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  • 【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園決勝:京都成章高校対桐蔭学園高校

    【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園決勝:京都成章高校対桐蔭学園高校

    「構造とデザインのぶつかり合う、戦略の最前線」

    みなさんこんにちは

    今年も高校生による熱戦が終わりました
    1/7に行われた高校ラグビーの最高峰、花園の決勝は、3連覇を狙った桐蔭学園高校が36対15という得点で京都成章高校を破り、3連覇を果たすという大会の終わりとなりました

    この接点の強度をシステムとして強みにすることで相手を打ち破ってきた、「構造化されたラグビー」得意とする桐蔭学園。緻密に練り上げられたサインプレーで強敵を破ってきた「デザイン化されたラグビー」を得意とする京都成章。

    今回は彼らのラグビーがどういった駆け引きのもとで行われ、そして何が勝敗を分けたのかについて見ていこうと思います。

    桐蔭学園のラグビー

    <ポッド戦略>

    桐蔭学園のアタックは1-3-3-1をベースにして、そこから大きくポッドの配置を切り替えることなく終始した戦略をとっていました。中央付近で3人ポッドを作ることでラックを安定化させ、アタック全体をリズムよく運ぼうとする狙いが感じられます。

    9シェイプに関しては、一般的な三角形のポッドとステアポッドを使い分けるような形で活用しており、9シェイプから裏にパスを通すようなシーンは少なく見受けられました。その代わりに、アタックを展開する時は10を起点に一気に動かすような形で、その時はポッドを経由することなく素早くボールを動かしていました。

    また、この3人ポッドの多くにはBKの選手が参加していることもありました。特定の選手が何度も参加しているというよりも、さまざまなBKの選手がバランスよく、近くにいる選手へのサポートという形でラックを形成していました。

    そのため極端な話で言えば、3-3-3-3のように、3人組のポッドが数多く並んでいるシーンも見られていました。グラウンドを縦方向にレーンに分けることで各ポッドの参加位置を大まかに固定し、ポッドでラックを作った選手がそのまままっすぐ下がることで、不要な移動をせずにアタックラインを構成している様子が見られました。

    3人ポッドは必ずしも熱心に順目方向に回り込むような動きは見せず、サポートに回るというよりは、次のポジショニングをする準備をしているような様子でした。

    9シェイプではこのような傾向がありましたが、10シェイプは少し流動的な形で、決められた3人組のポッドだけではなく、流れの中で近くの選手たちが、3人1組にまとまってポッドとしてラックを完結させるようなシーンも見られていました。

    <キーになった接点>

    桐蔭学園のアタックのキーになったのは、何よりもその「粘り」です。どの選手もタックルによって一発で倒されることがなく、数歩の間粘って立ち続けることで、サポートの選手が体を寄せてハンマーに入ることで、さらに前に出ることに成功していました。

    また、一人一人が粘ることによって、サポートの選手が少し遅れても相手にボールに絡まれたりすることなく、安定してラックを作ることができていました。キャリアーとなった選手の体の使い方も上手く、上手く体を捻って相手の圧力をいなすことで、タックルを受けた後でも相手をずらして前に出ることに成功していました。

    そのため、9シェイプの多くで前に出ることができ、無理にパスを重ねて展開をしなくても、(ミスがない限り)連続して前に出ることができるという状況を作っていました。アタック自体は非常にシンプルでしたが、接点の強さが担保されており、シンプルな構造ながら前に出ることに成功していました。

    接点の観点で効果的だったのは、ピックゴーでのキャリーも挙げられます。単純に接点が強いので、ボールを下げずにキャリーができるピックゴーとの相性が非常によく、ゴール前といったディフェンスが非常に堅くなるようなシーンでも、高い確率で前進を果たし、連続攻撃でトライを奪っていました。

    誰かがラインブレイクをして大きく前に出た後も、ピックゴーが効果を強力に発揮します。桐蔭学園の選手は判断が非常に良いため、ラインブレイクしたことでラックの近くに相手選手が薄いと見るや否や、素早くピックゴーの持ち込んで、モメンタムを殺すことなくキャリーをすることができていました。

    また、このピックゴーが一つの選択肢となって相手を惑わし、ビッグゲインの後に相手がラック際を固めてきた場合、素早くサポートに入った選手が持ち出すふりをしながら大きく展開をすることで、スペースを効果的に攻略することができていました。

