを許さない粘り強さも持ち合わせていました。


    ◆データで見る勝敗の分岐点:鍵は「22m決定率」と「規律」

    この試合の勝敗を分けたポイントは、詳細なデータからも明らかになりました。

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    最大のポイントは、同志社と関西学院が同水準の11回、12回の敵陣22m侵入回数がありながら、トライまで取り切る決定率に大きな差が出た点です。
    また、敵陣22m侵入のきっかけとして、関西学院がペナルティー獲得による侵入が多かったことは、中盤での規律の差がそのままスコアに直結したことを示しています。関西学院の激しいディフェンスによって同志社がペナルティーを誘発され、効果的に敵陣に侵入されてしまいました。

    関西学院は、中盤でのキック戦術としてハイパントを積極的に用いていました。これは単にエリアを稼ぐためだけでなく、キック後のチェイスと空中戦の優位性を活かして、ラックでのプレッシャーからターンオーバーを引き起こすという明確な狙いがありました。実際、この積極的なハイパントはいくつかの場面で機能し、同志社のストラクチャー攻撃を出させないという意味でも、有効な戦術であったと言えます。

    また、意図的にロングキックでタッチラインの外に蹴り出さず、インフィールドに残すことも狙っていました。これは、同志社をフィールド内で受け身のディフェンスに追い込み、関西学院が得意とするアンストラクチャーな状況、つまりディフェンスラインが整っていない状況を作り出す勝機を見ていたためだと推察されます。

    アタックシェイプ(攻撃の形)の面では、関西学院は比較的ワイドな展開を中心としており、10シェイプ(スタンドオフを軸とした攻撃)とバックスラインでの展開が攻撃の主軸となっていました。これは、彼らの誇るバックス陣の展開力とランニングスキルを最大限に活かすための設計図でした。

    対してセットプレー、特にスクラムやラインアウトの安定性は、この試合では同志社大学が大きく上回っており、同志社にとって数少ない有効な攻撃の起点となっていました。データ上、同志社はラインアウトからのサインプレーやスクラムでのペナルティー獲得などで優位に立っていたと言えます。

    この安定したセットプレーを活かすため、同志社大学としては、ゴール前付近でラインアウトをより多く発生させることができていれば、FW主導の強力なアタックやモールからのスコアチャンスがさらに増え、得点差を詰めることが可能だったと見えます。セットプレーで得た優位性を、いかに敵陣深くでの攻撃に繋げられるかが、今後の同志社の課題となるでしょう。

    さらに、アタックの終わり方を見ると、同志社が10回のターンオーバーで攻撃を終えたのに対し、関西学院はわずか3回。これは関学のディフェンス精度の高さだけでなく、ボールロストを避けてキックで攻撃を終えるといったマネジメント能力の差も大きく影響したと言えます。

    ◆まとめ:両雄が示した「進化」と今後の期待

    同志社大学は、キャプテン大島選手を中心とした新しいアタックの形を模索しており、後半に見せた驚異的な修正力は彼らの高いポテンシャルを証明しました。今後は、前半のアタックの精度と、ディフェンス時の規律を整えることが鍵となるでしょう。

    一方、関西学院大学は、柔軟で計画的なアタックと、高い組織力を持つディフェンスを披露し、総合力の高さで勝利を掴み取りました。特にアンストラクチャーアタックにおける完成度の高さは、今シーズンの大きな武器となりそうです。今後は、ミドルゾーンでテンポが遅れた際の攻撃のバリエーションがどう進化していくのかに注目が集まります。

