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  • 【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園決勝:京都成章高校対桐蔭学園高校

    【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園決勝:京都成章高校対桐蔭学園高校

    「構造とデザインのぶつかり合う、戦略の最前線」

    みなさんこんにちは

    今年も高校生による熱戦が終わりました
    1/7に行われた高校ラグビーの最高峰、花園の決勝は、3連覇を狙った桐蔭学園高校が36対15という得点で京都成章高校を破り、3連覇を果たすという大会の終わりとなりました

    この接点の強度をシステムとして強みにすることで相手を打ち破ってきた、「構造化されたラグビー」得意とする桐蔭学園。緻密に練り上げられたサインプレーで強敵を破ってきた「デザイン化されたラグビー」を得意とする京都成章。

    今回は彼らのラグビーがどういった駆け引きのもとで行われ、そして何が勝敗を分けたのかについて見ていこうと思います。

    桐蔭学園のラグビー

    <ポッド戦略>

    桐蔭学園のアタックは1-3-3-1をベースにして、そこから大きくポッドの配置を切り替えることなく終始した戦略をとっていました。中央付近で3人ポッドを作ることでラックを安定化させ、アタック全体をリズムよく運ぼうとする狙いが感じられます。

    9シェイプに関しては、一般的な三角形のポッドとステアポッドを使い分けるような形で活用しており、9シェイプから裏にパスを通すようなシーンは少なく見受けられました。その代わりに、アタックを展開する時は10を起点に一気に動かすような形で、その時はポッドを経由することなく素早くボールを動かしていました。

    また、この3人ポッドの多くにはBKの選手が参加していることもありました。特定の選手が何度も参加しているというよりも、さまざまなBKの選手がバランスよく、近くにいる選手へのサポートという形でラックを形成していました。

    そのため極端な話で言えば、3-3-3-3のように、3人組のポッドが数多く並んでいるシーンも見られていました。グラウンドを縦方向にレーンに分けることで各ポッドの参加位置を大まかに固定し、ポッドでラックを作った選手がそのまままっすぐ下がることで、不要な移動をせずにアタックラインを構成している様子が見られました。

    3人ポッドは必ずしも熱心に順目方向に回り込むような動きは見せず、サポートに回るというよりは、次のポジショニングをする準備をしているような様子でした。

    9シェイプではこのような傾向がありましたが、10シェイプは少し流動的な形で、決められた3人組のポッドだけではなく、流れの中で近くの選手たちが、3人1組にまとまってポッドとしてラックを完結させるようなシーンも見られていました。

    <キーになった接点>

    桐蔭学園のアタックのキーになったのは、何よりもその「粘り」です。どの選手もタックルによって一発で倒されることがなく、数歩の間粘って立ち続けることで、サポートの選手が体を寄せてハンマーに入ることで、さらに前に出ることに成功していました。

    また、一人一人が粘ることによって、サポートの選手が少し遅れても相手にボールに絡まれたりすることなく、安定してラックを作ることができていました。キャリアーとなった選手の体の使い方も上手く、上手く体を捻って相手の圧力をいなすことで、タックルを受けた後でも相手をずらして前に出ることに成功していました。

    そのため、9シェイプの多くで前に出ることができ、無理にパスを重ねて展開をしなくても、(ミスがない限り)連続して前に出ることができるという状況を作っていました。アタック自体は非常にシンプルでしたが、接点の強さが担保されており、シンプルな構造ながら前に出ることに成功していました。

    接点の観点で効果的だったのは、ピックゴーでのキャリーも挙げられます。単純に接点が強いので、ボールを下げずにキャリーができるピックゴーとの相性が非常によく、ゴール前といったディフェンスが非常に堅くなるようなシーンでも、高い確率で前進を果たし、連続攻撃でトライを奪っていました。

    誰かがラインブレイクをして大きく前に出た後も、ピックゴーが効果を強力に発揮します。桐蔭学園の選手は判断が非常に良いため、ラインブレイクしたことでラックの近くに相手選手が薄いと見るや否や、素早くピックゴーの持ち込んで、モメンタムを殺すことなくキャリーをすることができていました。

    また、このピックゴーが一つの選択肢となって相手を惑わし、ビッグゲインの後に相手がラック際を固めてきた場合、素早くサポートに入った選手が持ち出すふりをしながら大きく展開をすることで、スペースを効果的に攻略することができていました。

    <キックとエリア戦略>

    桐蔭学園と京都成章の試合では、高いレベルでのキックの蹴り合いを見ることができました。後述するようにポゼッション回数が多くなるということは、キックポゼッション、つまりキックの蹴り合いで一時的に保持するポゼッションが多かったということが推測できます。

    桐蔭学園は、Bゾーンに入ればある程度こだわって連続したアタックを狙いますが、中盤では効果的にボックスキックを蹴るフェイズも見られています。再獲得を狙いながらプレッシャーをかけ、相手のミスを誘ったり、エリア自体を押し込むことに成功していました。

    ロングキックによるエリアの取り合いの観点から見ても、桐蔭学園のキックはしっかりと距離が出るため、エリア的に押し込まれずにタッチに蹴り出すことができます。相手のキックが自陣22m内に入っても、丁寧に蹴り出すことによって、エリア的にイーブンとなるハーフライン近くまで蹴り出すことができていました。

    キックの観点で言うと、見逃すことができないのが後半20分に生まれたドロップゴールです。リズム自体がよく、そのままアタックをしてもスコアをすることができそうな状況でしたが、桐蔭学園は、ここでドロップゴールを狙ってきました。

    このキックの狙いは確実には読めませんが、10対26という点差の状態における、スコアによる精神的プレッシャーをかけることを目的としていたことが予想できます。

    京都成章は、準決勝の東福岡戦でも、緻密に練られたサインプレーを用いて一発でトライを取ることを得意としていました。つまり、短いポゼッションで、スコアをすることができるチームであるということです。

    残り時間は10分+ロスタイムとなっていましたが、それくらいの時間があれば、京都成章は十分に得点差をひっくり返すだけの実力があったでしょう。しかし、ここでドロップゴールを決めて19点差にすることで、点数で圧力をかけるとともに、アウトオブプレーにすることで時間をさらに消費することもできていました。

    京都成章のラグビー

    <ポッド傾向>

    京都成章のポッドは少し特徴的で、特別なサインプレーをするときの特殊な人数比もありますが、基本的には4人ポッドを2つ並べることを好んでいます。

    4人ポッドを一度当てこみ、その次のフェイズで別の4人ポッドを当て、さらに次のフェイズでは最初の4人ポッドを当てるという、ピストンアタックと呼ばれるような動きを、グラウンドの中央で多く行っています。

    これは、4人ポッドという密度の高いポッドを中央で使うことでディフェンスを寄せ、外方向に数的優位を作ってから一気に展開するという形をゴールとしています。4人ポッドに対してディフェンスが薄いと、4人ポッドの面としての強さで前に出やすくなるため、ディフェンスとしてはある程度人数を割かざるを得ません。

    また、ある程度一定のリズムであると意識させた状態から、4人ポッドの3人目にパスをだし、そこからスイベルパスで裏に立つプレイメーカーにボールを供給する形も見られていました。残る1人はブロッカーとなって囮となったり、少し遅れて走り始めることで、プレイメーカーからのパスオプションになったりしていました。

    <特徴的なサインプレー>

    京都成章の強みは、練り上げられたサインプレーによる一発でトライまで持ち込むことのできる爆発力です。今回の試合でも、いくつかのサインプレーが見られました。

    特に強力なのが12-13のCTB陣から裏に回り込む10番の岡元聡志へのスイベルパスで、外方向に一気に振り切り、最後は走力のあるWTBが走り切るといった形です。

    12番の森岡悠良と13番髙萩誠人は個人としても突破力がある選手であり、桐蔭学園側としては、ディフェンスを切れない相手です。その2人がしっかりと相手を寄せることによって、外に膨らみながらボールを受ける岡元が、相手を振り切って外に移動できていました。

    また、特徴的な動きとしては、バックスライン全体がスイングする「ロングスイング」によって一気に数的優位を作り出し、安定化させたラックから大きく動かすことによって、最後は外で相手を振り切るという形を作っていました。

    <ディフェンス傾向>

    京都成章のディフェンスは、「ピラニアタックル」と呼ばれるほど精度が高く強力で、鋭く低くタックルに入ることで、相手の動きを封じ込めることに長けています。桐蔭学園が武器としていた9シェイプでのキャリーに対しても、ある程度の精度でタックルで止めることができており、苦戦はしていましたが、いいタックルの様相を見せていました。

    バックスラインのような選手間の距離が広いようなシーンにおいても、しっかりとダブルタックルで止めることができています。その後、ブレイクダウンへのプレッシャーでターンオーバーしたりと、堅いディフェンスから相手ボールを奪うまでの一連のフローがしっかりと整備されていました。

    しかし、苦戦した要因として、桐蔭学園のキャリアーの粘りがあります。相手が簡単に倒されずにサポートをつけながら徐々に前に出てくるため、ディフェンスは細かいポジショニングの調整をする必要が出てきます。ポジショニングの調整をしている間にも桐蔭学園がアタックを開始しているため、ディフェンスがで遅れるシーンが見られていました。

    また、全体が揃って上がるディフェンスがベースにある分、誰かがズレて突出してしまうとオフロードパスなどですれ違われるといったリスクも露呈していました。前に出る勢いがある分すれ違われるとカバーが遅れてしまうことも多く、一度それで大きなゲインを許していました。

    <勝負を決定づけたシーン>

    勝負を決定づけた要因としては、攻守ともにキックに関連した要素だったと言えるでしょう。

    まず、キックオフレシーブを安定して確保することができず、失ったポゼッションがあります。基本的にキックオフを蹴り込まれるときは最初のキックオフ、またはスコアをした後の相手のキックオフであり、本来であれば安定して獲得して、脱出することでエリア的にイーブンに持ち込みたいところです。しかし、キックオフでのミスが数度あり、ポゼッションを桐蔭学園に譲る結果となっていました。

    また蹴り込んだ、または蹴り込まれたパント系のキックに対して、安定して確保することができなかったことの影響も考えられます。京都成章から蹴り込むキックでは相手にプレッシャーをかけ切れず、タックルはできてもミスが誘えないような状態になっていました。

    最後に決定的だったのは、相手のトライにつながった2回のキックチャージです。こればかりは運の要素もあるかとは思いますが、安定した脱出をもたらすはずのキックが一転して相手のスコアにつながってしまい、スコアボード上でも精神的にも動きが大きかったように思います。その後のキックの蹴り合いでもボールデッドになってしまうなど、ミスキックが重なっていました。

    ゲームスタッツを確認する

    それでは、スタッツを確認していきたいと思います
    まずは京都成章のものからです

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    気になるのは圧倒的に相手に上回られたポゼッションです。45%程度であれば上回れていてもいい試合に繋げることができますが、今回の試合では京都成章のポゼッションは34.1%にとどまりました。ポゼッション回数自体はそこまで少なくはないですが、一つ一つのポゼッションの時間が短い、つまりキックがアウトカムになるポゼッションが多かったことが予想されます。

    ここまでポゼッションに差があると、いくら京都成章が短い時間で一気にトライを取ることができるチームといえど苦しい試合展開になることは簡単に想像できます。ポゼッションが少ないと敵陣でのプレー時間も減り、チャンスが少なくなるからです。

    キャリーとパスの比率を見ると、全体的に少しキャリー優位の試合展開であったことがわかります。パス回数が少なく、9シェイプをベースにアタックをしていたことが想像できます。東福岡戦ではもう少しパスの比率が大きかったので、苦戦したのか狙ってか、キャリーに重きが置かれたラグビーであったことがわかります。

    キャリーとキックの比率を見ても、東福岡戦からさらに小さい数となり、キックを多く用いていることがわかります。東福岡戦の時点でもかなり戦略的にキックを用いていましたが、今回の試合ではキックゲームによるエリアの取り合いの様相が強く、キックの割合が増えていました。

    また、ラインブレイクに比率は極めて低い数値となっています。東福岡戦での数値と比べると、倍以上のコスト、キャリーを必要としていることがわかります。特殊なサインも今回の試合ではそこまで目立っては見られず、シンプルな勝負の土俵に乗っていたかもしれません

    次に、桐蔭学園のものを見ていきましょう。

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    桐蔭学園の決勝、ひいては準決勝の試合展開からわかることは「圧倒的なボール保持率」です。これ以上は遡ることができませんが、少なくともこの2試合に関しては圧倒的なポゼッション保持率を見せています。

    しかし、大阪桐蔭にはサインプレーで一発で取られて苦戦したりと、相手にポゼッションを与えなくても敗れることになるリスクというのも認識していたかもしれません。その結果として、キーになったドロップゴールの選択肢など、スコアを重視していた様子が見受けられました。

    敵陣22m内への侵入効率も非常に良く、走力のあるBKによるラインブレイクや、FWの選手たちによる地道な前進によって侵入を果たしたりと、攻撃的に侵入を果たしていました。8回の侵入に対して5トライとトライ効率も高く、非常に「いいラグビー」ができていたと言えるでしょう。

    キャリーに対するパスの比率はほぼ1という数値をとっており、これは極めて異例な数値であるといえます。キャリーにかなり偏った数値であり、パスを介さないピックゴーを多発していたことがこのような数値になっていた理由になることでしょう。