    <キックとエリア戦略>

    桐蔭学園と京都成章の試合では、高いレベルでのキックの蹴り合いを見ることができました。後述するようにポゼッション回数が多くなるということは、キックポゼッション、つまりキックの蹴り合いで一時的に保持するポゼッションが多かったということが推測できます。

    桐蔭学園は、Bゾーンに入ればある程度こだわって連続したアタックを狙いますが、中盤では効果的にボックスキックを蹴るフェイズも見られています。再獲得を狙いながらプレッシャーをかけ、相手のミスを誘ったり、エリア自体を押し込むことに成功していました。

    ロングキックによるエリアの取り合いの観点から見ても、桐蔭学園のキックはしっかりと距離が出るため、エリア的に押し込まれずにタッチに蹴り出すことができます。相手のキックが自陣22m内に入っても、丁寧に蹴り出すことによって、エリア的にイーブンとなるハーフライン近くまで蹴り出すことができていました。

    キックの観点で言うと、見逃すことができないのが後半20分に生まれたドロップゴールです。リズム自体がよく、そのままアタックをしてもスコアをすることができそうな状況でしたが、桐蔭学園は、ここでドロップゴールを狙ってきました。

    このキックの狙いは確実には読めませんが、10対26という点差の状態における、スコアによる精神的プレッシャーをかけることを目的としていたことが予想できます。

    京都成章は、準決勝の東福岡戦でも、緻密に練られたサインプレーを用いて一発でトライを取ることを得意としていました。つまり、短いポゼッションで、スコアをすることができるチームであるということです。

    残り時間は10分+ロスタイムとなっていましたが、それくらいの時間があれば、京都成章は十分に得点差をひっくり返すだけの実力があったでしょう。しかし、ここでドロップゴールを決めて19点差にすることで、点数で圧力をかけるとともに、アウトオブプレーにすることで時間をさらに消費することもできていました。

    京都成章のラグビー

    <ポッド傾向>

    京都成章のポッドは少し特徴的で、特別なサインプレーをするときの特殊な人数比もありますが、基本的には4人ポッドを2つ並べることを好んでいます。

    4人ポッドを一度当てこみ、その次のフェイズで別の4人ポッドを当て、さらに次のフェイズでは最初の4人ポッドを当てるという、ピストンアタックと呼ばれるような動きを、グラウンドの中央で多く行っています。

    これは、4人ポッドという密度の高いポッドを中央で使うことでディフェンスを寄せ、外方向に数的優位を作ってから一気に展開するという形をゴールとしています。4人ポッドに対してディフェンスが薄いと、4人ポッドの面としての強さで前に出やすくなるため、ディフェンスとしてはある程度人数を割かざるを得ません。

    また、ある程度一定のリズムであると意識させた状態から、4人ポッドの3人目にパスをだし、そこからスイベルパスで裏に立つプレイメーカーにボールを供給する形も見られていました。残る1人はブロッカーとなって囮となったり、少し遅れて走り始めることで、プレイメーカーからのパスオプションになったりしていました。

    <特徴的なサインプレー>

    京都成章の強みは、練り上げられたサインプレーによる一発でトライまで持ち込むことのできる爆発力です。今回の試合でも、いくつかのサインプレーが見られました。

    特に強力なのが12-13のCTB陣から裏に回り込む10番の岡元聡志へのスイベルパスで、外方向に一気に振り切り、最後は走力のあるWTBが走り切るといった形です。

    12番の森岡悠良と13番髙萩誠人は個人としても突破力がある選手であり、桐蔭学園側としては、ディフェンスを切れない相手です。その2人がしっかりと相手を寄せることによって、外に膨らみながらボールを受ける岡元が、相手を振り切って外に移動できていました。

    また、特徴的な動きとしては、バックスライン全体がスイングする「ロングスイング」によって一気に数的優位を作り出し、安定化させたラックから大きく動かすことによって、最後は外で相手を振り切るという形を作っていました。

    <ディフェンス傾向>

    京都成章のディフェンスは、「ピラニアタックル」と呼ばれるほど精度が高く強力で、鋭く低くタックルに入ることで、相手の動きを封じ込めることに長けています。桐蔭学園が武器としていた9シェイプでのキャリーに対しても、ある程度の精度でタックルで止めることができており、苦戦はしていましたが、いいタックルの様相を見せていました。

