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  • 【マッチレビュー】2025ジョージア代表マッチプレビュー

    【マッチレビュー】2025ジョージア代表マッチプレビュー

    日本代表との試合に向けて

    みなさんこんにちは
    日本代表の試合も、残すはジョージア戦のみとなりました

    今回は、そのジョージア戦に向けて、ジョージア代表がこの秋戦ったアメリカ戦とカナダ戦を振り返りながら、どのようなチームであるかを確認していきたいと思います

    ◆ジョージアのアタック構造

    ジョージアのアタックは、基本的には構造的に大きく崩そうという動きというよりかは、接点で相手を上回ることでリズムを作り出そうとするイメージです
    セットピースから始まるストライクプレーでも前に出る意識が強く、個々人の強さでの打開を図ってきます

    アタックのベースになるのは3人ポッドで、接点を安定化させながらも3人ポッドによる「アタックの硬さ」を生かしながら前に出てきます
    12番も積極的にポッドに入って接点を作ったりと、チーム全体としてポッドをベースにしていることがわかります

    基本的な比率としては1−3−3−1になっているかと思いますが、停滞したときは3人ポッドをエッジ方向に回り込ませて3−3−2を作ったり、セットピースからの連続フェイズで中央の6人を4−2でスプリットしたりと、多くの工夫が見られました

    基本的なトライ構造としては、後述するセットピースで圧倒し、敵陣深くにキックで入るところから始まります
    敵陣深くから始まったポゼッションでポッドをベースとして連続アタックを繰り広げ、相手のディフェンスをラック近くに誘導することで生まれる外方向の数的優位性を生かし、BKで取り切るという形がアタックの土台になっていました

    ポッドの使い方もうまく、できるだけ外側の相手にコミットするように、少し流れながら相手との接点を作ります
    そのことによって相手ディフェンスはより一層ラックを挟んで反対方向にフォールディングをする必要が生まれ、そこが滞ると外方向への数的優位が生まれる、という構造になっています

    また、アタックの脅威度という意味ではBKの攻撃力も無視できません
    14番のシャルバ・アプチアウリはカナダ戦でハットトリックを達成していたりと、バックスリーに走力のある選手が揃っており、ラインアウトモールといったセットピース起点のトライと同じくらい、バックス展開を使ったトライも見られています

    BKがリードするアタックの形としては、スイングと呼ばれる形が好んで用いられていました
    スイングとは、ラックやセットピースの裏、または反対側からアタックラインに対して回り込むように参加し、後出しで数的優位を作り出そうとする動きです

    ジョージアのBKはセットピースからのシークエンスなどで好んでこの動きを用いており、基本的なフォーマットとして定着していることが予想されます
    全体的にミスも少なくないのでチャンスを作りきれないシーンもありますが、日本代表はスイングで数的優位を創られることに後手に回る傾向もあるので、安易な楽観視はできません

    ◆ジョージアのキック戦略

    ジョージアのキックの基本戦略は「パント&ラッシュ」にあると考えられます
    つまり、高い軌道のボールを蹴り上げ、確保した相手選手に激しいプレッシャーをかける動きをベースにしています

    グラウンドのハーフラインから自陣22mまでの間のエリアでは、特に好んでこのパント&ラッシュを使っており、相手にプレッシャーをかけてターンオーバーを果たしているシーンが散見されました

    再獲得を狙っているシーンも見られてはいたのですが、平均的な飛距離は20〜25mあたりと再獲得を狙うボックスパントとしては少し長めの印象で、再獲得にそこまでこだわっていないのではないか、と予想しています
    ただ不安定なだけ、という可能性もあるので、ここはさまざまな意味でも注意が必要ではないかと考えました

    パント系のボールを再獲得ができた際は、かなり早いフェイズで相手の裏に蹴り込んでくることがあります
    エリアのコントロールはかなり意識している様子で、敵陣22mよりも自陣側のエリアからでも中盤でそこまでキャリーを繰り返さずに裏を狙う様子が普段のフェイズでも見られています

    ただ、相手のキックを踏まえた全体的なキック戦略という観点でいくと、不安定な様相も見られています
    想定した位置関係が甘いのか相手のロングキックで裏を取られるシーンが散見され、バックフィールドの選手が後退してボールを確保しにいくシーンが散見されていました

    相手のパント系のキックに対しても、クリーンキャッチの精度はそこまで高くないように見えます
    ディフェンスに参加していたフロントラインの戻りも遅く、ミスへの対応が後手に回ることもありました