    まとめ

    桐蔭学園は組織としての強さを備えながら、個の力で前に出る、というシンプルな構造でポゼッションを支配的に進めました。その過程の中ではミスも少なく、相手に常にプレッシャーをかけ続けながら試合をコントロールしていました。

    京都成章は準決勝をデザイされたプレーを駆使して勝ち上がり、決勝でも戦術的なバリエーションを豊富に見せていました。しかし、接点というラグビーの土台になる部分で相手に全身を許し、細かいプレーのミスで勝負の天秤は傾いたように見えました。

    今回の試合は、京都成章の緻密にデザイン化されたラグビーを桐蔭学園の組織・個の力が上回った試合であるといえます。今年の熱戦を経験した選手たちが、来シーズンはそれぞれの場所でどのように活躍するかが、現時点でも楽しみに思えます。

  • 【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園準決勝:東福岡高校対京都成章高校

    【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園準決勝:東福岡高校対京都成章高校

    「緻密な戦略性と、強烈な個々の力」

    みなさんこんにちは
    昨年12月から始まった高校ラグビーの全国大会、「花園」も準決勝まで終わり、残すは決勝を残すのみとなりました
    今回は、準決勝2試合のうち、東福岡高校対京都成章高校の試合について、振り返っていきたいと思います

    東福岡のラグビー

    東福岡のラグビーは、簡単にまとめてしまうと「シンプルな構造と個々のスキル」によって動くラグビーであるということができます。複雑な動きやサインは少なく、一つ一つの接点やシーンごとに相手との小さな勝負が起きるといったものです

    基本的なポッドの構造としては、エッジからポッドを1-4-2-1の比率で配置した基本的な構造に、中央の4人ポッドから浮いたFWの選手が次のポッドへ参加することで、一つ一つのポッドの人数を担保するような形をとっています

    この4人ポッドの形が特殊で、一般的な三角形のポッドに1人プラスされるような形のポッドになっています。形を表現するのであれば、まるで「へ」というひらがなの形をしています。

    この4人ポッドの活用の形としては、基本的に突出した中央の1人に対してSHからボールが供給されます。次いでその選手から外方向にティップオンを送っていくような形です。ティップオンのオプションは一回だけではなく、二回連続で行うことで相手ポッドディフェンスの端の選手までしっかりコミットしながら外方向にチャンスを生み出すような形をとっています

    一回のティップオンのみではずらしきれないシーンに対して、二回めのティップオンやキャリーした後のオフロードパスを使うことでゲインしやすい構造になっていました

    ただ、ポッドの活用の部分で気になった部分としては、9シェイプや10シェイプがラックに対してかなり深い位置関係を作っており、京都成章の鋭く出足のいいタックルに捕まってしまうことが多かったという点です。下げるパスが多い分京都成章のディフェンスラインのプレッシャーでかなり下げられてしまっていました。

    また、9シェイプから裏のラインに下げるようなパス、スイベルパスを使うような場面でもポッドの選手がどちらかというとスタンディングの状態でパスを放るような形をとっており、スライドディフェンスも丁寧に使ってくる京都成章のディフェンスに対して圧力を受けていました。

    これらのポッド動きから、後方から外方向にかけて存在するアタックラインは基本的にはシンプルで、ポッドの裏の層がそのままアタックラインになるような形です。オプションとしてはカットインやカットアウトといった個々のレベルでの対応にとどまっており、シングルラインを崩すような形のものはなかったように見えました。

    この過程の中で数的優位を動的に作るような形もそこまで多くはありません。9シェイプを繰り返し中盤で使うようなフローで相手を寄せようとしていましたが、なかなか相手が寄り切ったようなフェイズは少なく、苦戦しながらのアタックが続いていました。

    そんなアタックの中では個々のランニングスキルや接点の強さといった要素は東福岡の強みとなっており、個人的にいい動きを見せていたように感じた選手としては、14番の平尾龍太選手や、8番の須藤蒋一選手がアタックの中でキーになっていました。

    一方で、個人の勝負に依存しているような様相もあり、システムとして相手を崩すことができたようなシーンがそう多くはありませんでした。結果として、相手を崩す動きに再現性がなく、崩すことができても単発のものになってしまっていました。

    京都成章のラグビー

    京都成章のラグビーを言語化するのであれば、「高度な戦術によって相手を一発で崩すラグビー」ということができます。細かなものからビッグプレーまで、さまざまな戦術的要素を用いて相手を崩そうとしている様子が見られました。

    特に強さを発揮したのがセットプレーからの一発でトライまで持ち込むことができるサインプレーです。表と裏の動きを工夫したさまざまなバリエーションのあるアタックを作り上げており、東福岡の構造をしっかりと分析した上で、精度良くギャップを狙うことができていました。

    構造の中で有効活用されていたのがスイングという一連の動きです。スイングというのは、ラックを挟んで逆方向に振り子のように動きながらアタックラインに参加する動きで、京都成章は10番の岡元聡志が主体となって左右に移動しながらアタックラインを作っていました。

    スイングのメリットとしては、後出しでアタックラインの人数を切り替えることができるため、ディフェンスラインからするとノミネートがずれてしまったり、数的に不利な状態になってしまいます。京都成章はこのずれに対して一発でブレイクをできるような準備を整えてきており、何度も構造的にブレイクすることでトライを生み出していました。

    基本的な構造、というとうまくまとめられなくなってしまうほど、京都成章は多くのポッド構造を使っていました。簡単にあげるだけでも、「2-3-2」、「3-4-1」、「1-3-3-1」など、同一ポゼッションの中でも選手の配置を流動的に入れ替えることでポッド内の人数を調整していました。

    最も特徴的だったのは、簡単に言えば5人から6人の人数をかけたポッドで、SHの佐藤啓護選手の長いパス距離を活かしてラックから遠い位置に立つ選手にパスを出す形です。そのパスを受けた選手はそこからスイベルパスで裏に立つプレイメーカーの選手にパスを出すことで、外方向の数的優位を効果的に使っていました。

    その構造の中でいい働きを見せていたのが8番の南川祐樹選手です。いい体格をしていて走力があり、多くに人数をかけたポッドの次の構造として、エッジでのラインブレイカーとして作家していました。構造の過程の中で外では3対2くらいの数的優位が生まれており、少しでもスペースがあれば、南川選手がしっかりと前に出ることができていました。

    特徴的な戦略としては、早い段階からキックを主体にカオスな状況を作っていたことも挙げられます。Bゾーンのようなチャンスが生まれやすい場面であっても、そこまで無理することなく、SHの佐藤選手からボックスキックを蹴り上げて再獲得を狙っていました。

    再獲得の頻度としてはそこまで多くはなかったですが、京都成章がキックチェイスのディフェンスの精度が非常に高く、相手をセミストラクチャーの状況に追い込むことができていました。セミストラクチャーの状態であれば京都成章の質の高いディフェンスラインを作ることができるので、東福岡の個々の力を抑え込むことに成功していました。

    これまで述べてきたように京都成章のディフェンススキルは非常に高く、高校生らしい低いタックルと、質の高いディフェンスラインの整備によって東福岡のアタックを封じ込めていました。1対1の場面でしっかり低く入ることができているので、相手を素早くテイクダウンすることができ、接点に強いFWの選手に時わりと前に出られることも減らすことができていました。

    スタッツを振り返る

    それでは順番にスタッツを振り返っていきましょう。

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    東福岡のスタッツを確認していきます。

    ポゼッションを見ると、試合通じて19回という数値を示していますトップカテゴリーの40分よりも1試合の時間が短いということを差し引いても、このポゼッションの回数は少ないということができるかと思います。

    このような回数になった要因として、わかりやすい要素として「ポゼッション一回あたりの平均継続時間が長い」ということが挙げられます。京都成章の数値も大きかったですが、東福岡は1つのポゼッションあたり44.9秒と、大学やリーグワンの倍近い数値となっています。キックの回数が少ないことで一つ一つのポゼッションが長くなり、全体としてポゼッションの回数が減った、ということが考えられます。

    キャリーに対するパスの比率は1.88とかなりパス回数が多い比率を示しています。このことから、東福岡はポッドではなくアタックラインを多く使うようなアタック傾向を示していることがわかります。単に9シェイプや10シェイプを使うようなアタックをしていれば、この数値は1.3~1.5あたりの数値に収束するからです。

    ラインブレイクに対するキャリーの比率は22と、極めて効率が悪いということができます。単純計算で22フェイズに一度のみラインブレイクが起きているということなので、なかなか相手のディフェンスラインを崩すことができていなかったことがわかります。ただ、ゴール目前まで迫ることさえできればトライに繋げることができていたので、いかにゴール前まで入るか、というフローの重要性がわかります。

    また、ターンオーバーの回数が京都成章よりもはるかに多くなってしまったことの影響も大きかったかもしれません。京都成章が大きなリードを奪ったことで東福岡はリスクを抱えたままアタックを続けなければいけませんでした。その結果としてミスが増え、さらに京都成章にボールを保持されるという悪循環に陥っていました。

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    次に京都成章のデータについても振り返っていきましょう。

    京都成章のポゼッション回数は25回と、東福岡よりも多い回数となりました。しかし、一回のポゼッションあたりの継続時間が東福岡よりも10秒ほど短かったため、全体的なポゼッション比率に関してはほぼ同程度という結果になりました。

    何度ポゼッションを保持するごとに敵陣深くに入っているかという指標を見ると、東福岡と京都成章はほぼ同程度のスタッツを示しています。しかし、その侵入効率の中で京都成章は6トライ、東福岡は3トライという結果になりました。京都成章は敵陣不覚への侵入回数自体が7回であるにも関わらず、6回のトライという非常に高い効率でスコアをしていました。

    パスに対するキャリーの比率は1.43と、一般的な水準に落ち着いています。逆に言えば、高校生であるにも関わらず、大人のようなラグビーをしているということができます。まるでトップカテゴリーの選手のような、戦略的にラン・パス・キックを組み合わせたラグビーを見せました。

    また、キックに対するキャリーの比率は4.63とかなりキック優位のデータとなっています。リーグワンの平均よりも少ない数値となっており、こちらに関しても冷静にキックを用いた戦略を用いていたということができます。

    ラインアウトもスクラムも安定しており、セットピースからのサインプレーが大きな影響をもたらしたこの試合に関しては、セットピースの安定は最低条件でもありました。

    まとめ

    高校生とは思えない戦略的ラグビーを見せた京都成章と、個々の力をうまく使えるような工夫をしてきていた東福岡の試合は、緻密なサインプレーで何度もブレイクした京都成章が上回る結果となりました。

    残すは決勝のみ、京都成章と桐蔭学園の試合となります。しっかりと見届けていきましょう

    それではまた!

  • 【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園準々決勝

    【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園準々決勝

    4強が魅せた「戦術の極み」と、至高の準決勝展望

    高校ラグビー界の頂点を決める戦いは、いよいよ佳境へ。 準々決勝4試合は、フィジカル、緻密な戦術、そして意地がぶつかり合う激闘の連続でした。勝ち上がった東福岡、京都成章、大阪桐蔭、桐蔭学園。この4校はいかにして勝利を掴んだのか?そして、聖地・花園で次に待ち受ける「準決勝」の勝負の鍵とは?

    独自の視点で分析したマッチレポートと、次戦の見どころをお届けします。

    第1試合:東福岡 vs 東海大相模

    東福岡の特徴

    「1-4-2-1」システムを採用し、グラウンド幅を広く使うワイドアタックが最大の武器になります。特にミドルゾーンではSOが深い位置からランで仕掛け、呼応した両サイドのFWや、順目・逆目から移動してくるBKが重層的なライン(ダブル・トリプルライン)を形成し、空いたスペースを攻略しました。

    また、「1-3-3-1」のポッドでは、中央のFWが縦に走り、その裏を内側のFWが走りアウトサイドキャリーする形は特徴的でした。12番がブレイクダウンに入りリサイクルすることで、エッジにペネトレーターとなるFWを配置し、ブレイクを狙いました

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    東海大相模の特徴 

    大学生にも劣らない平均体重を誇る、強力かつ大型のFWが魅力。セットプレーやゴール前のモール、近場の突進(リモール)で強烈な圧力をかけ、相手ディフェンスをパワーで粉砕するスタイルを持ち味としました。後半途中まで、リードを奪った実力はレベルの高さに驚かされました。モールを軸に22mからペナルティーを獲得し、ゴール前での工夫されたモールのセットアップは圧巻でした。

    中盤でもSO基点に動かすムーブが特徴的でした。ただ、エッジでシングルラインになる瞬間があり、東福岡DFにとって絞りやすくなり、ターンオーバーを取られてしまう場面も見られました。

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    試合を分けたポイント 「対応力とブレイクダウンの修正」

    序盤は東海大相模のFW圧力に苦しむ場面もありましたが、東福岡はブレイクダウンで激しく絡んでターンオーバーを連発。後半になると、東福岡のワイドな展開と個々のランニング能力に対し、東海大相模のディフェンス対応が遅れ始め、ラインブレイクが多発しました。拮抗した試合でしたが、僅かにDFの修正力とスコアへの決定力が東福岡が上回った点だと言えます。