    バックスラインのような選手間の距離が広いようなシーンにおいても、しっかりとダブルタックルで止めることができています。その後、ブレイクダウンへのプレッシャーでターンオーバーしたりと、堅いディフェンスから相手ボールを奪うまでの一連のフローがしっかりと整備されていました。

    しかし、苦戦した要因として、桐蔭学園のキャリアーの粘りがあります。相手が簡単に倒されずにサポートをつけながら徐々に前に出てくるため、ディフェンスは細かいポジショニングの調整をする必要が出てきます。ポジショニングの調整をしている間にも桐蔭学園がアタックを開始しているため、ディフェンスがで遅れるシーンが見られていました。

    また、全体が揃って上がるディフェンスがベースにある分、誰かがズレて突出してしまうとオフロードパスなどですれ違われるといったリスクも露呈していました。前に出る勢いがある分すれ違われるとカバーが遅れてしまうことも多く、一度それで大きなゲインを許していました。

    <勝負を決定づけたシーン>

    勝負を決定づけた要因としては、攻守ともにキックに関連した要素だったと言えるでしょう。

    まず、キックオフレシーブを安定して確保することができず、失ったポゼッションがあります。基本的にキックオフを蹴り込まれるときは最初のキックオフ、またはスコアをした後の相手のキックオフであり、本来であれば安定して獲得して、脱出することでエリア的にイーブンに持ち込みたいところです。しかし、キックオフでのミスが数度あり、ポゼッションを桐蔭学園に譲る結果となっていました。

    また蹴り込んだ、または蹴り込まれたパント系のキックに対して、安定して確保することができなかったことの影響も考えられます。京都成章から蹴り込むキックでは相手にプレッシャーをかけ切れず、タックルはできてもミスが誘えないような状態になっていました。

    最後に決定的だったのは、相手のトライにつながった2回のキックチャージです。こればかりは運の要素もあるかとは思いますが、安定した脱出をもたらすはずのキックが一転して相手のスコアにつながってしまい、スコアボード上でも精神的にも動きが大きかったように思います。その後のキックの蹴り合いでもボールデッドになってしまうなど、ミスキックが重なっていました。

    ゲームスタッツを確認する

    それでは、スタッツを確認していきたいと思います
    まずは京都成章のものからです

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    気になるのは圧倒的に相手に上回られたポゼッションです。45%程度であれば上回れていてもいい試合に繋げることができますが、今回の試合では京都成章のポゼッションは34.1%にとどまりました。ポゼッション回数自体はそこまで少なくはないですが、一つ一つのポゼッションの時間が短い、つまりキックがアウトカムになるポゼッションが多かったことが予想されます。

    ここまでポゼッションに差があると、いくら京都成章が短い時間で一気にトライを取ることができるチームといえど苦しい試合展開になることは簡単に想像できます。ポゼッションが少ないと敵陣でのプレー時間も減り、チャンスが少なくなるからです。

    キャリーとパスの比率を見ると、全体的に少しキャリー優位の試合展開であったことがわかります。パス回数が少なく、9シェイプをベースにアタックをしていたことが想像できます。東福岡戦ではもう少しパスの比率が大きかったので、苦戦したのか狙ってか、キャリーに重きが置かれたラグビーであったことがわかります。

    キャリーとキックの比率を見ても、東福岡戦からさらに小さい数となり、キックを多く用いていることがわかります。東福岡戦の時点でもかなり戦略的にキックを用いていましたが、今回の試合ではキックゲームによるエリアの取り合いの様相が強く、キックの割合が増えていました。

    また、ラインブレイクに比率は極めて低い数値となっています。東福岡戦での数値と比べると、倍以上のコスト、キャリーを必要としていることがわかります。特殊なサインも今回の試合ではそこまで目立っては見られず、シンプルな勝負の土俵に乗っていたかもしれません

    次に、桐蔭学園のものを見ていきましょう。

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    桐蔭学園の決勝、ひいては準決勝の試合展開からわかることは「圧倒的なボール保持率」です。これ以上は遡ることができませんが、少なくともこの2試合に関しては圧倒的なポゼッション保持率を見せています。

    しかし、大阪桐蔭にはサインプレーで一発で取られて苦戦したりと、相手にポゼッションを与えなくても敗れることになるリスクというのも認識していたかもしれません。その結果として、キーになったドロップゴールの選択肢など、スコアを重視していた様子が見受けられました。