    ◆ジョージアのセットピース

    ジョージアの強みは、周知の事実となりますが、何よりもFWによるセットピースです
    スクラムもラインアウトも強烈で、相手のペナルティを誘発したり、いい形でのポゼッションを作り出したりと、セットピースの強さからアタックの安定感を出しています

    特に、ランキング下位の国との試合ということもあってか、スクラムでは2試合とも相手を圧倒しており、どちらボールでもスクラムペナルティを獲得したり、反則にならずともクリーンに相手ボールをスクラム内で奪ったりしていました
    早い時間帯では反則を取られるシーンもありますが、勘を掴んでくると手がつけられなくなる印象です

    また、ラインアウトからのモールも強力で、2試合でも複数のモールトライを見せています
    ゴール前からは複雑なムーブを使わずにモールを組んで押し込もうとしてくるので、最低限ここからの失点を抑えることが試合のキーになってきます

    一方で、中盤でのマイボールでのラインアウトが安定しているかというと必ずしもそういうわけでもなく、競り合うことによって意外とミスが起きている印象です
    直近の試合であるカナダ戦では73%の獲得率に止まったりと、ここに関しては不安定な様相を見せていました

    ◆ジョージアのディフェンス

    ジョージアのディフェンスは「接点の強さ」「順目に回る意識」がキーになってくるのではないかと見ています
    これまでの項目でも触れてきた通り、接点という観点では安定感があるジョージア代表は、前に出るベクトルが強いディフェンスをしています

    特に9シェイプや10シェイプといったポッドが、キャッチ&ラン、つまり走り込みながらダイレクトにボールを受けるというよりも、ボールを受けてから前に出ようとする動きをする場合には無類の強さを誇っています
    ディフェンス間のスペーシングも狭めで、接点で圧力をかけようとしていることが予想されます

    反面ダイレクトな動きやフラット気味に受けてキャリーを見せる相手に対しては少し受け身になる様子もあり、接点をどちらが優位で作るかによってディフェンスの質が変わってきます

    順目に回る意識に関しては非常に強く、FWの選手も丁寧に順目方向に回ってきます
    オープンサイドにディフェンスの人数をかけることによって、ディフェンス自体の安定感を担保しようとしていることが考えられます

    順目へのフォールディングにこだわる理由としては、おそらくできる限り前に出続けたいという意識があるのではないかと思います
    試合の様子を見ている限り、あまりスライドする形のディフェンスを取らないようにしている様子が見受けられ、ラッシュアップとまではいかないまでも、エッジに立つ選手までしっかりと相手ラインに詰めようとする様子が見られました

    ただ、順目方向への意識と前に出る意識が重なった結果、ラックに近い位置に若干のウィークポイントが生まれている可能性があります

    順目に回る中でそこまでピラーに対する意識が高いわけでもなく、ピラーに入った選手も前に出ることを優先するので、結果的にラックから最も近いスペースが薄くなりやすく、SH役のパスダミーなどで前に出られていました
    もしかすると、日本代表の竹内選手が得意とするようなタックルを受けてからのリリース→再キャリーのフローがハマるかもしれません

    ◆まとめと試合の展望

    ジョージア代表と戦う上では、最低限「セットピース」「接点」で上回る必要があります
    この二つの要素をベースにスコアしたり、アタックのリズムを使ってくるので、ここを封鎖することで相手のアタックを抑え込むことができます

    現状多く注目を集めているのはFW陣ですが、個人的にはBKへの注意も払わなければいけないと思っています
    コントロールされたアタックとエッジでのブレイクを作り出しているのは間違いなくBKのスキルだと思っているので、ここに関してもディフェンスからプレッシャーをかけていきたいところです

    また、「ハイボール処理」「スイングによる数的優位」にも注意が必要です
    日本代表はオーストラリア戦から始まる強豪との連戦で、これらの要素に安定感は出てきたものの後手に回るシーンもありました
    今シーズンの終わりに向けて、これらの要素で相手を抑え込むことで試合を締めることが求められます

    今回は以上になります
    それでは!