    第2試合:京都成章 vs 御所実業

    京都成章の特徴

    ポッドを軸にしつつも、一連の流れ(シークエンス)を重視した変幻自在のアタックを展開。「9シェイプ」に3〜4枚を配置し、ギリギリまで接近してからのポッドのバックドアへのスイベルパスなど、「的を絞らせない」攻撃が光りました。1stレシーバーにCTBが入り、ギリギリまでキャリーとパスをオプションに持つことで、DF側の混乱を起こしていました。

    さらにゴール前では、中央にポイントを作りつつ逆目に10番・15番が待ち構える縦走的なアタックで、内側のディフェンスを飛ばして大外で取り切るなど、戦術レベルの高さを見せつけました。DFでは、 伝統の「ピラニアアタックル」による鋭い出足のディフェンスも健在。飛び出さず、DFのチェーンを切らさず、ラッシュをかけるDFは、御所実業の強みであるターンオーバーを許さず、攻守に圧倒しました。

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    御所実業の特徴

    御所実業は強固なディフェンスからのターンオーバーを起点とするチームです。アタックでは「1-4-2-1」を用い、4枚のFWポッドから逆目のBKを囮にして大外へ運ぶなど工夫が見られました。4枚FWが並び、3枚目のFWからバックドアへ展開し、そこからエッジへ運びブレイクを起こすシーンには、戦術のレベルの高さを感じさせました。

    ただ、この試合ではポゼッションを確保するのに苦労し、キックゲームへと持ち込めずに、テリトリーも押される時間が長くなり、苦戦しました。

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    試合を分けたポイント 「リサイクルスピードとポゼッション支配」

    京都成章のアタックにおけるブレイクダウンのリサイクルスピード(球出し)が非常に速く、SOの素早い意思決定を後押ししました。これにより御所実業は得意のターンオーバーを起こす隙を与えてもらえず、守勢に回る時間が長くなったことが勝敗を分けました。


    第3試合:大阪桐蔭 vs 國學院栃木

    大阪桐蔭の特徴

    「1-3-3-1」と「3-3-1-1」を状況に応じて使い分ける柔軟性と、攻守の切り替え(セットアップ)の速さが際立ちます。ゴール前では強力なモールに加え、ラックサイドを執拗に突くピック攻撃で中央に寄せ、空いた逆サイドを仕留める精度の高さを持っています。特筆すべき形を挙げれば、10,12が横並びにたちながら、12が1stレシーバーとなり内側から10番がバックドアへ入り12番からパスをもらい、エッジへ供給する形が印象的でした。キックを軸にエリアを取りながら、ポゼッションでもチャンスメイクできるチーム力の高さを感じさせました。

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    國學院栃木の特徴 

    ハイパントを有効活用し、再獲得から攻撃を組み立てるスタイルです。エッジ攻撃ではトリプルラインを形成して数的優位を狙うなど工夫を凝らし、ポゼッション(ボール保持率)では相手を上回る時間を多く作りました。オープンサイドへの数的優位を作ることがうまく、折り返しのラックに参加していたバックスがオープン側へ移動し、スタックオプション(縦に並び、外側へ広がってもらう)を持ち、相手のノミネートミスを誘いました。

    ただ、今回の試合では大阪桐蔭サイドのDFが内側からの「壁」を崩さず、スライドし続けたことでトライまで取り切る場面があまりありませんでした。

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    試合を分けたポイント 「セットアップの速さとゴール前の規律」

    國學院栃木は多彩なアタックを見せましたが、大阪桐蔭の驚異的なセットアップの速さがそれを上回り、決定的な崩しを許しませんでした。一方、ゴール前での攻防において、大阪桐蔭がモールや近場の肉弾戦で確実にスコアしたのに対し、國學院栃木は要所で差し込まれたり、キック処理のミスからエリアを失ったりした点が響きました。両チームの高度な駆け引きに驚かされました。


    第4試合:桐蔭学園 vs 東海大大阪仰星

    桐蔭学園の特徴 

    選抜優勝校らしい、隙がなく完成度の高いラグビーを見せました。ボックスキックやコンテストキックを高確率で再獲得し、エリアとボールを支配しました。基本は順目にボールを動かすシェイプ気味のアタックですが、勝負所で見せるループプレーなどのオプションで一気に防御網を切り裂きました。

    8強チーム内では比較的、自由度の高く配置よりも個々人の判断とスキルで試合を運ぶスタイルだと感じました。チームとしてのエリア取りや、DGの選択など、試合運びにはこだわりと明確なプランを持って遂行していることが見受けられました。

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    東海大大阪仰星の特徴 

    粘り強いディフェンスと大型FWが武器。相手のプレッシャーを逆手に取ったエッジ攻撃や、FWとBKの境目を感じさせないコネクション(第1列の選手がエッジでオフロードパスを通すなど)で、終盤に素晴らしい展開力を見せました。

    FWからバックスへの展開としては、9シェイプを介した形もありながら、バックスの様にラインを作って1stレシーバーとなって供給する場面があり、驚かされました。後半こそ、エッジを攻略しスコアへ繋げましたが、後半途中まではミスが重なる場面もあり、苦戦を強いられました。

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    試合を分けたポイント 「王者のゲームコントロール」

    桐蔭学園が高いスキルをベースに、キック戦術でエリアとポゼッションを掌握し、試合を優位に進めました。東海大大阪仰星はポゼッションで劣勢に立たされながらも我慢のディフェンスを続けましたが、王者の安定した試合運びと決定力の前に、あと一歩及びませんでした。


    【準決勝 展望】 勝負の鍵

    第1試合:東福岡 vs 京都成章

    東福岡の鍵 「ブレイクダウンへのプレッシャー」 京都成章のポゼッションラグビーを止めるには、起点となるラック(特にタッチライン際15-20m)への激しいプレッシャーが不可欠となるでしょう。また、相手の精緻なアタックに対し、10番やミドルポッドへどれだけ圧力をかけられるかが焦点です。

    京都成章の鍵 「ポゼッションでの主導権」 東福岡の強力な「10シェイプ」からのランニングアタックを封じるため、ボールを持ち続けて攻め勝つプランを遂行できるか注目です。キックゲームやエリアの取り合いで優位に立ち、自分たちの時間を長く作れるかがポイントです。

    見どころ 「東福岡の個とワイドアタック」対「京都成章の組織的なポゼッション」。スタイルが明確な両校による、ハイレベルな“矛と盾”の激突が注目です。

    第2試合:大阪桐蔭 vs 桐蔭学園

    大阪桐蔭の鍵 「接点でのファイトとセットアップ」 コンスタントに接点を挑んでくる桐蔭学園に対し、ブレイクダウンでどれだけ押し返せるか。また、ラックサイドを突かれた後のディフェンスの広がり(セットアップ)を維持し、隙を作らないことが求められます。

    桐蔭学園の鍵 「エッジディフェンスの修正」 準々決勝で見えた課題である「エッジディフェンス(スライドするか、詰めるか)」をどう修正してくるか。敵陣でプレーするためにハイパントを有効に使いつつ、大阪桐蔭の強力なFWと決定力あるBKを封じ込めるプランに注目です。

    見どころ 東西の横綱対決。フィジカルバトルはもちろん、互いの弱点を突き合う緻密な戦術戦と、エリアマネジメント(陣取り合戦)が勝敗を分ける総力戦になります。

    では。

    (文:山本陽平)

  • 【マッチレビュー】2025リーグワン:静岡ブルーレヴズ対浦安D-Rocks

    【マッチレビュー】2025リーグワン:静岡ブルーレヴズ対浦安D-Rocks

    みなさんこんにちは
    リーグワンも、第3節が終わりました

    今節の試合から、磐田で行われた静岡ブルーレヴズと浦安D-Rocksの試合について、振り返っていこうと思います

    静岡ブルーレヴズ

    <アタック傾向>

    ブルーレヴズは1−3−3−1をベースにした、FWを起点としたクラシックなスタイルに合わせて、接点に強みのあるBK陣を組み合わせることで外から中に向かって攻め込むようなアタックを見せています

    エッジにはヴェティ・トゥポウ選手やクワッガ・スミス選手のような機動力と強さを兼ね備えた選手を配置することが多く、全体を5レーンに分けて考えた時に中央と外の合わせて3レーンに強みのあるスタイルであるということができます

    特にトランジションのような相手のディフェンスラインの中のFWとBKの比率が乱れているようなシーンではエッジで接点を作ってから大きく外方向に展開することで、FWとBKのミスマッチを作ることでラインブレイクも果たしています

    基本的なアタックの要素となるのは9シェイプと呼ばれるFWの選手による集団の単位で、ラインアウトのようなセットピースからエッジ方向にどんどん9シェイプを当てる様子が見られています。

    その連続した9シェイプに対してFWの選手は順番に走り込むことでオプションとなり、ポッドをベースとした一塊になってアタックを作り上げていました

    特にゴールが近くなるエリア、敵陣22mラインを超えたようなエリアに入ると、9シェイプは激しさを増し、どんどんとフラット気味に走り込みながら相手との接点を作るようになっていきます。フラット気味に走ることで相手ディフェンスに詰める猶予を与えず、接点で押し込むことができれば最も効率的な前進の手段です

    また、この時に効果的に働いているのがピック&ゴーの動きで、ブルーレヴズには1人で前に出る選手が揃っていることもあり(スミス選手や12番のチャールズ・ピウタウ選手など)、相手に下がる猶予を与えずに素早くボールを持ち出すことで相手のディフェンスラインを下げることに成功していました

    ブルーレヴズが基本的に勝負の土俵に持ち込みたいのはこのエリアで、如何にこのエリアに入るか、というところに重要性を見出しています

    ただ、このエリアに入ることこそ多かったものの、アタック全体は不安定なまま試合は続いていくことになります。数値は後ほど見ていくこととしましょう

    また、ポッドの作り方としては、4人ポッドや5人ポッドを使っていたように見えました。隣のポッドと混ざったグラデーションの2つのポッドだったかもしれませんが、多くの選手が一塊になって並ぶシーンが散見されていました

    4人ポッドに関してはCTBの選手が絡むことも多く見られていました。12番のピウタウ選手や、13番のシルビアン・マフーザ選手のような選手が4人ポッドの柱となり、ラックなどからボールを受けてスイベルパスで裏の10番、家村健太選手や筒口允之選手にパスをしていました

    5人ポッドではSHからの投げ分けが発生することで相手に選択肢を作り出し、相手に選択肢を押し付けた状態で接点で前に出るという形をとっていました

    <アタックの課題>

    アタック全体での課題としては、何よりもハンドリングエラーが挙げられることでしょう。ゴールに近いエリアに何度も侵入していながら、奪ったトライは3つと効率的ではありませんでした。その多くの要因は、肝心な部分でのパスやキックのミス、接点でボールをこぼしてしまうといったハンドリングエラーによるものです。

    また、相手のディフェンスラインからプレッシャーを受けたことも影響しています。D-Rocksのディフェンスの精度は昨シーズンから改善が見られ、接点の強さとコントロールのバランスが良くなっています

    その結果として、パスの出し手と受け手の両方がプレッシャーを受けることでパスミスが起きたり、プレッシャーを避けるためにパスの出し手がスタンディングでパスを出すようになって前に出面くんあるという現象が見られていました

    最後に気になった点として、ブルーレヴズのアタックではティップオンのオプションが効果的に働いていなかった、という点が考えられます

    ティップオンとは、ポッドでボールを受けた選手がそばにいる選手に浮かすようにパスをすることですが、このティップオンが効果を発揮していませんでした

    ブルーレヴズもティップオンを活用しようとしていましたが、相手のプレッシャーもあってかパスの出し手が立った状態で少し浮かす程度の動きにとどまっており、ディフェンスとしては出し手のディフェンスから視線を切りやすい状況が生まれていました

    <キック戦略>

    キック全体の動きを見ると、ブルーレヴズはカウンターを多く用いていました。どのようなエリアであっても早い選択肢にカウンターが入ってくるような形です

    カウンターの質自体はそこまで悪くはなく、15番の奥村翔選手のような走力があって相手をずらすことのできる選手がいるので、自陣22mライン付近まで押し込まれても、イーブンな位置であるハーフライン付近までは戻すことができていました

    ただ、一部の選手には蹴り返して脱出を図るといったオプションが薄い時もあり、苦しいカウンターを仕掛けてターノーバーやペナルティを誘発されたりといった状況も見られていました。ここは修正・調整をしていきたいところではないかと思います

    <ディフェンス傾向>

    基本的に接点に強いディフェンスラインを整えているので、苦しい時間帯自体はそこまで多くなかったようには見えました。ラインブレイクをそこまで極端に引き起こされたわけでもなく、ある程度は守ることができていたと思います

    ただ、細かい部分ではディフェンスに揺らぎが見られており、今回の試合でブレイクされてしまっていたり、今後の試合に響いてきそうな様子が見られました

    特に注意していきたいのがエッジに近い位置でのディフェンスで、エッジ側がショートサイドになった時、選手が内側による傾向が見られています

    これは、エッジのエリアに参加しているD-Rocksの選手が影響していて、1人で場面を打開できるようなサム・ケレヴィ選手のような選手がエッジにいることで、意識がケレヴィ選手に向かいその外に張っているランナーから視線が切れていることでブレイクが起きていました

    また、ゴールに近くなると、選手間のディフェンス戦略に違いがみられていたことも気になるところです。一部の選手は相手のアタックラインに被せるような動きを見せて、また一部の選手は少し引き気味で受けるようなディフェンスを見せていました