    敵陣22m内への侵入効率も非常に良く、走力のあるBKによるラインブレイクや、FWの選手たちによる地道な前進によって侵入を果たしたりと、攻撃的に侵入を果たしていました。8回の侵入に対して5トライとトライ効率も高く、非常に「いいラグビー」ができていたと言えるでしょう。

    キャリーに対するパスの比率はほぼ1という数値をとっており、これは極めて異例な数値であるといえます。キャリーにかなり偏った数値であり、パスを介さないピックゴーを多発していたことがこのような数値になっていた理由になることでしょう。

    まとめ

    桐蔭学園は組織としての強さを備えながら、個の力で前に出る、というシンプルな構造でポゼッションを支配的に進めました。その過程の中ではミスも少なく、相手に常にプレッシャーをかけ続けながら試合をコントロールしていました。

    京都成章は準決勝をデザイされたプレーを駆使して勝ち上がり、決勝でも戦術的なバリエーションを豊富に見せていました。しかし、接点というラグビーの土台になる部分で相手に全身を許し、細かいプレーのミスで勝負の天秤は傾いたように見えました。

    今回の試合は、京都成章の緻密にデザイン化されたラグビーを桐蔭学園の組織・個の力が上回った試合であるといえます。今年の熱戦を経験した選手たちが、来シーズンはそれぞれの場所でどのように活躍するかが、現時点でも楽しみに思えます。

  • 【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園準決勝:東福岡高校対京都成章高校

    【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園準決勝:東福岡高校対京都成章高校

    「緻密な戦略性と、強烈な個々の力」

    みなさんこんにちは
    昨年12月から始まった高校ラグビーの全国大会、「花園」も準決勝まで終わり、残すは決勝を残すのみとなりました
    今回は、準決勝2試合のうち、東福岡高校対京都成章高校の試合について、振り返っていきたいと思います

    東福岡のラグビー

    東福岡のラグビーは、簡単にまとめてしまうと「シンプルな構造と個々のスキル」によって動くラグビーであるということができます。複雑な動きやサインは少なく、一つ一つの接点やシーンごとに相手との小さな勝負が起きるといったものです

    基本的なポッドの構造としては、エッジからポッドを1-4-2-1の比率で配置した基本的な構造に、中央の4人ポッドから浮いたFWの選手が次のポッドへ参加することで、一つ一つのポッドの人数を担保するような形をとっています

    この4人ポッドの形が特殊で、一般的な三角形のポッドに1人プラスされるような形のポッドになっています。形を表現するのであれば、まるで「へ」というひらがなの形をしています。

    この4人ポッドの活用の形としては、基本的に突出した中央の1人に対してSHからボールが供給されます。次いでその選手から外方向にティップオンを送っていくような形です。ティップオンのオプションは一回だけではなく、二回連続で行うことで相手ポッドディフェンスの端の選手までしっかりコミットしながら外方向にチャンスを生み出すような形をとっています

    一回のティップオンのみではずらしきれないシーンに対して、二回めのティップオンやキャリーした後のオフロードパスを使うことでゲインしやすい構造になっていました

    ただ、ポッドの活用の部分で気になった部分としては、9シェイプや10シェイプがラックに対してかなり深い位置関係を作っており、京都成章の鋭く出足のいいタックルに捕まってしまうことが多かったという点です。下げるパスが多い分京都成章のディフェンスラインのプレッシャーでかなり下げられてしまっていました。

    また、9シェイプから裏のラインに下げるようなパス、スイベルパスを使うような場面でもポッドの選手がどちらかというとスタンディングの状態でパスを放るような形をとっており、スライドディフェンスも丁寧に使ってくる京都成章のディフェンスに対して圧力を受けていました。

    これらのポッド動きから、後方から外方向にかけて存在するアタックラインは基本的にはシンプルで、ポッドの裏の層がそのままアタックラインになるような形です。オプションとしてはカットインやカットアウトといった個々のレベルでの対応にとどまっており、シングルラインを崩すような形のものはなかったように見えました。

    この過程の中で数的優位を動的に作るような形もそこまで多くはありません。9シェイプを繰り返し中盤で使うようなフローで相手を寄せようとしていましたが、なかなか相手が寄り切ったようなフェイズは少なく、苦戦しながらのアタックが続いていました。