  • 【マッチレビュー】2025ウェールズ代表対アルゼンチン代表レビュー

    【マッチレビュー】2025ウェールズ代表対アルゼンチン代表レビュー

    みなさんこんにちは
    秋が通り過ぎようとしている今日この頃、いかがお過ごしでしょうか

    今回は、今週末(日本時間11/16)に行われる日本代表対ウェールズ代表の試合に向けて、ウェールズ代表対アルゼンチンの試合を確認してショートプレビューを書くことにしました

    それでは見ていきましょう

    ウェールズのアタック様相

    <主なアタック構造>

    ウェールズのアタック構造は、おそらく1−3−3−1、中盤のFWによるポッドにそれぞれ三人のFWを配置する形です
    CTBがポッドロールをこなすことは基本的にはなく、純粋にFWのみのポッドが形成されていました

    1−3−3−1を基本とするアタック構造の方向性は、原則として外方向での数的優位を作ることを目的としています
    中盤で何度か9シェイプをベースとしたFW戦でラックを作り、グラウンドの半分ほどの幅を使って人数をかけてアタックをしていました

    ただ、その基本構造の中で、ポッドの人数は変化します
    1−3−3−1の構造から、2つ目の3人ポッドを2人のポッドと1人のランナーに変化させる1−3−2−1−1、または1−3−1−2−1という形をとっていました

    この構造変化のタイミングはエッジから1つ目のポッドで接点が生まれた後のフェイズで、残った2つ目の3人ポッドから1人の選手が離脱してリードランナー、プレイメーカーの前でダミーのランナーとして走り込み、残りの2人が主にCTBの前に立つブロッカーとして役割を持っていました

    そのため、基本的には外方向にチャンスメイクをする傾向にあり、2つ目の3人ポッドを分割して分けた1人-2人のFWは、原則としてボールを受けない形をとっています
    あくまでもブロッカーとして用いられ、その裏のラインはシンプルな単線構造をとっていました

    ただ、この構造がチャンスを完全に構築していたかというと、必ずしもそういうわけではありませんでした
    なぜかというと、数的に余っている人数が多くないこと、またアルゼンチン側の外側のカバーが比較的早く回り込んでいたことが理由として挙げられます

    <構造の注意点>

    近年のラグビー界では、スイングと呼ばれるアタックプレーが多く見られるようになってきました
    スイングとは、逆サイドやラックの裏、または各選手の裏側から順目方向に回り込むことで後出しで数的優位性を作り出す動きです
    後出しで人数を増やすことによってノミネートがブレたり、外側に大きな数的優位を作ることもできます

    ウェールズは、このスイング、またはそれに類する動きが少なく、あくまでもそのタイミングでそのサイドにいた選手でアタックラインを構築していました
    そのため、数的に多くの余裕を外側に作ることができず、軽いスライドディフェンスでも十分に対応可能な状態になっていました

    ブラインドサイド、ラックから見て狭い方のサイドではエッジでキャリーした選手たちがそのままストレートに下がってきており、形としてはピストンアタックなどの攻略方法もあったとは思います

    ただ、ウェールズはその選択は取らず、広いサイドで一定の数的優位に反応してアタックラインを構築していたので、なかなか相手ディフェンスを偏らせることはできていませんでした

    <キックオプション>

    キックオプションはなくはないのですが、中央に近いエリアからエッジ方向に蹴り込んだハイパントでは相手に獲得されてトライまで持ち込まれたりと、必ずしもいい方向に試合を動かすことはできていなかったように見えました

    9番のトモス・ウィリアムズなど、キックに優れた選手もいましたが、動的な状況の中で停滞を打開できるほどのキックはなく、うまくいかないか単なる脱出に留まるかの二択で揺れていました

    <キーマンとキープレー>

    9番トモス・ウィリアムズはアタックでも重要な役割を占めており、自身で少し持ち出して味方選手を呼び込んだり、そのまま自身で持ち込むことによるゲインを見せていました
    特にゴールに近くなってくるとウィリアムズを柱として接点勝負に持ち込んでおり、打点をパスや持ち出しで切り替えることで効果的なアタックを見せていました

    ゴール前でのピックゴー、または中盤からの選手の判断による持ち出しはウェールズのアタックの脅威の中核を占めるプレイングであり、ゴール前まで来ることができれば高い確率でスコアまで繋げることができていました

    ピックゴーや9シェイプなどで徐々に押し込み、押し広げたスペースに向かって素早くさらにピックゴーを重ねることで、小さいながらも着実にゲインを切ることができ、その動きは特にゴール前で本領を発揮していました