    この伝統の一戦は、両チームが更なる進化を遂げていることを示しました。関西ラグビーリーグの行方を占う上で、非常に重要な一戦であったことは間違いありません。

    では。

  • 【マッチレビュー】2025ニュージーランド代表対フランス代表第1戦

    【マッチレビュー】2025ニュージーランド代表対フランス代表第1戦

    不運な状況でも掴んだ勝利

    みなさんこんにちは
    暑い中いかがお過ごしでしょうか

    さて、今回は日本時間7/5に行われたテストマッチから、ニュージーランド代表対フランス代表の試合について、レビューをしていきたいと思います

    それでは順番に見ていきましょう

    ニュージーランド代表のラグビー

    テンポを上げる様相を見せていた

    ニュージーランドは、コーチの試合前の発言通り、テンポを重視したラグビーをしていました
    SHからの球出しも早く、素早くセットしてアタックのテンポを上げようとする様子が見られています。

    テンポを上げるメリットとして、相手のセットよりも先に攻撃を繰り広げることができるという点があります。
    相手よりも先にセットをしてアタックをすることができれば、位置的な優位性や数的優位性を活かしてアタックをすることができます。

    ニュージーランド代表がテンポを意識していた傾向の証左として、球出しの速さの他にも「ピックゴーを多く用いていた」という様相があります
    ピックゴーはパスを介さずにダイレクトにラックからボールを持ち出す動きで、タイミングと状況が整えば後ろに下げるリスクを負うことなく前に出ることができる手段でもあります

    SHに入ったキャム・ロイガード選手とコルテツ・ラティマ選手はともにテンポを上げることのできるSHで、自分でボールを持ち出したりと攻撃的な様相も見せています
    ラックの周辺にポジショニングしているFWの選手に対して、SHという特性を活かしたアタックをすることで、ミスマッチをつくことができるという特徴もありました

    ポッドを中心としたアタック構造

    アタックの起点となるのは、ラックからボールを受ける3人の選手によって構成される9シェイプで、基本的に中盤には3人の選手によるポッドが二つ配置されます
    多くのフェイズではこれらの基本的な構造を用いてアタックをしていました

    ただし、注意したいのは必ずしも3人のポッドだけでアタックを作り上げているわけではないという点です
    10シェイプにおいては、特にテンポをあげてバックラインを使おうとする時などに、2人の選手でポッドを完結させるようなシーンも見られていました

    また、ジェネラルなシーンでもポッドの人数は可変的で、FWの配置の人数が変わるというよりも、BKの選手が参加することで人数が変わっているシーンが見受けられました

    12番のジョーディ・バレット選手や13番のビリー・プロクター選手は、ポッドに対して第3・第4の構成員として参加しています
    ポッドに参加する位置はフェイズによってまばらで、中央に位置することが多い一方で、端に位置するシーンも見られていました

    CTB陣がポッドに参加するメリットとして、(基本的に)ハンドリングに長けたBKの選手をポッドに組み込むことによってアタックを安定化させることができます
    また、ポッドの一員としてCTBの選手を組み込むことによって、さらに外側でポッドを作ることもできるので、ポッドの数を増やしてバリエーションを作ることができるという側面もあります

    そういったBKの選手を組み込みながら、ポッドは4人や5人で構成されているシーンもありました
    後述するフランス代表のポッドでも似たようなシーンが見られていましたが、ニュージーランド代表の方はBKが中央にポッドをスプリットするように参加する形で、ポッドにボールが渡ってからのオプションを増やしていました

    プレイメーカーによるゲームコントロール

    ゲームのコントロールをしていたのは10番のボーデン・バレット選手と(不運なことに前半すぐに交代出場した)23番のダミアン・マッケンジー選手でした
    両者はスーパーラグビーで共に10番をつけている選手で、プレイメーカーとして早い段階でボールを受けてコントロールしていました

    両選手ともに判断に優れた選手ですが、特にボーデン・バレット選手は自分の判断の優先順位が上がった際にはポッドを破るように前に出ながらアタックラインに参加するようなシーンもあります
    マッケンジー選手はどちらかというと少し後ろ重心のアタック参加で、少し空間があるような状況でボールを受けているように見受けられました

    また、2選手を含むバックスラインが安易に順目に回らないようにしているシーンも見られていました
    特にゴール前でのアタックシーンにおいて、BKの選手は比較的ラックに近い位置どりをしながら滞留し、状況判断でチャンスと見た場合には展開してアタックラインを形成していました