    そんなアタックの中では個々のランニングスキルや接点の強さといった要素は東福岡の強みとなっており、個人的にいい動きを見せていたように感じた選手としては、14番の平尾龍太選手や、8番の須藤蒋一選手がアタックの中でキーになっていました。

    一方で、個人の勝負に依存しているような様相もあり、システムとして相手を崩すことができたようなシーンがそう多くはありませんでした。結果として、相手を崩す動きに再現性がなく、崩すことができても単発のものになってしまっていました。

    京都成章のラグビー

    京都成章のラグビーを言語化するのであれば、「高度な戦術によって相手を一発で崩すラグビー」ということができます。細かなものからビッグプレーまで、さまざまな戦術的要素を用いて相手を崩そうとしている様子が見られました。

    特に強さを発揮したのがセットプレーからの一発でトライまで持ち込むことができるサインプレーです。表と裏の動きを工夫したさまざまなバリエーションのあるアタックを作り上げており、東福岡の構造をしっかりと分析した上で、精度良くギャップを狙うことができていました。

    構造の中で有効活用されていたのがスイングという一連の動きです。スイングというのは、ラックを挟んで逆方向に振り子のように動きながらアタックラインに参加する動きで、京都成章は10番の岡元聡志が主体となって左右に移動しながらアタックラインを作っていました。

    スイングのメリットとしては、後出しでアタックラインの人数を切り替えることができるため、ディフェンスラインからするとノミネートがずれてしまったり、数的に不利な状態になってしまいます。京都成章はこのずれに対して一発でブレイクをできるような準備を整えてきており、何度も構造的にブレイクすることでトライを生み出していました。

    基本的な構造、というとうまくまとめられなくなってしまうほど、京都成章は多くのポッド構造を使っていました。簡単にあげるだけでも、「2-3-2」、「3-4-1」、「1-3-3-1」など、同一ポゼッションの中でも選手の配置を流動的に入れ替えることでポッド内の人数を調整していました。

    最も特徴的だったのは、簡単に言えば5人から6人の人数をかけたポッドで、SHの佐藤啓護選手の長いパス距離を活かしてラックから遠い位置に立つ選手にパスを出す形です。そのパスを受けた選手はそこからスイベルパスで裏に立つプレイメーカーの選手にパスを出すことで、外方向の数的優位を効果的に使っていました。

    その構造の中でいい働きを見せていたのが8番の南川祐樹選手です。いい体格をしていて走力があり、多くに人数をかけたポッドの次の構造として、エッジでのラインブレイカーとして作家していました。構造の過程の中で外では3対2くらいの数的優位が生まれており、少しでもスペースがあれば、南川選手がしっかりと前に出ることができていました。

    特徴的な戦略としては、早い段階からキックを主体にカオスな状況を作っていたことも挙げられます。Bゾーンのようなチャンスが生まれやすい場面であっても、そこまで無理することなく、SHの佐藤選手からボックスキックを蹴り上げて再獲得を狙っていました。

    再獲得の頻度としてはそこまで多くはなかったですが、京都成章がキックチェイスのディフェンスの精度が非常に高く、相手をセミストラクチャーの状況に追い込むことができていました。セミストラクチャーの状態であれば京都成章の質の高いディフェンスラインを作ることができるので、東福岡の個々の力を抑え込むことに成功していました。

    これまで述べてきたように京都成章のディフェンススキルは非常に高く、高校生らしい低いタックルと、質の高いディフェンスラインの整備によって東福岡のアタックを封じ込めていました。1対1の場面でしっかり低く入ることができているので、相手を素早くテイクダウンすることができ、接点に強いFWの選手に時わりと前に出られることも減らすことができていました。

    スタッツを振り返る

    それでは順番にスタッツを振り返っていきましょう。

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    東福岡のスタッツを確認していきます。

    ポゼッションを見ると、試合通じて19回という数値を示していますトップカテゴリーの40分よりも1試合の時間が短いということを差し引いても、このポゼッションの回数は少ないということができるかと思います。

    このような回数になった要因として、わかりやすい要素として「ポゼッション一回あたりの平均継続時間が長い」ということが挙げられます。京都成章の数値も大きかったですが、東福岡は1つのポゼッションあたり44.9秒と、大学やリーグワンの倍近い数値となっています。キックの回数が少ないことで一つ一つのポゼッションが長くなり、全体としてポゼッションの回数が減った、ということが考えられます。