    ウェールズのディフェンス様相

    <主なディフェンス様相>

    ウェールズのディフェンスは、近年の各国のトレンドに比べると、そこまで前にラッシュを仕掛けてくるようなディフェンスではありませんでした
    おそらく数m前進してコントロールする傾向にあり、コンタクトのシーンでは前方向のベクトルはあまり感じられませんでした

    結果として、アルゼンチンの強力なFWによるキャリーに押し込まれることにつながります
    中盤をはじめとする多くのエリアで、サポートをつけながら接点を作るアルゼンチンのキャリーに対して、押し返すことができたシーンは少なく、なかなかゲインラインを下げられない状況が続いていました

    押し込まれがちになることの弊害として、より一層前に出ることができないという負のループも見られていました
    相手のキャリーに差し込まれることによって、ラックを挟んで逆方向に回り込んで人数を調整する動き、フォールディングなどの動きが大きく下がることとなり、相手のボールアウトに対して素早く反応することが難しくなっていました

    <数的劣位への対応>

    また、数的優位を簡単に作られていたことも確認できています
    特にエッジ、15mラインよりも外側のエリアにおいて最終的に2対1を作られてバックスリーに大きく前に出られ、キックやパスを使ってトライまで完結される、というシーンも多く見られました

    この要因としては、先ほど挙げた「接点で前に出られる」という要素のほかに、ブラインドサイドに人数が余っている、という要因が考えられます
    アルゼンチン側がブラインドサイドに残している人数よりもウェールズ側が残している人数が多く、数的優位を作られている形です

    ブラインドサイドに人数が残っている要因として、人数ベースではなく比率ベースでディフェンスラインを作っていることが想像できます

    人数ベースというのは、相手の人数に合わせてラックに対して両サイドの人数をコントロールする形で、比率ベースというのはグラウンドに対して等間隔に選手を並べることでエリアをカバーするという形です

    ウェールズのディフェンスは、見ていると比率ベースであるように見えることが多く、アルゼンチン側がオープンサイドに人数を割いているときであってもブラインドサイドに残っている形が多く見られていました

    接点で前に出られてしまうということもこの傾向に拍車をかけており、接点に人数をかけなければいけない状態が多くなりました
    その結果、順目方向の選手が接点に参加したりすることで順目方向の人数が減り、その減った人数に対して補充としてフォールディングする選手が不足することで、順目方向により一層の数的優位を作られていました

    <キックへの対応>

    キック処理の場面では、ハイボールへの対応に苦慮していた様子が見受けられました
    ボックスキックやハイパントを再獲得され、キック主体のゲインを獲得されることにつながっていました

    この現象の要因として、FBに入ったブレア・マレーの小柄な体格が影響していることが考えられます
    マレーは身体能力が高い選手ですが、身長は173cmと小柄で、ハイボールの競り合いの部分で相手に上を取られるシーンが目立っていました
    対面に入ったサンティアゴ・カレーラスも、極端には大きくないものと183cmと身長でマレーを上回り、ジャンプ力で制空権を押さえていました

    ウェールズのスタッツ

    テリトリーは46%、ポゼッションは47%と、アルゼンチンに一定水準上回れる結果になりました
    特に大きく差をつけられた状態で迎えたラスト10分間ではポゼッションは37%と、終盤は少し切れてしまったような数値を示しています

    敵陣22m内への侵入回数は6回と、14回のアルゼンチンに対して大きく差をつけられる結果となりました
    しかし、侵入回数あたりのスコアを見ると、ウェールズが4.6、アルゼンチンが3.7と順序が逆転する結果になっています

    ここまで述べた内容やこの後触れる内容につなげると、ウェールズはゴール前に行くことができれば高い水準でスコアを獲得することができると言えます
    しかし、戦術的に敵陣22mに入った回数が少ないからこそ、この結果になりました
    同じ比率で侵入回数がアルゼンチンと同水準であれば、単純計算で64点ほどスコアすることができていた計算になります

    ポゼッションの中でベーシックスタッツを見ると、キャリーは134回、パスは183回、キックは26回という数値を示しました
    キャリーに対するパスの比率は1.36と少しキャリー優位の数値でした
    つまり、パスを重ねることなくキャリーに持ち込むことが多いということであり、接点から試合を作ろうとした傾向を示しています

    また、キックに対するキャリーの比率は5.15と、約5回のキャリーが起きるごとにキックをしていると言えます
    ちなみに日本はアイルランド戦でちょうど5という数値をとっているため、日本と同水準でキックをしているということもできるでしょう