    浦安D-Rocks

    <アタック傾向>

    D-Rocksのアタックは、悪い言い方をしてしまえば単純で、「接点で打ち勝つことでリズムを作り、崩れたところからブレイクを図る」といったものです。単純でありながら難しい課題を、D-Rocksは安定した前進戦略で実現していました

    キーになったのは、「前に出ることに長けた選手」にその役割を全うさせたことです。例えばNO8のヤスパー・ヴィーセ選手や、リザーブから出場したタマティ・イオアネ選手のような、接点に長けた選手に複雑なタスクを任せていないように見えました

    これは決して悪いことではなく、それ以外の選手に関してもタスクを単純化することによって、一つ一つの役割が明確になり、認知的負荷を抑えることができていたように感じました

    また、今回の試合では特徴を持つ選手がその特徴を遺憾なく発揮することができていたということも、調子の良さにつながっていることがわかります

    特に好調だったのがサム・ケレヴィ選手とイズラエル・フォラウ選手の元ワラビーズコンビでした。ケレヴィ選手は接点、フォラウ選手は空中戦で自身の能力を最大限に発揮していました

    ケレヴィ選手はオープンサイドとショートサイドの両方に顔を出し、中でもショートサイドでのアタックに強みを出していました。ショートサイドに器用で体の強いケレヴィ選手がいることで、相手選手はケレヴィ選手を抑えざるを得ない状況となり、結果的に外方向に数的・位置的なズレを作ることができていました

    フォラウ選手はとにかくハイボールでの競り合いが強く、ハイパント・ボックスキックだけではなく、キックオフからの競り合いでも強いプレッシャーを相手にかけていました。相手のスコアからのキックオフを再獲得することで、効率よく敵陣に入ることができていました。

    また、一般的なフェイズの中でもハイボール系を競り合い、再獲得することで、精度良く前進することができていました。ハイボールからの競り合いで確保ができれば、相手ディフェンスは崩れた状態になります

    エッジ方向へのクロスキックもフォラウ選手は十分に対応することができるので、エッジ方向に蹴り込むことでそちらに寄らざるを得なかった相手ディフェンスを崩すことができていました

    それ以外の選手の動きに関しても、テンポがよく、接点をベースにアタックをすることができていました

    あえて言葉にすればセミストラクチャーのような、完全に組み立てたストラクチャーと、崩れた状態から始まるアンストラクチャーの中間のような状態で、D-Rocksは強みを発揮します

    エンジンがかかっていくかのような、何度もFWの選手を中心に相手との接点を作ることで、細かく相手を揺さぶっています。その中でD-Rocksはパスを細かく繋ぐことで相手との位置関係を細かくずらし、強みである接点をさらに優位な状況で生かしていました

    <ディフェンス傾向>

    D-Rocksのディフェンスは、昨シーズン位比べると改善が見られていたように感じます。大きく崩されるシーンが減り、崩されても致命傷にならないといった最後の粘りが見られていました

    効果を発揮していたのが、日本人選手をはじめとしたロータックルの精度です。相手を素早くテイクダウンすることで上の空間をとることができており、相手のサポートを上回ってプレッシャーをかけることができていました

    また、そもそも接点の強さの強度が高く、相手の接点をある程度抑え込むことができていました。時々差し込まれることもありましたが、基本的にはいい体の当て方ができていました

    特にエッジでのディフェンスが堅く、フォラウ選手やケイレブ・カヴバティ選手のような選手のディフェンスの質が非常に高かったです。相手の外に流れるような動きに対してしっかりとついていき、相手を素早く倒すことができていました

    ただ、オプションのないポッドアタックには強さを発揮する一方で、オプションがある場合は少しずらされるようなシーンもあったため、修正の余地はあるようにも見えました

    ゲームスタッツを確認する

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    それでは、次にゲームスタッツを見ていきましょう

    ポゼッション、テリトリーはブルーレヴズがそれぞれ上回っていました。特にテリトリーに関しては61%と高い水準で確保しており、敵陣に相手を押し込むことができていました。

    しかし、その割にブルーレヴズは敵陣22m内への侵入回数が13回と控えめな回数になっています。このことから、主なプレイングエリアが中盤であったことが想像できます

    D-Rocksは敵陣22mへの侵入回数が9回で4トライを奪っていたりと、比較的効率よくスコアをすることができていたと言えます。実際のトライシーンも、敵陣ゴール直前よりも前段階からブレイクをしてトライに至っていました

    キャリー・パス・キックの比率を見ていくと、ブルーレヴズがそれぞれ173回/236回/7回、D-Rocksは121回/156回/27回という数値になっていました

    ブルーレブズのスタッツで気になるとこととしては、キックの異常な数値の低さでしょうか。本来であれば20回程度は生じうるキックが7回というのは非常に少ない数値であると言えます

    ブルーレヴズは自陣で受けたキックに対してカウンターを狙う姿勢が強く、キックを蹴り返して脱出やエリアをコントロールするような回数自体は少なかったように思います

    D-Rocksはキャリーに対するパスの比率が一般的な水準よりも少し低いような水準となりました。9シェイプやワンパスで選手がキャリーする回数が多く、比率が減少していたことが考えられます

    また、目立った数値としては、ブルーレブズのターンオーバーロストの回数が気になるところでしょうか。20回というのは相当多い数値で、一般的には15回程度で多めという形になるかと思います

    ブルーレヴズはハンドリングエラーが多く目立ち、チャンスになったシーンでのパスミスが多く見られていました。エッジにキーになるランナーが揃っている中で、そのランナーにパスが回らないというのは非常に惜しい結果となりました

    まとめ

    今回の試合結果としては、意外、というコメントが多かったのでhないでしょうか。2節で埼玉ワイルドナイツにいい試合をしたD-Rocksでしたが、その勢いのままに、前年度のトップ6のチームに勝利を収めることになりました

    ブルーレヴズとしては、ハンドリングエラーを減らすことが修正のスタート地点になるかと思います。それ以外の要素に関してはそこまで悪い結果ではなかったと思っているので、まずはミスの母数を減らしていきたいところです

    D-Rocksとしては、こだわる部分を絞ってきたように見えました。いい意味で複雑なことを減らし、シンプルな勝負の土俵で細かい勝利を収める、といった形がうまくハマっていたように感じます

    今回は以上になります
    それではまた!

  • 【マッチレビュー】2025リーグワン:横浜イーグルス対静岡ブルーレブズ

    【マッチレビュー】2025リーグワン:横浜イーグルス対静岡ブルーレブズ

    みなさんこんにちは
    ついにリーグワンが開幕しましたね
    数多くの試合が予定されていますが、こちらでも一部試合をピックアップしていきたいと思います

    今回は、日産スタジアムで行われた横浜イーグルス対静岡ブルーレブズの試合を見ていこうと思います

    横浜イーグルスのラグビー

    イーグルスのアタック様相

    イーグルスは、司令塔となるSO田村優選手が柱となるアタックを見せていて、プレイメーカーによるコントロールを重視したアタックをしているというのが一般的なイメージになるかと思います
    田村選手を灯台に、その周囲でオプションになるように走り込むことがベースになります

    田村選手のコントロールは単に自分がボールを受けて展開のハブになるだけではなく、ラックの後ろから味方選手に声をかけて田村選手の指示のもとでポッドを動かしていることが試合映像からも見て取れます

    それに加えて、重要になるのがCTBの梶村祐介、ジェシー・クリエルの両選手の役割で、田村選手のボールタッチに合わせて、この2人の選手のボールタッチが多い傾向を示していました

    イーグルスのアタックのベースはCTBも組み込んだポッドワークを中心にしており、CTBの選手がポッドの中心となって積極的にキャリーに持ち込んでいました

    特に12番の梶村選手と13番のクリエル選手の役割としては、ポッドの先頭に入る、または梶村選手やクリエル選手がそれぞれボールを受けてキャリーをするというパターンが見られています
    2人で完結するポッドとしても組まれており、FWだけでポッドを構成するよりも数的に安定することが考えられます

    この2人の動きとしては、中盤に立つ2人ポッドの脇に立つ形から始まります
    ラックから直接パスを受けた梶村選手のクリエル選手へのショートパスでキャリーが発生し、そばにいた2人ポッドの片方の選手と梶村選手がサポートに入ってラックの最小単位である3人のラックを完結させる形をとっていました

    ポッド中心のアタックはゴールが近くなると特に顕著になり、CTBも積極的にボールを受けにいくことでラックから様々な距離感で接点を作ることに成功しています
    ポッドを安定して供給することで、テンポが遅れたりアタックが単調になることを避けることができます

    最も脅威度の高いオプションとしては、「ゲインを果たした」という条件下の元での9シェイプと10シェイプの組み合わせが挙げられます

    大きくゲインした後、スッと3人の9シェイプポッドがアタックラインの前に参加して、裏に立つプレイメーカーの田村選手へスイベルパスを下げる形を取ります
    スイベルパスを受けた田村選手はアングルをつけて走り込んでくる10シェイプに対してパスを出し、10シェイプポッドでキャリーをする、という形を取りました

    エッジでゲインをすると、ブルーレブズのディフェンスはまず9シェイプポッドを押さえるようにディフェンスラインを構築します
    その過程の中で中盤の10シェイプを押さえる位置に立つ選手が9シェイプ寄りのカバーをすることによって、中盤にディフェンスの薄いエリアが生まれていました

    それ以外に好んで用いていたのが、「リードブロック」というプレーです
    これは、アタックラインに対して1人の選手が突出してボールを受けるように走り込み、その裏を通して本来のアタックラインやポッドにボールを供給する形です

    この形がなぜ効果的かというと、理由はシンプルで「相手を寄せることができるから」になります。
    リードブロックをする「リードブロッカー」はラックの周囲を守る「ピラー」や「ポスト」と呼ばれる位置の選手に対して走り込むことで、そこを守る選手は走り込んでくる選手に対して位置取りを寄せなければならず、結果的に裏のアタックオプションが有利な状態で前に出ることができていました

    一方で、こういった構造的なアタックで数的優位やすれ違いを作ることができたシーンはそこまで多くはありませんでした

    理由として考えられるのは、ボールを受ける選手の深さやコース取りなどが考えられるでしょうか
    基本的には作り出した構造の近くですれ違いなどを作りたいところですが、アタッカーの位置取りの関係でブルーレブズのカバーを受け、うまく抑えられていました。

    また、それ以外の要因として、FWの選手が位置的に散っていることで、アタックオプションを豊富に準備できていないということが考えられます
    両サイドにバランスよく配置されることによって片方のサイドに数的優位を作れていないことが推測されます

    チェックしていた限りでは、構造にこだわりすぎるよりも、シンプルなラインで個々人のスキルセットを活かした方がより前に出られるシーンが多かったように感じました
    接点の強さがある選手が多く揃っており、しっかり前に出ることができていました

    イーグルスのディフェンス様相

    ディフェンスを総合的に見ると、苦戦したシーンが多かったのではないかと予想されます
    特に、新入団選手だったセミ・ラドラドラ選手の接点の強さや器用さにやられたようなシーンが多かったのではないでしょうか

    ブレイクされたシーンを確認してみると、例えばトランジションディフェンスで大きくブレイクされたシーンが見られていました
    このシーンでは、アタックの人数に対してディフェンスで人数が十分にカバーできているのに、流す意識が強すぎて内側のカバーが遅れたスペースをオフロードでブレイクされていました

    このように、イーグルスのディフェンスは比較的流す傾向があるように感じます
    数的不利ができないようにかなり横ベクトルの強い流し方をしており、その中で内側の選手がバッキング、相手ランナーの前に大きく回り込むようなコースをとっていました

    その傾向によって内側からディフェンスを押し上げる圧力が弱く、内側へ切り返すことが得意なWTBの選手や、オフロードの得意なラドラドラ選手の内返しのパスといった、外から内へとボールが動くプレーによってディフェンスが切られるシーンが見られていました

    また、相手の浅いアタックラインに押し込まれているような様子も見られていました
    ブルーレブズのアタックの強みは走り込みながらポッドを当てるような接点のモメンタムであり、その強みを受けてしまっていたように感じます

    特徴的な「やられ方」としては、敵陣深くでのディフェンスが挙げられます
    ブルーレブズの自陣深くからの展開で何度も大きなゲインを生み出されており、崩されているシーンが目立ちました

    この要因としては、イーグルスのディフェンス戦略にあります
    イーグルスのディフェンスは敵陣深くでハードなプレッシャーをかける傾向にあります
    BKの選手も流さずに詰める傾向があり、この部分で左右の味方選手との連携が途絶えることで、大きくゲインされていました

    静岡ブルーレブズのラグビー

    ブルーレブズのアタック様相

    シーズンの序盤ということでまだ固まり切っていない部分もあると予想できますが、試合を見た感覚ではポッドベース、アタックブロックとも呼べるような戦略でアタックをしているように見えました

    アタックでは3人ポッドをベースにして、接点に強い選手をどんどん当てて、BK陣にも揃っている接点の強い選手を当てこんで、リズムを作ろうとしているように見えました

    好んで用いられた動きとしては「スイング」と呼ばれる動きです
    これは、ラックやセットピースなどの後ろや反対側から、振り子のように反対側に回り込むことで、動きの中で数的優位性を作り出す動きです

    ブルーレブズは、このスイングを複数の選手が同時多発的に使うことによって、基本的には後手に回らざるを得ないディフェンスに対して、先出しで数的優位性を作っていました
    複数人が幅広くスイングする「ロングスイング」と、少ない人数で細かくスイングする「ショートスイング」をうまく使っていたように思います