    キャリーに対するパスの比率は1.88とかなりパス回数が多い比率を示しています。このことから、東福岡はポッドではなくアタックラインを多く使うようなアタック傾向を示していることがわかります。単に9シェイプや10シェイプを使うようなアタックをしていれば、この数値は1.3~1.5あたりの数値に収束するからです。

    ラインブレイクに対するキャリーの比率は22と、極めて効率が悪いということができます。単純計算で22フェイズに一度のみラインブレイクが起きているということなので、なかなか相手のディフェンスラインを崩すことができていなかったことがわかります。ただ、ゴール目前まで迫ることさえできればトライに繋げることができていたので、いかにゴール前まで入るか、というフローの重要性がわかります。

    また、ターンオーバーの回数が京都成章よりもはるかに多くなってしまったことの影響も大きかったかもしれません。京都成章が大きなリードを奪ったことで東福岡はリスクを抱えたままアタックを続けなければいけませんでした。その結果としてミスが増え、さらに京都成章にボールを保持されるという悪循環に陥っていました。

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    次に京都成章のデータについても振り返っていきましょう。

    京都成章のポゼッション回数は25回と、東福岡よりも多い回数となりました。しかし、一回のポゼッションあたりの継続時間が東福岡よりも10秒ほど短かったため、全体的なポゼッション比率に関してはほぼ同程度という結果になりました。

    何度ポゼッションを保持するごとに敵陣深くに入っているかという指標を見ると、東福岡と京都成章はほぼ同程度のスタッツを示しています。しかし、その侵入効率の中で京都成章は6トライ、東福岡は3トライという結果になりました。京都成章は敵陣不覚への侵入回数自体が7回であるにも関わらず、6回のトライという非常に高い効率でスコアをしていました。

    パスに対するキャリーの比率は1.43と、一般的な水準に落ち着いています。逆に言えば、高校生であるにも関わらず、大人のようなラグビーをしているということができます。まるでトップカテゴリーの選手のような、戦略的にラン・パス・キックを組み合わせたラグビーを見せました。

    また、キックに対するキャリーの比率は4.63とかなりキック優位のデータとなっています。リーグワンの平均よりも少ない数値となっており、こちらに関しても冷静にキックを用いた戦略を用いていたということができます。

    ラインアウトもスクラムも安定しており、セットピースからのサインプレーが大きな影響をもたらしたこの試合に関しては、セットピースの安定は最低条件でもありました。

    まとめ

    高校生とは思えない戦略的ラグビーを見せた京都成章と、個々の力をうまく使えるような工夫をしてきていた東福岡の試合は、緻密なサインプレーで何度もブレイクした京都成章が上回る結果となりました。

    残すは決勝のみ、京都成章と桐蔭学園の試合となります。しっかりと見届けていきましょう

    それではまた!

  • 【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園準々決勝

    【マッチレビュー】2025高校ラグビー花園準々決勝

    4強が魅せた「戦術の極み」と、至高の準決勝展望

    高校ラグビー界の頂点を決める戦いは、いよいよ佳境へ。 準々決勝4試合は、フィジカル、緻密な戦術、そして意地がぶつかり合う激闘の連続でした。勝ち上がった東福岡、京都成章、大阪桐蔭、桐蔭学園。この4校はいかにして勝利を掴んだのか?そして、聖地・花園で次に待ち受ける「準決勝」の勝負の鍵とは?

    独自の視点で分析したマッチレポートと、次戦の見どころをお届けします。

    第1試合:東福岡 vs 東海大相模

    東福岡の特徴

    「1-4-2-1」システムを採用し、グラウンド幅を広く使うワイドアタックが最大の武器になります。特にミドルゾーンではSOが深い位置からランで仕掛け、呼応した両サイドのFWや、順目・逆目から移動してくるBKが重層的なライン(ダブル・トリプルライン)を形成し、空いたスペースを攻略しました。

    また、「1-3-3-1」のポッドでは、中央のFWが縦に走り、その裏を内側のFWが走りアウトサイドキャリーする形は特徴的でした。12番がブレイクダウンに入りリサイクルすることで、エッジにペネトレーターとなるFWを配置し、ブレイクを狙いました