    一方でラインブレイクはアルゼンチンの14回に対して6回と控えめな数値を取り、ブレイクを生み出すことはできていませんでした
    ポストコンタクトメーターも100m以上上回られており、構造的にも物理的にも相手により前に出られていたと言えます

    ターンオーバーを見ると、獲得は7回と悪くない数値で、失った回数も14回と相手より少ない数値を示していました
    ただ、それでも勝てないというのが実情であり、ターンオーバーをした後のムーブや、失った後のムーブに課題が残っている可能性もあります

    まとめ

    ウェールズは、スコア効率やターンオーバーというスタッツでアルゼンチンを上回る成果を見せたものの、アタックの停滞やディフェンスの精度で後手に回る結果になりました

    日本代表としては、勝利は十分に射程圏内であると考えられます
    ウェールズ代表を自陣深くに入れず、中盤で試合を動かすことができれば、ウェールズはブレイクスル手段が少ないために大きく前進される可能性も低減することができます

    ただ、逆に言えばペナルティが嵩んで自陣深くに入られたり、接点で前に出られてリズムを掴まれたりすると、効率のいいアタックでスコアに繋げられることも考えられます

    日本代表にとっては年末のバンド分けに向けて絶対に落とすことができない一線でもあるので、注目していきましょう

  • 【マッチレビュー】2025ニュージーランド代表対フランス代表第1戦

    【マッチレビュー】2025ニュージーランド代表対フランス代表第1戦

    不運な状況でも掴んだ勝利

    みなさんこんにちは
    暑い中いかがお過ごしでしょうか

    さて、今回は日本時間7/5に行われたテストマッチから、ニュージーランド代表対フランス代表の試合について、レビューをしていきたいと思います

    それでは順番に見ていきましょう

    ニュージーランド代表のラグビー

    テンポを上げる様相を見せていた

    ニュージーランドは、コーチの試合前の発言通り、テンポを重視したラグビーをしていました
    SHからの球出しも早く、素早くセットしてアタックのテンポを上げようとする様子が見られています。

    テンポを上げるメリットとして、相手のセットよりも先に攻撃を繰り広げることができるという点があります。
    相手よりも先にセットをしてアタックをすることができれば、位置的な優位性や数的優位性を活かしてアタックをすることができます。

    ニュージーランド代表がテンポを意識していた傾向の証左として、球出しの速さの他にも「ピックゴーを多く用いていた」という様相があります
    ピックゴーはパスを介さずにダイレクトにラックからボールを持ち出す動きで、タイミングと状況が整えば後ろに下げるリスクを負うことなく前に出ることができる手段でもあります

    SHに入ったキャム・ロイガード選手とコルテツ・ラティマ選手はともにテンポを上げることのできるSHで、自分でボールを持ち出したりと攻撃的な様相も見せています
    ラックの周辺にポジショニングしているFWの選手に対して、SHという特性を活かしたアタックをすることで、ミスマッチをつくことができるという特徴もありました

    ポッドを中心としたアタック構造

    アタックの起点となるのは、ラックからボールを受ける3人の選手によって構成される9シェイプで、基本的に中盤には3人の選手によるポッドが二つ配置されます
    多くのフェイズではこれらの基本的な構造を用いてアタックをしていました

    ただし、注意したいのは必ずしも3人のポッドだけでアタックを作り上げているわけではないという点です
    10シェイプにおいては、特にテンポをあげてバックラインを使おうとする時などに、2人の選手でポッドを完結させるようなシーンも見られていました

    また、ジェネラルなシーンでもポッドの人数は可変的で、FWの配置の人数が変わるというよりも、BKの選手が参加することで人数が変わっているシーンが見受けられました

    12番のジョーディ・バレット選手や13番のビリー・プロクター選手は、ポッドに対して第3・第4の構成員として参加しています
    ポッドに参加する位置はフェイズによってまばらで、中央に位置することが多い一方で、端に位置するシーンも見られていました

    CTB陣がポッドに参加するメリットとして、(基本的に)ハンドリングに長けたBKの選手をポッドに組み込むことによってアタックを安定化させることができます
    また、ポッドの一員としてCTBの選手を組み込むことによって、さらに外側でポッドを作ることもできるので、ポッドの数を増やしてバリエーションを作ることができるという側面もあります

    そういったBKの選手を組み込みながら、ポッドは4人や5人で構成されているシーンもありました
    後述するフランス代表のポッドでも似たようなシーンが見られていましたが、ニュージーランド代表の方はBKが中央にポッドをスプリットするように参加する形で、ポッドにボールが渡ってからのオプションを増やしていました