    ここでキーになるのがイーグルスの項目でも述べたラドラドラ選手で、ラドラドラ選手は強い体を持ちながらも、器用さを兼ね備えた選手でもあります

    ラドラドラ選手はこれらのスイング動作の中で表のラインに入ったり、裏のラインに入ったりすることで、起点となる位置関係を切り替えています
    オフロードパスの選択肢がある選手がこのように位置関係をフェイズごとに切り替えることによって、結果的に相手のディフェンスの対応が難しくなっていました

    ポッドの活かし方に関しては、ポッド間の距離がそこまで離れておらず、ほぼくっついたような状態になっているシーンも見られました
    一つのポッドと見る見方もありますが、私はこの状態のことを、「スティックポッド」と呼んでいます

    2つのポッドを組み合わせることで、アタックオプションのバリエーションが増加し、一つ・二つのパスだけで様々なアタックをすることができます
    サポートも安定するので、一つの接点としての安全性が担保されていました

    今回の試合で見られた特徴としては、自陣から積極的にアタックする姿勢を見せていたことです
    ポッドをスプリットしてCTBの選手を介した展開をすることによって、相手のディフェンスを中盤に寄せて展開することで、走力のあるWTB陣が効果的に前に出ることができていました

    イーグルスのディフェンスは、正直なところブルーレブズ側の陣地深くでのディフェンスが意思統一されているような形ではなく、個々の動きで詰めてしまうような様子が見受けられていました
    そういった相手のディフェンスの傾向を読んだのか、非常にうまく噛み合ったアタックをしていました

    反省材料としては、キックオフを安定して確保することができていなかったことでしょうか
    そこまでプレッシャーを強く受けたわけではなさそうでしたが、ハンドリングエラーや、相手に容易にボールを確保されることによって、スコア後のキックオフレシーブの機会を手放すことになっていました。

    また、アタックの脅威度として、ボールを受けながら同時に走り込む「ラン&キャッチ」であれば、相手にとって非常に強い脅威となっていましたが、テンポが遅くなった時にボールを受けてから走り出す「キャッチ&ラン」の時の脅威が下がっていました

    これに関してはブルーレブズに限った現象ではなく、どのチームでも同じ現象が起きるかと思います
    今回の試合では、ブルーレブズは必ずしもテンポが出しきれていたわけではなく、プレッシャーを受けることで全体的にテンポがゆったりとしていたようにも見えました

    ブルーレブズのディフェンス様相

    ブルーレブズも、イーグルスと同様に相手のアタックにある程度差し込まれているような様子が見られました
    状況としては、ディフェンス間のスペースに入られることによってダブルタックルの精度が少し下がり、1対1の繰り返しになっていました

    イーグルスはモメンタムを出しながらアングルをつけたキャリーを得意としているため、このアングルをつけたランニングに一定数やられていたように感じます

    また、苦手としていた状況として、ゲインされた後のディフェンスに乱れが出ていました
    それ以外のチームでも見られる傾向ではありますが、今回の試合では顕著な動きが見られています

    特徴としては、ブルーレブズのディフェンスの優先順位として、ゲインをされた後はまず9シェイプの位置を押さえようとします
    近くにいる選手に合わせて、少し外側の位置に入っている選手も、寄るような動きを見せます

    イーグルスは、ゲインした後のフェイズにスイベルパスを挟んだ打点をラックから話す動きを見せることが多く、このラックからボールが離れる動きでラックに近い選手が切られてしまい、薄くなった10シェイプの前方に立つエリアを攻略、または攻略されそうになる状態が生まれました

    ただ、一般的な階層構造、表と裏の関係については非常に丁寧にディフェンスをしており、詰めすぎず引きすぎずといった、バランスの良いディフェンスをしていました
    それが、大まかな領域で相手のアタックを止めることができたことにつながっています

    選手にもよりますが、フロントドアを切ってバックドアの選手に詰める「スイム」の動きもきっちりできていました
    イーグルスのアタックが、基本的には裏ベースのアタックをしていたことも影響しているかと思います

    まとめ

    初戦ということもあり、両チームともに反省材料がいくつか得ることができた試合ではないかと思います
    修正が効けばイーグルスにも勝利の可能性は十分にあり、またブルーレブズも修正で相手を圧倒することもできるでしょう

    今回は以上になります
    それではまた!

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:早稲田大学対慶應義塾大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関東対抗戦:早稲田大学対慶應義塾大学

    伝統の早慶戦、早大の超速ブレイクダウンが勝利を呼んだ!慶應義塾との緻密な戦術戦

    2025年11月23日、ラグビー関東大学対抗戦のクライマックスを飾る伝統の一戦、第102回早慶戦が、熱気溢れる秩父宮ラグビー場にて開催されました。会場には1万5164人の観衆が集結し、両校の意地とプライドが激しくぶつかり合う舞台を見守りました。結果は、対抗戦首位を走る早稲田大学が慶應義塾大学を49-21というスコアで下し、勝ち点を「32」まで積み上げ、首位を確固たるものとする圧巻の勝利を収めました。

    しかし、このスコアの裏側には、両校が練り上げた戦術システムが高度に交錯する、戦術的な深みのある攻防が展開されていました。早稲田の「1421」ポッドに代表される流動的かつ多角的なアタックと、慶應の「1331」を起点とした継続アタックの応酬は、現代ラグビーのトレンドを象徴するものでした。本記事では、この激闘を詳細な戦況分析、アタック戦略、ディフェンス戦術、そしてデータ分析の各側面から解説します。

    試合展開:互いに譲らないポゼッションラグビーと早大の爆発力

    試合はキックオフ直後から、早稲田が準備してきた多様なアタックオプションを惜しみなく披露し、主導権を握る展開となりました。

    早稲田は、敵陣に入るとすぐにFWが縦に突き刺さる「3311」のポッドを起点に慶應ディフェンスを崩しにかかります。センターを中心とした縦への強いアタックと、それをサポートする9番を起点としたボールムーブメントが機能し、瞬く間に優位な状況を作りました。そして、早々にスクラムでのペナルティーを獲得すると、このチャンスを逃さずラインアウトモールを押し込み、HO清水健伸選手がこの日最初のトライを奪います。

    清水選手は、このモールアタックの猛威を体現するかのように、前半だけで立て続けにトライを重ね、最終的にこの日4トライという驚異的な決定力を発揮し、勝利の立役者となりました。

    早稲田は中盤左ラインアウトからの右オープン攻撃では、日本代表のFB矢崎由高選手が相手ディフェンスラインを切り裂くダイナミックなランで大幅ゲイン。この流れるようなアタックから、NO8粟飯原謙選手CTB福島秀法選手との巧みなパス交換を経て、粟飯原選手がトライを奪うなど、キープレーヤーが躍動し、早稲田の攻撃に勢いをつけました。

    対する慶應義塾も、ただ守るだけでなく、戦術的な深さを見せます。ターンオーバーから数フェーズ動かした後、10番小林祐貴選手からのハイパントキックで陣地を挽回し、再獲得する場面もありました。しかし、モールからアタックを仕掛けるも、サポートの遅れから早稲田のジャッカルを許すなど、再三トライチャンスを逃しました。このブレイクダウンの攻防こそが、試合の主導権を握る上で大きな差となりました。

    試合中盤、早稲田の13番福島選手は、大学トップクラスと評されるオフロードパスで慶應ディフェンスを切り裂きます。右サイドでの広いレンジでのギャップを突いたオフロード、そして直後のフェーズでの左サイドでのアシストは、福島選手の突出した突破力と視野の広さを証明しました。

    一方、慶應は9番橋本弾介選手のロングパスから、内側のディフェンスを切り崩す効果的なアタックを展開。橋本選手と12番今野椋平選手が接近して相手を引きつけ、ギャップを創出するサインプレーを繰り返し成功させ、同じ形からトライを奪うなど、サインプレーの精度と遂行力の高さを見せつけました。

    早稲田は前半終了間際にも、ラインアウトからのサインプレーで清水選手がこの日3本目となるトライを奪い、35-7で前半を折り返しました。後半も主導権の奪い合いは続きます。慶應も意地を見せ、ラインアウトモールからワンチャンスで追加点を挙げるなど奮闘しますが、早稲田の猛攻を最後まで止めることはできず。最終的に早稲田が2トライを追加し、49-21でノーサイドを迎えました。


    早稲田のアタック:多角的なポッドシステムと超速ブレイクダウン

    早稲田のアタックは、複数のポッドを効果的に使い分ける多層的なシェイプによって、慶應義塾ディフェンスを攻略しました。
    早稲田のアタック戦略の中核を担ったのが、流動的な「1421」のポッドシステムでした。

    • 司令塔の移動とアタックの流動化: 試合中盤、早稲田が中盤から展開した際には、FB矢崎選手がサイドライン際からミドルエリアへ移動してくるという戦術的な動きが見られました。この動きにより、アタックの起点が流動的になり、ディフェンスは早稲田の攻撃の「狙い」を掴むことが極めて困難になりました。
    • ミドル4人ポッドの優位性: 試合を通じて、このポッドを使い続け、特に4枚並ぶFWが効果的に機能していました。ラックから2番目あるいは3番目の選手が1stレシーバーになるオプションをもち、さらに両サイドにティップパスを繰り出すこと、あるいはスイベルパスでBKへ供給するなど、複数オプションを高精度で持ち続けました。その結果、慶應ディフェンスはキャリアを絞り切れない状態に陥りました。この構造的な優位性が、継続的なゲインを可能にしました。また、ショートサイドのシーケンスを巧みに使いながらゲインを重ねるなど、エリアに応じたポッドの運用が完璧でした。
    • 超速のブレイクダウン: このポッドアタックを成功させた最大の要因は、ブレイクダウンのリサイクルの速さです。超速でボールを捌くことで、慶應ディフェンスが整うわずかな時間すら与えず、常にアタック側の優位性を維持し続けました。

    チームの戦術的自由度と個の突出

    • 服部選手の戦術的自由度: SO服部亮太選手は、FWの裏側に位置したり、逆サイドから移動してくるためディフェンスとしては掴みづらい展開を作り出しました。ブラインドサイドでのシーケンスでは、WTB田中健想選手がファーストレシーバーに入り、FWの縦ランに対して裏のBKへパスするシーンや、ラックサイドをSHから受けて攻撃するシーンなどその戦術的な自由度を見せてくれました。
    • 後半の戦術調整: 後半、早稲田は明らかに意図して10シェイプを増やしましたが、序盤はエッジでスペースが狭くなりあまり有効なアタックではなかったという反省点もあげられます。しかし、すぐに折り返しの9シェイプのティップパスで大きくブレイクするなど、修正能力の高さも見せつけました。
    • 福島選手の突破力: 13番福島選手の個人能力は群を抜いており、広いレンジでのギャップを突いたオフロードパスや、「行き詰まったところでも前へ持っていける力」を発揮し、早稲田アタックの大きな推進力となりました。

    慶應義塾のアタック:継続重視のポッドとフルバックの役割

    慶應義塾は、早稲田の高速アタックに対して、フィジカルを前面に出した継続重視のポッドシステムと、粘り強いディフェンスで対抗しました。
    慶應のアタックは、一発のゲインよりも継続性ポゼッションを重視する設計となっていました。

    • 細かいポッドでの継続: 慶應の基本的なアタックは、「ポッドを細かく当てながら継続する」印象を受けました。これにより、ラックサイドのフィジカル勝負で優位に立ち、ディフェンスを徐々に消耗させることを狙いました。
    • 13211の形での展開: およそ4〜5フェーズを重ねた段階で、「13211の形から10シェイプ起点に外まで運ぶ形」が見られました。これは、FWで中央を固めた後、バックスとのバックドアオプションを組み合わせてワイドに展開し、フィニッシュを狙うという、緻密に練られたシェイプです。
    • FB田村選手の柔軟な役割: FB田村優太郎選手は、前半は比較的内側でコントロールするタイプとして機能しましたが、後半には「外側でゲインを切ったり、外側へ運ぶ役割も担っていました。状況に応じて役割を柔軟に変化させました。

    ただ、試合を通じてブレイクダウンが安定せず、出したい場面でボールに絡まれてしまい、ターンオーバーされてしまったことは今後の課題と言えるでしょう。

    慶應義塾のディフェンス:バックスの粘りとブレイクダウンの圧力

    慶應義塾のディフェンスは、個々のタックル精度粘り強さが際立っていました。

    • タックル精度: 慶應義塾のディフェンスは、タックル精度とテイクダウンを取り切る部分は申し分ないレベルであり、特にCTB安西良太郎選手(1年)がモストインプレッシブプレーヤー(MIP)に選出されるなど、タックルの強度と粘りは際立っていました。早稲田の猛攻に対しても、「完全なブレイクは許さず粘りでタックルからミスを誘う」我慢強さがありました。
    • ブレイクダウンの課題: 一方で、早稲田の高速ブレイクダウンに対しては、プレッシャーをうまくかけられず、テンポを遅らせることができなかった。という課題を残しました。このブレイクダウンでのプレッシャーが、早稲田に連続アタックを許し、失点に繋がる大きな要因となりました。

    データから見る:バックライン重視のアタックとセットピースの安定 

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    この早慶戦は、両チームが明確な戦術的特徴と高い実行力を示した一戦であり、スコア以外のデータからもその傾向が読み取れます。