    どちらのサイドにも動的にアタックラインを作ることができる状況を準備することによって、相手のディフェンスに対して後出しでセットをすることができます
    特にサイドを切り替えながら動的にアタックラインを作る「スイング」という動きにコンパクトに繋げることもできるため、より意思決定と状況判断に応じた動きであると言えます

    フランス代表のラグビー

    特徴的なポッドによるコントロール

    基本的にはこの特徴に尽きるようなラグビー構造に見えました
    各選手のロールは似通ったものも多く、明確な位置関係・役割の分担があるというよりは、瞬間瞬間の最適解になる選手が定められたポジションに移動するというような形をとっていたように感じます

    フランスのポッドの特徴は、極めて流動的で余白のある構造をしていることです
    基本的な構造としては3人構成を中心としながらも、多くのシーンで4人から5人、多い時は6人ほどの集団一直線上に並んだような構造をしています

    果たしてポッドと呼ぶのが正しいのかわからないような構造をしていますが、ここではポッドと呼ぶことにします
    フランスのポッドはフェイズによって人数が変わり、わかりやすく尖った形というよりは、線形の構造をしています
    イメージとしては、バックスラインに対してFWのフロントラインが傘のように被さっている状態です

    おそらくアタックの中心になっているのはポッドを使った個々のスキルや優位性を使ったキャリーで、ポッドを使ったキャリーでいかに前に出るかといった点の重要度が高いラグビーをしています
    あえて言及するのであれば、「FWで縦を突き、BKで横に広げる」といった極めてクラシカルな構造かもしれません

    このポッド構造には、BKの選手が参加することもあります
    12番のガエル・フィクーや13番のエミリアン・ゲイルトンは、テンポの加速に合わせてフロントラインに立つようになり、フロントラインとバックラインの境界が曖昧になるようになっていました

    シーンによっては11番のギャビン・ビリエールが参加するようなシーンも見られています
    しかし、ポッドに参加する際にBK特有のロールがあるようには感じられず、あくまでもポッドを構成する一選手としてのプレーに徹していたようにも感じます
    そのような点で、選手たちのロールは似通っていました

    ポッド内のプレースタイル

    また、ポッド内のパスワークが多様だった点についても注目しています
    基本的にポッドの中のプレースタイルとしては、そのまま自身でキャリーに持ち込むか、一つ横の選手にパスをする、またはバックラインに対してスイベルパスをする、といった形が考えられます

    フランス代表は、このパターンの中で「パス」に特化したプレイングを見せていました
    スイベルパス自体はそう多くはなかったように感じていますが、ポッドの中でパスを使って打点を切り替えるという点において、他の国にはあまり見られないようなバリエーションを見せていたように思います

    まずは基本となるティップオンパスですが、こちらもある程度「好んで用いている」くらいの頻度で見られていたように感じます
    こちらのパスは打点を切り替えることに活用されており、相手とコンタクトする直前でパスを出すことで1対1を安定して作ることができていました

    また、特徴的だったのはポッド内のミスパス、いわゆる「飛ばしパス」と呼ばれるパスを見せていたことです
    基本構造である3人ポッドであればなかなか活用が難しいミスパスですが、フランス代表は4人以上のポッドも多く用いており、多くの選択肢を同時多発的に準備することでパスのバリエーションも増やしていました

    特にポッドの外を見ているニュージーランド代表のディフェンスにとっては、裏に立つバックラインへのフォーカスも切らすわけにはいかず、フロントラインの中で大きくボールが動くことによって完全に崩されるようなシーンも見られていました

    まとめ

    ニュージーランドとしては、少し物足りない結果といったところでしょうか
    近年苦戦していた相手ということもあり、「マストウィン」が求められる試合だったと思います

    今回の試合では勝利を収めることができましたが、フランス代表のメンバーがノンキャップの選手が多かったこともあり、もう少し圧倒したかったかもしれません
    まだ今後も試合があるので、注目していきたいところです

    それではまた