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    東海大相模の特徴 

    大学生にも劣らない平均体重を誇る、強力かつ大型のFWが魅力。セットプレーやゴール前のモール、近場の突進(リモール)で強烈な圧力をかけ、相手ディフェンスをパワーで粉砕するスタイルを持ち味としました。後半途中まで、リードを奪った実力はレベルの高さに驚かされました。モールを軸に22mからペナルティーを獲得し、ゴール前での工夫されたモールのセットアップは圧巻でした。

    中盤でもSO基点に動かすムーブが特徴的でした。ただ、エッジでシングルラインになる瞬間があり、東福岡DFにとって絞りやすくなり、ターンオーバーを取られてしまう場面も見られました。

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    試合を分けたポイント 「対応力とブレイクダウンの修正」

    序盤は東海大相模のFW圧力に苦しむ場面もありましたが、東福岡はブレイクダウンで激しく絡んでターンオーバーを連発。後半になると、東福岡のワイドな展開と個々のランニング能力に対し、東海大相模のディフェンス対応が遅れ始め、ラインブレイクが多発しました。拮抗した試合でしたが、僅かにDFの修正力とスコアへの決定力が東福岡が上回った点だと言えます。


    第2試合:京都成章 vs 御所実業

    京都成章の特徴

    ポッドを軸にしつつも、一連の流れ(シークエンス)を重視した変幻自在のアタックを展開。「9シェイプ」に3〜4枚を配置し、ギリギリまで接近してからのポッドのバックドアへのスイベルパスなど、「的を絞らせない」攻撃が光りました。1stレシーバーにCTBが入り、ギリギリまでキャリーとパスをオプションに持つことで、DF側の混乱を起こしていました。

    さらにゴール前では、中央にポイントを作りつつ逆目に10番・15番が待ち構える縦走的なアタックで、内側のディフェンスを飛ばして大外で取り切るなど、戦術レベルの高さを見せつけました。DFでは、 伝統の「ピラニアアタックル」による鋭い出足のディフェンスも健在。飛び出さず、DFのチェーンを切らさず、ラッシュをかけるDFは、御所実業の強みであるターンオーバーを許さず、攻守に圧倒しました。

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    御所実業の特徴

    御所実業は強固なディフェンスからのターンオーバーを起点とするチームです。アタックでは「1-4-2-1」を用い、4枚のFWポッドから逆目のBKを囮にして大外へ運ぶなど工夫が見られました。4枚FWが並び、3枚目のFWからバックドアへ展開し、そこからエッジへ運びブレイクを起こすシーンには、戦術のレベルの高さを感じさせました。

    ただ、この試合ではポゼッションを確保するのに苦労し、キックゲームへと持ち込めずに、テリトリーも押される時間が長くなり、苦戦しました。

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    試合を分けたポイント 「リサイクルスピードとポゼッション支配」

    京都成章のアタックにおけるブレイクダウンのリサイクルスピード(球出し)が非常に速く、SOの素早い意思決定を後押ししました。これにより御所実業は得意のターンオーバーを起こす隙を与えてもらえず、守勢に回る時間が長くなったことが勝敗を分けました。


    第3試合:大阪桐蔭 vs 國學院栃木

    大阪桐蔭の特徴

    「1-3-3-1」と「3-3-1-1」を状況に応じて使い分ける柔軟性と、攻守の切り替え(セットアップ)の速さが際立ちます。ゴール前では強力なモールに加え、ラックサイドを執拗に突くピック攻撃で中央に寄せ、空いた逆サイドを仕留める精度の高さを持っています。特筆すべき形を挙げれば、10,12が横並びにたちながら、12が1stレシーバーとなり内側から10番がバックドアへ入り12番からパスをもらい、エッジへ供給する形が印象的でした。キックを軸にエリアを取りながら、ポゼッションでもチャンスメイクできるチーム力の高さを感じさせました。

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    國學院栃木の特徴 

    ハイパントを有効活用し、再獲得から攻撃を組み立てるスタイルです。エッジ攻撃ではトリプルラインを形成して数的優位を狙うなど工夫を凝らし、ポゼッション(ボール保持率)では相手を上回る時間を多く作りました。オープンサイドへの数的優位を作ることがうまく、折り返しのラックに参加していたバックスがオープン側へ移動し、スタックオプション(縦に並び、外側へ広がってもらう)を持ち、相手のノミネートミスを誘いました。