    1. バックラインへの供給と外側キャリー

    両チームの最も大きな特徴は、現代ラグビーで主流となりつつあるバックラインへのパス供給の多さです。9シェイプが中心のチームも多い中で、10シェイプとバックラインへのパスが多く、外側でのキャリーが多いという点が際立っていました。これは、FWのポッドにボールを当てるだけでなく、より多くのバックスプレーヤーを絡ませ、ディフェンスのワイドな展開力を重視し、高度なポゼッションラグビーが実践されたことを示しています。早稲田が後半に意図して10シェイプを増やしたことも、この傾向を裏付けています。

    2. 安定したセットピースと決定力

    • セットピースの安定性: 両チームとも、安定したセットピースがこの試合のハイテンポな展開を支えました。特に早稲田は、ラインアウトは13/14という高い成功率で攻撃起点を確保。これは、HO清水選手の4トライに繋がったモールや、緻密なサインプレーの基盤となり、今後の大学選手権でこの安定性をキープできるかが鍵となります。
    • 早稲田の決定力とスコアバランス: 早稲田は22メートル決定率も58%と好調でした。ミスして取りきれない場面もありましたが、すぐさま侵入しスコアまで持っていける力は健在であり、モールの強さ、ポゼッションからの連続攻撃、そしてスクラムでの優位性と、様々なスコアバランスを持っていることは、大きな脅威をなっていました。
    • 慶應義塾のスコア力: 慶應義塾に関しても、モールやラインアウト起点でスコアへ繋げるシーンがあり、スコア力は十分上位校に劣らないことが分かりました。これは、慶應のFWの強さと、セットプレー周りのサインプレーの精度が高いことを示しています。

    3. キックゲームの展開

    この試合は、キックが少なかったため、ボールがよく動き互いのポゼッションラグビーがかいまみえた試合展開となりました。

    • 早稲田のポゼッション重視: 早稲田はハイパントを使わず最低限のロングキックに留め、中盤からポゼッションを重視する戦略を採用しました。
    • 慶應義塾の戦術的キック: 慶應は自陣深くはロングキックを使いながらも、中盤はアタックが詰まったところでオープンハイパント、ボックスハイパントを使い分けプレッシャーをかけていたことが分かります。これは、早稲田のポゼッションアタックに対する、「陣地回復」「プレッシャー」を狙った緻密な駆け引きであり、キックの意図が明確な質の高いゲームとなりました。

    まとめ:戦術の差異が結んだ大差と大学選手権への課題

    この日の早慶戦、最終スコア49-21という結果は、早稲田の「1421」ポッドに代表される多角的なアタックシェイプと、それを可能にした超速のブレイクダウンが、慶應義塾の「1331」を軸とした継続アタック粘り強いディフェンスを上回ったことを示しました。

    早稲田は、HO清水選手の4トライに象徴されるセットプレーからの決定力と、福島選手の突出した突破力、そして野中健吾主将のリーダーシップが融合し、対抗戦首位にふさわしい総合力を証明しました。データからも裏付けられたバックラインへの多様な供給安定したセットピースは、早稲田の強固な基盤を示しています。今後の戦いに注目です。

    慶應義塾も、戦術的な準備と個々のフィジカルの強さを見せつけましたが、ブレイクダウンのスピードという現代ラグビーの生命線で早稲田に一日の長がありました。しかし、モールやラインアウトからスコアに繋げる力は上位校に劣らず、大学選手権に向けた大きな自信となるはずです。

    伝統の一戦で得た経験と課題を糧に、両チームとも大学日本一を目指す最終調整へと進んでいくことになります。この激闘が、今後の大学ラグビー界の行方を占う重要な一戦であったことは間違いありません。

    では。

    (文:山本陽平)

  • 【マッチレビュー】2025ジョージア代表マッチプレビュー

    【マッチレビュー】2025ジョージア代表マッチプレビュー

    日本代表との試合に向けて

    みなさんこんにちは
    日本代表の試合も、残すはジョージア戦のみとなりました

    今回は、そのジョージア戦に向けて、ジョージア代表がこの秋戦ったアメリカ戦とカナダ戦を振り返りながら、どのようなチームであるかを確認していきたいと思います

    ◆ジョージアのアタック構造

    ジョージアのアタックは、基本的には構造的に大きく崩そうという動きというよりかは、接点で相手を上回ることでリズムを作り出そうとするイメージです
    セットピースから始まるストライクプレーでも前に出る意識が強く、個々人の強さでの打開を図ってきます

    アタックのベースになるのは3人ポッドで、接点を安定化させながらも3人ポッドによる「アタックの硬さ」を生かしながら前に出てきます
    12番も積極的にポッドに入って接点を作ったりと、チーム全体としてポッドをベースにしていることがわかります

    基本的な比率としては1−3−3−1になっているかと思いますが、停滞したときは3人ポッドをエッジ方向に回り込ませて3−3−2を作ったり、セットピースからの連続フェイズで中央の6人を4−2でスプリットしたりと、多くの工夫が見られました

    基本的なトライ構造としては、後述するセットピースで圧倒し、敵陣深くにキックで入るところから始まります
    敵陣深くから始まったポゼッションでポッドをベースとして連続アタックを繰り広げ、相手のディフェンスをラック近くに誘導することで生まれる外方向の数的優位性を生かし、BKで取り切るという形がアタックの土台になっていました

    ポッドの使い方もうまく、できるだけ外側の相手にコミットするように、少し流れながら相手との接点を作ります
    そのことによって相手ディフェンスはより一層ラックを挟んで反対方向にフォールディングをする必要が生まれ、そこが滞ると外方向への数的優位が生まれる、という構造になっています

    また、アタックの脅威度という意味ではBKの攻撃力も無視できません
    14番のシャルバ・アプチアウリはカナダ戦でハットトリックを達成していたりと、バックスリーに走力のある選手が揃っており、ラインアウトモールといったセットピース起点のトライと同じくらい、バックス展開を使ったトライも見られています

    BKがリードするアタックの形としては、スイングと呼ばれる形が好んで用いられていました
    スイングとは、ラックやセットピースの裏、または反対側からアタックラインに対して回り込むように参加し、後出しで数的優位を作り出そうとする動きです

    ジョージアのBKはセットピースからのシークエンスなどで好んでこの動きを用いており、基本的なフォーマットとして定着していることが予想されます
    全体的にミスも少なくないのでチャンスを作りきれないシーンもありますが、日本代表はスイングで数的優位を創られることに後手に回る傾向もあるので、安易な楽観視はできません

    ◆ジョージアのキック戦略

    ジョージアのキックの基本戦略は「パント&ラッシュ」にあると考えられます
    つまり、高い軌道のボールを蹴り上げ、確保した相手選手に激しいプレッシャーをかける動きをベースにしています

    グラウンドのハーフラインから自陣22mまでの間のエリアでは、特に好んでこのパント&ラッシュを使っており、相手にプレッシャーをかけてターンオーバーを果たしているシーンが散見されました

    再獲得を狙っているシーンも見られてはいたのですが、平均的な飛距離は20〜25mあたりと再獲得を狙うボックスパントとしては少し長めの印象で、再獲得にそこまでこだわっていないのではないか、と予想しています
    ただ不安定なだけ、という可能性もあるので、ここはさまざまな意味でも注意が必要ではないかと考えました

    パント系のボールを再獲得ができた際は、かなり早いフェイズで相手の裏に蹴り込んでくることがあります
    エリアのコントロールはかなり意識している様子で、敵陣22mよりも自陣側のエリアからでも中盤でそこまでキャリーを繰り返さずに裏を狙う様子が普段のフェイズでも見られています

    ただ、相手のキックを踏まえた全体的なキック戦略という観点でいくと、不安定な様相も見られています
    想定した位置関係が甘いのか相手のロングキックで裏を取られるシーンが散見され、バックフィールドの選手が後退してボールを確保しにいくシーンが散見されていました

    相手のパント系のキックに対しても、クリーンキャッチの精度はそこまで高くないように見えます
    ディフェンスに参加していたフロントラインの戻りも遅く、ミスへの対応が後手に回ることもありました

    ◆ジョージアのセットピース

    ジョージアの強みは、周知の事実となりますが、何よりもFWによるセットピースです
    スクラムもラインアウトも強烈で、相手のペナルティを誘発したり、いい形でのポゼッションを作り出したりと、セットピースの強さからアタックの安定感を出しています

    特に、ランキング下位の国との試合ということもあってか、スクラムでは2試合とも相手を圧倒しており、どちらボールでもスクラムペナルティを獲得したり、反則にならずともクリーンに相手ボールをスクラム内で奪ったりしていました
    早い時間帯では反則を取られるシーンもありますが、勘を掴んでくると手がつけられなくなる印象です

    また、ラインアウトからのモールも強力で、2試合でも複数のモールトライを見せています
    ゴール前からは複雑なムーブを使わずにモールを組んで押し込もうとしてくるので、最低限ここからの失点を抑えることが試合のキーになってきます

    一方で、中盤でのマイボールでのラインアウトが安定しているかというと必ずしもそういうわけでもなく、競り合うことによって意外とミスが起きている印象です
    直近の試合であるカナダ戦では73%の獲得率に止まったりと、ここに関しては不安定な様相を見せていました

    ◆ジョージアのディフェンス

    ジョージアのディフェンスは「接点の強さ」「順目に回る意識」がキーになってくるのではないかと見ています
    これまでの項目でも触れてきた通り、接点という観点では安定感があるジョージア代表は、前に出るベクトルが強いディフェンスをしています

    特に9シェイプや10シェイプといったポッドが、キャッチ&ラン、つまり走り込みながらダイレクトにボールを受けるというよりも、ボールを受けてから前に出ようとする動きをする場合には無類の強さを誇っています
    ディフェンス間のスペーシングも狭めで、接点で圧力をかけようとしていることが予想されます

    反面ダイレクトな動きやフラット気味に受けてキャリーを見せる相手に対しては少し受け身になる様子もあり、接点をどちらが優位で作るかによってディフェンスの質が変わってきます

    順目に回る意識に関しては非常に強く、FWの選手も丁寧に順目方向に回ってきます
    オープンサイドにディフェンスの人数をかけることによって、ディフェンス自体の安定感を担保しようとしていることが考えられます

    順目へのフォールディングにこだわる理由としては、おそらくできる限り前に出続けたいという意識があるのではないかと思います
    試合の様子を見ている限り、あまりスライドする形のディフェンスを取らないようにしている様子が見受けられ、ラッシュアップとまではいかないまでも、エッジに立つ選手までしっかりと相手ラインに詰めようとする様子が見られました

    ただ、順目方向への意識と前に出る意識が重なった結果、ラックに近い位置に若干のウィークポイントが生まれている可能性があります

    順目に回る中でそこまでピラーに対する意識が高いわけでもなく、ピラーに入った選手も前に出ることを優先するので、結果的にラックから最も近いスペースが薄くなりやすく、SH役のパスダミーなどで前に出られていました
    もしかすると、日本代表の竹内選手が得意とするようなタックルを受けてからのリリース→再キャリーのフローがハマるかもしれません

    ◆まとめと試合の展望

    ジョージア代表と戦う上では、最低限「セットピース」「接点」で上回る必要があります
    この二つの要素をベースにスコアしたり、アタックのリズムを使ってくるので、ここを封鎖することで相手のアタックを抑え込むことができます

    現状多く注目を集めているのはFW陣ですが、個人的にはBKへの注意も払わなければいけないと思っています
    コントロールされたアタックとエッジでのブレイクを作り出しているのは間違いなくBKのスキルだと思っているので、ここに関してもディフェンスからプレッシャーをかけていきたいところです

    また、「ハイボール処理」「スイングによる数的優位」にも注意が必要です
    日本代表はオーストラリア戦から始まる強豪との連戦で、これらの要素に安定感は出てきたものの後手に回るシーンもありました
    今シーズンの終わりに向けて、これらの要素で相手を抑え込むことで試合を締めることが求められます

    今回は以上になります
    それでは!

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:京都産業大学対関西学院大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:京都産業大学対関西学院大学

    全勝の京産大が試練を突破! 関学のアタックの決定力と粘り!