    プレイメーカーによるゲームコントロール

    ゲームのコントロールをしていたのは10番のボーデン・バレット選手と(不運なことに前半すぐに交代出場した)23番のダミアン・マッケンジー選手でした
    両者はスーパーラグビーで共に10番をつけている選手で、プレイメーカーとして早い段階でボールを受けてコントロールしていました

    両選手ともに判断に優れた選手ですが、特にボーデン・バレット選手は自分の判断の優先順位が上がった際にはポッドを破るように前に出ながらアタックラインに参加するようなシーンもあります
    マッケンジー選手はどちらかというと少し後ろ重心のアタック参加で、少し空間があるような状況でボールを受けているように見受けられました

    また、2選手を含むバックスラインが安易に順目に回らないようにしているシーンも見られていました
    特にゴール前でのアタックシーンにおいて、BKの選手は比較的ラックに近い位置どりをしながら滞留し、状況判断でチャンスと見た場合には展開してアタックラインを形成していました

    どちらのサイドにも動的にアタックラインを作ることができる状況を準備することによって、相手のディフェンスに対して後出しでセットをすることができます
    特にサイドを切り替えながら動的にアタックラインを作る「スイング」という動きにコンパクトに繋げることもできるため、より意思決定と状況判断に応じた動きであると言えます

    フランス代表のラグビー

    特徴的なポッドによるコントロール

    基本的にはこの特徴に尽きるようなラグビー構造に見えました
    各選手のロールは似通ったものも多く、明確な位置関係・役割の分担があるというよりは、瞬間瞬間の最適解になる選手が定められたポジションに移動するというような形をとっていたように感じます

    フランスのポッドの特徴は、極めて流動的で余白のある構造をしていることです
    基本的な構造としては3人構成を中心としながらも、多くのシーンで4人から5人、多い時は6人ほどの集団一直線上に並んだような構造をしています

    果たしてポッドと呼ぶのが正しいのかわからないような構造をしていますが、ここではポッドと呼ぶことにします
    フランスのポッドはフェイズによって人数が変わり、わかりやすく尖った形というよりは、線形の構造をしています
    イメージとしては、バックスラインに対してFWのフロントラインが傘のように被さっている状態です

    おそらくアタックの中心になっているのはポッドを使った個々のスキルや優位性を使ったキャリーで、ポッドを使ったキャリーでいかに前に出るかといった点の重要度が高いラグビーをしています
    あえて言及するのであれば、「FWで縦を突き、BKで横に広げる」といった極めてクラシカルな構造かもしれません

    このポッド構造には、BKの選手が参加することもあります
    12番のガエル・フィクーや13番のエミリアン・ゲイルトンは、テンポの加速に合わせてフロントラインに立つようになり、フロントラインとバックラインの境界が曖昧になるようになっていました

    シーンによっては11番のギャビン・ビリエールが参加するようなシーンも見られています
    しかし、ポッドに参加する際にBK特有のロールがあるようには感じられず、あくまでもポッドを構成する一選手としてのプレーに徹していたようにも感じます
    そのような点で、選手たちのロールは似通っていました

    ポッド内のプレースタイル

    また、ポッド内のパスワークが多様だった点についても注目しています
    基本的にポッドの中のプレースタイルとしては、そのまま自身でキャリーに持ち込むか、一つ横の選手にパスをする、またはバックラインに対してスイベルパスをする、といった形が考えられます

    フランス代表は、このパターンの中で「パス」に特化したプレイングを見せていました
    スイベルパス自体はそう多くはなかったように感じていますが、ポッドの中でパスを使って打点を切り替えるという点において、他の国にはあまり見られないようなバリエーションを見せていたように思います

    まずは基本となるティップオンパスですが、こちらもある程度「好んで用いている」くらいの頻度で見られていたように感じます
    こちらのパスは打点を切り替えることに活用されており、相手とコンタクトする直前でパスを出すことで1対1を安定して作ることができていました

    また、特徴的だったのはポッド内のミスパス、いわゆる「飛ばしパス」と呼ばれるパスを見せていたことです
    基本構造である3人ポッドであればなかなか活用が難しいミスパスですが、フランス代表は4人以上のポッドも多く用いており、多くの選択肢を同時多発的に準備することでパスのバリエーションも増やしていました