    ただ、今回の試合では大阪桐蔭サイドのDFが内側からの「壁」を崩さず、スライドし続けたことでトライまで取り切る場面があまりありませんでした。

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    試合を分けたポイント 「セットアップの速さとゴール前の規律」

    國學院栃木は多彩なアタックを見せましたが、大阪桐蔭の驚異的なセットアップの速さがそれを上回り、決定的な崩しを許しませんでした。一方、ゴール前での攻防において、大阪桐蔭がモールや近場の肉弾戦で確実にスコアしたのに対し、國學院栃木は要所で差し込まれたり、キック処理のミスからエリアを失ったりした点が響きました。両チームの高度な駆け引きに驚かされました。


    第4試合:桐蔭学園 vs 東海大大阪仰星

    桐蔭学園の特徴 

    選抜優勝校らしい、隙がなく完成度の高いラグビーを見せました。ボックスキックやコンテストキックを高確率で再獲得し、エリアとボールを支配しました。基本は順目にボールを動かすシェイプ気味のアタックですが、勝負所で見せるループプレーなどのオプションで一気に防御網を切り裂きました。

    8強チーム内では比較的、自由度の高く配置よりも個々人の判断とスキルで試合を運ぶスタイルだと感じました。チームとしてのエリア取りや、DGの選択など、試合運びにはこだわりと明確なプランを持って遂行していることが見受けられました。

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    東海大大阪仰星の特徴 

    粘り強いディフェンスと大型FWが武器。相手のプレッシャーを逆手に取ったエッジ攻撃や、FWとBKの境目を感じさせないコネクション(第1列の選手がエッジでオフロードパスを通すなど)で、終盤に素晴らしい展開力を見せました。

    FWからバックスへの展開としては、9シェイプを介した形もありながら、バックスの様にラインを作って1stレシーバーとなって供給する場面があり、驚かされました。後半こそ、エッジを攻略しスコアへ繋げましたが、後半途中まではミスが重なる場面もあり、苦戦を強いられました。

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    試合を分けたポイント 「王者のゲームコントロール」

    桐蔭学園が高いスキルをベースに、キック戦術でエリアとポゼッションを掌握し、試合を優位に進めました。東海大大阪仰星はポゼッションで劣勢に立たされながらも我慢のディフェンスを続けましたが、王者の安定した試合運びと決定力の前に、あと一歩及びませんでした。


    【準決勝 展望】 勝負の鍵

    第1試合:東福岡 vs 京都成章

    東福岡の鍵 「ブレイクダウンへのプレッシャー」 京都成章のポゼッションラグビーを止めるには、起点となるラック(特にタッチライン際15-20m)への激しいプレッシャーが不可欠となるでしょう。また、相手の精緻なアタックに対し、10番やミドルポッドへどれだけ圧力をかけられるかが焦点です。

    京都成章の鍵 「ポゼッションでの主導権」 東福岡の強力な「10シェイプ」からのランニングアタックを封じるため、ボールを持ち続けて攻め勝つプランを遂行できるか注目です。キックゲームやエリアの取り合いで優位に立ち、自分たちの時間を長く作れるかがポイントです。

    見どころ 「東福岡の個とワイドアタック」対「京都成章の組織的なポゼッション」。スタイルが明確な両校による、ハイレベルな“矛と盾”の激突が注目です。

    第2試合:大阪桐蔭 vs 桐蔭学園

    大阪桐蔭の鍵 「接点でのファイトとセットアップ」 コンスタントに接点を挑んでくる桐蔭学園に対し、ブレイクダウンでどれだけ押し返せるか。また、ラックサイドを突かれた後のディフェンスの広がり(セットアップ)を維持し、隙を作らないことが求められます。

    桐蔭学園の鍵 「エッジディフェンスの修正」 準々決勝で見えた課題である「エッジディフェンス(スライドするか、詰めるか)」をどう修正してくるか。敵陣でプレーするためにハイパントを有効に使いつつ、大阪桐蔭の強力なFWと決定力あるBKを封じ込めるプランに注目です。

    見どころ 東西の横綱対決。フィジカルバトルはもちろん、互いの弱点を突き合う緻密な戦術戦と、エリアマネジメント(陣取り合戦)が勝敗を分ける総力戦になります。

    では。

    (文:山本陽平)