    いよいよ大学ラグビーシーズンは佳境を迎え、各リーグで熱戦が繰り広げられています。今回は、関西大学Aリーグにおける注目の一戦、全勝を維持する京都産業大学と、4勝1敗で3位に付ける関西学院大学の対戦をレポートします。

    肌寒さが増す中、会場は熱気に包まれ、両チームのプライドがぶつかり合いました。試合の焦点は、やはり京産大の強力なフォワード(FW)陣に、関学大FWがどこまで対抗できるか。そして、関学大の誇る展開力と決定力のあるバックス(BK)陣が、京産大の堅守を破り切れるかに集まりました。

    試合展開:京都産業、リードを許すもセットプレーで逆転

    序盤は京産大がポゼッションとテリトリーを握る展開となりましたが、両チームともにミスやペナルティーが重なり、試合は断続的になりました。ペナルティーの数は両チーム合わせて「33」と規律面での課題はみられました。
    前半、京産大はBKで1本、得意のモールで1本のトライを奪いましたが、対する関学大もモールで2本のトライを奪い返し、12-12の同点で折り返す、手に汗握る展開となりました。

    後半に入ると、関学大が相手のミスから機を掴み、スコアを奪って一時リードします。しかし、京産大はここから真骨頂を発揮しました。10番吉本 大悟選手と9番髙木 城治選手の正確なキックを駆使してエリアを回復し、強力なスクラムからのペナルティー獲得、そしてモールでのトライで得点を重ね、逆転に成功しました。終盤まで関学大は粘りを見せましたが、京産大がリードを守り抜き、28-22で勝利を収め、全勝を堅持しました。


    京都産業大学のアタック:9シェイプを軸とした多角的なアプローチ

    京産大のアタックスタイルは、FWを効率よく配置する「3-3-1-1」「3-3-2」のポッドを基調としていました。特筆すべきは、逆目(ブラインドサイド)への10番選手のランを起点に、ディフェンスのエッジ(外側)を崩そうとする明確な狙いが見られた点です。

    • エッジへの工夫: 普段13番を担うことの多いナブラギ・エロニ選手をウイングに配置するなど、決定力を高める工夫が見られました。また、「3-3-1-1」のポッド配置を用い、エッジに6番石橋チューカ選手5番石川 東樹選手といった強力なFWを配置し、攻略を試みました。
    • シングルラインのブレイク: 最近主流のダブルラインではなく、FW-BK-FWのシングルラインでパスを繋ぎ、走り切れるバックローの能力を活かしたアタックが、最初のトライに繋がりました。
    • ミドルゾーンの苦戦: しかし、1本目のトライ以降はエッジの攻略に苦戦しました。これは、ミドルゾーンにおけるFWのキャリーが前にあまり出られず、有効な状態でエッジに運べなかったことで、関学大の対応を許し、外側へのパスが浮くなどのミスからターンオーバーを招く場面が散見されました。
    • セットプレーの決定力: スコアの多くは、苦戦したラインアウトに代わり、スクラムからのペナルティー獲得(PG)と、モールが占めました。敵陣深くへ侵入さえすれば、そのセットプレーの威力は圧倒的であり、勝利の大きな要因となりました。

    後半からの戦術転換として、キックの多用が成功しました。特にハイパントと、ディフェンスラインの背後を狙うチップキックやグラバーキックが効果的でした。キッカーである10番吉本選手の精度はもとより、バックスラインの洗練されたキックチェイスが功を奏し、狙いを持ってエリアを支配しました。自陣からハイパントを使い、ボールの再獲得に成功していたことは大きな影響力を持っていました。また、前半から後半にかけて軸を変えながら試合を進められる力は今年の大きな強みだと言えます。


    京都産業大学のディフェンス:速いラインスピードと重いブレイクダウン

    京産大のディフェンスは、全ての接点において圧力をかけることを重視し、ラインスピードの速さが光りました。

    • 個々のタックル精度: 個々のタックル精度が高く、タックル後のラックファイトでも押し返す意識が非常に強かったと言えます。
    • ミドルゾーンの封鎖: 外側へのボール展開を許すシーンが少なく、12番那須選手の的確なボールタックルなどでピンチを未然に防ぎ、ミドルゾーンを効果的に閉ざすことができました。

    ただ、課題点としてペナルティーの多さが目立ちました。タックルの高さやオフサイドなど、規律の面で反則が重なり、自ら勢いを止めてしまう時間帯があり、苦戦の要因となりました。


    関西学院大学のアタック:10シェイプとモールの決定力

    関学大のアタックスタイルは「1-3-3-1」を基本としながら、1年生SO新井 竜之介選手を起点とした「10シェイプ」を中心に組み立てられました。

    • 展開ラグビー: ポッドで細かく当てにいくより、深めのパスを介してバックドアを使ってエッジまでボールを動かすスタイルで、ボールを早く散らすことで前進を図りました。
    • ターンオーバー後の縦への意識: ボールポゼッションする時間は京産大に比べて少なかったものの、ターンオーバー後は横だけでなく縦へのキックを効果的に使用し、エリアとチャンスメイクを狙いました。
    • モールの脅威: この試合で最大の武器となったのがモールです。ゴール前では「オール面」「6面」など様々な形でボールを獲得し、強力な京産大FW相手にも押し込み、2本のトライに繋げました。アタック継続が難しい状況でも、ディフェンスでのペナルティー獲得から敵陣に入り、モールでトライを取り切る展開は、関学大の大きな収穫となりました。

    関西学院大学のディフェンス:ミドルゾーンでの健闘とエッジの課題

    関学大のディフェンスは、ミドルゾーンにおいて京産大のポッドアタックに対して十分に渡り合っていました。

    • ミッドフィールドの圧力: 京産大のポッドが狙いを絞りやすかったこともあり、個々のタックラーが前に出てしっかりと仕留めていました。特に4番池辺 康太郎選手5番梁瀬 将斗選手はミッドフィールドにタイトに立ち続け、3番大塚 壮二郎選手もハードなタックルを連発し、京産大の勢いを寸断しました。
    • エッジの課題: 一方で、エッジ(外側)のディフェンスには課題が残りました。ラックチェイスやボールウォッチのミスから間合いをずらされ、ブレイクや有効なゲインを許すシーンが見られました。頭越しのブリッジパスに対してはスライドで対応できていましたが、鋭いカットパスや、シングルラインで押し込んでくるアタックに対しては後手に回り、ミドルゾーンでのノミネートミスからギャップを生み出し、トライを献上する結果となりました。

    データで見る分岐点:決定率とキック戦略

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    試合結果を左右したデータを分析すると、興味深い傾向が見て取れます。

    両チーム合計でペナルティーが33と多かったこともあり、ラインアウト機会が多発しましたが、京産大が22回で72%、関学大が16回で69%と、両チームとも獲得率が上がり切りませんでした。この「攻撃権の移り変わりやすさ」が試合をぶつ切りにした象徴と言えます。

    次に22mライン侵入回数を見ると、京産大が13回に対し、関学大は5回と大きな差が出ました。しかし、トライ数は互いに3本であり、トライ効率(22m決定率)は関学大が京産大を大きく上回る結果となりました。京産大はPGを選択する場面もあったため一概には言えませんが、アタックの決定率の低さが浮き彫りになりました。

    アタックシェイプの対比として、京産大の9シェイプ主体の近場と安定した攻撃に対し、関学大は10シェイプとバックスボールを軸とした外側へのチャンスメイク、そしてターンオーバーからの素早い動きを特徴としていました。

    キックタイプでは、関学大のロングキックに対して、京産大はハイパントを多用する構図が見えました。特に後半、京産大はハイパントとチップキックを駆使し、キックチェイスによるプレッシャーでディフェンスラインを押し上げ、試合を有利に進めることに成功しました。


    まとめ:セットプレーとエリア戦略が勝敗を分けた激戦

    総じて、ペナルティーが非常に多い試合となり、試合のテンポが失われがちな展開となりました。その中で、いかにペナルティーをスコアに繋げられたかが勝敗の大きな要因となりました。

    京産大は、アタック継続に課題を残しつつも、後半のキックによるエリアマネジメントの成功と、モール・スクラムというFWの絶対的な武器で着実にスコアを重ね、逆転勝利を収めました。関学大は、少ないチャンスを活かした高いトライ効率モールの強さで全勝チームをギリギリまで追い詰めたことは大きな収穫であり、大学選手権に向けて自信となるでしょう。

    京産大は次戦、同じく全勝の天理大学との大一番を迎えます。この激闘を乗り越えた経験は、必ずや次戦に活かされるはずです。両チームの今後の活躍に期待が高まります。

    では。

    (文:山本陽平)

  • 【マッチレビュー】2025ウェールズ代表対アルゼンチン代表レビュー

    【マッチレビュー】2025ウェールズ代表対アルゼンチン代表レビュー

    みなさんこんにちは
    秋が通り過ぎようとしている今日この頃、いかがお過ごしでしょうか

    今回は、今週末(日本時間11/16)に行われる日本代表対ウェールズ代表の試合に向けて、ウェールズ代表対アルゼンチンの試合を確認してショートプレビューを書くことにしました

    それでは見ていきましょう

    ウェールズのアタック様相

    <主なアタック構造>

    ウェールズのアタック構造は、おそらく1−3−3−1、中盤のFWによるポッドにそれぞれ三人のFWを配置する形です
    CTBがポッドロールをこなすことは基本的にはなく、純粋にFWのみのポッドが形成されていました

    1−3−3−1を基本とするアタック構造の方向性は、原則として外方向での数的優位を作ることを目的としています
    中盤で何度か9シェイプをベースとしたFW戦でラックを作り、グラウンドの半分ほどの幅を使って人数をかけてアタックをしていました

    ただ、その基本構造の中で、ポッドの人数は変化します
    1−3−3−1の構造から、2つ目の3人ポッドを2人のポッドと1人のランナーに変化させる1−3−2−1−1、または1−3−1−2−1という形をとっていました

    この構造変化のタイミングはエッジから1つ目のポッドで接点が生まれた後のフェイズで、残った2つ目の3人ポッドから1人の選手が離脱してリードランナー、プレイメーカーの前でダミーのランナーとして走り込み、残りの2人が主にCTBの前に立つブロッカーとして役割を持っていました

    そのため、基本的には外方向にチャンスメイクをする傾向にあり、2つ目の3人ポッドを分割して分けた1人-2人のFWは、原則としてボールを受けない形をとっています
    あくまでもブロッカーとして用いられ、その裏のラインはシンプルな単線構造をとっていました

    ただ、この構造がチャンスを完全に構築していたかというと、必ずしもそういうわけではありませんでした
    なぜかというと、数的に余っている人数が多くないこと、またアルゼンチン側の外側のカバーが比較的早く回り込んでいたことが理由として挙げられます

    <構造の注意点>

    近年のラグビー界では、スイングと呼ばれるアタックプレーが多く見られるようになってきました
    スイングとは、逆サイドやラックの裏、または各選手の裏側から順目方向に回り込むことで後出しで数的優位性を作り出す動きです
    後出しで人数を増やすことによってノミネートがブレたり、外側に大きな数的優位を作ることもできます

    ウェールズは、このスイング、またはそれに類する動きが少なく、あくまでもそのタイミングでそのサイドにいた選手でアタックラインを構築していました
    そのため、数的に多くの余裕を外側に作ることができず、軽いスライドディフェンスでも十分に対応可能な状態になっていました

    ブラインドサイド、ラックから見て狭い方のサイドではエッジでキャリーした選手たちがそのままストレートに下がってきており、形としてはピストンアタックなどの攻略方法もあったとは思います

    ただ、ウェールズはその選択は取らず、広いサイドで一定の数的優位に反応してアタックラインを構築していたので、なかなか相手ディフェンスを偏らせることはできていませんでした

    <キックオプション>

    キックオプションはなくはないのですが、中央に近いエリアからエッジ方向に蹴り込んだハイパントでは相手に獲得されてトライまで持ち込まれたりと、必ずしもいい方向に試合を動かすことはできていなかったように見えました

    9番のトモス・ウィリアムズなど、キックに優れた選手もいましたが、動的な状況の中で停滞を打開できるほどのキックはなく、うまくいかないか単なる脱出に留まるかの二択で揺れていました

    <キーマンとキープレー>

    9番トモス・ウィリアムズはアタックでも重要な役割を占めており、自身で少し持ち出して味方選手を呼び込んだり、そのまま自身で持ち込むことによるゲインを見せていました
    特にゴールに近くなってくるとウィリアムズを柱として接点勝負に持ち込んでおり、打点をパスや持ち出しで切り替えることで効果的なアタックを見せていました

    ゴール前でのピックゴー、または中盤からの選手の判断による持ち出しはウェールズのアタックの脅威の中核を占めるプレイングであり、ゴール前まで来ることができれば高い確率でスコアまで繋げることができていました

    ピックゴーや9シェイプなどで徐々に押し込み、押し広げたスペースに向かって素早くさらにピックゴーを重ねることで、小さいながらも着実にゲインを切ることができ、その動きは特にゴール前で本領を発揮していました

    ウェールズのディフェンス様相

    <主なディフェンス様相>

    ウェールズのディフェンスは、近年の各国のトレンドに比べると、そこまで前にラッシュを仕掛けてくるようなディフェンスではありませんでした
    おそらく数m前進してコントロールする傾向にあり、コンタクトのシーンでは前方向のベクトルはあまり感じられませんでした

    結果として、アルゼンチンの強力なFWによるキャリーに押し込まれることにつながります
    中盤をはじめとする多くのエリアで、サポートをつけながら接点を作るアルゼンチンのキャリーに対して、押し返すことができたシーンは少なく、なかなかゲインラインを下げられない状況が続いていました

    押し込まれがちになることの弊害として、より一層前に出ることができないという負のループも見られていました
    相手のキャリーに差し込まれることによって、ラックを挟んで逆方向に回り込んで人数を調整する動き、フォールディングなどの動きが大きく下がることとなり、相手のボールアウトに対して素早く反応することが難しくなっていました

    <数的劣位への対応>

    また、数的優位を簡単に作られていたことも確認できています
    特にエッジ、15mラインよりも外側のエリアにおいて最終的に2対1を作られてバックスリーに大きく前に出られ、キックやパスを使ってトライまで完結される、というシーンも多く見られました

    この要因としては、先ほど挙げた「接点で前に出られる」という要素のほかに、ブラインドサイドに人数が余っている、という要因が考えられます
    アルゼンチン側がブラインドサイドに残している人数よりもウェールズ側が残している人数が多く、数的優位を作られている形です