    特にポッドの外を見ているニュージーランド代表のディフェンスにとっては、裏に立つバックラインへのフォーカスも切らすわけにはいかず、フロントラインの中で大きくボールが動くことによって完全に崩されるようなシーンも見られていました

    まとめ

    ニュージーランドとしては、少し物足りない結果といったところでしょうか
    近年苦戦していた相手ということもあり、「マストウィン」が求められる試合だったと思います

    今回の試合では勝利を収めることができましたが、フランス代表のメンバーがノンキャップの選手が多かったこともあり、もう少し圧倒したかったかもしれません
    まだ今後も試合があるので、注目していきたいところです

    それではまた

  • 【国際コラム】サマーネーションズシリーズのイングランド代表の試合展開からW杯を見据えてみた

    【国際コラム】サマーネーションズシリーズのイングランド代表の試合展開からW杯を見据えてみた

    みなさんこんにちは
    まだ夏ですね

    今週末から大学ラグビーのシーズンが始まりますが、同時にW杯が開幕するということもあり、番外編としてイングランドのプレビューをしてみようかと思います

    対象とした試合はサマーネーションズシリーズのウェールズとの2連戦、アイルランド戦、フィジー戦になります
    日本代表がイングランド代表と戦うのは2戦目なので、ちょうどいいですね

    目次

    1. 過去のメンバー
    2. 4試合のスタッツ
    3. イングランド代表のアタック
    4. イングランド代表のディフェンス
    5. ピックアッププレイヤー
    6. LO Maro Itoje
    7. SO Owen Farrell
    8. まとめ

    過去のメンバー

    それでは、過去4試合のメンバーがこちら

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    ウェールズとの第1戦目はおそらく最終セレクションといった様相でもあったため、W杯のメンバーではない選手も含まれていますね

    また、W杯スコッドの全体はこのような感じになります

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    並んでいるメンバーを見ると誰も彼もが強烈ですね

    4試合のスタッツ

    対象試合のスタッツはこのようになっています

    画像

    詳細はこの後の項目で述べていきます

    イングランド代表のアタック

    イングランドのアタックの起点の多くは9シェイプとなっています
    上記のスタッツでは表記していませんが、どの試合でも1/3から1/2ほどの割合が9シェイプを用いたアタックという結果になりました
    また、アタックに際して2ndフェイズ以降ではFWの選手が順目に回って繰り返し9シェイプとしてボールをもらっている様子が散見されました
    基本的には1−3−3−1感のあるアタック方針のように見えますが、9シェイプにはこだわりがありそうに見えます

    とはいえそれはあくまでも傾向であり、キャリー・パス比に関してみると2:3の近似値になることから、一般的にはバランスの良いアタックをしているという事ができるかと思います

    アタックの方向性を見ると、ポッド的要素もありながらも若干シェイプ的なイメージもあるかと思います
    9シェイプに関しては固定したポジションにセットするばかりではなく、先述したように順目にまわってSHからどんどんボールをリサイクルしてもらう様相が見られています

    その際にはポッドの三角形が毎回綺麗に構築されているわけではなく、ラックの真後ろからFWの選手が走り込むことでモーメンタムを生み出すとともに相手のフォールディングによって生まれる優位性を確保しようとしているようにも見えました
    SHに入る選手もラックからそのままパスアウトすることもあれば、少し持ち出して走り込んでくるFWを呼び込むこともあるのがミソですね

    また、10シェイプに関して見ると少し特徴的な場面も見られ、SOに立つ選手の外側に2人、内側に1人の選手が立っていることもありました
    10シェイプのポッドの中にSOが立っているイメージですね
    そのため、SHからボールを受けたSOの選手には一方向ではなく複数方向にいくつもの選択肢を持っているということになります
    これに関してはどの選手がSOに入っているかということにも左右されるため、一概には言いませんが、選択肢を多く持っているのは一貫して言うことができるのではないでしょうか

    一方で、一応スイベルパスのようにバックドアを使うアタックシステムも何度か見られてはいますが主流のアタックムーブではなく、ぱっと見の印象ではポッドを用いたアタックか外に回すかはわかりやすいようにも見えました

    その他の特徴として挙げられるのはキック戦略になります
    エリア獲得のためのLongが基本的には多いのですが、特徴的なのはBoxの多さになります
    自陣深くからの脱出でもBoxを使っていますし、ハーフライン周辺の中盤エリアでもBoxによるハイボールでの競り合いを戦場にしているような印象を受けました

    キック戦略に関連する選手を挙げるとすれば、4試合とも先発出場したFreddie Steward選手は全選手の中でも特にハイボールが強く、相手からのハイパントを高い精度で獲得していて、中盤では無類の強さを誇っています

    全体的にはバランスのいいアタックを示しているイングランドですが、良くも悪くもSOに入る選手によってアタックのハマる・ハマらないが決まってくるような印象は受けますね

    Marcus Smith選手はどちらかというとファンタジスタタイプで、自身がボールを保持している時間が長く、Smith選手からの1パスで崩すと言った印象で個人的には見ています
    一方George Ford選手について見ると周りの選手を生かすタイプのように見え、チーム全体のパスワークで相手を崩そうとしているような印象です

    そのため、アタックの要所要所での一貫性のなさはちょっとネックになるような気もしています
    特に試合を見ていて思ったのは、FWの選手との連携がうまくいっていないシーンが何度か見られていることで、イングランドの特徴でもあるSOの選手が急激なポジションチェンジをすることでアタック方向を変える特徴的な動きにFWの選手がついてこられていないようにも見えました

    イングランド代表のディフェンス

    ディフェンスは基本的に強いプレッシャーとダブルタックルが重要な要素になってくるかと思います
    ライン全体のスピードも早く、特にラックサイドの選手が前に出るスピードは他の国代表のディフェンスと比べても早い印象を受けました
    Ellis Genge選手に至っては相手がパスをすることを計算に入れてないんじゃないかって言うくらいのスピードで前に出てますしね

    タックルの質そのものはかなり高いと言う事ができるかと思います
    アイルランド戦でこそ85%を下回ると言う結果にはなったものの、そのほかは90%を超えているため、基本的な「倒す」というアウトカムはしっかり出す事が出来ているように見えました
    ダブルタックルに関して見ても二人がかりで相手を捉え、差し込まれることもなく相手を押し込む事が出来ていたように思います

    ディフェンスラインの上がりに関してはCTBの選手までは揃って一つのラインとなって上がるような印象で、南アフリカのように外側の選手が顕著に前に出ると言うこともなく、オーソドックスなディフェンスをしていたように見えます
    若干一部のFWの選手で突出することもありますけどね

    目立った弱点・必ず崩されるシチュエーションというのは強豪らしくそこまで見てとる事ができませんでしたが、少しだけポッド内の細かいパス、特に10シェイプでのパスワークに翻弄されてビッグゲインを許すシーンも見られたことから、表裏を使ったアタックに細かいパスワークを組み合わせた場合は苦手にしているかもしれません

    ピックアッププレイヤー

    LO Maro Itoje

     Maro Itoje選手はイングランド代表の中でもLOらしいLOというか、かなり勤勉なタイプであると推測しています
    タックルも強いですし、アタックでもボールキャリーからサポートと様々な役割を高いレベルでこなしていますね
    ビッグゲインを切ることこそ少ないものの、安定したアタックには必要不可欠かと思います

    特にラインアウトに関してはアタックでもディフェンスでも重要な役割を果たしているように見えました
    そもそもの高さもありますが、リフターとのコンビネーションでより高い位置でのボールキャッチを実現していて、デフェンス面でも相手にかなりのプレッシャーをかけています

    SO Owen Farrell

    良くも悪くも注目を浴びる選手というか、タックルに関しては正直諸々の改善点がある選手であると思っています
    タックルがそもそも高いですし、ノーバインド気味で肩を当てに行くので、それは当然反則になるでしょうと言わんばかりのプレーが若干多めです

    一方でSOとしてのゲームコントロールに関してはMarcus Smith選手、George Ford選手にはないセンスを有していると思っていて、視野も広くパスワークにも優れていることからアタックのタクトを振る能力に関しては極めて優れているという事ができるでしょう

    キックを用いたゲームコントロールもうまく戦略的にアタックを組み立てるタイプなので、どこで崩すか・どのようにアタックするかという意思決定者としても優れているように見えました

    まとめ

    イングランド代表は現時点では世界ランキングこそ全盛期から少し下がったものの、選手層の厚さや一人一人の強さという点で見ると他国と比べても遜色ないレベルのチームであり、アルゼンチン代表と同様に日本が乗り越えるべき壁として存在しています

    日本代表との試合時点ではFarrell選手の出場停止期間が明けていないので、SOにどちらの選手が入るかなど楽しみな点がいくつもありますね

    今回は以上になります
    それではまた!