    ブラインドサイドに人数が残っている要因として、人数ベースではなく比率ベースでディフェンスラインを作っていることが想像できます

    人数ベースというのは、相手の人数に合わせてラックに対して両サイドの人数をコントロールする形で、比率ベースというのはグラウンドに対して等間隔に選手を並べることでエリアをカバーするという形です

    ウェールズのディフェンスは、見ていると比率ベースであるように見えることが多く、アルゼンチン側がオープンサイドに人数を割いているときであってもブラインドサイドに残っている形が多く見られていました

    接点で前に出られてしまうということもこの傾向に拍車をかけており、接点に人数をかけなければいけない状態が多くなりました
    その結果、順目方向の選手が接点に参加したりすることで順目方向の人数が減り、その減った人数に対して補充としてフォールディングする選手が不足することで、順目方向により一層の数的優位を作られていました

    <キックへの対応>

    キック処理の場面では、ハイボールへの対応に苦慮していた様子が見受けられました
    ボックスキックやハイパントを再獲得され、キック主体のゲインを獲得されることにつながっていました

    この現象の要因として、FBに入ったブレア・マレーの小柄な体格が影響していることが考えられます
    マレーは身体能力が高い選手ですが、身長は173cmと小柄で、ハイボールの競り合いの部分で相手に上を取られるシーンが目立っていました
    対面に入ったサンティアゴ・カレーラスも、極端には大きくないものと183cmと身長でマレーを上回り、ジャンプ力で制空権を押さえていました

    ウェールズのスタッツ

    テリトリーは46%、ポゼッションは47%と、アルゼンチンに一定水準上回れる結果になりました
    特に大きく差をつけられた状態で迎えたラスト10分間ではポゼッションは37%と、終盤は少し切れてしまったような数値を示しています

    敵陣22m内への侵入回数は6回と、14回のアルゼンチンに対して大きく差をつけられる結果となりました
    しかし、侵入回数あたりのスコアを見ると、ウェールズが4.6、アルゼンチンが3.7と順序が逆転する結果になっています

    ここまで述べた内容やこの後触れる内容につなげると、ウェールズはゴール前に行くことができれば高い水準でスコアを獲得することができると言えます
    しかし、戦術的に敵陣22mに入った回数が少ないからこそ、この結果になりました
    同じ比率で侵入回数がアルゼンチンと同水準であれば、単純計算で64点ほどスコアすることができていた計算になります

    ポゼッションの中でベーシックスタッツを見ると、キャリーは134回、パスは183回、キックは26回という数値を示しました
    キャリーに対するパスの比率は1.36と少しキャリー優位の数値でした
    つまり、パスを重ねることなくキャリーに持ち込むことが多いということであり、接点から試合を作ろうとした傾向を示しています

    また、キックに対するキャリーの比率は5.15と、約5回のキャリーが起きるごとにキックをしていると言えます
    ちなみに日本はアイルランド戦でちょうど5という数値をとっているため、日本と同水準でキックをしているということもできるでしょう

    一方でラインブレイクはアルゼンチンの14回に対して6回と控えめな数値を取り、ブレイクを生み出すことはできていませんでした
    ポストコンタクトメーターも100m以上上回られており、構造的にも物理的にも相手により前に出られていたと言えます

    ターンオーバーを見ると、獲得は7回と悪くない数値で、失った回数も14回と相手より少ない数値を示していました
    ただ、それでも勝てないというのが実情であり、ターンオーバーをした後のムーブや、失った後のムーブに課題が残っている可能性もあります

    まとめ

    ウェールズは、スコア効率やターンオーバーというスタッツでアルゼンチンを上回る成果を見せたものの、アタックの停滞やディフェンスの精度で後手に回る結果になりました

    日本代表としては、勝利は十分に射程圏内であると考えられます
    ウェールズ代表を自陣深くに入れず、中盤で試合を動かすことができれば、ウェールズはブレイクスル手段が少ないために大きく前進される可能性も低減することができます

    ただ、逆に言えばペナルティが嵩んで自陣深くに入られたり、接点で前に出られてリズムを掴まれたりすると、効率のいいアタックでスコアに繋げられることも考えられます

    日本代表にとっては年末のバンド分けに向けて絶対に落とすことができない一線でもあるので、注目していきましょう

  • 【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:京都産業大学対立命館大学

    【マッチレビュー】2025大学ラグビー関西リーグ:京都産業大学対立命館大学

    「間合い」と「プラン」の攻防:全勝京産大が粘る立命館を振り切った勝負の分岐点

    この一戦は、全勝で首位を走る京都産業大学と、一勝目が待たれる立命館大学の対戦であり、単なる星の差以上のドラマを予感させるものでした。特に春季リーグ決勝で立命館が京産大を破っている事実は、立命館が「打倒京産」の策を持っていることを示唆しており、試合前から期待感を高めていました。

    試合展開:主導権とスコアの妙

    試合序盤、主導権を握ったのは立命館大学でした。立ち上がりの1stスクラムでペナルティーを獲得し、勢いに乗ると、SHからのボックスキックと、そこに対する「キックチェイス」によってターンオーバーを連発しました。ポゼッションとテリトリーで優位に立ち、試合を京産大サイドで進めることに成功します。立命館が意図した「キッキングゲーム」と「チェイスによるプレッシャー」が完全に機能した時間帯でした。

    しかし、スコア面で優位に立ったのは京都産業大学でした。少ないチャンス、特にターンオーバーからのカウンターアタックにおいて、走力とパワーを兼ね備える大学屈指のNO8シオネ・ポルテレ選手がトライを奪うなど、京産大は「チャンスを的確にスコアに繋げる」決定力の高さを見せつけます。

    その後の試合は、立命館がポゼッションとテリトリーで攻め込み、京産大が粘り強いディフェンスとカウンター、そしてセットプレーからスコアを重ねるという、一進一退の攻防が続きました。立命館はリードを許しても突き放されない粘りを見せ、緊迫した展開が終盤まで続きます。

    試合の行方を決定づけたのは、後半70分を超えたあたりの時間帯でした。京産大が「伝家の宝刀」であるモールでトライを奪い、立命館の抵抗を打ち破ります。このトライで流れを完全に引き寄せた京産大は、その後も連続攻撃とラインブレイクをスコアに繋げ、最終スコア47-19で勝利。スコア以上に立命館の善戦が光るものの、最終的に京産大が勝ち点5を獲得する盤石の試合運びを見せました。


    京都産業大学:劣勢でも勝ち切る「風格」と「間合い」

    ポゼッション、テリトリーで劣勢に立たされながらも勝ち切った京産大の強さは、その「間合い」と「決定力」に集約されます。

    アタック:「自分たちの間合い」の徹底

    京産大のアタックの最大の特長は、テンポの緩急を巧みに操る「自分たちの間合い」を大事にする点です。 スクラムハーフ髙木城治選手は、ブレイクが起こった際には圧倒的なテンポでボールを捌く能力を持ちながらも、中盤や敵陣22m手前では、あえてFWにボールを預け、個々のフィジカルと近場の圧力を活かす「間合い」でボールを運びます。 

    一方で、一度ブレイクが起きると、ギアを一段、二段と上げてボールのテンポを一気に加速させます。このブレイクの起点を担ったのがCTBの奈須 貴大選手です。絶妙な深さからギャップを見つけ、しなやかなランと力強さでディフェンスラインを切り裂くランニングは今シーズンも健在で、京産大アタックの脅威であり続けました。 試合中盤までは繋ぎの部分や連携にわずかなミスも見られましたが、チーム連携が深まることで、さらに加速する可能性を秘めています。

    FWの間合い:「スクラム」と「モール」

    もう一つの「間合い」は、FWのセットプレーにあります。スクラムは5度のペナルティー獲得でアタックの起点となり、その圧力は健在です。 モールは立命館のサックディフェンスに苦戦し、70分まで封じ込められていましたが、試合を決定づけたのはやはりゴール前でのモールでした。ゴール前まで持っていけば「取り切れる」という絶対的な信頼を持つモールと、近場でのFWの圧力は、京産大の強さの根幹であり、今後も注目です。

    ディフェンス:粘り強さと22m内での精度

    ディフェンスは、ラインスピードに重きを置くより、「ブレイクダウン」にこだわったプレーが多く見られました。特に折り返しの10シェイプや9シェイプでは、6番平野龍選手、7番で主将の伊藤森心選手を中心に飛び出し、素早い接点への圧力をかけました。 

    ブレイクダウンでの圧力はターンオーバーを引き起こす場面もありましたが、テンポよく出された際には次のフェーズで遅れを取り、エッジでゲインを許すケースも散見されました。エッジの人数不足はバックスの個人のディフェンスレンジでカバーしている印象を受けますが、課題として残ります。 

    しかし、特筆すべきは22m内でのフィールドディフェンスの精度です。最大16フェーズにも及ぶ粘り強さで耐え抜き、スティールからペナルティーを獲得したプレーは、この試合の京産大の「我慢強さ」を象徴するものでした。


    立命館大学:「プランアタック」と「キッキングゲーム」の巧みさ

    全敗ながら、立命館大学は試合全体を通して理想的なアタックとキッキングテリトリーを獲得し、京都産業大学を苦しめました。

    アタック:「プランアタックとキッキングゲーム」

    立命館のラグビーは、「プランアタック」と「キッキングゲーム」に集約されます。

    キッキングゲームは、SH香山創祐選手やSO初田 航汰選手からのハイパントキックと、それに続く3人のキックチェイス、ラックへの素早いプレッシャーからターンオーバーを狙うという、高精度な連動を見せ、京産大に大きなプレッシャーを与えました。今シーズンの関西リーグで最もキックを多用し、テリトリー獲得と空中戦を作り出すという両面で、その意識と精度、チェイスのレベルの高さが際立ちました。

    プランアタックでは、事前に用意されたシークエンス(連続攻撃の型)をここぞの場面で繰り出し、スコアに繋げました。特に特徴的だったのは、1322のポッド配置において、通常FWの後ろ(バックドア)に配置されるセンターを、外側に配置し、外側での優位性を生み出す工夫です。このシークエンスはブレイクを生み出し、一気にトライまで取り切る力を見せましたが、ミドルゾーンが手薄になり、ターンオーバーを誘発しやすいという表裏一体の課題も露呈しました。

    FW:ラインアウトの精密さとセットプレーの工夫

    ラインアウトの獲得精度は素晴らしく、17回中15回という高い成功率を記録。5メン、6メン、オールメンを巧みに使い分け、フロント、ミドル、バックへのボール供給に工夫を凝らす獲得の精度は、関西随一の強みと言えます。 また、ラインアウトからモールを意識させた後のピールオフで、イエローカードで人数が少ないディフェンスのスペースを突き、トライを獲得するなど、工夫されたセットプレーアタックは京産大を揺さぶりました。

    課題:ゴール前での仕留めの精度

    立命館の最大の課題は、スタッツにも現れている「ゴール前での仕留めの部分」です。今回のスコアは「22m外から」の攻撃スタートが多く繋がっており、ゴール前まで迫ると、ディフェンスラインが強固になり、プレッシャーを受けてターンオーバーを許すケースが多く見られました。22m内での決定率が勝敗を分けた大きな要因と言えます。

    ディフェンス:ダブルタックルとラックへのラッシュ

    立命館のディフェンスは、ダブルタックルの強度が高く、相手をドミネイトする場面が目立ちました。テイクダウン後の素早い起き上がりとラックへのラッシュがチームとして徹底されており、素晴らしいターンオーバーを引き出しました。前半は規律と共に前へ出るプレッシャーディフェンスが機能していましたが、足が止まる後半終盤にギャップや横の連携が乱れ、崩しきられる場面があり、ここは今後の課題となるでしょう。モールディフェンスについては、サックとファイトを使い分け、京産大の強みを70分まで封じ込めた対策は一定の評価ができます。


    データから見る勝負の分岐点

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    互いにアタックの機会を多く得ていたことがスタッツから裏付けられます。
    最も勝負を分けたのは、互いに10回、11回とあった「敵陣22mエリア内の決定率」でした。立命館は敵陣深くでポゼッションを持ちながら、自分たちの少ないミスを京産大に取り切られるなど、ゴール前での精度の差が敗因となりました。 アタックスタイルにおいては、京産大がFW中心の9シェイプに重きを置くのに対し、立命館が3割近くをバックラインアタックに割いていることは、「外側にチャンスメイクを求める」立命館のプランアタックを象徴しています。

    まとめ

    最終スコアこそ開きましたが、この試合は後半の最後まで勝敗の行方が分からない、非常に質の高い一戦でした。立命館大学は、巧妙なゲームマネジメントと、工夫を凝らしたシークエンスアタック、そして高精度のキッキングゲームという「打倒京産」のプランを披露し、全勝チームを大いに苦しめました。

    京都産業大学は、ポゼッションとテリトリーの劣勢を、大学屈指の決定力、セットプレーの圧力、そして22m内での鉄壁のディフェンスという「風格」で乗り越えました。自慢のモールに加えて、今後のアタック連携がさらに深まれば、京産大はさらに手が付けられないチームとなるでしょう。
    負けられない一戦で見せた立命館のラグビー、そしてそれを乗り越えた京産大の盤石の強さ。関西大学ラグビーリーグ戦の面白さを凝縮した見応えのある試合でした。

    では。

    (文:山本陽平)